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デザインレビュー未然防止に活かすDRBFM実践手法

目次
はじめに:ものづくり現場で求められる「未然防止」の本質
製造業は「不良撲滅」「コスト削減」「納期遵守」が常につきまとう世界です。
特に顧客からのクレームや市場での不具合流出は、企業価値を大きく毀損します。
昨今、設計段階での未然防止(=事前のリスク排除)が重視されています。
しかし現場をよく知る方なら納得されるでしょうが、「絵に描いた餅」になってしまっているケースが多いのも実情です。
設計から生産現場まで、「昭和」で培った経験則や属人的な判断が今なお根強く――それが日本の製造業の強みでもあり弱みにもなっています。
そうした中、世界で評価される日本流品質管理の真髄の一つが「DRBFM(Design Review Based on Failure Mode)」です。
この記事では、現場主義での実践のコツ、DRBFMの本当の価値、日米欧の業界動向も絡めつつ、バイヤーや調達部門・サプライヤー企業の担当者、将来この領域に進みたい方に役立つ知見を解説します。
DRBFMとは何か:トヨタ流ものづくりから生まれた知恵
DRBFMは登場以来、特に自動車業界(トヨタをはじめとする日系OEM)を中心に広く浸透しています。
これは「Design Review Based on Failure Mode」の略。
日本語で言えば「失敗モード基準の設計レビュー」ですが、単なるチェックリストや会議手法ではありません。
設計変更や新規開発の際、「どんな不具合が潜んでいるか」を徹底的に追及し、設計意図や現場の実態を深く議論。
「大きな手戻り」「市場不具合」を未然に食い止める狙いがあります。
トヨタの現場では、「Change Point(変化点)」を徹底的にあぶり出し、「その変更によりどんな不具合の芽が生まれるのか」を、設計だけでなく生産、調達、品質管理、場合によっては仕入先まで巻き込んで洗い出します。
なぜ今、DRBFMが注目されるのか? ― 変化対応力の勝負
グローバル化と短納期化がもたらす「設計の罠」
喜ばしいことに日本の製造業もグローバル展開が当たり前の時代になりました。
ただし海外では、これまでの日本流の「阿吽の呼吸」「現場勘」がなかなか通用しません。
また、スピードやコスト競争の激化で「設計と生産」「調達と品質保証」「委託先とOEM企業」など組織や国境をまたいだ連携が不可欠です。
このような環境下で生じがちなのが、「見落としによる設計ミス」「擦り合わせ不足による品質課題」「対策遅れによる多大な損失」です。
特にバイヤーやサプライヤーの立場からは、「なぜチェックが甘かったのか」「どこに潜んでいた失敗の芽か」…という追求が必ず発生します。
昭和から抜け出せない“現場力神話”への挑戦
「現場の目利き力」に頼っていた日本のモノづくりですが、ベテランの退職や人材流動、グローバル拠点展開で“属人主義”が通用しなくなっています。
設計者だけでなく、調達部門や品質担当も早い段階から設計と膝を突き合わせてリスク抽出を行い、「設計意図のすり合わせ」と「変更点の見える化」が一層重要になっています。
ここでこそ、DRBFMの「変化点を起点とした未然防止」の思想が役立つのです。
DRBFMの流れと実践ステップ
DRBFMは以下の流れで進めることが一般的です。
1. 変更点の明確化
ベテランの感覚頼りだった“設計変更”を明文化します。
図面や仕様書の改訂履歴、影響範囲を書き出し、それぞれに「どの系統か」「過去に発生した不具合は何か」を紐づけていきます。
ここでは「よくあるから大丈夫」ではなく、「なぜ今回は違うのか」に焦点を当てます。
2. 変化点ごとの失敗モード洗い出し
変更点ごとに、「どんな不具合(=Failure Mode)が起きうるか」を徹底して出します。
部品同士の相性、溶接強度、材料変更、組立て誤差…想定と異なる使われ方や、現地工場での組立て条件違いもうまく反映させましょう。
ここで調達部門や現場担当、さらに場合によっては主要サプライヤーまで巻き込むのがポイントです。
異なる立場からリスクポイントを深堀りすることで、設計者だけの視野の狭まりを防ぐことができます。
