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投稿日:2025年6月10日

LEDの故障事例と寿命予測標準規格および信頼性向上への活かし方

LEDの故障事例と寿命予測標準規格および信頼性向上への活かし方

はじめに:製造業の変革とLEDの重要性

製造業では、省エネルギーや環境負荷低減の観点から、LED(発光ダイオード)が多くの現場で導入されています。

照明だけでなく、インジケータや制御パネル、検査装置など幅広い用途で活用されており、その信頼性と耐久性が現場稼働率を左右する重要な要素となっています。

しかし、昭和から続くアナログ思考が残る現場では「LEDは切れにくい」という漠然としたイメージが先行し、故障の本質や寿命予測の考え方が十分に定着していない場合が少なくありません。

この記事では、実際の工場運用者の目線からLEDの故障事例や寿命予測規格、品質・信頼性向上のための具体的な活用方法について、現場発想で深掘りします。

LEDの基本構造と主要故障モード

LED構造の理解が信頼性向上の第一歩

LEDは、半導体チップと発光素子(エミッタ)、それを取り囲むエポキシ樹脂やシリコン樹脂、さらにリードフレームやワイヤボンディング部といった部材から構成されています。

これら部材のどこかが劣化すれば、発光性能の低下や点灯不良につながります。

簡単に、LEDの主な故障モードを3つ挙げます。

主な故障モード1:光量劣化(減光)

最も多いのは、LEDが徐々に暗くなっていく「光量劣化」です。

半導体内部での欠陥発生や、青色LED+蛍光体の組み合わせで蛍光体が変質することで、所定の明るさを下回る現象です。

特に温度や電流ストレスの高い環境では、このモードが現れやすくなります。

主な故障モード2:完全不点灯(Burn-out)

いわゆる「点灯しなくなる」障害です。主因は配線の断線やワイヤボンディングの剥がれ、ESD(静電気破壊)、過電圧・過電流による素子破壊など、多岐にわたります。

製造現場では「突然消えた」と報告されるケースです。

主な故障モード3:色度(色変化)の劣化

長期間使用すると、白から青、あるいは赤みがかった色へシフトする場合があります。

これは主に蛍光体や封止樹脂の劣化が原因で、計装パネルや表示機など、色識別が大切なアプリケーションでは致命傷となる場合もあります。

主なLED故障事例と発生要因

現場で頻発するLED故障事例

20年以上に及ぶ現場経験から見えてきた、LEDの故障事例を具体的に紹介します。

– SMT実装過程での熱ストレス:
リフロープロセス時の急激な温度変化でLED内部配線がダメージを受ける例。
– 静電気対策不備:
挿抜作業時に静電気放電(ESD)が発生し、点灯不良に至るケース。
– 保護回路の設計ミス:
電流制限抵抗の選定ミスやドライバ回路の動作不良で、LED素子が過負荷となり色斑や発光不良になる事例。
– 屋外設置での環境ストレス:
高温・湿度、紫外線暴露など環境変化により、封止樹脂劣化や基板腐食が加速する現象。

こうした現場事例では、「不良が出たその時だけの単発対応」では根本対策になりません。

業界標準規格や寿命予測の考え方を活用することで、初めて踏み込んだ本質改善が実現します。

LEDの寿命予測標準規格とは何か

寿命の目安と考え方:L70・L80とは

LED照明は「何千時間で切れる」という従来の電球と異なり、「光束維持率(L値)」という考え方を採用します。

– L70:初期光束の70%に光量が低下するまでの時間
– L80:初期光束の80%に低下するまでの時間

この「L値」をLED寿命の目安として捉え、例えば「L70=50000時間」といった仕様表記が一般的です。

この基準はIEC(国際電気標準会議)、ANSI(米国規格)、JIS(日本工業規格)などで定められており、調達バイヤー・設計部門が信頼性評価を行う指標となります。

業界標準規格の主な一覧

代表的な標準規格を紹介します。

– IES LM-80:LED光束維持率の測定方法を定めた北米標準規格
– IEC62717:LEDモジュールの性能・試験法
– JIS C 7801:日本産業規格に基づくLEDランプの寿命定義
– TM-21:LM-80データから長期寿命を推定する計算法

