投稿日:2025年9月10日

中小製造業が実践する省エネ補助金活用とSDGs対応事例

はじめに:中小製造業と省エネ・SDGsの潮流

中小製造業の現場では、人手不足やコスト高、グローバル競争の激化など、さまざまな課題が顕在化しています。

このような環境の中、「カーボンニュートラル」や「サステナビリティ」といったキーワードが経営会議でも頻繁に議題に上がるようになりました。

政府や自治体による省エネ補助金の活用ケースも増えており、SDGsへの対応が取引先から強く求められる時代に突入しています。

しかし、昭和時代から続く“現場主義”や“勘と経験”に根差したアナログな業務環境では、最新の省エネ技術や補助金制度、SDGs施策がなかなか浸透しない現実も存在します。

本記事では、製造現場に深く根ざした視点から「中小製造業が実践する省エネ補助金活用とSDGs対応事例」を紹介します。

経営層や管理職のみならず、実際にものづくりに携わる方やサプライヤー、バイヤー志望の方にも有益な、現場目線・ラテラルシンキングによる新しい課題解決アプローチを解説します。

中小製造業における省エネ・SDGs対応の必要性

顧客ニーズの変化と市場動向

一昔前なら「価格」や「納期」だけがビジネスの武器でした。

しかし最近では、大手メーカーの調達部門や消費者から、「CO2排出量の見える化」や「再生可能エネルギー利用」「ISO14001への対応」といった環境配慮・社会的責任への対策も求められます。

こうした流れは一過性ではなく、海外現地法人の生産委託先の選択条件にもなりつつあります。

大手の競争力に勝つためには、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点も“標準装備”することが重要となります。

現場が抱えるリアルな課題

省エネ設備と聞けば「高コスト」「効果が不明」「今のままでも困っていない」といった声が現場から上がるのも事実です。

また、SDGsは“お題目”に聞こえ、日常業務には直結しづらいと思われがちです。

しかし長期を見据えると、こうした意識の遅れこそが「顧客の喪失」「コスト競争での淘汰」「取引停止」など、深刻な経営リスクに直結します。

そのため現場のアナログな課題・マインドを変えつつ、省エネ施策をSDGs活動に組み込む“現場主導の進化”が鍵となります。

省エネ補助金を活用するポイント

代表的な省エネ補助金制度とは

経済産業省や自治体が提供する代表的な省エネ補助金制度には、以下があります。

  • 省エネルギー投資促進支援事業(中小企業向け)
  • エネルギー使用合理化等事業者支援事業(一般企業共通)
  • 地方自治体の独自助成金・設備投資補助金

これらは主に、生産設備や照明、空調、ボイラー、コンプレッサーなどのエネルギー消費機器の更新・高効率化、新方式製造プロセスの導入に対する助成となります。

申請にはエネルギー使用量や現状のCO2排出量の根拠数値を示し、導入後の削減効果の積算が求められます。

昭和の職人現場でつまずく“落とし穴”

省エネ補助金の導入現場では、「そもそも電力計測の仕組みが社内にない」「既設設備の図面も仕様書も失われている」というケースが散見されます。

また、「面倒くさいから申請は諦めよう」「申請資料作成は総務部の仕事」と現場が無関心なまま、チャンスをみすみす逃す状況もあります。

実際の現場では、設備投資そのものの“裏メニュー”として、老朽化した配管やエア漏れ、ボイラー蒸気の断熱改善といった“メンテナンスを兼ねた省エネ”に補助金が適応できる場合も多いです。

補助金制度は意外と現場の困りごとにフィットするものが多く、自主改善×設備投資の発想で「一石二鳥」の効果を狙うことができます。

実務成功の3つのヒント

  1. 経営層から現場リーダーまで“横断型”の補助金プロジェクトチームを結成する
  2. 現場従業員が日常業務で感じている「小さな不満」や「当たり前」をリストアップし、省エネ・補助金化できる点を洗い出す
  3. 専門コンサルや地元商工会議所、設備ベンダーと早い段階で連携し、「根拠データ」の作成を進める

中小製造業における省エネ・SDGs対応の具体的事例

事例1:圧縮空気ラインの可視化・改善(精密部品加工業A社)

