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スクリーン製版におけるUV露光機の光量と感光剤濃度の関係

目次
はじめに:スクリーン製版現場が直面する「光量と感光剤濃度」の悩み
スクリーン印刷の現場では、製版の品質がそのまま印刷結果へと直結します。
特に、紫外線(UV)露光機を用いた製版工程においては、光量の設定や感光剤の調整が不十分だと、「ピンホールが消えない」「線幅が安定しない」「再現性に課題が残る」などのトラブルが絶えません。
一方で、昭和の時代から受け継がれてきた職人技や経験則が根強く残る現場も多く、明確な数値管理や科学的なアプローチが遅れている事実も否めません。
本記事は、これからバイヤーや調達担当を目指す方、またはサプライヤーとしてバイヤーの視点を知りたい方に向けて、製版工程の根幹ともいえるUV露光機の光量・感光剤濃度の最適な関係性について、現場で実践してきたリアルな知見と共に紐解きます。
UV露光機の役割と光量管理の基本
なぜUV露光機が不可欠なのか
スクリーン印刷の製版におけるUV露光機の役割は、主に感光剤を塗布したスクリーン版に紫外線を照射し、画像部と非画像部を選択的に硬化・分解させてマスクを形成することです。
このプロセスの成否が下流の印刷精度・歩留まりを決定します。
UV露光機の性能が安定していないと、感光剤の反応が均一に起こらず、結果として版の精度が落ちます。
光量管理の現実的な課題
現場では「露光時間」だけに着目しがちですが、同じ時間でもUVランプの経時劣化やメンテナンス状況によって「実際の照射光量」に大きなバラツキが生じます。
「新しいランプは仕上がりが良いのに、古くなると不良品が増える」という現象は、まさに露光機の光量低下が起因するものです。
このため、「定期的な光量測定」と「メンテナンスプランの策定」が極めて重要となります。
光量の単位と管理方法
UV露光の光量は一般的に「mJ/cm²(ミリジュール毎平方センチメートル)」で表され、標準的な製版現場では30~80mJ/cm²程度が使われることが多いです。
但し、感光剤の種類や濃度、ターゲットとなる線幅や解像度によって適切な範囲は異なります。
光量計(UVメーター)を用いた定期点検を習慣化し、標準値から逸脱した場合は即座にランプ交換や露光条件の見直しが求められます。
感光剤の濃度と版品質の関係
「濃すぎる」「薄すぎる」どちらも危険
感光剤の調合は、ストック溶液の希釈倍率、塗布量、乾燥条件など、複数工程にまたがるため現場での「感覚」「経験」が優先されてきました。
しかし、実は濃度管理が不十分だと「露光ムラ」「線幅太り・痩せ」「耐洗浄性の低下」など、構造的不良の原因となります。
基準を逸脱した「高濃度」は硬化の度合いが大きくなり過ぎてエッジの再現性が悪化し、「低濃度」は硬化反応が不十分で剥離やピンホールの温床となります。
現代の製造現場で求められる濃度管理
最新の現場では、感光剤メーカーが推奨する希釈倍率(例:水1:4希釈など)や塗布厚(μm単位)を管理指標とし、ウェイトスケールや膜厚計で都度確認する運用が進んでいます。
一方で、アナログ的な現場では「今日の湿度・温度」「作業者の手順」の影響を大きく受けるため、「薄膜は確実な光硬化」「厚膜は充分な洗浄耐性」を両立できるポイントを試行錯誤する必要があります。
番外知識:感光剤の保存と経時変化
感光剤は紫外線・高温多湿・空気への曝露で急速に劣化します。
希釈後は冷蔵管理を徹底し、できる限り当日使い切ることが高品質維持の鉄則です。
特に夏場・梅雨時期は現場温度が急上昇し、同じ希釈倍率でも現実の膜厚や感度がブレやすくなりますので、こまめな点検を怠らないことが大切です。
光量と感光剤濃度の最適なバランスとは
