投稿日:2025年11月12日

ポリエステルメッシュとナイロンメッシュの特性比較と用途選定

はじめに

製造業の現場でよく目にする「メッシュ素材」。
その中でも、ポリエステルメッシュとナイロンメッシュは、多様な分野で活用されています。
しかし「どちらを選ぶべきか」「どう使い分けるべきか」について、現場で迷われる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、20年以上の現場経験と管理職の立場から、ポリエステルメッシュとナイロンメッシュの特徴・違い・業界動向を踏まえ、用途選定のポイントや実践的なアドバイスを徹底解説します。
これからバイヤーを目指す方、サプライヤーの視点でバイヤーの考え方を知りたい方、現場力を強化したい方にとって、実践的に生かせる知見をまとめました。

ポリエステルメッシュ・ナイロンメッシュとは

ポリエステルメッシュの基本特性

ポリエステルとは、ポリエチレンテレフタレート(PET)が原料になった合成繊維です。
メッシュ状に織り込むことで、通気性やろ過性能を高めつつ、強度とコシのある素材となります。

主な特性は以下のとおりです。

– 耐薬品性が高い
– 吸水性が非常に低い(=乾きやすい)
– 日光や紫外線に強く、劣化しにくい
– 表面が滑らかで、異物が付きにくい
– 形状保持性に優れる

これらの特徴から、食品・医療・電子部品・印刷・アパレルなど、幅広い分野で活用されています。

ナイロンメッシュの基本特性

ナイロンは、ポリアミド系の合成繊維の代表格で、一般的にはナイロン6やナイロン66が主流となっています。
ナイロンもメッシュ化することで、柔軟性と強度を兼ね備えた素材となります。

主な特性は以下のとおりです。

– 弾性・柔軟性が非常に高い(丈夫でしなやか)
– 耐摩耗性に優れる
– 耐薬品性はやや劣る(特に酸・アルカリに弱い)
– 吸水性が比較的高い(=若干伸びやすい)
– 染色性が良好

ナイロンメッシュは、精密ろ過、工業フィルター、漁網、自動車部品、医療機器など、さまざまな産業で使われています。

両者の比較・実践的な選定基準

強度と耐久性の比較

ポリエステルメッシュは、高温・多湿・紫外線など、過酷な環境での耐久性に優れています。
一方、ナイロンメッシュは、繰り返しの曲げや引っ張りに対して強く、しなやかさが求められる場面で活躍します。

製造現場では、「屋外使用や化学薬品が飛散する工程」にはポリエステルを、「繰り返しの物理的ストレス・摩擦に晒される工程」にはナイロンが選ばれる傾向があります。

耐薬品性・耐熱性の比較

ポリエステルメッシュは酸・アルカリともに強く、耐薬品性が求められる場面(洗浄工程や食品ラインなど)に向いています。
一般的な耐熱温度は約150℃程度で、短時間ならば180℃付近まで耐えます。

ナイロンメッシュは耐薬品性がやや劣り、特に強アルカリや強酸には弱いため、洗浄や薬品との長時間接触が想定される場合は注意が必要です。
耐熱温度は100〜120℃程度とやや劣ります。

コスト・入手性の視点

市場価格でみると、ナイロンメッシュのほうがポリエステルよりもやや安価なことが多いです。
大量生産品や用途を絞ったシンプルなメッシュは、コスト優先でナイロンが選ばれることも。

一方ポリエステルは、特殊仕様や高付加価値製品が多く、安定した品質や高い安全性を求める現場では多少コストをかけてでも選ばれる例が増えています。
近年では原料価格変動や環境配慮の観点から、価格や調達リードタイムも絶えず変動しています。

加工性と形状保持性

現場で切断・加工する場合、ナイロンは柔らかく伸びやすいため、寸法精度が求められる用途ではやや注意が必要です。
対してポリエステルは形状保持性が高く、寸法安定性が求められる部材に適しています。