A社では長年使い続けたコンプレッサーの電力消費が年々増加し、現場でも「エア圧が安定しない」「夜間も音がうるさい」といった課題を抱えていました。

この課題を定量的に捉えるため、エネルギー診断士と連携し、ラインごとの電力消費量と漏洩量を測定。

その結果、本来必要な圧縮空気の2倍以上が無駄に供給されていることが判明しました。

A社は省エネ補助金と自社資金を併用して、老朽コンプレッサーの高効率タイプへの更新と、エア漏れ予防のための配管一部交換を実施しました。

投資から1年で電力コストは25%削減。

また、本事例をもとに「漏れ防止ラウンド点検」を標準化し、従業員参加型のSDGs活動として全社にPRしました。

この取り組みにより、取引先へのサプライチェーン報告で高評価を受け、大手との新たな取引も獲得しています。

事例2:LED照明化×見える化省エネ運動(樹脂成形業B社)

B社では古い水銀灯照明を最新型のLEDに一括更新することを決定しました。

設備ベンダーの協力で「補助金枠」を活用しつつ、現場主体の“省エネ見える化ボード”も導入。

消費電力やCO2削減量をグラフ化し、現場・経営層・お客様向けに見える形で展示することで、“数値で話す文化”を工場全体に根付かせています。

この結果、月々の電気代は30%ダウンし、また“省エネ推進リーダー”を公募したことで若手のモチベーションもアップ。

「環境経営」の文脈で社内外PRにも成功し、SDGs「目標7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに」への企業貢献を明確に示せるようになりました。

事例3:現場改善と省エネ補助金の同時推進(板金加工業C社)

C社では「老朽設備の入替が必要だが、現場の負担・投資コストが重すぎる」との声が上がっていました。

経営・現場・購買・サプライヤーが連携し、“現場改善(カイゼン)活動”で不要在庫圧縮・工程短縮のアイデアを可視化して資金原資を捻出し、その一部を使って「最新NC機械の導入+補助金申請」に成功。

さらに設備新調をきっかけとして、省エネ・SDGs施策全体を体系化した「エコ・アクション宣言書」を作成し、取引先に発信。

これにより、数値で見える改善効果だけでなく、「頑張ってる会社」「信頼できるパートナー」というブランディング効果も得ることができました。

製造現場でSDGsと省エネを融合させるコツ

“カイゼン”文化を活かした取り組みの進め方

省エネやSDGsを現場の日常業務に自然に組み込むためには、「カイゼン活動」と結びつけて小さな成功体験を重ねていくことが最適です。

例えば、「エア漏れのチェックを毎週の業務標準に加える」や「1台ごとの電気代・CO2削減量を毎月貼り出す」といった具体的な施策が効果的です。

また、現場で工夫した改善活動に「省エネ効果」や「社会的インパクト」という“旗”を立ててあげることで、自発的な参画意欲も湧いてきます。

バイヤー視点・サプライヤー視点での捉え方

バイヤーを目指す方にとっては、サプライヤーがどこまで本気で省エネやSDGsに取り組んでいるかを“数値”で比較することが購買メリットとなります。

サプライヤー側としては、最低限の法令遵守やコスト削減に止まらず、「自社の改善ノウハウ」「社員の参画意欲」「見える化マネジメント」まで訴求できれば、それは取引拡大や新規顧客開拓の大きな武器となります。

まとめ:中小製造業こそ“省エネ×SDGs”の最前線

中小製造業の現場では、古くからのアナログ文化や職人の勘・経験が根強い反面、省エネ補助金やSDGs指標を生かした“新しい価値創造”も十分可能です。

現場主導で地に足のついた改善×省エネ投資で「見える成果」を積み上げつつ、顧客や社会への訴求力も高めていくことが、これからの製造業の競争力の源となります。

今こそ「昭和」から一歩踏み出し、補助金制度やSDGsなど最新の枠組みを味方につけ、“現場力”を軸にイノベーションを実現していきましょう。

あなたの会社の技術と知恵が、日本のものづくりを次の時代へ進めるカギとなるはずです。

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