台湾市場向けに国産サツマイモを調達する際の戦略と供給業者選定方法

はじめに：台湾市場と国産サツマイモにおけるビジネスチャンス

日本の農産物は、その高い品質と安全基準から世界各国で高い評価を受けています。
中でもサツマイモは、近年台湾市場で急速に人気が高まり、需要が拡大しています。
伝統的な焼き芋やスイーツへの利用だけでなく、健康志向の高まりからヘルシースナックなど新たな市場も生まれています。

一方で、日本国内では農家の高齢化や耕作放棄地の増加などの課題があるものの、サツマイモの生産は比較的安定しており、輸出を前提とした生産体制も徐々に整いつつあります。
この流れの中で、台湾向けにサツマイモを「調達」し、「継続的に供給」できる体制の構築は、製造業・食品業・商社のいずれにとっても、競争力の源泉となり得ます。

本記事では、数多くの現場経験と調達・生産・品質管理の実践知を総動員し、台湾市場向けに国産サツマイモを調達するときの戦略、そして最適な供給業者の選定方法を現場目線で詳述します。

台湾市場における国産サツマイモの需要動向と特徴

台湾の消費文化と日本産農産物

台湾では、日本産食品や農産物への信頼が厚く、「品質の高さ」「安全性」「ブランド力」の三拍子が揃っています。
とくにサツマイモは、台湾の食文化に深く根ざした作物で、日常食からデザートに至るまで幅広い用途が存在します。
しかし自国産だけでは供給が安定しない上、消費者の嗜好は品質とブランド志向にシフトしつつあります。

台湾国内ではサツマイモの需給ギャップが常態化し、「日本産＝プレミアム」の認知も強まっています。
季節ごとの収穫時期や鮮度、品種の違いによって需要が大きく変動するため、単なる一過性の売り込みではなく、継続的かつ安定した供給体制の構築が極めて重要です。

台湾市場のサツマイモ輸入規制と品質基準

台湾は植物検疫などの厳しい輸入規制を設けており、とくに「害虫・病害の有無」「農薬残留基準」を重視します。
また、糖度や肉質、サイズ規格からパッケージング方法まで、バイヤーや流通関係者が求める品質基準は年々高度化しています。
こうした要求に応えるには、現地バイヤーとの細やかなコミュニケーションと、国内サプライヤーの選定・育成体制が不可欠です。

国産サツマイモ調達の基本戦略

生産現場への深い理解と長期的な関係構築

サツマイモは天候や土壌、収穫時期によって品質が大きくブレやすい作物です。
実際に現地に足を運び、農家との信頼関係を築くことが、安定した調達の要です。
単なる「仕入れ」の感覚ではなく、農家の生産計画や課題意識（高齢化・後継者不足・コスト上昇など）を十分理解したうえで、必要な支援（例えば、適切な資材供給や機械化提案など）を行うことが調達担当者の役割となります。

計画調達の徹底とリスクマネジメント

工場の生産管理と同じ思想で、サツマイモ調達においても「複数年・複数農家・複数産地」のリスク分散がポイントです。
特定の農家や産地に依存しすぎると、天候不順や作柄不良の時に調達難に陥るリスクが高まります。
定期的な現地確認・年度ごとの数量計画・品質モニタリングを欠かさないことで、常に安定した供給体制を実現できます。

需要予測と適正在庫の管理

台湾市場への出荷では、現地イベント（中秋節や春節など）や商戦期に合わせた「需要予測」と「物流計画」が不可欠です。
日本国内での一時保管や選果・加工も視野に入れ、鮮度・品質維持と物流コスト削減の両立を図ります。
また、品種ごとの特性や台湾側の需要変動にも柔軟に対応できるよう、必要に応じてサツマイモの品種切替や小ロット分納を用意しておく発想も重要です。