アナログな現場では「メッシュの伸び」「カット後のほつれ」などが大きな不良要因になります。
こういった現場課題を未然に防ぐためにも、メッシュ素材の特性は押さえておきたいポイントです。

分野別・具体的な用途例と選定ポイント

食品業界での用途と選び方

食品加工ラインでは衛生管理が最優先されます。
耐薬品性・耐熱性に優れるポリエステルメッシュが主流となっています。

例:
– 野菜・豆腐などの選別用スクリーン
– 製菓工場や精米工程でのふるい・濾過
– 飲料工場でのろ過用ネット

一方、コスト重視や物理的な衝撃・摩擦が加わる一時的用途では、ナイロンメッシュが選ばれることもあります。

自動車・機械部品での用途と選定

ナイロンメッシュは柔軟性と耐摩耗性に優れているため、機械内部の埃・オイルのフィルター、流体制御部品で多用されています。

例:
– オイルフィルターのメッシュ材
– 燃料ろ過ネット
– 精密部品の保護用カバー

耐熱や耐薬品性が求められる過酷な箇所には、ポリエステルメッシュでグレードアップする(または金属メッシュを検討)と確実です。

医療・精密分野での用途

医薬品製造やクリーンルーム用途では、異物混入リスクや化学的安定性が重要です。
ポリエステルメッシュの採用率が非常に高くなっています。
ただし、柔軟性や加工性重視の箇所ではナイロンメッシュも根強い評価を受けています。

例:
– クロスコンタミ防止フィルター
– 医用検査機器内部ネット
– 微粒子ろ過システム

近年の業界動向と“昭和的発想”の壁

カーボンニュートラル・SDGsとメッシュ素材

2020年代に入り、カーボンニュートラルやSDGs対応が全産業に迫られ、プラスチック素材の選定でも「環境負荷低減」が強く意識されるようになりました。

ポリエステルやナイロンは“石油由来”でありつつも、リサイクル原料を使った再生メッシュへのニーズが年々高まっています。
一部欧米では、高機能・サステナブル素材への切替要望が取引条件になる例も見受けられます。
調達・購買の現場では、従来の「単価・品質」だけでなく「環境認証」も重視する視点が欠かせません。

アナログ現場のアップデートに必要な目線

いまだに「従来からの馴染みサプライヤー」「去年と同じ仕様書」「永遠に手引きカット、手計量」といった“昭和的購買慣習”が根強い現場も多く見受けられます。
調達・品質・生産性を伸ばすには、メッシュ材料の選定根拠〜保管、管理まで、一歩踏み込んだ現場目線の改善が欠かせません。

例えば、
– 伸び率や摩耗の測定方法の標準化
– サプライヤーから継続的にベストマッチ素材を提案してもらう仕組み
– デジタル技術による在庫・発注管理
– 環境対応素材の早期トライアル
といった「新たな地平線」を切り拓くラテラルな発想が求められます。

まとめ 〜現場目線で素材選びを最適化するには〜

ポリエステルメッシュとナイロンメッシュは、見た目こそ似ていますが、現場の課題解決や将来の業界ニーズを考えると「最適な選定の知恵」が成果を大きく左右します。

品質やコストだけでなく、生産プロセス・耐久性・サステナブル性など多視点のバランス感覚が重要です。
近年ではサプライヤーも「単なる価格勝負」ではなく、用途に合った素材提案力や技術サポートに力を注ぎ始めています。
とくに調達・購買の担当者や管理職の方は、メッシュ素材一つの選定でも職場全体に大きな利益をもたらすことができると意識してください。

業界の“慣習”や“思い込み”にとらわれず、常に現場目線、時流を読みつつサプライヤーを巻き込んだアップデートを進めることで、製造業の未来はさらに広がります。
ぜひ本記事の知見をご参考いただき、自社・現場にとって最良のメッシュ素材選定を実践してください。

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