投稿日:2025年6月27日

ウェブ搬送テンション制御基礎トラブル対策システム構築と留意点大阪講習解説

はじめに

ウェブ搬送テンション制御は、紙・フィルム・金属箔などの連続素材を高速で搬送加工する工場現場において、極めて重要な技術です。
多くの製造業でウェブ搬送が工程上の生命線であり、そのテンション(張力)制御を誤ると、品質不良・生産ロス・設備トラブルなどに直結します。
とくに近年ではデジタル化が進みつつも、昭和的なアナログ制御や職人の勘頼み文化も根強く、思わぬ落とし穴も多いのが現実です。

本記事では、搬送テンション制御の基礎から、現場で見落としがちなトラブル、さらに最新の対策・システム構築ノウハウまで、長年の工場管理経験を土台に解説します。
また、大阪地区の現場講習やユーザー事例で得た、地域性や職場文化の違いにも目を配り、汎用的かつ実践的な知見を共有します。

ウェブ搬送テンション制御の基礎

テンション制御とは何か

テンション制御とは、巻取材を搬送・加工する際に、素材に適切な張力を持たせ続ける技術です。
搬送中のテンションがバラつくと、蛇行や伸縮、皺、断裂、印刷ズレ、ラミネート不良など、重大な品質問題に直結します。

テンション制御には主に「定張力制御」「定速制御」「張力フィードバック制御」などの手法があり、扱う素材の特性・工程ごとの要求品質・加工速度などにより最適な方式が異なります。

現場でのテンショントラブルの主因

テンション制御が難しい現場の主な原因は以下のとおりです。

1. 素材やロール径のバラつき(ロット差、芯ズレ、重量違いなど)
2. 機械的要因(ガイドローラーの摩耗、メカニズムのガタ、駆動伝達ムラなど)
3. 環境要因(温湿度変化、粉塵、定期的なメンテ不足など)
4. センサー・制御系の調整不良(ローードセルの零点ズレ、PIDパラメータ不適合、フィードバック遅延など)

制御理論だけでなく、現場のアナログな“癖”を把握せずにシステム導入した場合は、思わぬ「落とし穴」にはまりトラブルが連鎖することも珍しくありません。

昭和的アナログ現場のリアル

今なお多くの工場では、熟練作業者の「音」でテンション異常を感じ、ときに「ローラーの温度」や「ビビリ音・きしみ音」から感覚調整を行っています。
現場の声で「新しいデジタル制御だけに頼ると逆に摩擦や素材の変化への追従性が悪くなりトラブルが増えた」「ソフトより現場で対応力が問われる」といった意見が多いことも事実です。

逆に、アナログな現場経験と、最新のセンサー・IoT制御を“統合”したときにこそ、競争力と安定生産性を両立できるのです。

トラブル典型事例と実践的対策

事例1:テンションバラつきによる素材蛇行

【問題】
テンションのわずかな変動をきっかけに、素材がローラー上で蛇行。
最終工程で皺・シワが発生し、全品不良・再巻取りとなる。

【原因】
– 巻き始め・巻き終わり時で素材径が大きく変化するため、
 制御アルゴリズムが追従しきれていない
– ロードセルの計測位置の微小なズレ
– オートテンション設定と手動微調整の“切り替わり帯”に調整漏れ

【対策】
– 巻出、巻取り径変動をリアルタイム取得し、速度・トルク変動値を動的に自動補正
– ロードセル・エンコーダ、同期ギア比の再調整/毎日点検を徹底
– 巻取り初期と後半で異なる制御パターンを持つ「多段階制御」導入
– 専門家による初期パラメータの見直しと、現場作業者の巻き替えコツの標準化教育

事例2:張力過多による素材断裂

【問題】
テンションが設定範囲を超えた瞬間に素材断裂。生産停止・素材ロスにつながる。

【原因】
– センサーのドリフト・ノイズによるフィードバック誤差
– 機械自体の異常(ローラーに張り付き異音・ベアリング焼き付きなど)

【対策】
– テンション上限リミットをシステム側で明確に設定し「ソフト安全帯」を設ける
– ローンチ前の異常状態シミュレーションを頻繁に実施。人と機械の“ダブルフェイルセーフ”運用
– 月ごとの点検・潤滑を徹底し、予知保全システムで異音・振動モニタ

