投稿日:2025年7月10日

金属積層造形技術EBM SLM適用事例と設計ポイント

はじめに

金属積層造形技術、いわゆる3Dプリンターによる金属パーツ製造は、ものづくりの業界に壮大な革新をもたらしています。
特に、EBM(Electron Beam Melting:電子ビーム溶融)とSLM(Selective Laser Melting:選択的レーザー溶融)は、従来の切削や鋳造と全く異なるアプローチを持ち、設計、調達、生産管理、品質管理の現場を根底から揺さぶる技術です。
本記事では、プロのコピーライターかつ現場経験者の視点から「金属積層造形技術EBM SLM適用事例と設計ポイント」を深掘りし、現代の製造業の現場に即した実践的内容や、バイヤー・サプライヤー双方の視点で新たな地平線を開くノウハウを詳しくご紹介します。

EBMとSLMの基礎知識

EBM(電子ビーム溶融)とは

EBMは、真空状態の中で電子ビームを用いて金属粉末を高温で溶融し、一層ずつ積み重ねて造形する技術です。
チタン合金や高融点材に強く、均一な金属組織が得られることが特長です。

SLM(選択的レーザー溶融)とは

SLMは、レーザー光をスキャンさせることで金属粉末を選択的に溶融、凝固させて立体形状を作る方法です。
細かいディテールと高い寸法精度が魅力で、複雑形状や微細構造部の造形において優れた性能を誇ります。

EBMとSLMの違い

両者はエネルギー源と造形環境が大きく異なります。
EBMは真空・高温・電子ビーム、SLMは大気中・レーザー光を用います。
結果として、材料選択肢、表面粗さ、内部組織、コストや造形速度が異なり、用途やユーザーの目的に応じた使い分けが重要です。

金属積層造形の現場適用事例

航空宇宙産業―軽量化と機能統合の実現

EBM/SLMは、航空機用部品への適用で大きな成果を出しています。
例えば航空機エンジンの燃焼ノズルは、従来は組立品だったものが、3Dプリンターによる一体造形で約10分の1の部品点数、さらには従来困難だった冷却チャネルの内部埋め込みが可能となり、大幅な軽量化・品質向上へとつながっています。

医療分野―患者ごとにカスタムなインプラント製造

EBMやSLMを活用したチタン製の人工関節や人工骨は、CTやMRIデータをもとに一品一様のカスタム設計が可能です。
患者一人ひとりの骨格にピッタリ合ったインプラントは侵襲を最小化し、治癒期間も短縮されるケースが増えています。

自動車分野―試作から量産、ノウハウの蓄積

自動車業界ではEkzoゾーントライアル部品や少量多品種部品の製作に、SLMを中心とした積層技術が普及しつつあります。
ラジエーター用流路部品や吸気マニホールドなど、従来の鋳造で実現困難だった複雑な内部形状を短期間かつ高精度で具現化できるようになっています。

設計ポイントと現場での注意点

DFAM(Design for Additive Manufacturing)の基本

金属積層造形には、切削・鋳造と全く異なる設計の“常識”が求められます。
これを総称してDFAM(積層造形向け設計)と呼びます。
主なポイントは以下の通りです。

オーバーハングとサポート設計

角度のある突起物(オーバーハング)は、造形中にたわみや変形を誘発するため、サポート材の設計が不可欠です。
サポート材の配置や除去性、最終の仕上げ加工作業(ポストプロセス)を考慮することが肝心です。

肉厚、内部構造、ラティス設計

肉厚を不用意に厚くすると造形時間・コストが増加する上、焼結不良や残留応力の誘発リスクも高まります。
一方、中空の内部ラティス(格子)構造やトポロジー最適化を取り入れることで、強度維持しつつ軽量化・材料削減が狙えます。

熱ひずみと造形方向の最適化

EBMもSLMも突発的な熱収縮によるひずみ(ワープ、反り)が発生しやすいため、造形方向や支持方法、冷却プロセスの設計がカギとなります。
「どう積み上げるか」を事前にメカニックと設計者・生産技術者、工場現場が一体となって検討する必要があります。

表面粗さと仕上げ工程

積層特有の層状構造による表面粗さは避けられません。
用途に応じて“必要なところだけ”後加工を施すコンセプトが効率的です。
最小公差部や摺動部は機械加工、非機能面は未加工にする現場指向のノウハウが鍵を握ります。

調達・バイヤー目線で考える積層造形の価値と注意点

コスト構造の変化を理解する

一般的な金属部品調達では“型費+加工費+材料費”が主要項目でしたが、積層造形では“材料粉末費+機械稼働費+ポストプロセス費”が主となります。
特にパーツごとのロット割増や試作調整費、後加工手配の難しさが見逃せません。
見積り時には「なぜこのコストが必要か?」現場の声を吸い上げながらバイヤーも積極的に学ぶことが求められます。

サプライヤー視点での受注活動

ユーザーの積層造形に対する知見不足を補うため、サプライヤー自らが“設計提案型営業”へ変貌する必要があります。
材料選定、サポートや後加工の設計、品質検査手順のご提案などが取引継続・付加価値の鍵となります。

品質と検査の新たな観点

内部に空洞や複雑構造を持つ積層品は、従来のノギスやゲージで簡単に測れません。
X線CTスキャンや高精度3Dスキャナーを用いた非破壊検査、引張試験・衝撃試験のサンプリング方法も新たな知恵が必要です。
生産管理・品質管理担当者も「何を、どうやって検査できるか?」社内外で情報共有・標準化を進めることが不可欠です。

昭和的アナログ文化と積層造形革新の共存

歴史ある町工場のベテラン技術者ほど新技術に警戒を持ちがちです。
しかし、生き残りの鍵は「積層造形×従来加工」のハイブリッド化にあります。
EBM/SLMでプロトタイプ、複雑部だけ3Dプリント、他は通常加工――そんな設計・生産の再設計ができる企業は、今後も変化に強く発展していくでしょう。

まとめ~新しい製造業の地平を開くために

金属積層造形技術EBM、SLMは“ただの新技術”ではありません。
設計、調達、生産管理、品質保証、全ての現場が有機的に連携し、新たな常識を創り上げていくための武器です。
昭和的アナログマインドも、現場を見る目や加工ノウハウとして積層造形時代にも生きます。
ぜひ皆さんも、自社・自分の現場でEBM/SLMの適用事例やDFAMノウハウを試し、製造業の未来をともに切り拓いていきましょう。

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