投稿日:2025年8月14日

社内サーバを使い続ける場合のバックアップ二重化最小構成

はじめに:社内サーバのバックアップ二重化の重要性

製造業の現場では、日々膨大なデータが生み出されています。
生産管理データ、品質検査記録、購買記録、機械の稼働ログといった、どれもが企業活動の根幹を支える大切な情報ばかりです。
一方で、「昭和から抜け出せない」と言われるほどアナログな慣習が根強い業界でもあり、各所で未だに社内サーバを中心としたITインフラが多く残っています。

クラウドや外部データセンターの導入も進んではいますが、工場内ネットワークの事情、セキュリティポリシー、そして「データは手元に置きたい」という現場の肌感覚から、社内サーバに固執せざるを得ないケースが多々あります。
そんな中、もしサーバがダウンしたら、あるいはデータが破損してしまったら――。
現場は数日間にわたる混乱や大規模な生産停止を招くことになりかねません。

そうした事態を未然に防ぐために、社内サーバのバックアップ二重化はもはや「やっていて当然」の対策になりました。
とはいえ、コスト・人的リソース・習熟度など、現場事情を無視した理想論だけでは回りません。
この記事では、千差万別の工場現場で、最小限の投資による「現実的なバックアップ二重化の最小構成」を、現場長経験者の立場から具体的・実践的に解説します。

なぜバックアップ二重化が必要なのか?

システムの単一障害点(SPOF)が現場にもたらすリスク

社内サーバ一台で全てのデータ管理やシステム運用を行っている場合、サーバ自体が“単一障害点”(SPOF:Single Point of Failure)となります。
万が一の障害や故障が発生した場合、その影響は全社的なシステム停止や重要データの消失など、経営にも直結しかねません。

製造業特有の現場トラブル事例

例えば、生産管理用の社内サーバが故障し、直近の稼働実績や在庫情報が消えたことで、顧客納入が数日遅延し、高額な違約金を請求されたという事例も稀ではありません。
また、最新の品質管理情報が失われ、リコールやトレーサビリティの証明が困難になったという声も現場から聞こえてきます。

バックアップ二重化で守る「攻め」の体制

バックアップというと、「守り」に目が行きがちですが、実は堅牢なデータ基盤があるからこそ、現場では新しい仕組みや自動化へも積極的にチャレンジできます。
データ喪失やダウンタイムの不安から解放されてこそ、現場改革の攻め手が増える――現代の製造現場ではバックアップの二重化が「攻めのIT化」の出発点になっています。

最小投資で現実的なバックアップ二重化構成のポイント

1. バックアップは「場所」で二重化せよ

社内サーバのバックアップを二重化する際の最重要ポイントは、「複数箇所でのデータ保持」です。
同一ラック内や同一部屋内に複数台のバックアップディスクを置くだけでは、火災・浸水・盗難等のリスクに丸ごとやられる可能性があります。

一例として、管理部門がある本館と工場棟が物理的に離れている場合、メインサーバは工場、バックアップサーバは本館に設置、といった分散が有効です。
ネットワーク配線が難しければ、週1回だけ物理HDDを持ち運ぶ「ローテーション保存」でも、格段にリスク低減が実現できます。

2. オンライン×オフライン二重化が“業界現実解”

常にネットワーク越しに自動同期する「オンラインバックアップ」は復旧の即時性に優れる反面、万一のウイルス感染や誤消去が両方に波及する危険もあります。
そのため、基本はオンラインリアルタイム同期+定期的な「オフライン保存(USB HDDやテープ磁気媒体も可)」の二重化が、アナログ色の強い現場でも実践的です。

オフライン媒体は物理的に切り離して保管することで、サイバー攻撃やランサムウェア被害から社内データを守る最後の「保険」になります。

3. シンプルで誰にも扱える運用にする

高価なNASや、複雑なRAID構成、難解なバックアップソフトは“使いこなせない現場”で形骸化しがちです。
むしろWinodws標準のRobocopyやrsyncなど、既存PCに標準同梱されているツールで構成し、日常的な運用を「現場担当者でも気軽にトリガーできる仕組み」に落とし込むほうが、100社中99社で平和に回ります。

