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投稿日:2025年6月4日

金属3Dプリンターの基礎とその特徴を活かす新しい部品設計技術

はじめに:金属3Dプリンターがもたらす製造業の新時代

これまでの製造業は、鍛造や鋳造、切削加工といった伝統的な手法が中心でした。
しかし、デジタル技術の進展とともに登場した金属3Dプリンターは、部品設計・生産のあり方そのものを根本から変えるインパクトを持っています。

本記事では、金属3Dプリンターの基礎知識を整理した上で、従来工法と比較した特徴やメリット、さらには、変化を受け入れにくい昭和型のアナログ業界にも浸透しつつある最新動向を、現場目線で実践的に解説します。
また、新たなサプライチェーンの構築やバイヤーの視点、生産管理の現場での課題など、「買い手」「売り手」両方から考えるべきポイントにも焦点を当てます。

金属3Dプリンターとは何か?その仕組みと種類

金属3Dプリンターとは、金属粉末を原料とし、デジタルデータに基づいて三次元形状のモデルを積層方式で精密に造形するデジタル製造装置です。
主な仕組みとしては、CADなどで描かれた3D設計データをもとに、層を一つ一つ積み重ねて部品を作り上げます。
商用でよく使われる金属3Dプリンターの方式は、大きく以下の3つに分類されます。

粉末床溶融結合法(PBF)

レーザーや電子ビームで金属粉末を選択的に溶かし、層ごとに凝固させる方式です。
代表的な方式にSLM(選択的レーザー溶融)やEBM(電子ビーム溶融)があります。
高精度かつ高密度な造形が可能で、航空宇宙や自動車などの高付加価値部品で広く実用化が進んでいます。

指向性エネルギー堆積法(DED)

金属粉末やワイヤーをノズルから供給し、レーザーやアークで同時に溶融しながら堆積させる手法です。
PBFと比べると造形速度が速く、修理や肉盛り用途にも活用されています。

バインダージェッティング法

造形する領域にバインダー(接着剤)を吹付し、粉末同士を仮接着して成形し、後工程で焼結と脱脂を行います。
複雑な形状の大量生産にも向き、部品の軽量化設計に有効です。

金属3Dプリンターの特徴と従来工法との違い

金属3Dプリンターの最大の特徴は「形状の自由度」と「生産リードタイムの短縮」と言えるでしょう。
従来の工法と何が根本的に違うのか、現場目線で比較してみます。

形状の自由度と設計思想の変革

切削加工や鋳造では、工具や金型の制約で、アンダーカットや複雑な空間形状の実現は困難でした。
一方、3Dプリンターは「積層造形」ゆえ、空洞、ラティス構造、複雑な中空配管路、軽量トラス構造など、従来不可能だった設計が現実になります。

これにより、設計思想も「加工しやすい形」から「機能を最大化する形」へと大きくシフトしています。

企画から生産までのリードタイム短縮

金型製作や治工具合わせといったロスがなく、設計変更にも即時対応できる点は、試作や小ロット生産、受注生産型ビジネスには大きな武器となります。
また、在庫リスクの圧縮やジャストインタイム生産の推進にも寄与します。

一品一様からユニット化・モジュール化への推進力

高度な複合部品の一体造形が得意なため、従来は複数の部品を溶接・ねじで組み上げていたユニットを一体化でき、アッセンブリ工数の低減や品質管理の容易化にもつながります。

金属3Dプリンタ時代に求められる新しい部品設計技術

トポロジー最適化による超軽量・高強度設計

3Dプリンタ製造に最適な設計DNAとして高まってきたのが、トポロジー最適化です。
これは、設計空間や荷重条件を入力すると、材料が必要な箇所にだけ最小限残し、余分な部分を大胆にカットした形状を自動で求める設計手法です。
特に航空機・自動車向けの軽量化部品設計で、大幅な性能向上やコストダウンが期待されています。

ラティス(格子)構造設計による機能付与

蜂の巣状やスポンジ状のラティス構造を部分的に組み込み、剛性向上や振動吸収、部品全体の熱伝導制御など、部品の機能を従来以上に高める設計が可能です。
最適なセルサイズや形状、設置位置をシミュレーションで解析することで、まさに“機能で形をつくる”ことが実現します。

形状一体化設計のプロダクトイノベーション

従来、ねじ締結や溶接、鍛造、切削加工で分割構造だった部品を、機能的に必要な領域ごとに一体化する発想は、コストの抜本的な削減、信頼性向上、不具合箇所の撲滅といった企業価値を高める設計革新です。

昭和的アナログ製造現場での3Dプリンター導入の現実

金属3Dプリンターは画期的な技術である反面、日本の多くの製造現場には「まだまだ実用的ではない」「材料費や装置費が高い」「品質再現性に不安がある」といった声も根強く残っています。

品質管理の課題と取り組み

従来にない積層痕や割れ、未溶融、内部気泡といった独自の欠陥が指摘されています。
これに対し、熱履歴や粉末品質管理、パラメータ最適化、造形後の熱処理、非破壊検査技術など、現場力を結集した新しい品質マネジメント体系の構築が待ったなしです。

コスト意識とサプライチェーン変革へのジレンマ

材料粉末の高騰や装置の償却コスト、小ロット・多品種生産の採算分岐点など、アナログ的な「勘と経験と度胸」主義のみでは対応できない経営判断が必要です。
一方で、「欲しい時に必要なだけを現場で作る」というサプライチェーンの大転換期に立ち向かうチャンスでもあります。

職人技からデジタル人材へのリスキリング

建設的なデジタル教育、設計と製造エンジニアの一体的なスキル拡張が不可欠です。
現場のノウハウと3Dプリンタ技術の融合による“現場デジタル変革”が真に問われています。

バイヤー視点で考える金属3Dプリンター活用のポイント

部品調達戦略の見直し

従来の大量発注によるコストダウンから、一品一様のカスタム需要まで、最適な調達モデルを柔軟に設計し直す必要があります。
設計部門・購買部門が連携し、「どの部品なら3Dプリンタ化が効果を発揮するか」を見極める目利き力が問われます。

サプライヤー選定基準の変化

従来の金型技術、切削加工能力に加え、「3D設計・データ連携」「積層造形技術」「品質保証・検査体制」など、新しい競争力を持ったサプライヤーとの協業が不可欠です。

調達リスクと部品変更管理への取り組み

技術仕様書や検査基準、トレーサビリティ、部品変更管理といった実務面も従来以上に高度化しています。
電子データと実物との照合性、物流・保管管理の最適化にも注視が必要です。

サプライヤーからバイヤーへのアプローチ戦略

従来の「価格」「納期」「実績」に加え、「設計から一緒に組み立てて最適解を提案できる力(DfAM:Additive Manufacturingに特化した設計力)」が新たな競争軸になります。
積極的に設計段階から技術提案し、デジタル設計データや最適ラティスサンプルの早期提出、造形シミュレーションによる信頼性保証体制の構築など、“共創パートナー”としての立ち位置の確立が重要です。

まとめ:金属3Dプリンターで切り拓く製造業の未来

金属3Dプリンターは、単なる「加工ツール」ではありません。
これまでの常識を覆す新しい部品設計・製造プロセスそのものです。
従来の枠組みにとらわれず、現場のノウハウとデジタル技術を融合し、コスト、品質、納期、そして“ものづくり”のあり方そのものを進化させる時です。

サプライヤーは技術Re:シンキングを、バイヤーは調達Re:デザインを。
現場を知るすべての人が、金属3Dプリンター時代のパラダイムシフトを主体的に捉え、常に新しい挑戦者であり続けることが、これからの製造業の発展につながります。

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