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品質保証部門の役割と製造現場との連携の仕組み

目次
はじめに
製造業の現場において、「品質保証部門」はなくてはならない存在です。
単なる製品の品質チェックだけでなく、会社全体の信頼やブランド価値にも直結する重要な役割を担っています。
しかし、製造現場から見れば「検査だけして文句をつけてくる部門」と思われてしまうことも少なくありません。
この記事では、品質保証部門の本来の役割や求められるスキル、そして製造現場との連携の仕組みについて、長年製造業の現場を経験してきた目線で深く掘り下げて解説します。
バイヤーやサプライヤーにも役立つ、現場の“ホンネ”と“あるべき姿”を示します。
品質保証部門の役割とは
品質保証と品質管理の違い
まず混同しがちなポイントですが、「品質保証」と「品質管理」は明確に役割が異なります。
品質管理は「工程における品質の維持・管理」が主な役割です。
製造ラインでの機械設定、作業標準の遵守、不良発生の未然防止など、日々の現場に寄り添いながら地道な管理を行います。
それに対し品質保証は、「製品を市場に出す際に企業として品質を保証する」ことが役割です。
顧客からの要求事項、関連する法規、省令、さらにはISOやIATFなどグローバルな規格への適合も管理します。
実際に顧客クレームが発生したときには、原因究明や再発防止の旗振り役にもなります。
品質保証部門の責任範囲
品質保証部門の責任範囲は広範囲です。
主だった項目は以下の通りです。
- 製品仕様の設計開発段階での品質レビュー、リスク評価
- 製造工程の品質マネジメントシステムの運用・改善
- 最終製品の出荷判定および市場不良対応
- 顧客や関連法規に基づく契約内容の管理・規格適合
- ISO/IATF/その他規格審査対応
- クレーム品の原因分析・是正(CAPA活動)
- 社内教育やベンダーへの品質指導
組織によっては設計、生産技術、調達などにまたがる「横断的」な役割も担います。
現場に根付く「品質保証軽視」の日本的背景
昭和期の製造業では「職人技」による“現場力”が重視されてきました。
その名残で、今も「納期や数が優先。多少の不良は現場でなんとかする」という雰囲気が残る職場は多いです。
品質保証部門は、そうした“阿吽の呼吸”や“人任せ”を排し、標準化・仕組み化で安定品質を担保する立場です。
だからこそ現場の反発や摩擦が起こりやすいですが、現代のグローバル取引においては「標準化された品質保証体制」はサプライヤー選定の必須条件となっています。
現場と品質保証部門が連携する仕組み
現場と品質保証の“壁”が生まれる理由
なぜ品質保証部門と現場には壁ができやすいのでしょうか。
理由の一つは、両者の“目的”が異なる点です。
現場は「効率よく生産し、納期通りに出荷する」ことが最優先。
一方で品質保証は「規格やルールから外れたものは許さない」「品質リスクは絶対に見逃さない」という使命感が強く、往々にして現場の足を止めることになります。
このギャップが摩擦の元ですが、見方を変えれば「お互いの視点を補完し合える関係」となり得ます。
連携強化の具体的な仕組み
現場と品質保証部門が真に協力し合えるには、以下のような“仕組み”が不可欠です。
- 定期的な現場巡回と情報共有会
品質保証担当が日常的に現場を巡回し、「なぜこの作業手順なのか」「どこにリスクが潜んでいるか」を現場メンバーと一緒に確認します。
小さな“工夫”や“現場知恵”を吸い上げ、必要に応じて標準書や教育テキストに反映します。 - クレーム対応時の協働チーム編成
顧客クレームや重大な品質異常が発生した際は、現場・品質保証・生産技術・調達などの横断メンバーでチームを編成します。
課題の本質を探る「なぜなぜ分析」では、現場作業者の生の声を聞くことが解決への近道となります。 - 工程FMEA・リスクアセスメント活動の共同実施
