投稿日:2025年10月21日

中小企業がリモートで全国商談を進めるためのプレゼン構成と資料演出

はじめに〜令和時代の商談はオンラインが主流へ〜

製造業を取り巻く環境は、ここ数年で劇的に変化しました。
DXの文脈のみならず、パンデミックをきっかけとしたリモート商談の定着、そして少子高齢化による人材不足といった課題が、中小企業にも大きなインパクトを与えています。
従来、商談といえば出張と対面が当たり前でしたが、今は全国どこへでも“オンライン”で繋がれます。

とはいえ、昭和から続くアナログな風土が色濃く残る製造業界では、「リモート商談で成果を出せるか不安」と感じる声も多く聞かれます。
差別化につながる訴求、相手の懐に飛び込むトーク、資料の工夫――。
現場感覚と経験をもとに、“アナログ業界でも通用するオンラインプレゼン”のコツを掘り下げます。

なぜリモート商談のスキルが今、求められるのか

国内マーケット縮小への対応策

日本の製造業市場は、人口減少やグローバル競争を背景に今後も縮小傾向が続くでしょう。
その中で新規顧客の獲得や、新たなサプライチェーンの構築には物理的な距離を超えたアプローチが不可欠です。

バイヤーは“効率”重視、アナログな印象は不利

発注者(バイヤー)サイドもリモート対応に前向きです。
むしろ移動や紙資料、無駄な雑談は「アナログで非効率」とすら受け取られます。
今や“リモート商談慣れ”はバイヤーにとって親しみやすさや信頼感とイコールなのです。

設備投資と違い“知恵の投資”で挑める

高額な設備導入やIoT化の前に、まずはリモート商談のスキルアップ――。
プレゼン構成力や資料演出は、費用をかけずに始められる「知恵の投資」です。
現場の“今ある強み”を最大限に活かしましょう。

現場目線で考える、リモート商談プレゼンの基本構成

バイヤー心理から逆算する〜「時間短縮」と「即決材料」

全国のバイヤーを何百人とお会いし、痛感したことがあります。
それは、「初回商談」でどれだけ信頼を引き出せるかが勝負だということです。
特にリモートでは、いかにバイヤーの「時間を奪わないか」「判断基準を明確に示すか」が重要です。
そのための構成案を紹介します。

オンラインプレゼンの理想の流れ

1. ご挨拶(1〜2分)
2. 本日の商談目的・全体アジェンダ提示(1分)
3. 御社紹介&独自強みの提示(3分)
4. 実績・事例紹介(3分)
5. バイヤー課題へのアプローチ提案(4分)
6. 差別化ポイントの“可視化”(2分)
7. 質疑応答(5分〜適宜)
8. クロージング〜今後の進め方(2分)

要点は「情報量を絞る」「論点を明快にする」ことです。
一方的な自社説明より、常に「御社にこう貢献する」という視点でまとめるのがポイントです。

現場経験者だから分かる“落とし穴”と注意点

・「歴史や沿革」は簡潔に──
昭和的価値観では長い社史が誇りです。
しかしバイヤーは将来性やコストダウン、その“根拠”を重視します。
沿革より、最新設備や実績例を強調します。

・伝えたい情報を「1画面1メッセージ」で──
パワーポイントで複数事項を詰め込むと“読む時間ロス”が発生。
画面共有では1メッセージ1スライド、視線移動を最小化する意識が大切です。

・スペック“だけ”では刺さらない──
「どこの会社もできそう」「御社の特徴は?」となりがちです。
なぜそのスペックが必要とされたか、実際に現場トラブルをどのように解決したか等、ストーリー性を持たせれば記憶に残ります。

印象に残るプレゼン資料演出のポイント

昭和アナログから抜け出せない業界事情に着目

製造業特有の“見えない価値”――
たとえば現場のきめ細やかな段取り、突発対応力、安全体制、熟練作業員のノウハウ。
紙や文章では伝わりにくいこれらの無形資産を、オンライン商談でいかに“可視化”するかがポイントです。

図や動画を“現場目線”で使いこなす

・動画/写真でコンパクト工場や工程の流れを見せる
・トラブル対応実績は「ビフォー/アフター」式に描写
・現場リーダーの生の声を一言紹介
・製品比較表の横に「納期短縮」「歩留まりUP」の実績値を添える

バイヤーは「理屈」より「現物」を見たがるものです。
一方で現場工場はリモート動画や画像の発信が苦手なことも多いです。
ですが、スマホやタブレットで撮影した短い映像でも十分効果的です。
臨場感や“現場らしさ”を損なわず、等身大の姿勢を見せてください。

ベテランにこそできる“台本力”

オンライン商談では、「誰がどこをどの順で説明するか」が非常に大切です。
途中で話があちこち飛ぶ、バイヤーの意図を無視して自慢話が続く、これでは途中退席や“二度目はない”となりがちです。
役割分担を明確にし、必ず事前にロールプレイ(練習)をしましょう。

筆者は工場長を務めた経験から、現場担当と営業担当が“思いを一つ”にする大切さを痛感しています。
オンラインこそ「連携プレー」が物を言います。
資料ごとに話者を変えたり、「現場社員の生コメント動画」をプレゼン途中に挟むと、良いアクセントになりバイヤーの印象にも強く残ります。

オンライン商談を制するための、現場からのアドバイス

バイヤーは「製造現場の課題解決」を常に求めている

「どうしても価格勝負になる」「規模が小さいから相手にされない」。
これは多くの地方メーカーや中小現場に共通する悩みです。
しかし、バイヤーの本音は「技術課題を一緒に乗り越えてくれる相手」を探すことにあります。
たとえば、
・歩留まりが悪い部材を改善する提案
・突発生産や設計変更に柔軟に応じられる体制
・IoTやデータ活用など“将来提案”も視野に入れた提携姿勢

これらを“具体的なエピソード”と共に伝えましょう。

定期的な情報発信で覚えてもらう

オンラインだからこそ、資料送付や動画・現場レポートなど「定期的な情報発信」がやりやすい時代です。
月に1度の新製品情報や現場改善トピックスを、簡単なメールニュースとして送信してみてください。
“顔の見えない商談”こそ、こうした継続的な接点づくりで信頼構築が進みます。

「仲間」という視点でバイヤーと向き合う

買い手-売り手という構図ではなく、「同じモノづくり仲間」として悩みや課題をシェアする。
その共感姿勢があれば、リモート商談で距離はぐっと近づきます。

まとめ〜デジタル時代の“現場感”が差を生む

リモート商談は、単にツールの違いではありません。
情報伝達の効率、現場強みの“見える化”、連携力――。
これらはすべて昭和アナログ時代から続く「モノづくり現場」の底力です。

“現場でしか知りえない課題”に寄り添う提案と、デジタルを使った資料演出でアピールすれば、中小企業でも全国区のビジネスチャンスは広がります。

「リモートだと熱意や信頼が伝わらない」と嘆く前に、現場の志をしっかり可視化・言語化しましょう。
オンライン商談は、現場の本気度を全国へ発信する最大の武器となります。

ぜひこの記事が、昭和世代から令和世代まで幅広い製造業従事者、バイヤー、サプライヤーの皆さんにとって、実践のヒントとなれば幸いです。
皆さんのビジネスが、リモートを味方につけて大きく飛躍することを願っています。

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