投稿日:2025年6月29日

感性情報計測モデル化で付加価値と顧客満足度を高める応用デモ講座

はじめに:感性情報計測とその重要性

現代の製造業は、単なる「モノづくり」から「コトづくり」への転換が求められる時代に突入しました。
従来のスペック重視や品質管理はもちろん重要ですが、「お客様が本当に満足する商品とは何か?」という次元に踏み込む必要性が高まっています。
この背景には、消費者のニーズが多様化・高度化し、機能やコストだけでは選ばれない市場環境があります。

ここで注目されるのが「感性情報計測モデル化」です。
人がモノに感じる「心地よさ」「かっこよさ」「使いやすさ」といった感性のデータを科学的に計測し、モデル化・応用することで、競合他社と差別化された付加価値の創出や顧客満足度の向上が実現できます。
今回の記事では、長年の現場経験からみた感性情報計測モデルの基礎、実践的な導入方法、現場での応用まで、5ステップで具体的に解説します。

感性情報計測モデル化とは何か

感性データの定量化と意味

「感性情報」とは、数値や理論で表しにくい「好き」「心地よい」「安心感がある」といった人間の感覚や感情をさします。
これを定量的データ(数値・傾向)として抽出し、モデル化(数式化やアルゴリズム化)することを「感性情報計測モデル化」といいます。

たとえば、自動車のドアの“閉まり感”─バンッという音や振動が「高級だ」と感じるか「安っぽい」と感じるかは、スペックでは語れません。
しかし、加速度センサーやマイク、振動解析などで物理データ化し、アンケートや脳波、表情解析などと照らし合わせることで、感性と物理量の関係性を明らかにできるのです。

昭和型アナログ業界の「勘と経験」を脱却する

製造業には、長年の職人の「勘」「経験」「五感」に頼る部分が根強く残っています。
確かに勘所は重要ですが、働く人の高齢化や人手不足、多品種変量生産などを考えると、再現性・標準化が不可欠です。
感性情報計測モデル化は「勘」を再現性のあるデータへ転換する強力な武器となり、次世代現場力を底上げします。

感性情報計測のための代表的な手法と進化

官能評価(主観評価)と客観評価の融合

感性データ取得の入口は「官能評価」が基本です。
実際のユーザーや現場担当者による目視、触感、聴感などの主観的な評価をアンケートやスコアリングで数値化します。
これを基準にしつつ、最新技術としては次のような客観評価手法との組み合わせが進んでいます。

  • 生体センサー/脳波計測(EEG)
  • 表情分析カメラ
  • 動線や姿勢計測(モーションキャプチャ)
  • 音響解析、画像解析

AIやIoTを活用したデータ化・モデル化

IoTセンサーの活用で、今まで難しかった感性データの「リアルタイム測定」や「蓄積」が可能になりました。
ビッグデータとAIによって、官能評価と物理データの相関を機械学習させる手法も登場しています。
これによって、感性とスペックの「見える化」が一気に進みつつあります。

バイヤー・サプライヤー目線で考える感性データの価値

バイヤーは「プラスαの価値」を探している

皆さんが調達購買担当やバイヤーになった場合、ただスペックやコストだけで競争していては、どこかで価格勝負に巻き込まれてしまいます。
今、グローバル調達の現場では、「どうやって付加価値を可視化するのか?」が重要です。

たとえば、あるサプライヤーが「この部品は従来のものより手触り感が良い」「お客様アンケートで使いやすさ評価が20%向上している」と“感性評価データ”付きで提案したとします。
バイヤーは、「この部品を採用したら、最終商品の顧客満足度が高まる=ブランド価値向上に寄与する」と判断しやすくなります。
つまり、感性情報モデル化された商品は、「プラスαの根拠を持った価値訴求」が可能なのです。

