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雑貨店がオリジナル照明を製造するための電気設計と安全基準の基礎

目次
はじめに:雑貨店がオリジナル照明製造に挑戦する時代
近年、雑貨店やインテリアショップがオリジナル照明の開発・製造に取り組むケースが増えています。
大量生産された画一的な照明ではなく、店舗独自の世界観やストーリー性を盛り込んだ商品が求められています。
現場目線では、ただ「かわいい」「ユニーク」というデザイン性だけでなく、「使うお客様の安全を守る」という原点を忘れることなく設計しなければなりません。
本記事では、オリジナル照明を製造するために雑貨店が最低限知っておきたい電気設計と安全基準の要点について、現場経験を交えながら解説します。
また、調達購買やサプライヤー視点、現代のアナログ慣習が残る製造業界のリアルにも触れながら、新たな地平線を開拓するヒントを提供します。
オリジナル照明製造への第一歩:アイディアから設計へ
発想の転換が生む“雑貨店ならでは”の照明
雑貨店が照明づくりに取り組む際、多くは「他にないデザイン」や「この空間に合う唯一無二の照明」というアイディアからスタートします。
この発想は大変重要ですが、製造現場では「安全性」や「製造可能性」も同時に考慮しなければなりません。
間違えやすいポイントは、「市販のパーツを組み合わせれば簡単に作れる」と考えてしまうことです。
実際には、すべてのパーツが組み合わさったときの電気的な整合性や、長期間使用される中での耐久性が求められます。
設計構想段階で押さえるべきポイント
設計段階では、下記の4つの視点をバランスよく反映させる必要があります。
1. デザインコンセプト(外観、色、サイズ)
2. 使用する素材・パーツの選定(耐熱性、強度、入手性)
3. 電気的安全性(漏電防止、絶縁仕様)
4. メンテナンス性・耐久性(電球交換、掃除のしやすさ)
このうち特に「2」と「3」は、後述する法的基準とも密接に関わります。
商品企画段階でサプライヤーや外部エンジニアと密にコミュニケーションを取り、現実的な設計を心がけましょう。
照明器具の電気設計:絶対に外せない基礎知識
回路設計の基本と注意点
照明器具における電気設計とは、電球・LEDなどの光源に安全かつ安定して電力を供給するための回路と構造を設計することです。
最も基本的なポイントは以下の3点です。
– 使用する電源(日本の一般家庭ならAC100V/50Hzまたは60Hz)
– 許容電流・許容電力(消費電力の上限、ブレーカーとの関係)
– 電気配線の選定(太さ=耐容量、被覆材の耐熱性能)
雑貨店が陥りがちな失敗として、「見た目重視で細い配線や非推奨のパーツを利用」という事例が多く見られます。
これらは発火や漏電のリスクを高めるため絶対に避けなければいけません。
LED化のメリットと専門知識
近年の主流はLEDを使用した照明です。
LEDは省電力かつ長寿命ですが、直流(DC)電源で動作するため、交流(AC)100Vと接続する際はAC-DCアダプターや専用ドライバーが必要となります。
正しく選ばれたドライバーでない場合、寿命が大幅に短くなったり、異常な発熱、最悪の場合発火の危険性もあります。
光源調達の際には、メーカーの仕様書を必ず読み込み、「推奨ドライバー」や「定格電流・定格電圧」に合った回路設計を守りましょう。
安全設計の要所
安全設計のために押さえるべきポイントは以下の通りです。
– 金属部分のアース(接地):万一の漏電時に感電事故を防ぐ
– 配線の絶縁保護・ケーブルクランプ:断線時の感電リスクを減らす
– 過電流防止ヒューズの設置:電気的トラブル時の火災リスクを軽減
– 高温部(電球ソケットまわり等)の耐熱構造化
これらを一つ一つ設計図・試作を重ねて検証することが重要です。
煩雑なうえコストもかかりますが、安全・安心の商品づくりの基本であるため、絶対に手を抜いてはいけません。
照明器具に求められる主な安全基準と法規制
電気用品安全法(PSEマーク)とは
日本国内で販売する照明器具には「電気用品安全法(PSE)」の適合が必須です。
これは、製品が定められた技術基準(絶縁・耐熱・強度等)をクリアしていることを第三者機関や自主検査等で確認し「PSEマーク」を表示する法的義務です。
PSEを取得せずに販売すると罰則を受ける可能性があります。
