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質感・触感・快不快による感性の定量化と評価およびデザイン・製品への応用とそのポイント

目次
はじめに:感性の定量化が求められる時代背景
近年、製造業において「感性の定量化」という言葉が注目されています。
この言葉が意味するのは、今まで人の感覚や経験に頼りがちだった「質感」や「触感」、さらに「快・不快」といった感情を、科学的・数値的に計測し、価値として製品デザインや品質管理に組み込むというアプローチです。
日本の製造現場では、長らく「匠の勘」や「熟練者の間隔」が重要視されてきました。
しかしグローバル競争が進む中、誰もが再現でき、客観的に評価できるシステムが強く求められるようになっています。
「感性工学」「ユーザーエクスペリエンス」に代表される分野への注目は、まさにこの流れの象徴です。
本記事では、実際の現場でどのように感性の定量化アプローチを活かしているのか、バイヤー・サプライヤー・デザイナー・品質管理者など多様な角度から解説するとともに、そこから得た現場目線の知見や導入ポイントを紐解いていきます。
感性の定量化とは:言葉にならない“心地よさ”を数値化する
なぜ感性を定量化する必要があるのか
製品があふれる現代社会では、どれだけ高性能であっても「使い心地が悪い」「触ったときに安っぽい」「不快な感触がする」といった印象で購買から外れるケースが多発しています。
一方、今までのものづくりは「硬度計・色彩計・表面粗度計」といった物理的なスペックに偏りがちな評価・設計となっていました。
「なぜその素材だと手がすべすべ心地よく感じるのか」「なぜその重さや冷たさが高級感に結びつくのか」。
これを“勘”で終わらせてしまわず、データに基づき誰でも再現できる技術・知識として蓄積する必要性が年々高まっています。
感性定量化の具体的手法と事例
感性の定量化手法では、大きく以下の4つのアプローチがあります。
・官能評価(パネルによるアンケート/サンプル比較)
・生体計測(心拍・皮膚反応・脳波等による計測)
・物理量の変換による相関分析(触感試験と摩擦係数の関係検証)
・AI・機械学習を活用した好み・感性の傾向分析
実際の現場事例として、家電大手の冷蔵庫ハンドル表面設計があります。
開閉時の「しっとりした手触り」「適度な重量感」「冷たすぎない温度感」など、複数の要素が合わさった感性品質の要求を、官能評価+表面エンボス加工のパラメータデータとの相関分析で数値化。
“狙い通り”の新規質感を再現し、市場で高い評価を得たという例もあります。
「質感」「触感」「快不快」——主観と客観のあいだ
質感—見た目と触れたときのギャップ
「質感」とは素材特有の“らしさ”、見た目・手触り・音・重みなど五感全体に作用するイメージです。
たとえば、自動車のインパネは「プラスチック」の安っぽさをどう高級感へ変えるかが長年の課題です。
単なる鏡面仕上げやヘアライン加工だけでは足りず、照明下での微細な陰影や、手で擦ったときの摩擦係数を解析し「高級車らしい深みある質感」を数値化する取り組みが広がっています。
触感—素材の「本物らしさ」を科学する
手に持った瞬間の冷温感、表面のざらつき、細やかな振動や跳ね返り感。これらが「触感」です。
特に昭和の工場では「なんとなくこの仕上げの方がいい」といった曖昧な判断が多かった分野。
現在は、pHセンサーや摩擦計測装置、タクタイルセンサーなどを使い、「本革らしいしっとり感」「金属らしい剛性感」などを忠実に評価・再現する技術が定着し始めています。
快不快—エモーショナルな価値訴求
人は理屈以上に「これ、気持ちいい」「イヤだな」といった直感的な選択をします。
たとえば、エレベーターボタンの押し心地や、トイレットペーパーの紙質、化粧品容器の開け閉めの気密感など。
こうした“快”を与える微細な違いこそ、高付加価値化のヒントとなります。
