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スマホ画面の指触感を決める表面コーティングとナノ研磨工程

目次
はじめに:スマホの「指触感」を作る裏側には何があるのか
スマートフォンの画面に触れたとき、「なめらか」で「すべりが良い」と感じた経験は誰にでもあるでしょう。
実はこの“指触感(ししょっかん)”は、単なるガラスの滑らかさだけで決まるわけではありません。
その裏側には高度な表面コーティング技術と、ナノスケールで管理された「研磨工程」が隠れています。
本記事では、20年以上の大手製造業現場での経験を交えながら、現場目線で「スマホ画面の指触感を決める技術」と、そこで活躍する調達・品質管理・生産管理・自動化といった業界のリアルをひも解きます。
「バイヤー目線」「サプライヤー目線」両方から、現場に根強く残るアナログな課題や、時代の進化に現場はどう向き合っているのかも解説します。
なぜ“指触感”が重要なのか?エンドユーザーの体験から逆算する工場現場
スマートフォンはもはや単なる通信機器ではありません。
多くのユーザーが1日に数十回、あるいは100回以上も“画面”を指で触ります。
その都度、滑りが悪い・ベタつく・指紋が残るといったトラブルが、
SNSや口コミで一気に拡散する時代です。
工場の現場では「指触感=ブランド体験価値」であり、ユーザー体験を構成する“見えない品質”の一つです。
もう一つ注目したいのは、BtoBのバイヤーや設計担当者です。
彼らはスペックや数値だけでない、実際の触感・エンドユーザーの「感覚品質」を強く意識し始めています。
こうした視点から、調達購買が求める要件も「表面粗さRaの管理だけ」「コーティング膜厚の保証だけ」といった数値管理ではなく、“仕上がりの質感”や“長期耐久性”へと変化しています。
指触感を決定づける2つの柱:コーティング技術とナノ研磨工程
スマホ画面の指触感を作る主な要素は、「表面コーティング」と「研磨(ポリッシング)」です。
この2つは連携して製品価値を最大化しますが、現場課題も複雑です。
表面コーティングとは何か?最新技術とその進化
スマホ画面に主に使われているのは「ガラス」素材、具体的には「アルミノシリケートガラス」(いわゆるゴリラガラス等)が主流です。
ここに、指滑りをよくし、汚れ・指紋をつきにくくし、傷を防ぐ「表面コーティング」が施されます。
コーティングの主な種類は以下の通りです。
・フッ素系コーティング
・シリコーン系コーティング
・疎水性透明膜
・オレオフォビックコート(耐油性膜)
特に近年主流の「オレオフォビックコート」は、油・汗・指紋の付着を防ぐ効果が高く、触り心地もツルっとなめらかになります。
このコートは薄膜で数十ナノメートル(nm)。コントロールが難しく、納入仕様・検査工程の工夫が求められます。
一方で、メーカー・バイヤー側は下記を重視します。
・コーティングの均一性(膜厚ムラなし)
・初期“指滑り”と時間経過後の“耐久性”
・プレッシャーや摩耗での剥離耐性
これらの要件を満たすには、調合から塗布、乾燥・焼成(or UV硬化)、検査まで一貫した工程設計が必要です。
ナノ研磨工程:数値管理から“仕上がり感覚”への進化
コーティングを効果的に機能させるためには「ガラス基板そのものの“平滑度”」が重要です。
この工程が「ナノ研磨(ナノポリッシュ)」です。
従来、ガラス研磨は表面粗さRaで管理されてきました。
しかし、スマホ用途ではRa(平均粗さ)だけでなく、「Rz(最大高さ)」や「ピット(クラック)密度」「サブミクロン傷」の有無といった、より深い管理項目が求められます。
0.5nm単位、時にはサブナノ単位でのコントロールが不可欠です。
さらに悩ましいのは「実際の指で触った感覚と、数値が一致しない」現場ギャップです。
そこで現場では、管理値+“官能評価”手法(熟練作業者の指触感チェック、摩擦係数の特殊測定器活用等)も併用します。
昭和型の「職人技」×「最新検査データ」のハイブリッド運用が今でも根強く存在しています。
バイヤー・サプライヤー間に根強く残る“アナログギャップ”
ここからはバイヤー(調達担当)、サプライヤー(供給工場)それぞれの現場目線で、表面処理の“見えない課題”に迫ります。
