投稿日:2025年8月13日

常駐と遠隔のハイブリッド立会いで旅費を抑え品質確度を維持する運用

はじめに:昭和型の「現地立会い」からの転換期

製造業における「立会い検査」。それは日本のお家芸とも呼ぶべき独自文化であり、一方で令和になった今なお見直しが進まない、いわば“昭和の呪縛”の一つです。

現地に足を運ぶことでサプライヤーと顔を合わせ、現物に触れて安心を得る。これは日本的な信頼構築を象徴する行為ですが、近年、働き方改革やコロナ禍、コスト削減の波を受けて、再考の機運が高まっています。

「立会いは必要か?」
「オンラインで十分な品質確保は可能か?」

本記事では、現地常駐と遠隔のハイブリッド運用によって、旅費を抑えつつ品質確度を維持するための具体的な方法論と、実践的なノウハウを現場目線で解説します。

立会いの目的と現場での課題

そもそも立会いとは何か

立会いとは、発注元であるバイヤーや品質管理者がサプライヤーの工場を訪れ、製品の生産過程や最終検査を現場で直接確認することです。

単なる“現物確認”以上の役割があり、寸法・外観検査はもちろん、作業手順の妥当性チェック、治具や工程間のリレーション、品質文書との整合など、トータルな保証活動が求められています。

現地立会いの重さと見過ごされがちなコスト

立会いは、発注側・受注側双方で日程調整や現場準備が必要となるほか、旅費・移動時間という「見えない固定費」が重くのしかかります。

とくに調達購買部門や品質担当が複数案件を抱える大企業の場合、立会いの多発で「本来の業務時間が奪われる」「若手が出張漬けになる」「一部のベテラン頼み」といった問題も顕在化しています。

ハイブリッド立会いの全体像と導入イメージ

ハイブリッド立会いの考え方

ハイブリッド立会いとは、「重要工程や初回検査は現地で」「標準工程やリピート品は遠隔で」と状況に応じて立会い方法を使い分ける運用です。

これにより、旅費の発生を最小限としつつ、オンライン立会いでも十分な品質確認とトレーサビリティを担保できます。

現地常駐100% → ハイブリッド化 → リモート主体化

この段階的な推進が、製造業現場でも抵抗なく浸透していく鍵です。

具体的な運用例

例えば新規サプライヤーの見極めや量産初回は、必ず現地に赴き工程&人の動きも細かく確認します。

慣れて信頼関係が築けた後は、Web会議と動画配信を活用し、日常的な製品検査をオンライン化。
現場で立会員にスマホやウェアラブルカメラを装着してもらい、バイヤーが遠隔で指示・確認する仕組みなども実現可能です。

案件によって柔軟に“現地”と“遠隔”を使い分ける、これこそが今求められる「生産現場のコスト改革」です。

遠隔立会いのメリット・デメリット

メリット

– コスト削減:移動費・時間・人的コストの大幅削減
– タイムリー対応:出張調整不要で即時の検査・承認が可能
– 複数拠点の同時対応:一人の担当者が複数工場を画面越しにシームレス対応
– 若手活躍の場拡大:年次・ロール関係なくリモート対応がしやすい

デメリット

– 現物確認のリアリティ減:細部の質感や音・匂い、雰囲気までは伝わりきらない
– 通信トラブル:インフラ整備が不十分な場合は映像が途切れるなど支障あり
– 受注側の心理的負荷:現場作業者がカメラ慣れしていない、演出感の懸念

しかし、これらの“遠隔の壁”はテクノロジーの進化で乗り越えつつあります。Wi-Fiや5Gなどの充実に加え、カメラ性能やマイク感度の向上も目覚ましく、現場の「空気感」を伝える工夫も可能になりました。

品質確度を落とさないためのポイント

①事前準備を徹底する

遠隔立会いでは、検査対象や確認内容が明確でないまま始まると“行き違い”や“見落とし”が発生しやすいです。

立会いチェックリスト・現品票の共有、ライブ配信用カメラや資料の事前設定、当日の担当者(現場・遠隔双方)のアサインまで、細やかな準備が肝心です。

②立会い内容の記録とエビデンス化

現場映像だけでなく、検査結果やコメントも都度録画・チャットで残し、全行程をデジタルデータとして保管します。

立会い承認の根拠が明確に残ることで、トレーサビリティの向上や後日のクレーム対策、監査対応にも有用です。

③双方に立ち会うべき「意味」を浸透させる

形式的にただやればいい時代は終わりました。バイヤー側は工程監査の視点、サプライヤー側は自社工程への気付きと改善の視点を持ち、オンライン上でも有意義なやり取りができる土壌作りが必要です。

時には雑談や質問を織り交ぜながら、単なる「検査」ではなく“学び合う場”として関係性を構築しましょう。

サプライヤー視点:バイヤーは何を見ているか

サプライヤー側にとっては「オンライン立会い=手間増加、監視強化」というネガティブイメージがあるかもしれません。

しかしバイヤーが本当に知りたいのは、“スマートにごまかされていないか”だけではありません。
・工程の安定性、品質に対する現場の意識
・異常時のフィードバック、レスポンス体制
・現場即応性、改善の工夫

つまり、「その会社に任せて大丈夫か」を総合的に見ています。

良いサプライヤーは、オンライン化をチャンスと捉え、自社の魅力を積極的に発信&提案できる人材育成や現場環境の可視化に注力しています。

“昭和の現地立会い文化”の本質的役割を再定義

日本のモノづくりは、現場に足を運び人と人が向き合ってきたからこそ築かれた信頼関係と品質があります。

しかし今や、付加価値を見極めながら「立会い自体の意味、スタイル」の柔軟な見直しが迫られています。
– 価値の高い場面では今まで通りの現場主義
– シンプル確認や定型案件は遠隔効率化

古き良き「現場感」を大切にしながらも、旅費や拘束時間など厳しい外部環境に適応し、製造現場を未来型へ進化させるべきです。

まとめ:現場起点の“本質価値ある立会い”へ

ハイブリッド立会いは、単なる経費削減策以上の意味を持ちます。
現場と遠隔、それぞれの良さを引き出し、「品質リスク最小、コスト最適化」を目指す挑戦です。

– 何のために“立会い”するのか?
– 現物をどう活かして“遠隔”で伝えるか?

この問いを常に自問自答し、バイヤー・サプライヤー双方が納得できる運用フローをつくりましょう。
過去の成功体験や慣例にとらわれず、技術や人材をうまく掛け合わせて、新時代にふさわしい“立会い文化”を共創すること。

これが現場で培った知恵を発展させ製造業界の未来につなげる第一歩です。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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