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*2025年5月31日現在のGoogle Analyticsのデータより

投稿日:2025年6月11日

IoTプロジェクトマネジメントとシステム構築のポイント

はじめに:IoTが製造業にもたらした変革

IoT(Internet of Things)、すなわちモノのインターネットは、製造業の現場に大きなインパクトを与えています。

工場の生産ラインや物流、品質管理、調達購買、さらにはアフターサービスに至るまで、あらゆる場面でIoTの導入が進んでいます。

かつては熟練工の勘や経験に頼っていた現場も、今やセンサーとデータの時代へと変化しました。

昭和時代のアナログな現場から、令和のスマートファクトリーへ――その最前線で私たちが直面するリアルな課題と、その乗り越え方について、20年以上の工場現場経験を持つ立場から解説します。

IoTプロジェクトのマネジメントにおける現場目線の課題

IoT導入と聞くと「業務効率化」や「データによる見える化」が強調されがちです。

しかし実際の現場では、単に新しいセンサーやシステムを導入するだけで全てがうまく行くわけではありません。

むしろ、現場目線で考えると以下のような壁が立ちはだかります。

既存設備との共存と、現場スタッフの反発

多くの工場では、何年、場合によっては数十年前から使われてきた設備や生産管理システムが稼働しています。

IoTシステムの新規導入にあたり、これら既存設備とどう共存させるかは大きなハードルです。

また「今さら新しいものなんて…」という現場スタッフの抵抗感も根強く、特に昭和から続く工場ほどアナログな風土を簡単には変えられません。

現場では「IoTで自分たちの仕事がなくなるのでは」と感じる方も少なくありません。

ここをどう乗り越えるかが、プロジェクトの成否を分けるカギとなります。

データの活用以前に“データをつくる”重要性

IoT化で重要となるのは、「何のデータを、どの粒度で、どうやって集めるか」という点です。

現場で本当に役立つデータを集めなければ、宝の持ち腐れになってしまいます。

例えば生産設備の稼働データをリアルタイムで取るだけでは、トラブル予兆検知には不十分なことも多いです。

工程ごとの微妙な温度変化や振動、消費電力といった、現場に即した多面的なデータを“つくる”ことが肝心です。

この設計段階が甘いと、膨大なデータがただの数字の山となってしまい、社内説得も困難になります。

IT×OTのはざまで発生する“伝統的壁”

IoT導入ではIT(情報技術)部門とOT(現場の運用技術)部門の連携が不可欠です。

しかし両者の間には、言葉遣いや優先事項、価値観の違いからコミュニケーションギャップが生まれやすいのが事実です。

現場は「止まらないこと」「安全であること」が第一。

一方、IT側は「最適化」「刷新」が主眼です。

会議では歩み寄りの姿勢と、互いに“自分の常識は絶対”という気持ちを捨てる勇気が必要となります。

IoTプロジェクトマネジメントのポイント

それでは、現場が本当に機能するIoTシステムを構築するためには、どのような点に気を付けるべきなのでしょうか。

20年以上、工場長やプロジェクトマネージャーとして経験してきた観点から、成功のためのポイントを解説します。

現場課題・業務課題の“見える化”が最初の一歩

IoT導入の相談でよくある失敗例が、「何となく流行ってるから」という理由だけでシステムを導入し、現場にマッチしない、というパターンです。

最優先すべきは「現場でどんな課題を抱えているのか」「何を解決したいのか」を、徹底的に掘り起こして“見える化”することです。

ヒヤリングや現場観察、実際の運用現場での課題洗い出しこそが、IoT化のファーストステップです。

小さな成功体験=PoC(Proof of Concept)を積み上げる

特に昭和からの伝統を重んじる現場では、いきなり大規模なIoT導入は極めてハードルが高いです。

予算や工数も膨らみがちですし、現場の合意も得にくいでしょう。

そこでオススメしたいのが、まず“小さな実証実験(PoC)”を現場で回すこと。

たとえば一つのライン、一つの設備、一つの工程でIoTの効果を試してみて、実際に生産効率が何パーセント改善した、人的ミスが何件減った、という具体的な成果を可視化するのです。