調達購買(バイヤー)が悩むポイント
工場への要求仕様を出す場面では、「数値で管理できる項目」と「感覚価値」をどう両立させるかが悩みの種です。
・サプライヤーからの品質波動(ロットごとの微妙な違い)
・輸入ガラスと国産ガラスのコーティング親和性差
・巨大な生産ロット中の“レア不良”抽出・判定手法
・現地現物サンプルと検査データのギャップ
サプライヤーとどう落とし所を作るか、単なる「スペック交渉」だけでなく、テストピースの立会評価や「現物すり合わせ会議」も今なお重要業務です。
サプライヤーが直面する現場・品質課題
サプライヤー側では、下記のような声が絶えません。
・ナノスケールで安定再現するのは容易でない
・夜間・連続運転時の設備FDC(故障検知)と品質保証
・コーティング薬剤の経時劣化・LOT管
・エンドユーザーの「指感覚」でよくある“異議申し立て”
事実、一定条件では“数値OKだが現物NG”という判断も大量生産ラインでは散見されます。
この溝を埋めるため、現場作業者のスキル維持、AIカメラや摩擦測定の自動化導入、検査・記録のデジタル化など、地道な改善の積み重ねが欠かせません。
業界アナログ文化の“昭和的”現実と未来:自動化の限界と可能性
スマホ業界は最先端のイメージが強いですが、製造現場・品質評価の領域では今なお“昭和から令和への橋渡し期”といえます。
残るアナログ:現場官能評価の意義
どれだけ自動化が進んでも、指触感を本当に最終的に保証できるのは現場熟練者の“官能評価”が今でも重要です。
特に量産初期・Lot切替時・クレーム対応時には
「〇〇さんがOKと言ったから安心」
といった現場基準が確実に存在しています。
この点はBtoC製品の“感覚品質”という難しさを象徴しています。
AI/DXの導入とその限界
摩擦係数測定や外観カメラ検査、AIによる画像判定など自動化が進み、
異常検知速度は昔とは比べものになりません。
しかし最終判断や、異常値発生時の「現物現地確認」は依然として人の感覚が不可欠です。
人間の“皮膚の滑り具合”や“わずかなひっかかり”に匹敵するAI判定にはもう少し時間とノウハウ蓄積が必要です。
現場力を高め、業界を刷新するには:バイヤー・サプライヤー協働の新しい形
調達・品質・生産管理と現場の現実をふまえ、大手メーカー現場で蓄積されたベストプラクティスを紹介します。
クロスファンクショナルチームの強化
調達、技術、生産、品質保証、サプライヤー現場リーダーが一堂に会する「クロスファンクショナルチーム(CFT)」の運用は今や必須です。
数値(スペック)+感覚(触感)+納期・コスト、全てをバランスさせる“現場主導型ものづくり”が追求されます。
工場長経験から言えば、「現物すり合わせ」「現場内検討会」「共同品質評価」こそ、結果的に全体最適を実現します。
デジタル×アナログの融合で現場力UP
AI・DX活用と職人技の融合で、「ナノ研磨」「コーティング管理」のイノベーションは着実に前進しています。
たとえば、
・ラインごとに摩擦係数のリアルタイムモニターを導入
・異常時の履歴データを分析、再現試験を短期間で実現
・サプライヤー間で「良品現物+検査データ」を共通化
など、部分最適→全体最適への動きが進んでいます。
「昭和的な伝統」と「デジタル新技術」の相乗効果が、まさに今の現場競争力の源泉です。
まとめ:指触感の裏側にある、製造業現場力の真髄
スマホ画面の“滑らかさ”や“指触感”は、エンドユーザーの見えないところで、最先端技術と伝統的職人技が組み合わさって生み出されています。
その工程には、調達購買が求めるスペックと現場が守る品質、高度に自動化された測定技術と人の感性、サプライヤー現場の努力など、膨大な知見と経験が活かされています。
バイヤー・サプライヤー両者が現場目線で歩み寄り、昭和的職人技とデジタル新技術を柔軟に取り入れていくことが、
これからの日本の製造業を世界で戦える“現場イノベーション”へと押し上げてくれるはずです。
製造業に関わるみなさん、ぜひ現場を知り、開かれた対話で新たなものづくりの地平を切り開きましょう。
(本記事が現場最前線で悩む方々の一助となれば幸いです。)
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