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溶接欠陥を低減するワイヤ材質選定とパルス制御法

目次
はじめに:製造現場での溶接欠陥とその重大性
溶接は、製造業の現場で最も重要な工程の一つです。
高強度・高密度な構造体をつくり上げるために不可欠ですが、その一方で「溶接欠陥」は現場での大きな課題となっています。
ピット、ブローホール、割れ、バリ…。
これらの欠陥が原因で顧客クレーム、不良品コスト、納期遅延が発生し、信頼性や収益性にも直結します。
昭和から続く現場では、手作業や職人の技術に頼る傾向が根強く残っています。
しかし、グローバル化や自動化の波は、品質の見える化およびデジタル化を急速に求めています。
現場目線で「溶接欠陥の低減策」を真剣に追求することは、今やすべてのメーカーにとって避けて通れないテーマです。
本記事では、20年以上の現場経験で蓄積したノウハウにもとづき、ワイヤ材質の選定とパルス制御法にスポットをあてた溶接欠陥低減の具体的な手法と、その根本的な考え方を詳しく解説します。
溶接欠陥の主な原因:アナログから脱却するための視点
現場で発生しやすい溶接欠陥の種類
溶接欠陥は大きく分けて以下のようなものがあります。
・ピット(小さなくぼみ)
・ブローホール(ガスによる気泡跡)
・クラック(割れ)
・スパッタ(飛散した溶融金属)
・アンダーカット、オーバーラップ、ビード不良など
欠陥の発生要因は、材料・ワイヤ・溶接機設定・作業環境など多岐にわたります。
この中でも「ワイヤ材質」と「パルス制御」は、機械化・自動化が進む現場で特に注目すべき2つの要素です。
昭和的な“勘と経験”の限界と、データ活用の重要性
従来の現場ではベテラン作業者の“勘”や“経験則”が重視されてきました。
確かに匠の技が生きる場面もありますが、安定量産や自動化・ロボット化に向けては、品質の「再現性」こそが重要です。
繰り返し可能な高品質溶接を実現するには科学的な工程管理と最先端の制御技術を活用しなければなりません。
ワイヤ材質の選定:現場で本当に有効なポイントとは
ワイヤの基本:なぜ材質選定が溶接品質に直結するのか
溶接用ワイヤは一見、単なる消耗品に見えます。
しかし、現実には「ワイヤ材質」によって溶接ビードの強度や外観、欠陥発生率、さらには後工程への影響まで大きく左右されます。
主なワイヤ材質には以下があります。
・軟鋼ワイヤ(一般的な構造物用)
・高張力鋼用ワイヤ
・ステンレスワイヤ
・アルミニウムワイヤ
・特殊合金系ワイヤ
それぞれの材料に対し、適正なワイヤを選定することが品質安定の第一歩です。
見逃されがちなワイヤ表面処理、径、供給安定性のポイント
最適な材質を選定する際、次の3つのポイントも軽視できません。
1. 表面処理
ワイヤ表面の銅メッキや潤滑剤塗布の有無は、通電性や送給時の滑り性、スパッタの発生に大きく関与します。
とくに最近は、環境負荷低減のため「低銅ワイヤ」や「銅フリー」も登場していますが、機種や溶材との相性・検証が重要です。
2. 径と真円度
ワイヤ径は±0.01mm単位で規格が定められており、この“精度”が悪いと、機械送給不良や溶滴形成不良による欠陥の原因になりやすいです。
3. 供給の安定性
巻き癖やカール、送り出し時の引っ掛かり・絡みは、機械制御で致命的なトラブルとなります。
ワイヤメーカーの信頼性やロットごとの品質ばらつきも要確認ポイントです。
コスト優先だけではない、現場の真実
多くの現場でコストダウン圧力が強いなか「安いワイヤで何とかしたい」という声が依然として多いです。
しかし、数%の安いワイヤ採用が後工程の仕上げ・改造コスト、最悪の場合は不良流出・クレーム増で大きな損失につながります。
ほんとうの現場力とは「適材適所」で最適ワイヤを選定し、工程全体の最適化を図ることです。バイヤーもサプライヤーも、トータルコストとQCD(品質・コスト・納期)の観点で見直しが求められる時代です。
パルス制御がもたらす溶接品質革命
なぜ今、「パルス制御」が注目されるのか
アーク溶接において、「パルス制御」技術はここ10年で飛躍的な進化を遂げました。
手溶接から自動・ロボット溶接まで、誰がやっても常に安定した溶融・凝固が得られる——その理想に近づいてきているのです。
一定周期で電流値と電圧をコントロールすることで、最適な溶滴移行、スパッタ低減、薄板溶接や角部の焼け・歪の抑制も可能となります。
代表的なパルス制御の種類と特徴
・シングルパルス制御
→基本となる制御。溶滴形成を制御しやすく、初心者やロボットとも相性良
・ダブルパルス(ツインパルス、モディファイドパルス)
→波形を複雑化し、熱入力やひずみ・ブローホール低減が期待できます。薄板・アルミ・ステンレス溶接でよく使われます。
・高周波パルス制御
→最新モデルでは高硬度高張力鋼など難加工材への対応や、狭小部品でも高品位溶接が可能です。
ハイエンドな溶接機では、材料に応じた最適なパルス波形を自動選定する機能も備わっています。
パルス制御の現場活用術と落とし穴
自動ロボット溶接では、パルス制御を導入することで人手によるばらつきを低減し、一定品質を実現できます。
特に複数ラインでの大量生産や、多品種少量生産のどちらでも威力を発揮します。
一方で、「カット&トライ」を繰り返して設定値を現場でベストに追い込む“地道な作業”は依然として必要です。
また、溶材との相性検証や、パルス設定値の微妙な差が溶接欠陥に直結するため、質の高い工程管理・データ収集が不可欠です。
現場でできる溶接欠陥ゼロのための実践ポイント
QCストーリーとデジタル技術の融合へ
従来のQCサークルや現場改善活動に、IoTセンサーや画像認識などのデジタル技術を組み合わせることで、不良の兆候をリアルタイムで検知することが可能になりました。
手書きチェックシートからデジタル記録への移行は、「何となく」から「論理的・再現性のある工程管理」への第一歩です。
サプライヤー・バイヤー双方に求められる“現場目線”と“情報共有力”
バイヤーはワイヤや機材選定・発注に際し、現場の困りごとや特有の課題、要求レベルの“なぜ”をしっかりヒアリングすることが重要です。
単なる「コスト削減」ではなく、「工程・品質・納期」を総合的にとらえた情報共有力が強い会社は、結果的にサプライヤーや現場に信頼されます。
サプライヤーからも「この材料は現場でどういう点でトラブルが起きやすいか」「新しいパルス制御対応機材の効果事例」など、自社製品のメリット・デメリットを現場に寄り添った形で提案する姿勢が重要です。
まとめ:これからの製造現場・調達購買の新常識
溶接欠陥の低減は、単なる「作業者の技術レベルアップ」や「ワイヤ・溶接機の最新化」だけでは十分ではありません。
ワイヤ材質のより深い特性理解と、最先端パルス制御技術の適用、そして現場目線の組織的連携やデータ活用が不可欠です。
昭和から続いた“勘と経験”の世界を越え、バイヤー、サプライヤー、現場それぞれが知の意識を高め、相互に情報を発信し合うことで、現場のイノベーションが加速します。
溶接品質革新こそ、令和時代の製造現場発展のカギです。
最新の技術と現場知の融合を目指し、「知恵と工夫」で一歩先のものづくりを目指していきましょう。
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