現場で「答え」を探すためのアプローチ
UV露光の「理論値」にこだわっても、実際のスクリーン版作成では、素材そのものの個体差・塗布時の条件・印刷機材との相性など多くの変数が絡み合います。
現場での最適解は、「テストパターン評価」を軸に据え、複数の感光剤濃度と光量を組み合わせてサンプル版を作成し、「解像度」「ピンホールの有無」「目詰まりしやすさ」「洗浄耐性」の四点評価を繰り返すことに尽きます。
合理的なバイヤー・調達担当者ほど「一発でロスなく仕上げて納期短縮!」という理想を求めますが、現実には「小さなサイクルで訓練と微調整を重ねる」ことが最終的な安定供給のカギとなります。
悩んだら「感光剤を若干薄く&光量を多め」にトライ
多くの事例から、「感光剤をギリギリまで薄く調整し、十分なUV光量を与える」ほうが、線幅の安定・ピンホール防止・耐洗浄性のバランスが良くなりやすいです。
逆に、濃すぎる感光剤+弱い光量の組み合わせはムラや再現性不良を引き起こしやすいため注意が必要です。
業界の俗説として「薄い方がごまかしが効く」と言われるのもこのためです。
自動化による最適化も有効
昨今では、塗布ロボットや自動制御露光機(インライン制御装置)によって、「正確な感光剤塗布」「リアルタイム光量補正」が容易に行えます。
これにより、属人的な職人技から脱却し、毎回再現性の高い版品質を維持できる仕組みづくりが進んでいます。
人手不足や作業者交代が進む今だからこそ、「自動化・IoT活用による安定化」にも着目したいところです。
バイヤー・サプライヤーが押さえるべきポイント
仕様要求時に「工程条件」と「管理指標」を確認
バイヤーや調達担当が製版サプライヤーに仕様を指示する際、単に「このフィルムでこの解像度」と伝えるだけでなく、「推奨UV光量」「標準感光剤濃度・膜厚」「許容誤差範囲」といった工程条件・管理指標まで明示できれば、お互いにトラブルリスクを大幅に低減できます。
失敗事例では、「曖昧な要求→勝手な条件変更→お互いの認識不一致→不良・クレーム増大」という悪循環が起こりがちです。
現場見学や共同テストを活用してギャップを埋める
アナログな印象が残る業界だからこそ、「サプライヤーとの現場立会い」「協働でのテスト実施」が特に有効です。
文章・図面だけでは伝わらない、作業者のノウハウや実際のムラ・バラつきの要因を、お互い見える化・言語化しておくと、トラブル時の原因分析・迅速なリカバリーが叶います。
経年劣化対策とトラブル検知の仕組み化
UV露光機のランプ交換周期、感光剤のロット管理・保存状況、現場温度・湿度のログ収集など「工程の見える化」を日常的に行うことで、バイヤー側も現場出身者と同等以上のリスク察知・品質管理能力を持つことができます。
これからの工場自動化時代、工程の「暗黙知」を「形式知」へ転換することが更に重要です。
まとめ:昭和アナログから進化するために、今求められる現場最適化
UV露光機の光量と感光剤濃度の最適なバランスは、実際には「現場ごとの地道な検証」と「工程条件の可視化」によってしか得られません。
属人的な勘や我流に頼るだけでなく、定量的データと自動化技術を活用することで、より高い再現性と安定供給が実現できます。
バイヤー・サプライヤーどちらの立場でも、「工程パラメーターの見える化」「現場共創によるノウハウ蓄積」を積極的に図ることが、業界進化のポイントとなります。
「昭和の感覚」から一歩進化し、「科学的な管理+改善文化」で現場の実力を引き上げる。
それが、これからの製造業を支える最も重要なアプローチといえるでしょう。
あなたの現場で、ぜひ今日から実践してみてください。
悩める現場に、新しい地平がきっと見えてきます。
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