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クーリエ表彰台の重量容積計算で航空運賃を最適化する梱包設計

目次
はじめに:グローバルサプライチェーンを支える梱包設計の真価
サプライチェーンの国際運用があたり前となった今、製造業の購買・物流部門にとって、輸送コスト最適化は常に大きなテーマです。
とりわけ航空輸送におけるクーリエ(国際宅配便)は、納期短縮・多頻度出荷のニーズから活用が増えています。
しかし、航空貨物独自の「重量容積計算」(チャージャブルウェイト)の概念を理解できていないと、気付いた時には運賃が跳ね上がり、利益が削られていたなどの事態も珍しくありません。
本記事では、航空運賃の最適化に欠かせない重量容積計算と、それを徹底活用した梱包設計のポイントについて、30年以上にわたり現場で培った実践ノウハウを交えつつ、解説します。
滞留在庫や余剰物流コスト、現場と設計のミスマッチ…。昭和のやり方から脱却し、世界に勝つものづくりの新「常識」へ、一歩踏み出してみませんか。
重量容積計算(チャージャブルウェイト)とは
単なる「重さ」ではない航空運賃のカラクリ
航空貨物の運賃は、「梱包全体の実重量」または「容積重量(ボリュームウエイト)」のうち、大きい方が採用される仕組みです。
容積重量とは、「かさばり貨物への課金」をバランスするため考案された概念です。
例えば、軽いが箱がやたらと大きい部品を運ぶと、実際の積載スペースを圧迫するため、航空会社はその分も料金としてカバーする必要があります。
この換算式が業界で統一されており、代表的には
【容積重量(kg)=梱包サイズ(cm):縦×横×高さ÷6000】
(※輸送会社によって分母は5000や4000になる場合もあるので要確認)
航空輸送で発生しやすい「空気運賃」とは
「空気運賃」という業界用語をご存知でしょうか。
これは、「中身がスカスカでも箱が大きいせいで、高額な容積運賃を払わされる」現象を指します。
特にアナログな現場では、標準箱サイズに合わせて漫然と梱包してしまい、本来なら2回に分けて送る方が安いはずなのに、1箱まとめて高くなるパターンも散見されます。
梱包材、緩衝材の選び方ひとつでも、費用は大きく変動します。
設計・現場・物流がバラバラの情報で設計開発した過去のツケが、物流現場と会計コストに重くのしかかることになりがちです。
梱包設計の最適化がもたらす経済的効果
コスト構造を分解せよ:運賃内訳の見える化
航空運賃には、多くの費用が「箱型」と「中身型」で二重に上乗せされています。
梱包設計を最適化すると、下記の3つの効果を得られます。
・容積重量を減らし、運賃そのものを下げる
・過剰包装を減らし、梱包資材コストの削減
・出荷頻度や積載効率を向上させることによる、現場の省力化・リードタイム短縮
現場経験からも、出荷ルールや設計思想を一度しっかり見直すだけで、1年間で数百万円規模のコストダウンに直結した事例は無数に存在します。
バイヤーとサプライヤー双方に求められる「物流共創」意識
サプライヤー側からすると、「なぜここまで梱包の指示が細かいのか」と疑問に感じることもあります。
しかし、顧客であるバイヤーが仕入物流〜最終納入までの全体最適を常に意識し、「なぜそのサイズか?」「そのまま積載して無駄はないか?」と現場の声を吸い取ることで、両者でウィンウィンのコスト削減に繋げることができます。
これはサプライヤーにとっては強力な差別化要素となり、取引拡大・長期的な信頼構築にも不可欠な姿勢です。
梱包設計最適化手順:現場が動ける8ステップ
1. 「現物」計測現場と協働。サイズ・重さを可視化
設計図面とは異なり、現物部品は微妙な寸法公差やパッケージ形状のズレがよくあります。
まずは現場で実際に梱包したい品物の「現物採寸」を行います。製品本体だけでなく固定材料・内装・ラベル含めた最終梱包状態で寸法・重量を記録することが重要です。
2. 運送会社のコンバージョンレート確認
利用予定の航空会社・クーリエのWebサービスや営業担当にコンバージョンレート(分母数値)がいくつかを確認し、仕様書や社内要領に反映させましょう。
たとえばDHL=5000、FedEx=5000、UPS=6000など微妙に違います。
同じ箱でも、利用ルートによりコストが変わるため要注意です。