現場ではアンケート評価だけでなく、皮膚電位・脳波・音声トーン分析など、生体反応を組み合わせることで“本当に快を感じている場面”を抽出。
快・不快の境界値を数値として説得力あるエビデンスに置き換えています。
感性品質をデザイン・製品に活かすための具体的プロセス
ユーザー像と利用シーンの徹底理解
感性価値を最大化するには、「誰がどんな場面で、何を求めているのか」というペルソナ設定・シナリオ設計が肝です。
たとえば高齢者向け製品であれば、「硬すぎると疲れるが、柔らかすぎると安全面が不安」といった微妙なさじ加減が必要。
現場ではターゲットユーザー自身を交えたコンセプトワークショップやプロトタイプ評価が必須です。
部材選定から加工まで:質感・触感を左右する要素
部材選定時には「物性」だけではなく、「指ざわり」「温度感」をパラメトリックに評価。
また、塗装・コーティング・エンボス・射出成型の条件など、最終製品の触感に大きく影響する仕上げ工程も事前検証が必要です。
代表的な失敗例は、設計段階では“高級感”を想定して素材選定したものの、製造工程でコストダウンや工期短縮のため処理条件を変えた結果、「ユーザーの思い描く触感」と大きなギャップが生まれるパターンです。
こうした現場の温度感も設計フェーズから常に擦り合わせる必要があります。
バイヤー・サプライヤーの視点:感性価値を成果へ結び付けるには
バイヤーとしては、価格・納期・物性だけでなく「感性品質=市場で選ばれる理由」という視点を加えてサプライヤー評価を行うのが新常識です。
この際、感性定量指標を“第三者データ”として導入し、見積り・サンプル評価時に活かすことが重要です。
サプライヤー側も「この質感・触感は他社には再現できない」という技術ポジショニングが差別化要因になります。
共同開発の初期段階から、ユーザー評価データや独自の測定ノウハウを積極的に開示・提案する姿勢が信頼度向上と長期的な取引拡大につながります。
質感・感性価値の評価・開発における実践現場の課題と対策
昭和的アナログ業界が抱える壁
日本のモノづくり現場では「ベテラン職人の手触り」が絶対的信仰とされがちです。
しかしその判断基準がブラックボックス化してしまい、若手への技術継承や大量生産時の品質バラつきの温床となってきました。
また、官能評価(五感による評価)は測定環境・評価者のスキルに大きく左右されるため、「再現性が低い」「説明責任が果たしきれない」という課題も根強く残ります。
現場目線のポイント:評価の標準化とデジタル活用
・感性評価に特化したパネルの設置と、トレーニングプログラムによる官能評価の標準化
・新旧両方のデータ蓄積(ベテランのナレッジを定量データと併せて残す)
・製造工程のデジタル化、IoTによるリアルタイム品質管理の活用
・AI・ビッグデータ解析による感性パラメータと物理パラメータの相関抽出
これらの取り組みにより、「人の勘」と「科学的データ」をハイブリッド化し、現場の知見を全社・全工程に共有する仕組みを作ることがこれからの生き残りのカギになります。
まとめ:感性の定量化が生み出す製造業の新たな付加価値
質感・触感・快不快といった「感性価値」の定量化は、単なる測定や技術論にとどまりません。
昭和から続く職人技・現場勘を尊重しつつ、新たな科学的手法・データを駆使することで、より豊かなユーザー体験や競争力の高い製品開発が実現できます。
バイヤー・サプライヤー双方にとっても、「感性品質を語れる言葉とデータ」を共有することで、価格だけに縛られない新たな価値基準が生み出されます。
今こそ、日本のモノづくり現場が誇る“肌感覚”とデジタルイノベーションの融合による、唯一無二の「感性品質」づくりを始めてみませんか。
そしてそのプロセスこそ、製造業の未来を切り拓く第一歩になるはずです。
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