3. リスク評価と設計対応策の合意
洗い出された失敗モードは「発生頻度(どのくらい起きやすいか)」「検出度(ミスに気づけるか)」、そして「重要度(重大事故に繋がるか)」で評価されます。
FMEAやFTA(フォールトツリー解析)などのQC手法と組み合わせると有効です。
リスクが高い項目に対しては、仕様変更や工程対策、検査強化などの具体的なアクションプランを合意します。
ここで絶対に「人が注意する」「ベテランが教える」だけで終わらせないことが肝要です。
現場目線でのDRBFM成功のコツ
導入はしたものの形だけのレビューになり、「設計室の会議でだらだらと終わる」「調達や生産現場の声が反映されない」といった課題は非常に多いです。
ここでは現場管理職や工場長の目線から、成否を分ける実践ポイントを解説します。
1. バイヤーも「設計内容」を理解して臨む
調達担当者こそ、単なる値下げ交渉だけでなく「この設計のどこに潜むリスクがあるか」「この材料選択で本当に現場は困らないか」という現場の目線を持たなければなりません。
難しい仕様や部品点数の増加、工程負荷増加がないかなど、サプライヤー側の事実もプロアクティブに議論しましょう。
2. サプライヤーにも「本気の議論」を求める
サプライヤーの立場でも、「無理な納期や小ロットの部品供給指示が現場リスクを増大させていないか」など、設計変更の背景と先方の現場事情のすり合わせが欠かせません。
また、「工程FMEA」などを活用して、自社工程のどこで品質リスクが高いかも積極的に提案しましょう。
3. 繰り返しレビュー文化を作る ―「終わらせない」DRBFM
DRBFMはスタート時の導入会議だけでなく、工程ごとの見直し・市場フィードバック・関連するバリエーション設計にも繰り返し活用しましょう。
一度のレビューで終わらせず、変化が出現するたびに現場で立ち止まることが未然防止の本質です。
海外の導入動向と、日本的「現場密着DRBFM」の強み
DRBFMは欧米メガサプライヤーや北米ビッグ3でも導入事例が増えています。
しかし、現場密着でものごとを深く「考え抜く」文化、設計思想の本質に迫る「なぜなぜ分析力」は国内現場の特徴であり大きな強みです。
一方で多国籍拠点では「属人的な現場勘」だけでなく、誰でも分かるロジック化・見える化が必要です。
日本式の「現場巻き込み」と、欧米の「仕組み・グローバル標準化」を良い意味で融合させていくことが今後の成長ドライバーです。
製造業の未来と、これからのバイヤー・サプライヤー像
これからの製造業界では、「購買・調達」「設計」「生産」「品質」すべてが未然防止志向で一体となる必要があります。
単に「コスト・納期」だけを見るのではなく、サプライチェーン全体での設計意図や現場事情・リスク共有の重要性が増しています。
その中でDRBFMは、単なる設計レビュー手法を超え、「全員参加型ものづくり」の文化形成装置です。
これから目指すべきバイヤー・サプライヤーの姿
・コストだけでなく、設計意図・工場現場のリスクまで見通す深さを持つこと
・工程や製品ライフサイクルに寄り添い、納入先・下流現場の“痛み”や“希望”に積極的に耳を傾けること
・不具合発生時の「なぜ(なぜ起きた?)」「どう(どう未然防止する?)」を設計者や現場と本気で議論できる主体性を持つこと
これらは、昭和時代に培われた現場密着主義に、デジタル時代流のロジックやグローバルな視座を掛け合わせるアプローチだと思います。
まとめ:DRBFMを自社競争力に―現場起点の新たな未然防止文化へ
DRBFMは、単なる手法やチェックリストではありません。
「変化点を起点に、設計×調達×現場×サプライヤーの実務者が本音・本質で議論しあう文化そのもの」です。
ものづくりのプロ、バイヤー、サプライヤー――立場や分野を超えて、一貫した「現場視点」と「未然防止」の精神を育てましょう。
そうすることで、現場の底力と設計思想が融合した“令和日本流ものづくり”を築くことができるはずです。
今日から現場で“本気”のDRBFM、始めてみませんか?
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