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投稿日:2025年6月11日

電子・電気部品の故障メカニズムと的確な信頼性評価の短期化

はじめに:ものづくり現場から見る電子・電気部品の信頼性の重要性

製造業の現場は日々進化し続けていますが、電子・電気部品の信頼性に対するニーズはむしろ高まり続けています。

自動車、家電、産業機械、エネルギー、情報通信分野と、多様な業界がハードウェアの核として高度な電子・電気部品を求めており、その故障は製品のブランド価値の毀損、生産ラインの停止、大規模なリコール、といった深刻な損失に直結します。

現場目線で考えても、たった一つの部品の不良が数万台の製品全体に影響することも稀ではありません。

しかし、依然として日本の製造現場には「勘と経験と根性」で対応してきた昭和的対策や時間ばかりかかる「従来型評価方法」が残っています。

本記事では、電子・電気部品の代表的な故障メカニズムを紐解きつつ、現場で役立つ“的確かつ短期化された”信頼性評価アプローチについて、最新の業界動向やバイヤー・サプライヤー双方の視点も加味して解説します。

電子・電気部品における主な故障メカニズム

代表的な部品の種類と、その脆弱性

電子・電気部品と言っても、半導体デバイス、抵抗やコンデンサ、リレー、コネクタ、ワイヤーハーネス、基板実装部品まで多種多様です。

それぞれ異なる脆弱性や経年劣化モードを持っています。
代表例を挙げてみます。

  • 半導体(IC、トランジスタ):静電気(ESD)、過電圧、発熱破壊、化学的腐食、エレクトロマイグレーション(電気による金属原子移動で配線が切れる)、パッケージクラックなど
  • チップ抵抗・コンデンサ:過大電流、大気湿度による絶縁劣化、パッケージングストレス、熱サイクルによるはんだ割れ
  • リレー・スイッチ類:接点摩耗・酸化、コイル断線
  • コネクター・ワイヤーハーネス:着脱回数、腐食、端子圧接不良、振動・衝撃によるクラック
  • プリント基板(PCB):はんだ付け不良、経年による絶縁低下、層間剥離

現場ではトラブル発生時、「部品個々の不具合」か「組み立て・実装工程」「保管・輸送」「設計そのもの」のどこに起因があるのかを見極めるのが難しいものです。

主要な故障メカニズムの深掘り

それぞれの部品ごとに考慮したい主な故障メカニズムをさらに分解します。

  • 熱暴走・サーマルサイクル劣化:回路動作時の繰り返し発熱・冷却で物性(はんだ部、パッケージなど)が膨張・収縮し、微細なクラックや部品脱落が発生します。パワー半導体や車載部品に多い要因です。
  • はんだ割れ・ウィスカ発生:Pbフリー化によるスズ系はんだの脆弱性や金属表面から伸びるウィスカ(細い金属ヒゲ)による短絡リスクも要注意です。
  • 環境要因:湿度、塩水噴霧、硫黄ガス、腐食性ガスなどによりリレー接点やコネクタの被膜が劣化し、接触不良を引き起こします。
  • 静電気放電(ESD):IC・LSI等の微小な内部回路が一撃で破壊されるため、工程管理とハンドリング教育、梱包にも最新注意が必要です。

信頼性評価とは何か? 標準的な考え方

信頼性評価の目的と基本フロー

製造現場における「信頼性評価」とは、部品や製品がどの程度・どの期間、設計された機能と品質を維持できるか、すなわち“壊れにくさ”を客観的に検証するプロセスです。

その基本的な評価フローは以下のようになります。

  1. 不具合モードの洗い出し(FMEA、FTAなど)
  2. 材料や構造のレベルで物性や強度、耐化学性を評価
  3. 加速試験(温度・湿度ストレス、電気的ストレス、振動衝撃など)
  4. 実機レベルでの動作試験
  5. 規格化された評価規格(JIS、IEC、JEITA,AEC-Q200等)との照合
  6. ライフサイクル(寿命)推定、信頼度試験(バスタブ曲線による初期/偶発/摩耗故障分析)

古くは「何千時間動作させてどれだけ壊れるかを見る」という時間依存の連続試験が主流でしたが、現代は「材料劣化」「熱衝撃」「多様な環境下」を短期間でシミュレートする加速ストレス試験へと移行しています。

バイヤーが求める「信頼性評価」とサプライヤーの本音

大手バイヤー(購買担当)がサプライヤーに強く求めるのが「十分な信頼性データ」「短納期化」「コスト削減」の三点です。

一方サプライヤー側では、部品・材料選定から前工程での「FMEA展開」「加速試験」「量産後のトレース」と、開発・試作・量産各段階で手間もコストも重いプロセスを抱えています。
しかも、顧客側の用途や「想定される環境負荷設定」によって必要な試験内容が大きく変わるため、「カタログどおりのスペックを出せばよい」という考えは通用しません。