またPSEマークにも2種類(○PSE、◇PSE)があり、それぞれ対応する製品分類が異なるため注意が必要です。
その他の関連法規やガイドライン
– JIS規格・IEC規格:配線、ソケット、スイッチ等の細かな設計基準
– 消費生活用製品安全法、PL法:事故発生時の責任やリコール対応
– 各自治体の火災予防条例:飲食店等で使用する場合の追加条件
これらは雑貨店が自社設計・製造する際にも関係してきます。
例えば「PSE取得」はサプライヤー任せにせず、自店でも基礎知識を持つことが必要です。
サプライヤー選定時には「PSE取得実績」や「PL保険加入の有無」などの確認を必ず行いましょう。
アナログからの脱却:現場で求められる調達・生産管理の新常識
“昭和方式”の課題と進化のポイント
製造業では未だにFAXや電話、紙の見積書が飛び交うなど、アナログな慣習が色濃く残っています。
しかし、オリジナル照明のような多品種少量生産の時代では、このやり方が大きなボトルネックとなりがちです。
・図面修正や仕様変更がリアルタイムに伝わらずミスが生じる
・一点限りの注文で材料調達や工程管理が煩雑化する
・下請け業者との情報の行き違いが事故や不良につながる
現場目線では、こうした旧態依然とした業務フローを見直し、デジタルツール(クラウド型工程管理やデジタル図面共有)を活用して、迅速かつ正確な連携を図ることが急務です。
サプライヤー選定のカギとなる視点
調達・購買部門やバイヤー視点では、サプライヤーを単なる「安い業者」で選ぶ時代は終わりを迎えています。
特にオリジナル照明のようなリスクが高い製品では、以下のような視点が大切です。
– 法令遵守(コンプライアンス)の徹底
– 技術力、開発提案力(設計図面の読み書き、法規格への対応力)
– 品質保証体制(検品・トレーサビリティー・クレーム対応)
– コミュニケーション力(現場との双方向型の連携)
「下請け」から「共創パートナー」への発想転換が、製品開発の成功に大きく影響します。
現場主導の品質管理とPDCAの実践
昭和からのアナログ業界では、品質トラブルが発生しても「現場任せ」「属人的な処置」で済まされがちです。
しかし現代は、小ロット生産やEC流通の拡大により、単発の失敗がSNS等で一気に拡散し、ブランドイメージの毀損に直結します。
「不良流出が起きない現場環境」「トレーサビリティを確保した部材調達」「迅速なリコール・報告体制」など、全工程で現場主導のPDCAサイクルを実践していくことが重要です。
技術面・コミュニケーション面でも「一人ひとりが主役」の意識をもつことで、全体最適化を図りましょう。
バイヤー・サプライヤーへのアドバイスと今後の展望
バイヤーが知っておきたい実践的観点
新規サプライヤー選定やオリジナル製造の立ち上げ時、バイヤーには「自分も現場目線で考える」ことが求められます。
– 仕様書通り=安全、ではない現場の実態
– 設計と現場のギャップ(現場はどうやって安全性を担保しているか)
– アナログ本位な連携で起きやすいトラブル
見積金額の安さや納期だけでなく、「このサプライヤーは自社ブランドの顔になれるか?」を多角的に判断しましょう。
サプライヤーに求められる新たな価値提供
一方サプライヤーは、単なる「作業の請負」から一歩進んで、商品安全・品質管理・デジタル化などの“支援”を積極的に提案できると、大きな信頼に繋がります。
– PSE認証支援や、必要書類の電子化
– 生産ロットごとの検査記録・トレーサビリティ情報の見える化
– 店舗スタッフへの安全研修会開催
など、雑貨店側の目線に立ったサービスを醸成することで業界全体のレベルアップに寄与できます。
まとめ:雑貨店発“安全で魅力的な照明づくり”のために
雑貨店によるオリジナル照明の企画・製造は、「自分たちらしさ」と「お客様の安全」の両立が求められる非常にチャレンジングな取り組みです。
製造現場のリアルやアナログな商慣習を知った上で、企画設計から調達・品質管理まで一貫した安全意識を持ち続けることが鍵となります。
さらにこれからの時代、バイヤーもサプライヤーも「現場目線のラテラルシンキング=横断的な発想」で価値を再定義し、共に新しい地平線を切り開いていくことが不可欠です。
安全で魅力的な雑貨店発の照明が一つでも多く世の中に生まれることを願い、本記事を締めくくります。
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