その実体験が、社内での横展開やさらなる投資判断の“説得材料”になります。

“巻き込み力”の強いプロジェクトリーダーを選任する

IoTプロジェクトを推進するうえで必要なのは、単なる技術知識ではありません。

工場長、部門長など管理職クラスの強固なリーダーシップや、「現場を巻き込む」ための調整力が不可欠です。

いわゆる“伝統の壁”を壊し、IT部門・現場双方の信頼を得る人物を見つけることが、プロジェクト成功の近道になります。

パートナー選定は“現場実績”を重視する

IoTベンダーやシステムインテグレーター選びも、現場実績の有無が重要です。

製造業の泥臭い現場を理解しているかどうか、同業他社の成功・失敗事例を具体的に知っているか。

自社だけのノウハウに頼るのではなく、外部の“現場知見”をも取り入れることで、大きな失敗を回避できます。

IoTシステム構築で気を付ける3つの技術視点

IoTシステムは導入して終わりではありません。

現場で安定稼働するためには、以下のような技術的工夫が求められます。

1. データ連携とシステムの拡張性

現場のIoT化は一部の工程から始まることが多いですが、将来的には全カ所へ横展開することが想定されます。

このため、初期設計段階から“拡張性”を意識したシステムアーキテクチャを考えましょう。

また、既存の生産管理システムやERP、MESなどとのデータ連携も見据える必要があります。

データ形式やプロトコルの違いによるマッシュアップ障害(連携障害)は、よくある落とし穴です。

現場で本当に使える「つなげる力」をシステム選定時に意識してください。

2. セキュリティとメンテナンスの現場対応力

IoT化が進むことで、工場のセンサーや装置がインターネットに直接つながるケースが増えています。

このとき、サイバー攻撃や不正アクセスといったセキュリティリスクが格段に高まります。

特に現場担当者が「センサーが急にネットワークに出入りしている」状態に慣れていない場合、思わぬ事故や情報漏洩の恐れも。

日常点検での現場対応マニュアルづくりや、異変時のエスカレーションルールもあらかじめ準備しておくことが大事です。

3. “止まらないシステム構築”の徹底

工場でのIoTシステムは、24時間365日稼働する製造現場にとっては“止まってはいけない設備”です。

「定期メンテナンスのために全ラインを停止」などということは現実的に許されない場合がほとんどです。

そのため、冗長構成や保守体制など“止めずにメンテナンスできる設計”が求められます。

これは現場での段取り、そしてシステム選定時の必須チェックポイントとなります。

バイヤー・サプライヤーそれぞれの気持ちとIoT化の波

製造業のバイヤーとしても、サプライヤーとしても、IoT導入の波は避けて通れません。

ここでは、お互いの立場で考えるべきポイントを整理します。

バイヤー視点:信頼できるパートナー選びと情報共有

バイヤー、調達担当者にとって、IoT化案件のパートナー選びは大きな責任が伴います。

特に、サプライヤーのIoT対応力が生産全体の安定に直結するため、事前にシステム稼働実績やサポート体制を確認するのはもちろん、トラブル時の一次対応フローまで明記して納入条件に盛り込むことが重要です。

さらに、IoT導入に対する現場意見や現実の課題感を、過不足なくサプライヤーにフィードバックし続けることが、成功に不可欠となります。

言葉だけでなく「現場見学」をサプライヤー側に必ず体験してもらうことで、暗黙知の共有が図れます。

サプライヤー視点:バイヤーの期待を先読みして行動する

サプライヤーは「仕様書通りに作れば良い」だけでは、現代のIoT時代には生き残れません。

特にバイヤーが何を困っているのか、どこに隠れたリスクがあるのか、製造現場の深い悩みまで先読みする力が求められます。

IoTに限らず、「現場で何が起こればバイヤーが頭を抱えるのか」を常に考え抜き、どうすれば喜ばれるのか事前提案できる存在が価値あるパートナーへと進化します。

システム更新や不具合対応も積極的に情報発信し、バイヤーや現場担当者との“本当の信頼関係”を築くことを心がけてください。

まとめ:IoT化の本質は“現場が輝く”ための挑戦

IoT導入は、単なるIT投資や流行の最先端を追うためのものではありません。

現場スタッフ一人ひとりが「働きやすくなった」「より高付加価値な仕事にチャレンジできる」そんな環境を創り上げるための、手段です。

伝統の壁や業界のアナログな慣習を一歩ずつ乗り越え、現場、バイヤー、サプライヤーが“三位一体”となって進化する。

そのためのキーワードは、「現場起点の課題設定」「小さなPoCの積み重ね」「現場巻き込み型の推進力」「システム連携と現場志向の技術設計」です。

これからIoTプロジェクトに取り組むすべての方々にとって、本記事が新たな“きっかけ”となれば幸いです。

現場の知恵を生かし、日本の製造業が世界をリードする未来を一緒に創っていきましょう。

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