このギャップを埋めるためには、従来のアナログ気質から一歩進んで、現場主導で工夫する“実践的な評価短縮アプローチ”への転換が不可欠です。

的確で短期化された信頼性評価の実践ポイント

加速試験の設計:実環境に則した条件出し

加速試験(Accelerated Life Testing, ALT)は、限られた時間で実環境下のストレスを模擬し、早期の劣化・不良発生箇所を抽出するのが目的です。

現場では「規格どおり」よりもエンドユーザーの使い方に合わせて、実装ストレス(ex. 温度変化の周期/幅、動作ON・OFF頻度)や現場環境(ex. 洗浄剤や塩害、粉塵の有無)をきめ細やかに“可変条件”として試験設計する工夫が大切です。

信頼性試験内容の具体的な例としては、

  • 85℃ 85%RH(高温高湿動作化学試験)
  • −40℃〜+125℃の繰返しサーマルサイクル(〜1000回 以上)
  • 塩水噴霧(コネクタの耐食性評価)
  • 急峻なパワーON/OFF(パワーサージ耐性)
  • ランダム振動(自動車用途 等)

これらは従来の「1,000時間連続通電」だけよりも、早期の劣化現象をより的確に、現実の障害発生モードを模擬できます。

データサイエンスの活用:小ロット・時短評価への転換

近年ではビッグデータ解析や機械学習を使い、「少数サンプルからの故障予測・寿命推定」が急速に発展しています。

現場では、従来の「n=50個を一定時間動作」という規模から、

  • トラッキング・IoTによる実運用データの取得
  • 診断情報の自動収集による異常検知
  • フィールドデータと試験データを組み合わせた事前予測

を活用しており、評価リードタイムを最大1/2〜1/3に短縮している事例も増えています。
例えば、車載部品の寿命試験では「AIによる分布外サンプル警告」や、「クラウド連携」で開発部−製造部−品質部が即座に状態共有する仕組みも一般化してきました。

現場主導の「スキップ論理」とリスク設計

全項目をフルスケジュールで評価していては、現代の開発現場・調達業務はまったく回りません。

そのため、ポイントは「どこをスキップできるか」を論理立てて設計することです。
例えば、

  • 共通材料や設計思想が前世代と同一なら、フルの初期評価を簡略化
  • サプライヤー側の“実力”データを活用し、社内評価を最低限に絞る
  • バイヤー−サプライヤーで初期段階から使い方仕様を情報共有し、最適な条件設定を共創

こうした「リスクベースの短期評価」を徹底するのが、これからの“強い工場・強い調達”の要です。

昭和的慣習から脱却できない業界動向と今後の展望

いまだ根強い「全数人海検査」「マニュアル台帳」が抱える課題

現場にはいまだ
「実地テストが一番」
「ベテランの目と指先に勝るものなし」
といった昭和的アナログ文化も色濃く残ります。

全数目視検査や管理台帳の紙運用、異常時の属人的な報連相といった非効率な運用が、評価時間・労務コストを肥大化させています。

そもそも信頼性評価を担う技術者が現場の“作業負荷”に埋もれ、根本的な不具合原因の解析や“現場知”の伝承に十分なリソースを割けていないという、本末転倒な現象も少なくありません。

デジタライゼーションによる評価業務改革の波

業界全体が「人手不足」「短納期対応」と背中合わせになっている今、限定的なアナログ運用は限界を迎えつつあります。

海外を見れば、バリューチェーンの最初から最後まで「IoTタグ付け」「自動記録」「AI異常検知」「ペーパーレス生産」が当たり前になりつつあり、国内製造業でも“一部門だけの自動化”を超えた「デジタル統合×部門横断型改革」が急務です。

その中心をなすのが、

  • 設計レビュー段階からの故障予測エビデンスの可視化
  • 量産現場からの品質データのリアルタイムフィードバック

など、狭い部門の枠を超えて「調達×製造×品質管理×設計」がデータでつながる、新時代の信頼性評価です。

まとめ:新たな評価アプローチで現場を強くする

現場に根差した信頼性評価は、単なる「試験書作成」ではありません。

電子・電気部品の故障メカニズムを正確に把握し、的確かつ短期間でリスクを見抜く試験設計にこそ、新しい現場競争力があります。

製造業バイヤーを目指す方、現場で評価に関わる方、サプライヤーの担当者それぞれが

  • 現実の使われ方とリスクシナリオを深く考える力
  • 最先端の加速試験やデータサイエンスへの探究心
  • 積極的な情報共有とリスクベース短期化の推進

を強く意識すれば、昭和に縛られず、むしろ次世代へ“現場の知”を伝える主役となれます。

最後に――
信頼性評価は「安全・安心なものづくり」の基礎であり、次代の日本の産業発展には欠かせない知見です。
ぜひ皆さんの現場でも“評価の進化”を、今から実践していただきたいと思います。

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