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購買部門が知るべき共同配送の仕組みとコスト削減効果

目次
はじめに:アナログな製造業現場にも求められるロジスティクス改革
製造業において調達購買の役割は年々多様化しています。
その中で「共同配送」という言葉を耳にされた方も多いのではないでしょうか。
一方で、現場主導の昭和的なアナログ文化が色濃く残る製造業では、「結局ウチで取り入れるメリットは?」「多重下請構造に合うのか?」といった率直な疑問や、現場への具体的な落とし込みに悩む声も聞かれます。
そこで本記事では、20年以上にわたる製造業の現場経験をもとに、バイヤー目線・サプライヤー目線双方を踏まえた実践的な視点で“共同配送”について解説します。
共同配送の基本的な仕組みとは
知っておきたい共同配送の定義
共同配送とは、複数の荷主が倉庫・出荷拠点やメーカー間で物流を「共同化」し、一つのトラックでまとめて配送する仕組みです。
具体的には、配送先が同じエリアのお客様や納入先(例:自動車工場や商社のデポなど)に対して、各社が個別でトラックを手配せず、1回の輸送でまとめて納入する方式を指します。
なぜ共同配送が注目されるのか
従来のように“1社1車”で個別納入すると、積載率の低い状態でトラックが走る非効率が慢性化します。
とくに、都市部への混載納品や中小サプライヤーが集まる工業団地、また共同で資材を搬入するケースなど、物流費や人件費の高騰が直接コスト増となる今、共同配送は強く求められるようになっています。
購買部門担当者が知っておくべき実効性と注意点
コスト削減効果の実際
共同配送を取り入れると、運送会社へ支払う1回あたりのチャーター費用を分割できるため、単独配送と比較して安くなる傾向があります。
例えば、1回あたり5万円かかっていた配送が、3社でシェアすれば1万6,000円程度に分散。
これを月20回で計算すると、単純計算で「5万円×20回=100万円」から「1万6,000円×20回=32万円」と、およそ3分の1の費用に抑えられる可能性もあります。
しかしながら、これはあくまで理論上の最大効率時の話です。
実際の現場では次のような点に配慮が必要です。
現場で起きるトラブルと対応策
・共同配送には「待機時間」や「積み替えリスク」といった新たなオペレーション負荷が発生します。
・得意先や工場の受け入れ体制によっては「納入タイミングの調整」が不可避です。
・サプライヤー間での荷量や納品頻度、またパレットやラベルの統一など標準化も求められます。
したがって、コストだけに目を奪われず、現場の受け入れ余力とバッファ時間、突発トラブル発生時のリカバリー体制(別ルート調達や小口発送)まで含めたプランニングが必要です。
共同配送ネットワーク構築の進め方とポイント
業界特性を踏まえたネットワーク設計
製造業では、取り扱い商品ごとにサイズ・重量・温度帯・危険物区分など、配送条件がバラバラです。そのため、「●曜日の午前だけ」など、細かな時間・頻度制限や混載可否の擦り合わせが欠かせません。
たとえば自動車部品の納品であれば、一次下請と二次下請が同じ完成車工場を目指すことも多く、エリア別に共同化しやすい一方、樹脂部品と塗装部品の積み合わせには一定の“ノウハウ”が必要です(部品が擦れる、ラベルが剥げる、など現場ならではの課題)。
また、製品の「トレース(追跡)」を求められる業種では、どの荷主の何の商品がいつどこを通過したかを明確にするバーコード管理や、全体を俯瞰できる管理者の設置もカギを握ります。
共同配送導入を定着させるための手順
1. 自社の出荷・受け入れ実績データを可視化する(曜日・時間帯・納品先・物量など)
2. 近隣エリアのサプライヤーやグループ企業と「共同化可能な案件」をリストアップ
3. 物流会社や協同組合など外部ノウハウを活用し、ネットワーク全体設計の見直し
4. 実証実験からスタートし、現場課題を一つずつ潰しながら標準化・マニュアル整備
5. 社内外の関係者向け説明会や現場オペレーション研修を定期的に実施
このように、段階的なステップで全体最適と現場負荷のバランスを取りながら推進することが成功のポイントです。
バイヤー・サプライヤーそれぞれの立場から見た共同配送のメリット・デメリット
バイヤー側からの視点
・物流費用が下がり製品原価低減に直結
・納品管理が合理化され、受入側負担減
・サステナビリティ経営(CO₂削減や働き方改革)にも寄与できる
しかし、個社ごとの専用便がなくなることで「納品時間の融通が利きにくい」「緊急時は別途調整が必要」といった制約も生まれるため、現場との緊密な連携が重要です。
サプライヤー側からの視点
・出荷コスト・人的負担の削減
・大手バイヤーや取引先との強固な関係づくり
・物流クレーム減によるサービス品質向上など
一方で、荷主間の力関係で取りまとめ役や調整役を無償で担わされる負担、小規模事業者には“巻き込まれる感”がつきまとう懸念もあります。
現場経験上、こうした軋轢を防ぐには、「役割分担」「負担の可視化」「協議の場」を設けることが大切です。
例えば、管理コストや調整負担を按分する“共同配送管理費”を制度化し、納得感を高めましょう。
デジタル化との連動が生み出す相乗効果
昭和型の電話・FAX中心オペレーションでは共同配送のメリットが半減します。
近年では、ウェブによる納入調整システムや、クラウド型の在庫・配送管理ツールを使う現場も増え、荷主間・現場と物流会社間の情報共有が格段に容易となりました。
AIやIoTデバイスと連動した配送計画の自動最適化、配送員の負担や回転率・経路の見える化なども導入が進んでいます。
バイヤー・サプライヤー双方が「一緒に効率化する」という意識を共有し、属人的な調整業務を極力排除していく姿勢が重要です。
中小企業・下請企業こそ“枠組み”を活用しよう
協同組合や業界団体が母体となって、共同配送の仕組みや会員向けの共同便運用を導入しているケースもあります(例:全国部品工業組合、地域商工会など)。
こういった枠組みを積極的に活用し、自社単独では実現できないボリュームや交渉力を集団で確保する動きは、中小事業者にとって非常に有効です。
また最新動向では、「グリーン物流パートナーシップ」など環境対応の名目で商社・大手企業が積極的に連携する動きが見られます。
現場定着と業界全体の底上げへのヒント
共同配送は、一足飛びには浸透しません。
しかし、属人化しがちな現場運営から一歩踏み出し、数字データと現場感覚を組み合わせた現実的なモデルを描くことこそ、これからのバイヤー・サプライヤーに求められる時代です。
「共同配送=コストカット策」と狭い視点で考えるのではなく、「物流改革=競争力強化」「次世代現場づくり」という視座で全社的なプロジェクトに昇華させましょう。
まとめ:購買部門の視野を広げる「共同配送」の真の価値
共同配送は単なるコスト削減の手段を超え、持続可能な物流体制の構築、サプライチェーン全体の業務変革、製造業競争力の向上に直結します。
購入側・供給側を問わず、“全体最適”という新たな地平線を切り拓く挑戦。
みなさんの現場でも、アナログとデジタルの良さを活かした共同配送改革にぜひチャレンジしてください。
製造業のバイヤー、サプライヤー、そしてこれから現場改革を担うすべての方々へ――
今こそ、昭和型ルーティンを脱し、新たな時代の“ロジスティクスの現場主義”をともに築いていきましょう。
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