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OEMを活用したペットブランド立ち上げのロードマップ

目次
はじめに:OEMでペットブランドを立ち上げる意義
ペット市場は、年々拡大を続けています。
少子高齢化・ペットの家族化・高付加価値志向の高まりといった社会背景から、ペット産業は今や数兆円規模ともいわれます。
そんな中、OEMを活用して自社ブランドの立ち上げを検討する起業家や既存事業者が増加しています。
OEMとは「Original Equipment Manufacturer」の略で、他社ブランドの商品を自社で製造する、いわば「製造委託」のビジネスモデルです。
設備投資・研究開発コスト・製造ノウハウという参入障壁を低減できるため、特に中小企業や個人がペットブランドを立ち上げる際の有効な手段となっています。
ここから、私が長年の製造業で実体験したOEMの選定プロセスや、注意すべき業界の慣習、OEMを最大限活用した競争力のつけ方を、現場目線で解説していきます。
OEMによるペットブランド立ち上げの全体像
1. 市場理解とコンセプト設計
全てのスタート地点は「誰の、何の課題を、どう解決するか」自体の明確化です。
ペット業界と一口に言っても、ドッグフード、キャットフード、おやつ、ペットウェア、おもちゃ、ケア用品など、さまざまなカテゴリが存在します。
さらに近年は「グレインフリー」「ヒューマングレード」「高齢ペット専用」など、生活様式や健康志向の多様化による細分化が顕著です。
OEMメーカーを探し始める前に、市場データやペットオーナーの生の声をリサーチし、自社ブランドでどんなポジショニングを目指すのか、根拠ある仮説を立てましょう。
例えば「アレルギー体質向け無添加おやつ」「シニア犬専用リカバリー食」といった具体的な企画が不可欠です。
2. OEMメーカー選定のポイント
昭和的な「顔と根回しが全て」という業界慣習が強い製造業ですが、近年はネットで検索すれば無数のOEMメーカーがヒットします。
しかし「何をどこまで対応できるか」「どんな品質レベルなのか」「トラブル時の対応力は」といった現場実態を見極めるには、単純な比較サイトの情報だけでは不十分です。
現実のOEMメーカー選定基準を、以下に挙げます。
- 対象となる商材の実績が十分か(同じ原材料・工程の経験があるか)
- 小ロットからの対応が可能か
- 品質管理体制(HACCPやISO等の取得状況、生産履歴の追跡可能性)
- 開発フローや技術的柔軟性(レシピ再現度、食感や包装仕様など要望対応)
- コスト構造の開示度と、見積もりの透明性
- “BtoC発想”理解度(実売につながる提案ができるか、安全・アレルギー情報の管理など)
- 緊急対応力(異物混入や回収時の対応フロー)
最初の打ち合わせではこちらが消費者=エンドユーザーの視点で突っ込んだ質問をすると、メーカー側の“本気度”や誠実さが浮き彫りになるはずです。
3. レシピ開発と試作:OEMの強みの活かし方
OEMを活用するなら、メーカーの既存レシピに頼るだけでは商品差別化は難しく、価格競争にもなりやすくなります。
現場目線では、可能な限り「コア技術+自ブランド専用レシピ」を共同開発するのが理想です。
例えば、犬用ウェットフードなら「国産鶏ささみ100%・添加物ゼロ」といったオーダーで、配合比や加工温度、テクスチャまで細かく試作品を出してもらい、何輪もPDCAサイクルを回します。
同時に、表示ラベルやパッケージデザイン案もOEM側からサンプルをもらって、消費者目線での訴求力も検証します。
ここで重要なのは「最初から100%理想を求めず、まず“小さく作って市場で確かめる”」ことです。
一般的にOEMは小ロット生産が割高となりがちですが、初期リスク低減とスピード重視で早期市場投入し、反応を見ながらレシピをチューニングする柔軟性が現代のものづくりには欠かせません。
現場でありがちなOEMの“落とし穴”と対策
コスト一辺倒の発注で「OEM地獄」にハマる理由
昭和的な発想で「OEMなんだから最安主義でいい」と考えがちですが、これが最大の落とし穴です。
製造原価の安さは魅力的に見えますが、安さの裏には「原材料グレードの低下」「衛生やトレーサビリティの脆弱さ」「ロットごと品質ばらつき」といったリスクが潜みます。
また、OEMメーカー側も“ただ作るだけ”になりやすく、ブランド側の戦略や長期的視点でのモノづくりへのコミットが薄れがちです。
こうした場合、納品トラブルやクレーム発生時に「うちは言われた通り作っただけです」と責任回避されるケースが多く見受けられます。
予防策としては、仕様書・試作サンプル・安全基準・品質検査書類などを必ず書面で交わし、データ履歴を残すこと。