現場でよく混同しがちですが、「L値(減光寿命)」と「B値(不点灯寿命)」は異なります。公的規格を正しく理解し、ベンダー選定や購入仕様作成時に生かすことがカギです。

現場マネジメントに必要なLEDの寿命設計と活用法

バイヤーが重視したいポイント

調達や資材管理の立場では、LEDを単なる部品として捉えるのではなく、「どのような作業環境」「どのくらいの温度・湿度」「どれほどの連続駆動か」など、現場目線の運用実態を理解することが極めて重要です。

入手した仕様書や規格データを鵜呑みにせず、実際の設置・運用環境での加速劣化試験や試用評価を取り入れましょう。

調達時には「LM-80レポート」「自己認証データ」だけでなく、実装メーカーでの現場実績や保証条件まで掘り下げることで、「使えるLED選定」が可能になります。

サプライヤーが押さえるべきバイヤー視点

サプライヤーの視点では、バイヤーがどんな要求を持っているか、どの品質リスクを最も恐れているかを定量的に把握し、納入前に様々な問い合わせ事項を想定しておくことが重要です。

たとえば、LM-80データだけでなく「実装回路との組み合わせでの耐熱・耐湿試験」「電源波形のバラツキ耐性」など、現場の不安につながる部分まで答えられれば、信頼獲得につながります。

現場ワーカーが心掛けるべき運用管理

LEDは高信頼部品ではあるものの「設計寿命=保証寿命」ではないことを念頭に置き、予防保全、トラブル発生時の初動対応、交換履歴・測定データのロギングを徹底しましょう。

また、「10年使える」と思い込むのではなく、L値・B値・環境ストレスをもとに、定期的な性能モニタリングや予兆管理を行うことで、重大設備ダウンや納期被害を未然に防げます。

LEDの品質・信頼性向上策:昭和の現場から脱却するために

IoT活用で予兆管理・寿命延命

近年では、照明機器自体にセンサーや通信機能を内蔵することで、電流・温度・点灯時間などを自動収集し、寿命予測や異常発生を早期警告するIoTソリューションも普及しています。

この取り組みにより、昭和型の「壊れてから直す」場当たり対応から、「壊れる前に替える」予防的なマネジメントへ転換できます。

全数検査から工程管理へ:品質の作り込み

従来型のアナログ業界では「100%抜き取り検査」「納入後に発覚」「緊急生産→納期遅延」という悪循環が常態化しています。

現代の製造現場では、LED実装プロセス全体の温度、湿度、電源プロファイル、組立治具の管理を標準化し、不具合再発を未然に防ぐ「工程内品質保証」が必須です。

また、初期故障期間(バスタブカーブ初期部)の対応力向上のため、部品レベルではなく「ユニット/システム」としての信頼性評価も欠かせません。

ラテラルシンキングで新たな地平を切り開く

LEDのトラブル現象や寿命データ、品質管理の手法を「現場目線」で深掘りしていくと、設計・調達・サプライヤー・現場ワーカーなど、異なる立場間での連携と対話が不可欠であることに気づきます。

自社内だけでなく、サプライチェーン全体での情報共有やデータ活用、複眼的な問題設定で、従来の「常識」を超えた改善施策を生み出せるでしょう。

例えば、「検査装置自体の表示ランプの寿命が短い→高信頼LED+稼働監視IoTタグを装着」「海外サプライヤーのトレーサビリティ不足→RFIDタグ活用+自動ロギング」など、新たなアプローチが広がります。

まとめ:現場知と標準規格の融合が製造業存続のカギ

LEDの故障原因や寿命予測には、厳密な標準規格と現場ならでは知恵の両面が必要です。

バイヤー・サプライヤー・現場ワーカーが互いの課題意識を理解し、標準規格に基づいた透明で実効性のある品質管理を徹底すれば、昭和型アナログマインドから脱却し、製造業の信頼性・持続性は飛躍的に向上します。

LEDの「切れにくいから大丈夫」という思い込みから一歩踏み出し、一つ一つのデータや故障事例を材料に、次世代の現場へと進化していきましょう。

製造業の発展は、現場で汗を流す皆さん一人ひとりの探究心と、オープンな知恵共有によって切り拓かれるのです。

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