投稿日:2025年10月9日

ティッシュペーパーがふんわり柔らかく仕上がる抄紙と加工の工程

はじめに~ティッシュペーパーの「やわらかさ」はこう作られる

日常生活に欠かせないティッシュペーパー。
そのふんわり柔らかい肌ざわりは、どのような工程を経て生み出されているのでしょうか。

普段は何気なく使っているティッシュペーパーも、製造工程をひもとくと、原材料の選定から抄紙、加工、品質管理まで多くの創意工夫が詰まっています。
本記事では製造現場で培われた実践的な知識と、業界視点の裏側も交えながら、「ふんわり柔らかいティッシュペーパー」づくりの舞台裏を解説します。

これから調達・購買、バイヤー、生産管理、品質管理などの業務に携わる方、およびサプライヤーとしてバイヤー目線を知りたい方にも有益な情報を掲載していきます。

ティッシュペーパーの原料選定~やわらかさの原点はここにあり

パルプの種類とブレンド技術

ティッシュペーパーの主原料はパルプです。
主に針葉樹パルプと広葉樹パルプが使用されます。
針葉樹パルプは繊維が長くて強度に優れ、広葉樹パルプは繊維が細かく柔軟性があります。

「やわらかいティッシュ」を実現するには広葉樹パルプの配合比率を高めるのが一般的ですが、単純に広葉樹だけにすると強度や裂けにくさが損なわれるため、現場では絶妙なブレンドバランスを模索しています。

調達現場のリアル~調達コストと品質の両立に苦慮する背景

近年、原材料価格の高騰や輸送コスト増、さらには脱炭素社会への要請などサプライチェーン全体の課題が表面化しています。
調達・購買担当者は価格、品質、安定的な供給体制を天秤にかけながら、しばしば厳しい決断を迫られています。

国産パルプの品質と安定性、海外パルプのコスト競争力、それぞれにメリット・デメリットがあり実務では複数サプライヤーからのベストミックス調達が主流となっています。

抄紙工程~繊細なコントロールが生み出す“ふんわり感”

繊維を整える抄紙の核心技術

原料パルプを水に分散させた後、巨大な抄紙機で薄く均一な紙へと仕立て上げるのが抄紙(しょうし)工程です。
ここで求められるのは「繊維の配列」「紙厚」「水分率」などの微細なコントロールです。

ティッシュのやわらかさは繊維がふんだんに開繊(かいせん)され、空気を多く含んだ層構造を作れるかどうかにかかっています。
機械の圧力ローラー(プレス)、ドライヤー温度などの細かな調整によって、ふんわり感と肌あたりを最大限に引き出します。

アナログ技術の継承とデジタル化の波

近年IoT・AIを活用した抄紙工程の最適化が進み、紙厚計測や画像解析技術によるリアルタイム品質管理が導入されています。
しかし、昭和時代から根付く職人技=「手触りによる紙質判定」も依然として現場で重用されています。

自動化・デジタル化とアナログ技術の共存こそ、現在の製紙工場が抱える“新旧融合”の象徴と言えるでしょう。

ティッシュペーパー加工工程~柔らかさを守る匠の技と工夫

エンボス加工で生まれるやわらかなボリューム感

抄紙された原反(げんたん)は、エンボス加工機にかけられます。
エンボスとは押し型ローラーで紙に小さな凸凹模様をつけ、層同士の密着を防ぐ技術です。

エンボスパターンは各メーカーごとに工夫が凝らされており、柄の大きさ・間隔、圧力設定などで触感や柔らかさが大きく左右されます。
エンボスの最適設計には長年の経験に基づく勘所も必要であり、ここにも現場ならではのノウハウが生きています。

スリット・カッティング~見過ごせない裁断精度

多層に重ねられた「やわらかい」ティッシュを所定サイズにカット(スリット)する工程は自動化が進んではいますが、刃物の切れ味メンテナンスや、紙粉の発生防止策への配慮は職人の観察眼に頼る部分が大きいです。

この「見過ごされがちな一手間」こそが仕上がりの均質性や消費者満足度に直結するため、日常の作業標準化やヒヤリハット事例の共有が怠れません。

品質管理と現場改善~不良ゼロを支える地道な取り組み

定量評価+人の感性による検査体制

各工程では、厚みや重さなどの定量データをもとに自動検査が行われます。
その反面、「肌触り」「裂けやすさ」など五感によるチェックも不可欠です。
特に日用品としてのティッシュは消費者クレームやSNS拡散リスクも高いため、異物混入・強度不足・不均一厚など些細な不良も見逃すことはできません。

組織全体でヒューマンエラーを減らす工夫(例:作業員目線で書き換えたマニュアル作成、直観的な色識別表示)を地道に積み重ねる現場が今も多数です。

QC活動・小集団改善運動が根付く背景

製紙業界では昭和から続く小集団によるQC(品質管理)活動の伝統がいまも活発です。
ベテランの知恵を若手に伝承し、工程異常や不良発生時に即座に現場が動ける体制は、DX時代にも決して色褪せない強みとなっています。

こうした現場のボトムアップ文化を絶やさず、さらにデジタルデータ活用と組み合わることで、真の意味での「品質ファースト」の姿勢が生まれているのです。

業界の動向と今後のチャレンジ

環境配慮とコストダウン圧力のはざまで

メーカー各社のバイヤーは「やわらかさ」と同時に「環境対応」を両立させる難題にも直面しています。
脱プラスチック包装の進展、再生パルプやFSC認証原材料の利用拡大など、グローバル市場ではますます高い環境意識が求められています。

一方で原材料やエネルギーコストの上昇を価格転嫁しづらい量販市場では、調達購買・生産現場双方の知恵と工夫が従来以上に重要になります。

アナログ業界の突破口は「技術の掛け算」と「現場知見」

長年アナログに頼ってきた工程を、「データ可視化」や「AI異常検知」などの新技術と有機的に結びつけるラテラル思考(水平思考)が今後の突破口になります。

たとえば、従来は不良率を減らすためにベテランの経験値だけに頼っていた部分を、工程データや画像認識AIで補い、「肌触り」を数値化する新指標を開発できれば、より安定した品質保証が可能になります。

またバイヤー視点ではサプライヤー各社の現場見学や現物ヒアリングを徹底し、「現場のリアル」を理解したうえで調達戦略を練ることが求められます。

まとめ~どこまでも進化を続ける“ふんわり柔らかい”ティッシュの世界

ティッシュペーパーの「ふんわりやわらかい」感触は、原料選定・抄紙・加工・品質管理など多岐にわたる現場の知恵と工夫、そしてアナログとデジタルがせめぎ合うなかで生み出されています。

今後の製造業・紙加工業の発展のためには、バイヤー、サプライヤー、現場の作業者、それぞれの視点とノウハウをオープンに共有し、技術進化と現場力の両輪で課題を乗り越える姿勢が欠かせません。

「どこまでも進化するやわらかさ」を支える裏側には、現場の飽くなき挑戦と情熱が脈打っています。
そのリアルな現場感が、これから製造業に携わるすべての方々のヒントやきっかけになれば幸いです。

You cannot copy content of this page