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リチウムイオン電池の安全性向上技術と国内外規格・ガイドラインおよび今後の動向

目次
はじめに:リチウムイオン電池と製造業の責任
リチウムイオン電池(LiB)は、スマートフォンやノートパソコン、自動車、産業用ロボットなど、今や私たちの生活や産業活動を支える基盤技術となりました。
軽量で高エネルギー密度、長寿命を誇る一方で、「発火」「爆発」などの重大事故が後を絶たず、その安全確保は製造業界全体の喫緊の課題です。
この問題を適切に解決するには、現場で鍛えられた知恵と、最新の技術動向、グローバルな規格の理解が不可欠です。
今回は、リチウムイオン電池の安全性向上技術と国際・国内の規格・ガイドライン、そして今後どのような動きが予見されるのか、現場目線とバイヤー視点を織り交ぜて深掘りします。
リチウムイオン電池の基本構造と安全リスク
リチウムイオン電池の構造
リチウムイオン電池は、正極(主にコバルト酸リチウムなど)、負極(グラファイトやリチウムチタン酸化物)、セパレータ(絶縁体)、そして電解液(可燃性の有機溶媒)から構成されています。
この「正・負極と電解液」という組み合わせが高いエネルギー密度を実現しつつも、ひとたび短絡や過充電が起こると、激しい発熱・ガス発生・発火・爆発といった重大事故に至るリスクがあります。
現場視点の主な事故原因
現場で実際に起きる事故の原因は、多くの場合「製造工程の異物混入」「圧着不良」「セパレータの劣化」「バッテリーマネジメントシステム(BMS)の設計不良」などです。
従来の「なんとなく不安、でも歩留まり重視」の職人的現場運用が、規模拡大するほど安全確保のボトルネックとなっています。
安全性向上技術の最新動向
材料・構造改善による技術的ブレイクスルー
安全用ヒューズ内蔵のセル設計、セラミックコートや高耐熱性ポリマーの採用、そして次世代材料(全固体電池など)の研究が進んでいます。
特に目立つのが、「難燃性電解液」や「非可燃性ゲル化電解質」といった難燃材料の実装、外部圧力・釘刺し・過充電等の試験に適応したセル構造の進化です。
バッテリーマネジメントシステム(BMS)の高度化
温度センサーや電圧監視を多点で行い、セルバランスをリアルタイム制御するシステムが主流です。
AI制御やIoT連携の導入で、「異常予兆検知」や「遠隔シャットダウン」による高度な安全対策も商用化が進んでいます。
一方で、昭和的な「人頼み」の検品・パトロール文化が根強く残る現場も多いのが現状です。
現場実践:歩留まりと安全の両立
私の経験則上、歩留り向上と安全性担保は一見相反するものですが、「FMEA(故障モード影響解析)」や「FTA(フォールトツリー解析)」を現場主導で徹底すること。
またライン・設備点検の標準作業書化&DX化を並行推進することが、アナログ業界から脱皮する第一歩です。
国内外の安全規格・ガイドライン
世界的な動向(UL・IEC・UN)
まずリチウムイオン電池の安全規格で国際的に最も影響力が大きいのが、米国のUL(Underwriters Laboratories)やIEC(国際電気標準会議)基準です。
代表的には以下となります。
– **UL1642**:リチウム電池のセル自体の安全基準
– **UL2054**:組電池パックの安全基準
– **IEC62133**:世界各国で採用される「携帯型の二次電池」の国際規格
– **UN38.3**:航空貨物や国際輸送で義務づけられる基準(過充電、外部短絡、高度、温度サイクルなどの試験が必須)
これら海外規格に未対応だと、大手バイヤーのサプライチェーンから排除されるリスクが高くなります。
日本国内の規格・ガイドライン
– **JIS C8712**:「小形二次電池」向け日本工業規格
– **PSEマーク(電気用品安全法)**:家庭用・業務用バッテリーに必須
– **NITEのガイドライン**:経済産業省傘下の製品評価技術基盤機構。事故原因分析・リコール要請など
– **JBAガイドライン**:(一般社団法人電池工業会)出荷前セル・パックの試験・ラベル表示推奨
昨今、リチウムイオン電池のリコールや発火事故増加を受けて、各団体・行政による指導やPSEマークの認証も一層厳格化の動きを見せています。
バイヤー・サプライヤー双方が注意すべき点
今や大手バイヤーは「調達要求仕様書(RFI/RFQ)」の中に、上記規格準拠+自社独自の信頼性・安全試験要求を盛りこむのが常識です。
逆にサプライヤー側も「規格適合への技術的根拠」「トレーサビリティの維持」「第三者認証取得状況」を整理し、バイヤーへの開示体制を構築することが急務となっています。
これからのトレンド:安全×DX×グローバル標準化
全固体電池など新技術動向
現行のリチウムイオン電池のリスクは「液体電解質の可燃性」に集約されますが、全固体電池やリチウム金属負極の次世代バッテリーが注目されています。
これらは根本的な安全性の飛躍をもたらすと同時に、一部で「既存規格ではカバーできない新リスク」に対する規格改定の必要性も高まっています。
業界のDX化とサイバーセキュリティ
製造IoT・スマートファクトリー化で品質・異常データがリアルタイム集約されています。
しかし、サイバー攻撃や情報漏洩リスクが新たな懸念として浮上してきました。
また現場データの正確な「見える化」と設計段階での「デジタルツイン活用」も、今後の安全保証におけるカギとなります。
グローバル調達とサプライチェーンマネジメント
欧米・中国を中心にリチウムイオン電池サプライチェーンの国際分業が深化するなか、「一手一重」の品質保証ではサプライチェーン断絶のリスクが増大しています。
取引先の規格適合状況や安全保証体制の定期的な監査、「危機対応マニュアル」整備がグローバル調達職には不可欠な時代です。
製造現場ならではの実践アドバイス
アナログ現場の昭和的マインド脱却
日本の現場では今なお「不良は現場で止めれば良い」「異物混入は根性で見抜け」などの属人運用が根強く残ります。
これを脱却し、リチウムイオン電池の国際競争で生き残るには、「現場作業のデジタル標準化」「全員参加型の安全教育」「自工程保証」の徹底が必要です。
現場が地に足をつけて標準作業を維持し、小さな異常をすぐ発見できる風土づくりが、高度な安全規格適合への最短ルートです。
バイヤー・サプライヤーへの提言
バイヤーは「値段」だけでなく、リスク管理・透明性の高い品質保証、法規制適合への「安心」を調達対象とする視点が必要となります。
サプライヤーは「納入品の安全設計」「トレーサビリティ運用」「実際の事故対応シナリオ」の説明責任を果たすことで、長期的なビジネスパートナーシップを強化できます。
おわりに:リチウムイオン電池の安全文化が未来を創る
リチウムイオン電池の安全確保は、もはや単なる製品評価やコスト問題にとどまりません。
グローバルな規格適合、工程DX化、多様な人材活用など、業界全体の改革と成長の象徴となりつつあります。
現場で経験を積んだひとりとして、「昭和のアナログ文化」から脱し、世界基準の安全文化をいち早く現場全体で実践していくこと。
そして、バイヤーもサプライヤーもお互いを信頼し合う強固なサプライチェーンを築いていく必要性を強く感じます。
この記事が、製造業の皆さんの現場改革や、さらなる安全技術開発の一助になれば幸いです。
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