そして「日本の消費者はここまで品質や表示にうるさい」という現場視点で交渉し、工程ごとの管理と情報共有を徹底することが重要です。
OEMパートナーとの関係づくりがビジネスの肝
工場に長く居た身として、「OEMは単なる取引先」ではなく「価値共創のパートナー」として育てる姿勢が最大のブレイクスルーを生みます。
企画段階から現場担当者と“本音の対話”を重ねることで、自社商品のブランド価値やロングテールでの品質担保、さらには将来的な共同開発や新製品立ち上げというシナジーも広げやすくなります。
古い業界体質の中で「言われたことだけやる」というOEMメーカーが多いのが実態ですが、こちらから“なぜそのレシピや品質にこだわるのか”を丁寧に説明し、両者が目指すゴールを可視化することで、現場の自主改善や柔軟な提案がぐっと増えます。
これは量産体制の工場こそ疎かにしがちですが、現場ドリブンの改善(カイゼン)こそがヒット商品の生まれる土壌となります。
SNS時代のリスク管理とエンドユーザー対応
ペットブランドにとって致命的なのがSNS炎上やリコール対応のミスです。
「異物混入」「ラベル誤表示」「食中毒発生」などが発覚した際、OEM商品でもブランド側が全面的に責任を負う覚悟が必要です。
特にペット業界では命に直結するため、消費者心理の不安は一気に拡大します。
それゆえ、OEMメーカーに定期的な工場監査・サンプル検査を依頼し、イレギュラー発生時の初動対応フローや報告窓口を必ず事前確認しましょう。
また、製造現場目線で「原材料のトレーサビリティ」「工程ごとの写真記録」など、第三者監査がすぐできる体制も、今後はますます重視されます。
OEMでペットブランドを成功に導くポイント
1. 独自価値の創出と専門性
OEM活用は低コスト・スピード勝負のために有用ですが、最終的な勝敗は「自ブランドだけの強み」をどこまで突き詰められるかにかかっています。
商品そのものの微差(風味・食感・原材料)だけではなく、「獣医師監修」「アレルゲン配慮サポート」「パッケージで簡単一食分」など、一歩踏み込んだ専門性を徹底分析し差別化するべきです。
現場では「これ以上作り分けできません」と断られることも多いですが、現物を持ち込み、自分のネットワークで類似事例を洗い出し、粘り強く改良を重ねる姿勢がOEM事業者を動かします。
2. 製造現場とのコミュニケーション設計
現代のペットブランド成功の分水嶺は、メーカー=現場との“密なコミュニケーション”です。
クラシカルな調達購買フローでは「仕様書・納期・発注書」のみのやり取りに留まりがちですが、OEMにおいては「現物確認」「現場視察」「定期Webミーティング」など、顔の見える付き合いが圧倒的にトラブルを未然防止できます。
また、現場のスタッフや品質管理担当から直接ヒアリングできれば、「現状抱えている製造なやみ」「新素材への忌憚なき意見」など生きた情報が得られ、競合他社が気付かない小さな改善アイディアもつかみやすくなります。
3. 昭和的体質への対応術と業界変革の展望
OEM活用を長く続けていると、どうしても「昭和から抜け出せないアナログ体質」「前例主義」「帳票・紙業務主義」にぶつかります。
しかし、だからこそ「DX推進」「IoT活用」「サプライチェーン全体のリアルタイム見える化」などの新しい武器を持つ事業者が、今後のペット市場を牽引できます。
例えば、発注・納品管理にクラウドシステムを導入し、工場との受発注を自動で同期。
LINEやSlackで現場担当者とスムーズにやり取りする、新世代のサプライチェーンを目指すことで、従来業界メーカーが対応できなかった細やかなニーズを満たしやすくなります。
一方で、現場独特の人間関係や暗黙知を大切にすることも欠かせません。
昭和的な現場力×デジタル技術の融合こそが、現代OEMビジネスのブルーオーシャンとなるでしょう。
まとめ:OEM活用で切り開くペットブランド新時代
OEMを活用したペットブランド立ち上げは、単なる仕入れ・販売の延長ではなく、現場のものづくり知見をベースに進化するビジネスモデルです。
徹底した市場リサーチ、現場目線からのOEMパートナー選定、自社価値を形にする粘り強い試作とフィードバック。
そこに、品質・リスク管理、工場・現場との信頼関係構築、デジタル活用による業界変革の視点まで、すべてを盛り込んでいくことが、成功に不可欠です。
現場からの生の声と、昭和世代から学ぶ製造の粘りと工夫、そして令和流のデジタルシフトが合わさることで、これからの新たなペットブランドは、より強く・愛されるものへと進化していくでしょう。
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