サツマイモ供給業者の選定ポイント

技術力と管理体制（トレーサビリティ含む）

品質の高いサツマイモを安定供給できるかどうかは、農業技術・生産管理力・品質保証体制にかかっています。
とくに台湾のバイヤーは、トレーサビリティ（生産履歴管理）を強く求めます。
調査段階では、肥料や農薬管理、播種から収穫、出荷までの各工程が「見える化」されているかを必ず確認しましょう。

導入事例として、ITやIoTを活用した圃場管理システム、品質管理ソフトを活用している農家は将来的にも安心してパートナーシップが組めます。
昭和時代から続く手帳や紙による記録も多いですが、少なくとも基本的な記録・報告が電子化・標準化されているかはポイントです。

生産規模と安定供給力

一度台湾市場に供給を始めると、消費者や流通小売から「継続供給・安定品質」が強く求められます。
よって候補となるサプライヤーには、単一農家だけでなく、農業協同組合や地域生産グループを交えて取りまとめ体制があるかを確認しましょう。
サツマイモは一度に大量出荷するよりも、定期的・計画的に出荷調整できる仕組みが重要です。
これには一定レベルの生産量・JAや卸売会社との連携も欠かせません。

加工・パッケージング・物流対応力

台湾向け輸出仕様に合わせて「洗浄・サイズ選別・特殊加工（たとえばスティックカットや焼き芋用パッキング）」まで対応できる体制が望ましいです。
日本国内の契約工場や加工所を活用する事例も増えています。
また、輸出の際の鮮度保持・冷蔵・冷凍物流など、付帯サービスを提供できるパートナーであれば安全です。

バイヤーが現場で見ている“リアル”なポイント

現物確認と信頼できる情報発信

バイヤーはパンフレットやWebサイトの美辞麗句よりも、「現物」「現地のリアルな状態」「生産者の想いと姿勢」を重視します。
つまり、実際に現場に足を運び、どこまで真摯に取り組んでいるか、想定外事象が起きた時の対応力、緊急時の連絡体制・レスポンスの速さを細かく見極めます。

コスト・リードタイムだけでない“付加価値”

単純な価格競争になりがちな調達の仕事ですが、台湾向けサツマイモは単価以外にも「現地でのブランド訴求」「品質ストーリー」「エコやSDGs視点」が選定基準に加わっています。
パートナーとして長く付き合う中で、こうした価値提案ができる事業者は評価が高まります。

現場からのラテラルな提案：昭和的アナログ調達からの脱却

いまだに日本の産地現場では、FAXや紙伝票でのやりとり、口約束に頼る部分が根強く残っています。
製造業での改革の経験をもとに考えると、アナログな現場でも以下のような小さな変革から「確実な調達」と「選ばれるサプライヤー」への第一歩が踏み出せます。

– 出荷伝票・作業記録の簡単なデジタル化（Excelやスマホアプリを活用）
– 現場写真・動画をLINEなどで定期共有し、現地の「見える化」
– 調達管理担当者と農家が1ヶ月ごとの状況共有会を開催（オンライン可）
– 台湾バイヤーへの定期的な栽培状況・品質リポート発信
– 加工所・ヤード・物流業者含めた「現場見学会」開催

こうした小さな積み重ねが「透明性」と「安心感」を生み出し、最終的には価格以上の信頼獲得につながります。

まとめ：調達と供給業者選定の要諦

台湾市場向けに国産サツマイモを調達する最大のポイントは、単なる「価格と数量」主義ではなく、「現場との共創」「リスクマネジメント」「バイヤー目線での付加価値提案」にあります。
長く続く信頼関係と双方向の情報共有、現場改善に前向きなサプライヤー選定が、持続的な競争優位につながります。

昭和の枠組みから一歩抜け出し、現場×デジタルのミックスによる新たな調達スタイルをめざしてみましょう。
台湾と日本を繋ぐサツマイモサプライチェーンの最前線で、現場ならではのプロ意識とラテラルな発想で、新たな地平を一緒に切り拓いていきましょう。