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スマートフォンカメラレンズの色味を決めるコーティング膜厚制御

目次
スマートフォンカメラレンズと膜厚コントロールの重要性
スマートフォンカメラは日進月歩の進化を遂げています。
昔は「携帯カメラ」といえば画質には期待できないものでしたが、今では高級デジカメ並みの画質を誇るモデルも珍しくありません。
その進化を支えるのがレンズコーティングの「膜厚制御」です。
膜厚の精密なコントロールが、スマートフォンのカメラ画質や“色味”を約束しているのです。
膜厚制御は単なる工程管理ではありません。
購買や生産、品質管理など、製造業に携わるすべての立場の方にとって、その本質を知ることは大きな価値があります。
本記事では筆者が現場と管理職、双方の視点から学んだ知見を交え、バイヤー・サプライヤー双方の観点でスマートフォンカメラレンズのコーティング膜厚制御について掘り下げます。
カメラレンズのコーティングとは何か
レンズコーティングの基礎
カメラレンズのコーティングとは、レンズ表面に非常に薄い膜(コーティング)を施し、映り込みやフレア、ゴーストの発生を減らし、光の透過効率を高める技術です。
また、色再現性向上や耐久性付与、防汚性向上といった多様な目的もあります。
用いられる主なコーティング材には、酸化チタンや酸化シリコン、MgF2(フッ化マグネシウム)などがあり、これらをナノレベル(1nm=10億分の1メートル)でコントロールすることによって、最終的な色味や画質が決まります。
色味を支配する干渉現象
なぜ膜厚が「色味」に関係するのでしょうか。
それは、膜厚によって光の干渉現象が起き、透過・反射する光の波長(色)が選択的に強調されたり、減衰されるためです。
たとえば400nmの青色光に合わせて最適な膜厚を設計すれば、青みが印象的な画像に仕上がります。
逆に緑〜赤の波長を強調したければ、それに合わせた膜厚制御が必要です。
この「干渉コントロール」が、スマートフォンメーカーごとの“個性的な色味”やブランドイメージにも繋がっています。
膜厚制御の工程とその実際
コーティングの代表的な工程
レンズの膜厚をコントロールする工程には、大きく「蒸着方式」「スパッタリング方式」「イオンアシスト方式」などがあります。
最も一般的なのは真空蒸着です。
材料を高温で蒸発させ、レンズ表面に均一な厚みでコーティングします。
この際、加熱条件のわずかな違い、蒸着速度、レンズの配置場所、さらにはチャンバー(真空槽)内の冷却効率やガス組成によって膜厚が大きく左右されます。
近年では、より均一さと再現性を求めて「イオンアシスト」など、低温・精密制御ができる技術も普及しています。
また製造時のリアルタイム膜厚測定と、フィードバック制御システムも不可欠です。
多層コーティングの難しさ
スマートフォンカメラの性能競争が激化する中、レンズには複数のコーティング層が重ねられることが一般的になりました。
一層でも制御が難しい膜厚ですが、さらに多層となると各層ごとの膜厚制御と誤差累積が大きな課題になります。
温度と湿度、材料の純度、さらには作業者の調整技術や清浄度管理…。
どれも無視すれば、色味ブレやクレーム、工程歩留まり悪化に直結します。
この辺りの“昭和的勘と経験”と“デジタル制御”のせめぎ合いは、今も製造現場では大きいのが実情です。
膜厚モニタリングと管理手法の進化
従来型モニタリングの課題
かつては、製造バッチごとにサンプルレンズを抜き出して測定し、実測結果を以て全体品質を類推する方法が主流でした。
しかし物理的な接触測定や破壊検査では、生産タイミングが限られ、後工程へのフィードバックも遅れがち。
再現性やトレーサビリティ、統計管理にも弱点がありました。
現在の主流:光学式・インライン膜厚測定
近年では入射波長を細かく調整した光学干渉計、多波長分光などを利用した「非接触・高精度・高速」の膜厚測定が主流です。
さらにAI解析やIoTセンサーの活用で、リアルタイム監視と異常予兆の自動アラートなども実現しています。
例えば、光学式のインライン測定装置とMES(製造実行システム)を連携させれば、各バッチあるいは個片ごとの成績を一元管理できます。
歩留まり改善だけではなく、大量生産におけるバラツキ低減やクレーム予防にもつながります。
膜厚制御をめぐるバイヤーとサプライヤーの駆け引き
バイヤーが重視する「色味の再現性」と「歩留まり」
スマートフォンメーカー(すなわちバイヤー)は、スペック表への数値上の膜厚誤差よりも、完成したカメラで“常に同じ色味が保証できること”を重視します。
そのため色味評価は専用チャート撮影や分光分布解析で厳しく検証します。
一方、工程ごとの歩留まりやロット単位の安定性も厳しく要求します。
「このコーティング、なぜ時々バラツキが起きるのか?」「不良時の根本原因はどこか?」「歩留まりが悪い場合の異常時対応策は?」といった質問がバイヤーからサプライヤーに常につきつけられています。
これに対し、従来型の人頼み生産体制や一部に留まるデジタル活用では太刀打ちできません。
サプライヤーからの提案型アプローチの必要性
サプライヤー側が、単なる“受注生産”から脱却し、「色味目標達成のための膜厚シミュレーション提案」「新素材開発と工程自動化による品質波動低減」「IoT連携型トレーサビリティ保証」といった提案型営業に切り替える…
この転換が、今後サプライヤーに求められる大きな課題です。
また、バイヤーの声を現場技術者と共有し、「お客様固有の色味要件」と「自工場が管理できる膜厚誤差」を言語化・数値化することが、信頼関係の深化につながります。
昭和から脱却できない現場の“逆光源”とその超え方
アナログ根性主義の功罪
製造現場に根強いのは「この工程はベテランの経験と勘で微調整するのがいちばん!」という職人気質です。
確かに、マニュアルやAIに頼りきれない緻密さ(“ノウハウの暗黙知”)が今も高評価されがちです。
しかし、そろそろこうした“逆光源”を抜け出す時期が来ています。
現場力とデータサイエンス、AIの活用をうまく融合させ、“勘に頼る”から“データで説得する”現場文化への発展が求められます。
ラテラルシンキングで新たな地平線へ
膜厚制御で突出した成果を出している先進メーカーに共通しているのは、
・工程ノウハウを定量化し、AI運用に乗せている
・膜厚以外の暗黙知(レンズ材質や表面処理条件)もデータ化し相関解析
・自社用語を他社と擦り合わせ“言語の共通化”に努めている
こうした「現場とデジタルの融合」「バイヤーとの壁なき議論」が将来のスタンダードになりつつあります。
まとめ:現場と未来をつなぐ膜厚制御の知恵
スマートフォンカメラレンズの色味は、最先端のコーティング膜厚制御によって支えられています。
製造現場にはまだアナログの勘や経験律も色濃く残りますが、それらを活かしつつIoT・AI等の最新技術を積極導入することで、安定品質と独自色味の両立が可能です。
今後もバイヤーは「再現性」と「安定調達」をより強く意識し、サプライヤーには提案型・データ活用型の取り組みが求められます。
サプライチェーン全体で知恵とノウハウを共有し、産業としてさらなる地平線を切り拓いていきましょう。
膜厚制御を究めることが、製造業の未来を確実に支えていきます。
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