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合金置換の候補群を物性対価格マップで比較し材料コストを一段落とす

目次
はじめに:製造業のコストダウン最前線
製造業の現場では、ここ数年で調達コストの高騰が大きな課題となっています。
特に、金属材料の価格変動は激しく、合金の置換によるコストダウンは避けては通れないテーマです。
しかし安易な材料置換は、品質事故や生産性低下、サプライチェーンの混乱を招くリスクも孕んでいます。
本記事では、私の20年以上の現場経験と工場経営の視点から、合金置換の候補を「物性対価格マップ」で多角的に比較し、実践的に材料コストを一段落とす方法を詳しく解説します。
古き良き昭和型業界構造からの脱却も意識しつつ、読者の皆様が現場で即活用できるノウハウをご紹介します。
そもそも物性対価格マップとは何か
材料選定の現場では、強度や耐食性などの物性と価格を同時に比較することが重要です。
ここで有効に活用できるのが「物性対価格マップ」です。
これは、Y軸に代表的な物性値(たとえば引張強度、ヤング率、耐熱性など)、X軸に単価をとり、合金の特徴を可視化したもので、図解することで代替材料探索の幅が一気に広がります。
このマップを使うことで、コスト志向・性能志向のバランスを現場の技術者と購買担当者が“同じ言語”で議論しやすくなるのが最大の利点です。
アナログ現場での“勘と経験”に頼らない選定
これまでは、材料担当のベテランが「昔から○○合金なら安心」と勘と経験の世界で決定していた現実があります。
しかし、VUCA時代においては、より論理的・可視化された手法での材料選定へとシフトしていく必要があります。
物性対価格マップはその突破口として、大手メーカーから中堅・中小現場でも徐々に浸透しつつあります。
合金置換の実際:現場でよく使われるマップの具体例
それでは、どのような項目をマッピングすべきでしょうか。
業界や用途別に着目点は異なりますが、ここでは自動車産業や機械装置メーカーで汎用的によく見られるパターンをご紹介します。
マップの主な軸と代表的合金
1. 引張強度 vs. 単価:
代表的な比較対象は、SUS304、SUS430、SCM435、A5052、A6063、C2801などとなります。
2. 耐食性 vs. 単価:
海水・薬品用途では、SUS316、SUS329J4L、チタン合金、ニッケル基合金も検討対象となります。
3. 熱伝導性/熱膨張率 vs. 単価:
熱交換器・ヒートシンク部材で重要視され、アルミ系(A1050、A6061系)や銅合金(C1020等)が候補となります。
これらを一枚のグラフに落とし込むことで、「物性が少し劣るが価格が3割安い」や、「機械加工性で有利な割にコストはほとんど変わらない」といった、カタログ読み比べだけでは気付きにくい“置換の勘所”が見えてきます。
実践的な置換検討のステップ
実際に合金置換を進めていくうえでは、以下のようなステップを踏むと現場トラブルを最小化しつつ着実なコストダウンを実現できます。
1. 物性要求の洗い出しと優先順位付け
図面スペックや過去トラブル事例から、本当に重要な物性項目(強度・硬度・耐食性・加工性など)を順位付けします。
往々にして、過剰スペック気味な材質指定が“惰性”で続いてしまっているケースが多々あります。
2. 市場動向を踏まえた候補群ピックアップ
最近では中国、インド、東南アジア圏の素材事情が目まぐるしく変化しており、数年前にはなかった安価な国内外の材料や、リサイクル材なども候補に浮上しています。
候補材料の情報収集には、JIS規格冊子だけでなく世界最大級の材料データベースMatmatchやBASFのResearch Hubなども活用できます。
3. 物性・コストマップ作成と最適領域の探索
各候補材料について、設計要求物性・調達単価(ロットやサプライヤー別)を書き込み、最適ゾーンを浮き彫りにします。
この時、従来材から少し物性が下がっても許容される“現場許容度”を現場設計者とすり合わせることが不可欠です。
4. サプライヤーとの協業による実製品テスト
材料置換は机上検討だけでなく、加工適性や後工程影響も実験・評価が重要です。
私の経験上、サプライヤー技術者と“共創”して溶接や切削など一通りの製品サンプルテストを行うことで、不安要素の多くが事前に潰せます。
古い体質からの脱却と最先端・グローバル調達への道
日本の製造業には、いまだに「○○鉄鋼の○○材しか使わない」「5年前からサプライヤーを変えていない」という“御用聞き調達”体質が残っています。
これは心理的な安心感と裏腹に、価格競争力やBCP(事業継続性)という点では大きな弱みになります。
一方、大手グローバルメーカーや欧米の新興企業では、調達・設計・品質管理・サプライヤーエンジニアが一体となり、材料置換による生産性向上と価格低減を常に模索しています。
その際、物性対価格マップによる論理的比較は“世界共通言語”になりつつあります。
現場目線での“昭和的しがらみ”からのステップアップ
アナログな現場に根ざしたメーカー様への提案としては、まず一部品だけでも良いので“物性対価格マップによる置換検証”を試験導入してみることを強くお勧めします。
現物サンプルやテスト費用を予算化しにくいという場合には、サプライヤーに交渉して“成果分配型”や“共同開発型”でテスト協力を仰ぐことも有効です。
バイヤー・サプライヤー双方の視点でのメリット
バイヤーとしては、物性対価格マップを武器に論理的な値下げ交渉や新サプライヤー開拓がしやすくなります。
一方、サプライヤー側も「自社の合金がどの物性・価格帯でバイヤーの要求とマッチするか」を可視化しやすく、提案型営業や差別化提案の切り札となります。
材料選定がただのコスト勝負から、機能維持・向上とコスト最小化の“二兎を追う”世界へ変わりつつある今、双方に大きなチャンスが広がっています。
まとめ:材料置換という進化で日本の製造業をリデザインする
合金置換の選定を、物性と価格の「見える化」により進めることで、単なるコスト削減だけでなく、設計や購買、サプライヤーとの組織的な連携強化にも繋がります。
昭和型の“慣例ベースの材料選定”から一歩抜け出し、物性対価格マップという武器を活用して、製造現場・購買の両面で新たな地平線を切り拓きましょう。
最初は一歩が重く感じるかもしれませんが、小さなパーツ群からでも始めてみることで、コストダウンと品質維持という二兎を両立できる大きな武器になるはずです。
これからも時代の変化と新しい技術・情報を取り入れながら、日本のものづくり現場をより強くしていきましょう。
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