サプライヤーは「社内説得力」と「取引先説得力」を持てる

サプライヤーにとっては、見積作成や部品提案時に「感性に基づく高付加価値」を、明確な数値データや評価結果として示せることが競争力となります。
また、「新しい工程設計や追加工の理由」を社内で稟議・説得する際にも、感性データは有効です。
現場→設計→営業→取引先と、一気通貫で「データに基づく価値訴求」が可能になります。

感性情報計測モデル化の実践ステップ

1.感性ターゲットの明確化

製品の「どこ」の「どんな感性」を高めたいのか、顧客や現場関係者と丁寧にすり合わせを行います。
例えば、「疲労しにくいハンドル感覚」「高級感のあるスイッチ音」「安心感のある扉開閉速度」など、具体的なシーンやターゲット層を明確にしましょう。

2.官能評価による基準作り

現場スタッフや顧客による官能評価を多角的に実施。
複数人による相対評価で、評価項目(使いやすさ・触り心地・音の良さ等)に関するスコアリングやフリーコメント収集が重要です。
官能評価のなかで、「どの物理現象が感性に大きく影響を及ぼしているか?」を探索します。

3.センサー等による物理量計測と分析

ターゲットとなる感性に関わりそうな物理データを収集します。
音響、振動、温度、摩擦、光、加速度、といった多種多様なデータを、センサーやIoTデバイスを用いて詳細に計測します。
得られたデータと官能評価データの相関分析をAIや統計手法を用いて進めます。

4.モデル化・見える化

取得したデータから「感性モデル(数式/アルゴリズム)」を作成。
例:「音の立ち上がり(ms)」+「最大音圧(dB)」+「残響時間(ms)」=「高級な閉まり感スコア」
これを分かりやすい指標(チャートやレーダーグラフ等)にして、現場・設計・バイヤーに共有します。

5.現場応用・顧客提案へ展開

感性モデルをもとに現場で実際に応用を進めます。
たとえば、組立工程で「最適なトルク」「塗装厚み」「表面粗さ」をリアルタイムで監視・制御し、感性品質を安定化させます。
また、商品企画や提案時に「エビデンスとしての感性指標」を盛り込むことで、顧客との新たな信頼関係やリピート受注につなげやすくなります。

現場導入のリアルな課題と対策

昭和型現場の「心理的障壁」

「また新しいこと始めるのか……」「よく分からんデータは現場には関係ない」という声が根強い現場も少なくありません。
導入時は「現場の意見や勘をリスペクトした上で、説明・巻き込み」を徹底しましょう。
感性モデル化は現場の“勘”を「技術継承」し、「次世代の標準」に昇華させることを粘り強く伝えることが大切です。

データと現場感覚の乖離を防ぐ

感性データが現実離れしないように、定期的な現場レビュー(実機検証、ユーザーテスト、作業者ヒアリング)が必須になります。
また、“見える化ダッシュボード”の現場展開や、KPI連動による現場フィードバックも効果的です。

サプライヤー・バイヤー間の「共創」

感性モデル化は、従来の「指示・従属型」取引を超え、「価値共創型パートナーシップ」へと進化させるチャンスです。
現場ノウハウとデータ蓄積を持つサプライヤーと、それをもとに製品企画・差別化提案を担うバイヤーが、持続的に学び合い、新しい価値を市場に生み出す。
この姿勢がアナログな製造業現場を変える大きな力となります。

まとめ:感性情報計測モデル化で、製造業の新たな可能性を開く

感性情報計測モデル化は、一時の流行や「カッコいい言葉」ではなく、現場の勘と経験を“技術として継承し再現する”本質的な取り組みです。
バイヤーは「付加価値の根拠ある提案」を、サプライヤーは「競争力の見える化」を、現場は「勘の標準化・継承」を実現できます。

製造業のDNAである「現場主義」を大切にしつつ、アナログとデジタルの“いいとこ取り”で価値創造力を磨く──本記事でご紹介した応用デモ講座の考え方を、ぜひ皆さんの現場・商品開発・業務改革に活かしていただければ幸いです。

感性を科学し、データで新しいものづくりを切り拓く。
製造業の未来に、私たちはもっとワクワクできるはずです。

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