事例3:現場教育と伝達ロスによる課題

【問題】
新設ライン導入時、マニュアル化されていない技能伝承が進まず不良多発。
(ベテランが不在時、突発対応ができない)

【対策】
– 熟練作業者によるテンション現場教育(音、手触り、時期別注意点)の映像・データ記録化
– 見える化ボードで現在のテンション値・過去トラブル履歴など共有
– OJT+振り返り勉強会の定期開催(大阪地区の技能伝承文化に即した運用)

ウェブ搬送テンション制御の最新動向

デジタル化とIoT化の潮流

ここ数年、各種センサーの高精度化と、AIによる自動異常検知技術が急速に発展しています。
ウェブ製造装置にもIoTエッジ端末が導入され、“リアルタイム・フィードバックループ”によるオープン制御、高速補正が一般化してきました。

従来の「手動監視→人間が調整」から、「クラウド型監視→AI自動推薦→人間が最終判断」へ移行しつつあるのが新しい流れです。

データドリブンシステム構築の現場実情

大阪圏を中心とした日本の製造現場では、設備更改やリニューアル投資が慎重に進められる傾向が強く、「今ある設備を活かすデジタル連携」への関心が高いです。

例えば
– 既存ローラーラインに後付けでワイヤレスロードセル・近接センサーを追加
– 各工程ごとにテンショングラフをダッシュボードで可視化(異常予知管理)
– アナログ系の制御と、AI/BIツールの二連方式を採用し“リスク分散運用”
といった手法が成功例として増えています。

ウェブ搬送テンション制御システム構築の留意点

人材観点:現場とエンジニアの協働

新システム導入時、製造現場とシステムエンジニア・IT部門の間の“温度差”がトラブルの最大要因です。
「標準化」と「カスタマイズ」を両立し、各工場現場の肌感覚とデータロジックを融合させることが成否を分けます。

現場担当者がシステム設計会議に毎回参加し、「なぜこのテンション値にこだわるのか」「季節ごとの違い」「多品種時の罠」などをリアルに語れる環境づくりが重要です。

設備投資観点:段階的導入のすすめ

全自動システムに一気に切り替えるよりも、以下のような「段階投資」が現場力と生産性を両立します。

1. テンションデータの可視化・キャッチアップから着手(現状把握の徹底)
2. 異常閾値アラートシステムから段階移行(しきい値を現場で微調整できる機能重視)
3. 段階的に自動化割合を増やす(急激な押し付け自動化は現場の反発・ロス要因)

大阪地区における講習・ノウハウ共有事例

筆者が携わった大阪講習会では、実際のウェブ搬送設備を目の前にし、
– 張力計測センサー体験(値のずれの“体感”訓練)
– テンション異常時の音・振動ワークショップ
– “失敗談”を元ネタにした現場ディスカッション
など、地場の現場職人・若手技術者が一体となった教育プログラムが好評でした。

「机上の理屈だけでは伝わらない」「現場で遭遇する判断の迷い」を共有し合う機会こそが、昭和アナログ業界から脱却しデジタル化を推進する起爆剤となるのです。

サプライヤー・バイヤー間で知っておきたいポイント

ウェブテンション機器や制御部品のサプライヤーの立場としては、
1. 発注側(バイヤー)が何に困っているか、を「現場の声」で把握
2. 実際に発生している“不具合履歴”や“現場流儀”まで訪問しヒアリング
3. 「この装置が欲しい」ではなく「何のためにテンション制御改善したいのか」ストーリーを深入り
が肝要です。

バイヤーからすると、テンション制御改善の本質は「不良発生率がどれだけ下がるか」「安定稼働が何時間維持できるか」など、設備投資回収の数字を明確に求める傾向が強いです。
単なるスペック競争にならない、現場課題ベースの提案が競争力になります。

まとめ

ウェブ搬送テンション制御の基礎とトラブル対策、さらには最新システム構築の要諦を、現場目線で解説してきました。
どんなに時代が変わっても、実際に素材や設備と向き合う「現場力」を組み込んだ自動化・デジタル化が成功の鍵です。
また、大阪をはじめとした地域ごとの職場文化、技能伝承の在り方にも目配りし、現場でリアルに使えるノウハウの伝達が不可欠です。

今後、サプライヤー・エンジニア・バイヤー、現場スタッフが一体となり、「属人的×デジタル」の両輪を高めることで、昭和的アナログから脱却し、持続的な製造業の進化が実現できると確信しています。

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