3. 梱包寸法・素材ごとにコストシミュレート
各種素材(ダンボール、木箱、特殊梱包材、ノベルティ包装等)を使った場合の寸法・重量・運賃(実重量/容積重量)をエクセル等で算出。
いくつか組み合わせを作成し、「容積オーバーで割高にならないか」「過剰な強度指定・緩衝材は無いか」まで検討します。
4. 輸送リスクとバランスした最適仕様の選定
単に箱を小さくすればよい、というのは現場を知らない人の理論です。
落下・衝撃等の物損リスク、温度湿度制限、特殊ラベルや仕向地規制がある場合には、最適解は変わります。
輸送途中のピースカウントミス、ハンドリング時の検品工数まで含め、現状にマッチする組み合わせを選定します。
5. 顧客/サプライヤー双方とのフィードバックループ
設計案を取引先(サプライヤーまたはバイヤー)に説明・共有し、疑問点や現場の意見を吸い上げます。
「製品保護が不十分」「開梱ミス対策がもっと必要」「現場オペレーションに合わない」など、現物起点の運用検証を反映しましょう。
6. 決定寸法を標準化・運用ルール化する
個別案件ごとに判断していると、担当者依存や見積もり齟齬が起きがちです。
最終梱包仕様を標準化し、設計部、物流部、現場作業者まで、用途・説明とともにナレッジ共有を徹底しましょう。
7. 出荷後データを蓄積・再検証
出荷数カ月分の梱包データ(納品トラブル、破損、無駄スペース比率など)を収集します。
改善点を見つけて都度PDCAを回すことで、現実のコスト低減とクレーム未然防止が進みます。
8. 梱包開発とDX推進のシナジー
梱包設計のデジタル化(AIシミュレーション、3D梱包設計、IoTによる輸送中の状況把握)を視野に、データドリブンな物流改革へ発展させます。
アナログ現場でも、少しずつDXを組み合わせることで、「人の工夫×IT」の大きな果実を得ることができます。
昭和的アナログ現場に根付く「慣習」から抜け出すヒント
現場目線でありがちな「あるある」問題
・納入先の標準箱しか使えず、無駄な空間だらけ
・緩衝材をぎっしり詰め込むルールが不文律になっている
・輸送ルートの途中で中身が入れ替わるため、外寸だけ指定
・運賃計算は物流担当の「勘と経験」で済ませている
このような状況では、「空気運賃」が慢性化し、知らぬ間にコスト競争力を落としかねません。
一歩踏み込んで、新しいアイデアや現場改善を試すことこそ、昭和から脱却し世界に伍するものづくりへの第一歩です。
「自分の現場に適した」カイゼンモデルを探そう
大企業向けのパッケージング標準が、そのまま自社に適用できるとは限りません。
例えば、
・1品種多品目生産に強いロジスティクス
・小ロット・多頻度納入向けの「詰め合わせ」梱包
・食品、医療部材など特殊な温度・衛生規制への対応
など、現場ごとに「最適解」は違います。
まずは現場の実情を正しく計測する「青写真」を持ち、小さな改善案から実践してみてください。
バイヤー/サプライヤー/物流の「共創」時代へ
現代の製造業は、「品質」「価格」と並び「物流コスト最適化」が競争力そのものです。
航空運賃ひとつであっても、バイヤーの納品仕様をきちんと伝え、サプライヤーは返答や疑問点・現場事情をきちんとフィードバックする。
物流会社も技術情報を共有し、「三位一体」で持続可能なサプライチェーンを組み立てる時代です。
天空の「空気料金」に振り回されるのではなく、現場発のカイゼンと共創で、グローバル物流に羽ばたく新たな一歩を踏み出しましょう。
まとめ:クーリエ表彰台に立つ、次世代の梱包設計リーダーへ
本記事では、航空輸送における重量容積計算から始まり、現場実態に根ざしたコストダウン・価値創出のノウハウまでを解説しました。
・梱包寸法・素材の見直しが、即コストダウン
・現場・サプライヤー・バイヤーが繋がる共創が、さらなる改善のカギ
・昭和流からの脱却、DX活用によるデータドリブンな梱包最適化
競争の激しいものづくりの世界で、真のリーダーやバイヤー、サプライヤーを目指すあなたが、自信をもって世界と勝負できるノウハウの一端となれば幸いです。
どうか、現場の声を聞き、新しいアイデアの導入を恐れず、さらなる梱包コスト最適化への挑戦を続けてください。
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