自動スケジュール化+バックアップ実績メール通知――たったこれだけで、「やったつもり」から「確実な実績」へ変わります。

現場目線の“これが現実解”バックアップ二重化最小構成

最小(コスト・手間・機材)で実現するベストプラクティス

多くの中小製造現場で実践されている「最小構成」例をご紹介します。

1. メイン社内サーバ(通常運用用)
・RAID1(ミラーリング)構成サーバ
・数TB程度の容量
・UPS(無停電電源装置)必須
・セキュリティ対策済み(パスワード管理・限定ユーザー)

2. バックアップサーバ(物理的に離れた場所に設置)
・旧PC再活用、廉価NASも可(ストレージ容量はメインと同等orやや下でOK)
・毎日夜間にRobocopy/rsyncで自動差分バックアップ
・2週間分程度の世代管理(履歴保持)を実施

3. オフライン媒体バックアップ
・週1回、外付けUSB HDDまたはテープ装置に手動フルバックアップ
・要管理簿(どのデータがどの媒体にあるか記録)
・オフサイト(金庫や別フロア)保管でリスク分散

これだけ実施すれば、火災・水害・盗難・誤消去・ランサムウェア、ほとんどのリスクを網羅的にカバーする堅ろうな二重化体制になります。

“形骸化”を防ぐための現場運用ルールの工夫

・バックアップ完了時に自動で担当者宛に完了メールを送付
・週1回のメディア作成を事務当番や生産管理リーダーらが「当番制」で担当
・“バックアップ管理台帳”を紙でもデジタルでも運用し、半年に1度経営層(情報システム責任者)が監査
・復元訓練は年1回必ず実地で行い、本当に「元に戻る」ことを現場で体感

これらの小さな積み重ねをガイドライン化し、現場メンバー全員が「なぜやるのか」を理解することが要となります。

バイヤーやサプライヤーの立場が知るべき“現場目線”

バイヤー(購買担当)はどう考えるべきか?

購買・調達部門としては、工場のITインフラ投資に慎重になりがちですが、「最小限のコストで最大限のリスク回避」を訴求できれば上申は通りやすくなります。
また、サプライヤーとの商談時にも「災害や障害でデータが失われても契約トレーサビリティは担保できる」と自信を持って説明できます。
これは取引先からの信頼構築、訴訟回避にも直結します。

サプライヤー目線:バイヤーのバックアップ要求をどう捉える?

サプライヤーがバイヤーからやたら“データの二重化”や“トレーサビリティ対応”を求められる場合、それは社内サーバ起因の現場混乱で過去に苦労した「痛い思い出」が背景にあるケースがほとんどです。
「現場でちゃんとバックアップを取っているから、御社への納入データも(ご希望に応じて)世代管理し納入できる」と準備アピールできれば、確実に競合より一歩先んじるアドバンテージになります。
バックアップ管理の「見える化」が、価格競争以外の新たな価値提供を生み出すカギになります。

成果につなげる“三現主義”のススメ

あくまで「現場・現物・現実」を大切に。
工場の、日常的なITリテラシーや人員構成・担当者スキル・予算感――それら現場事情を徹底的に現物主義で確認し、「やれることから始めて徐々にステップアップ」という現実路線が成功への道です。

そして現場リーダー自身も定期的に「実際のバックアップデータから本当に復元できるか」を確認。
訓練や棚卸しの際に、「このサーバが明日壊れたらどう困る?」「誰がどうやって復旧する?」を繰り返し問うことが、全員の危機感や責任感を醸成します。

まとめ:時代が変わっても変わらない“備えの本質”

クラウド、IoT、AI――製造現場のデジタル化は加速していますが、「社内サーバ」という昭和的な現実は、もうしばらく日本のものづくり現場から消えそうにありません。
だからこそ、最小構成でもよいので、現場で本当に回るバックアップ二重化を根付かせる。
現場の“痛い”経験談から、最小の投資・手間で地道に取り組むことこそが、攻めのIT化・現場改革の第一歩です。

バイヤーにも、現場担当者にも、そして取引相手にも有益な「バックアップ体制の見える化」を推進し、日本のものづくり現場で、安心して次の変革にチャレンジできる土壌をともにつくっていきましょう。

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