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投稿日:2025年6月11日

樹脂・ゴム材料における外観・変色劣化のメカニズムと分析および対策方法

はじめに:現場で悩む“樹脂・ゴム”の外観・変色劣化

樹脂やゴムは、現代のモノづくりに欠かせない素材です。
自動車、家電、医療機器、さらには日常のあらゆる製品に使われています。
しかし、この樹脂やゴムにおける「外観不良」「変色」「劣化」は、現場において絶えず頭を悩ませる課題です。
一見わずかな色ムラ、微細な斑点であっても、クレームや歩留まり低下、ブランドイメージ低下につながりかねません。

昭和時代から続く根の深い課題ですが、近年「見た目品質」「美観要求」の高まりや海外市場展開などにより、その重要性は一層高まっています。
今回は、20年以上の現場経験と最新動向をもとに、樹脂・ゴム材料における外観・変色劣化のメカニズム、分析方法、そして現場で即実践できる対策を徹底解説します。

樹脂・ゴムの変色・劣化:なぜ起きるのか?そのメカニズム

主な原因は「化学反応」と「物理的要因」

樹脂・ゴム材料の変色や劣化は、大きく分けると「化学反応による変化」と「物理的要因による変化」があります。

化学反応の代表例は「酸化(劣化)」です。
プラスチック(合成樹脂)もゴムも有機高分子材料であり、酸素や熱、紫外線にさらされると、分子が切断されたり構造が変化したりします。
これが、黄色変や褐色変色、べたつき、ヒビ割れなどのトラブルを引き起こします。

一方、物理的な要因としては「充填時の温度差」「金型のコンディション」「保管時の光や湿度」なども見逃せません。
現場で「昨日まで良かったのに、なぜか今日は変色…」という現象の多くが、こうした物理的要因の積み重ねによるものです。

具体的な変色・外観劣化の事例

・射出成形時のシルバーストリーク(銀条・糸引き)の発生
・ゴム部品の黄変や黒ずみ
・半透明樹脂の白濁、表面のくすみ
・射出成形品のウェルドラインで色が濃くなる、ムラに見える

これらは、現場の「見た目評価」で問題となる典型例です。

現場で見逃されがちな“真の原因”とは何か?

素材メーカーの配合やロット差も要警戒

たとえば、同じ材料規格や同一グレードでも、仕入れロットによって添加剤や充填材の配合バランスが微妙に異なることがあります。
この「ロット差」が、経験豊富な現場者ほど「感覚的」に気づいているポイントです。

さらに「リサイクル材の混入率」「難燃剤・色素分散のムラ」「揮発性成分残存量」など、素材の内部に“見えないリスク”がひそみます。
現代は、材料コストダウンやSDGs対応で、サプライヤーが配合を自在に変える傾向も強まっています。

現場と開発、生産、購買の意思疎通不足

一方で、開発設計部門や調達担当が「材料のラベル名」や「スペックシート」だけで材料を選定することも珍しくありません。
実は実際の“不良現象”の現場原因は、外観・変色に大きな影響がある「微妙な成分や工程の違い」にあることが多いのです。

外観・変色劣化の“分析”方法

目視検査と計測機器の併用

まず現場で最も多く使われているのは、熟練作業者による「目視検査」です。
一方で、客観的な数値化が必要な場合は、色差計、分光光度計、顕微鏡観察、FT-IR(フーリエ変換赤外分光法)、GC/MS(ガスクロマトグラフ質量分析)、XPS(X線光電子分光法)などの分析機器が活躍します。

ラボ分析だけでなく、現場の仮説検証が重要

サプライヤー側からすれば「分析依頼」が来るのは厄介な場面かもしれません。
ですが、真の要因を探り当てるためには、現場ヒアリングや工程観察~分析データ対比による「仮説立案→実験→検証」のPDCAが不可欠です。
昭和的な「勘と経験」だけでなく、現代的なデータドリブンの考え方を取り入れましょう。

現場で即実践できる!外観・変色劣化の対策

1. 材料ロット管理と原材料選定の見直し

単純ですが、まずは材料の「ロット」ごとの分け方、「トレーサビリティ」の徹底が重要です。
現場では「今日の材料はいつものと違う気がする…」という声を聞き流さず、現物を取り分けて分析依頼するなどの文化が必要です。

また、材料選定時にはサプライヤーの変更やロットアップの影響を受けやすい工程を要チェックとし、試験片で各種試験を事前実施することでリスク回避を図ります。

2. 成形条件の最適化と標準化

樹脂・ゴムの外観変化は「成形温度」「冷却速度」「サイクルタイム」「型締圧」など、ほんのわずかな条件差で起こります。
製造条件の「見える化」「レシピ」「作業標準」の整備が抜本的な対策です。

さらに、設備ごとのばらつきや現場作業者による微調整を減らし、IoTや工程モニタリングでサイクルごとのデータを蓄積管理しましょう。

3. 保管・運送・現場環境の徹底管理

意外と多いのが「保管中の変色」「運送時の結露・紫外線劣化」です。
一括大量納品・長期間在庫のリスクを可視化し、「現場受け入れ時の外観検査」や「環境コンディション管理」をマニュアル化しましょう。

現場では「庫内温湿度記録」「直射日光対策(遮光性梱包)」など、基本をおろそかにしない体制作りも外観品質維持のカギです。

業界全体で根付く昭和スタイルからの脱却

勘・コツ・経験からデータ活用・標準化へ

依然として「ベテラン職人の目利き」「帳票に頼った証跡管理」が強く残る業界ですが、変化のスピードは確実に高まっています。
昨今では、品質の見える化ツール、AI画像検査の導入、材料トレーサビリティのDX化が進んでいます。

購買バイヤーも、「スペック最優先」だけでなく、「現場の品質トラブルリスク」「サプライヤーの工程把握」「競合材料との安定供給性」まで考慮しています。
サプライヤー側も、それに応えるために「分析データ開示」「成形試作協力」「共同品質改善」のノウハウが強く求められる時代です。

バイヤー、サプライヤーはどう連携すべきか? 現場長からの提言

最善のアプローチは、「材料・工程・設備・環境」の全体最適を追求することです。
現場トラブル発生時、バイヤーとサプライヤー、エンジニア、現場技術者がチームとなり、「現物、現場、現実」に即したフェアな検証を重ねてください。

サプライヤー側は、加工・成形現場のリアルな実情まで踏み込んだ提案力が付加価値になります。
一方、バイヤーは「低価格」「短納期」などの条件だけでなく、材料品質の安定性や将来リスクまで俯瞰し、現場の声を積極的に反映することが大切です。

まとめ:現場目線で未来志向の対策を

樹脂・ゴムの外観・変色劣化問題は、一朝一夕には解決しない“現場の永遠のテーマ”です。
しかし、「材料の見極め」「工程条件の最適化」「現場実践力」「データを活かす文化」によって、トラブル発生率は大幅に下がります。

自社だけでの解決が難しい場合も、サプライヤー、バイヤー、技術者が一丸となり、“現場に根ざした対策・連携”を強化しましょう。
それが、ひいては顧客満足向上、企業ブランドの信頼向上、そして日本のものづくりの持続的発展につながっていきます。

現場に根ざした知見の共有こそ、未来の製造業を切り拓く力です。

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