新製品立ち上げ時や工程変更時には、現場と品質保証合同でFMEA(故障モード影響解析)や各種リスク評価を実施します。
「現場が気づかない視点」と「品質の目」を融合することで、抜けやもれのないリスク管理につながります。 - 定量目標と現場参加型KPI
品質目標や不良率改善目標は、品質保証だけでなく現場部門のKPIとしても共有します。
「品質はみんなの責任」と意識づけることで、現場主導の改善活動が広がります。
現場主導が不可欠な“真の是正処置”
クレーム再発防止や継続的改善の現場では、書類上の仕組みだけでなく「現場が主体的に学ぶ・考える」文化が何より重要です。
昭和的な「他責」でなく「自責」「根っこから変える」意識を、地道に定着させる必要があります。
そのためには、現場リーダーや作業者自身が改善施策の立案・実行に関与し、小さな成功経験を積み重ねる仕掛け作りがポイントです。
グローバル調達・サプライヤー連携と品質保証の最新動向
海外バイヤー視点が変える品質要求
アジアや欧米市場向けの取引では、「PPAP(生産部品承認プロセス)」や「CoQ(品質コスト)」、「トレーサビリティ」などの要求が年々強まっています。
これはただの“検査強化”ではなく、「自社だけでなくサプライチェーン全体の品質保証」を重視する時代の流れです。
バイヤーがサプライヤーに求める品質保証とは、「仕組み化された再現可能な品質」「異常時に即座に対応できるトレーサビリティ」「継続的な改善姿勢」など、多岐に渡ります。
サプライヤーが考えるべき「バイヤーの品質保証感覚」
サプライヤーの立場で重要なのは、「現場現物重視」と「理論的・文書化された管理」の両輪を組み合わせることです。
バイヤーは「不良ゼロ」よりも、「不良を未然に察知し、共に原因を追求し再発防止できるパートナー」を求めています。
また、「品質保証=報告書作成」と捉えがちですが、現地検査やオンライン監査対応、工程監査や是正対応スピードなど、“人”による即応力も信頼の指標です。
昭和的アナログ業界でも進む“仕組み化”
まだまだ紙帳票、手作業検査が中心の職場でも、「データによるリアルタイム監視」「棚卸や工程トレーサビリティの自動化」「IoTログ集計での工程検証」など、デジタル技術による「根拠ある品質証明」の流れが進み始めています。
小さな改善から始め、徐々に現場基盤をアップデートすることが中長期の競争力強化につながります。
製造業の現場に根付く価値観と、これからの品質保証
“ヒト”が原点、だけど“仕組み”にもヒトが関わる
工場の品質保証力は、現場作業者やオペレーターの“目利き力”や“知恵”が土台となっています。
しかし、ヒューマンエラーや属人化リスクを克服するには「仕組み」=標準化された管理体系との融合が不可欠です。
現場の声を拾い上げ、ヒトの力を「見える化」し、その上で“工夫”を積み重ねることで、他社との差別化ポイントとなる“自分たちだけの品質保証体制”が築かれます。
現場×品質保証=最強のバリューチェーン
現場力だけでも、ルール化だけでも不十分です。
現場と品質保証部門が相互理解し、「一緒に品質を作りこむ」という一体感があれば、顧客やバイヤーとの信頼にも直結します。
お互いの苦労や強みを認め合い、時には役割を超えた「なぜ?」の追求を続けることこそが、高品質・高付加価値を生み出す近道です。
まとめ
品質保証部門は、単なる「検査部門」ではありません。
設計・生産・調達などすべての部門と連携し、「仕組みによる未然防止」と「ヒトの力の活用」を両立させる司令塔です。
昭和から続くアナログな現場でも、現代的な品質保証の視点は確実に求められています。
この記事が、現場やバイヤー、サプライヤーとして「品質保証ってなんだろう?」と考えるきっかけとなれば幸いです。
未来の製造現場を支える“最強の連携プレー”を、ぜひ現実のものにしていきましょう。
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