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投稿日:2025年7月4日

複合材料損傷評価と信頼性設計で耐久性を高める力学的特性活用

はじめに:複合材料の可能性と製造業における課題

製造業の現場では「生産性」と「耐久性」は永遠のテーマです。
特に自動車や電機産業、さらには航空宇宙やエネルギー分野では製品の安全・信頼性への要求が年々厳しくなっています。
このような背景から、従来の金属材料を凌駕する特性を持つ複合材料への注目が高まっています。

複合材料は樹脂や繊維、金属といった異なる材料の長所を組み合わせ、軽量で高強度、かつ耐熱性や耐腐食性に優れるというメリットがあります。
その一方で、損傷メカニズムが複雑であり、「どう壊れるか」「なぜ壊れるか」という本質的理解と、信頼性設計のアプローチが不可欠です。

今回は、私が長年現場で向き合ってきた複合材料の損傷評価、そして力学的特性をどう活かしながら安全で長寿命な製品へと昇華させていくか、その実践的なポイントを深堀りします。
バイヤー志望者やサプライヤーの方々にも、最新の業界動向や商談現場の“思考のツボ”が腹落ちする内容をお届けします。

複合材料の基礎:なぜ今、複合材料なのか

軽量化と高機能化の両立

複合材料は、鉄やアルミなど単一材料では成し得ない性能を持ち、
「軽さ」と「強さ」を両立します。
自動車での燃費向上やCO2削減、航空機での安全運航、エレクトロニクス分野での高精度化など、さまざまな領域で利用が進んでいます。

設計自由度の高さ

形状や構造にあわせて材料の成分や積層順を変えられるため、最適な製品設計が可能です。
かつての大量生産型から多品種少量生産への転換で、カスタムメイドにも高い相性をみせます。

複合材料の損傷機構の理解が信頼性設計のカギ

複合材料は、金属材料のように「クラック1本で破断する」とは限りません。
材料のどの部分が、どんなプロセスを経て損傷するのか。
そこに現場で失敗もしながら蓄積した知見が重要になります。

層間剥離・繊維破断・マトリックスクラックの多発

複合材料は樹脂や繊維など、複数の材料を重ね合わせているため、損傷が「面」単位、「線」単位、「点」単位と多様です。
特によくある損傷パターンは次の三つです。

・層剥離(デラミネーション):積層界面での剥離
・繊維破断:力が集中して一部繊維が切れる現象
・マトリックスクラック:母材樹脂部分の割れやヒビ

損傷メカニズムが複雑であり、単一材料時代と異なる評価ノウハウが問われています。

現場での損傷評価のポイント

昭和から残るアナログ的発想だと「製品不良=目視検査や破壊検査」となりがちです。
しかし複合材料では、微視的な損傷が目に見えない場合も多いため、非破壊検査(X線、超音波、デジタルイメージングなど)が必須です。
現場目線でいえば――

・「どのタイミングで、どこまで許容できるのか」
・「損傷が進行中でも、安全性をどう担保するか」
・「検査コストと信頼性のバランスはどこか」

こうした判断軸を経験とデータで裏打ちすることが必要です。

力学的特性試験の進化と耐久設計への応用

従来の引張・曲げ試験から複雑負荷への対応へ

古くから行われてきた試験法(引張試験、曲げ試験)は今なお重要ですが、複合材料の場合はより現場に近い“繰り返し負荷”や“衝撃”、“異方性”を考慮する必要があります。
多軸方向から力が加わるため、単軸荷重だけを評価しても現物品質を保証しきれません。

FA(工場自動化)による測定精度・再現性の向上

最近の工場では非接触型測定機器や自動データ記録装置が導入され、人手によるばらつきを排除できるようになりました。
しかし、数値化・自動化だけでは評価できない「現場感」――たとえば、成型時のわずかなズレが損傷起点になるという経験値――も同時に大切です。

損傷許容設計(ダメージトレランス設計)へのシフト

航空業界などを皮切りに、「全きれいな状態」だけでなく「微小な損傷があっても安全機能を保証する」設計思想が浸透してきました。
具体的な耐久設計は、
・既知の損傷分布と実験データを組み合わせた“損傷許容限界”設定
・検査インターバルやコンディションモニタリングとの統合
が主流です。

信頼性設計の新潮流と調達・バイヤー視点での交渉ポイント

“スペック重視”から“ライフサイクル重視”へ

かつての購買担当者(バイヤー)は、スペック・コスト優先で材料選定しがちでした。
しかし今では「アフターサポート」「点検周期」「実運用下の耐久データ」までトータルで提案できることが信頼されるバイヤー像です。

たとえば、
・材料サプライヤーがどこまで損傷評価・非破壊検査のサポートを提供できるか
・素材ロット間の個体差(バラツキ)やトレーサビリティ対応力
・全体最適(TCO視点)でコスト換算したときの優位性
こうした項目が商談現場の“勝ち筋”になっています。

サプライヤーが知るべきバイヤー心理

サプライヤーの立場からすると「材料性能が最優先」と思いがちですが、バイヤーとしては
・「製品不良が発生したときの補償対応力」
・「カスタマイズ要望への柔軟性」
も大きく評価ポイントとなります。

現場発信の“使い勝手”や“不具合再発防止策の提案力”まで踏み込むと、サプライヤーのブランド力を高める大きな武器になります。

工場の現場が語る、複合材料活用の成功と失敗

失敗から学ぶ、昭和的発想の弱点

たとえば、私自身が体験したケースですが、
「見た目は問題ない」と納入された複合材料の部品が、わずかな層間剥離で早期に破損したことがあります。
これは当初、従来型(単一材料時代の目視+破壊検査)しか実施していなかった現場が、非破壊検査の重要性に気づかなかったことが原因でした。
以降、現場工員全員への教育と検査プロセスに非破壊診断装置導入を決定し、大幅な不良削減につなげました。

成功する現場は「伝える力」「越境する関心」が強い

うまくいっている現場は、「設計」「生産管理」「購買」「品質管理」が壁を作らず連携できています。
複合材料の損傷評価データや信頼性設計の進捗を、社内外で“可視化・共有”する工夫こそが、全員で品質課題をクリアする力の源泉です。

まとめ:変革期を迎えたアナログ業界に必要な視点

複合材料という新しい地平線は、私たち製造業人の現場力、すなわち「失敗から学ぶ胆力」と「データと現場知識を往復する多面的視点」によって真価を発揮できます。
単なる性能比較やコストダウン競争ではなく、損傷評価および信頼性設計をビジネスに落とし込む“本質を突いた取り組み”こそが、これからの製造業を牽引します。

バイヤー、サプライヤー、現場技術者が同じテーブルで「なぜ壊れるのか」「どうすれば壊れないか」を共通言語で語れるかどうか――。
これが、複合材料時代の勝者になるためのエッセンスです。

今後も現場の知見や業界トレンドを磨き続け、より良い製造現場づくりにお役立ていただける情報を発信してまいります。

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