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生産過程で排出されるゴムの再利用方法とその可能性

目次
はじめに:製造業現場のリアルから見るゴム再利用の重要性
長年製造業の現場で働いてきた者として、日々実感するのは「資源の無駄を減らす」ことの重要性です。
特にゴムは身の回りのあらゆる製品に用いられており、タイヤやシール材、ベルト、パッキン類など、その用途は多岐にわたります。
しかし、生産過程では常に端材や不良品、規格外品といった形で大量のゴム廃棄物が出てしまうのが現実です。
近年の環境規制やSDGsの潮流を受け、「廃棄するのはもったいない」「なんとか再利用したい」という声が現場の最前線から多く上がっています。
本記事では、製造業の現場目線で具体的なゴム再利用方法と、その実現可能性、さらに今後の展望を深堀りしてご紹介します。
これからバイヤーを目指す方、調達や購買、工場運営、またはサプライヤーの立場でバイヤー視点を知りたい方の参考になれば幸いです。
生産過程で排出されるゴムとは:種類と現場での扱い
ゴムは大きく分けて天然ゴムと合成ゴムがあります。
それぞれ特性が異なり、自動車、電機、機械、建材、食品包装など様々な業種で活用されます。
工場の現場では、以下のようなゴム廃材が発生します。
バリ・端材
射出成型や押出成形の後、製品の形をきれいに整えるためにカットされた部分です。
量産ラインでは端材の発生率が高く、場合によっては生産量の10〜20%にも上ることがあります。
成形不良品・規格外品
寸法不良、気泡混入、ゴミ混入など、品質規格に合致しないために破棄されるものです。
生産条件や熟練度によって排出量は違いますが、不良品削減は品質管理上でも重要な課題です。
廃タイヤ・メンテナンス由来のゴム部品
工場内で使われたコンベアベルト、パッキン、ローラーなどの部品も、摩耗や劣化で定期的に交換・廃棄されます。
これらの多様なゴム廃材に対して、現場では「廃棄コストが痛い」「何とか再利用できないか」というニーズが常に存在しています。
ゴムの再利用が進まない背景にある“昭和的発想”
ゴムは複数材料の複合体であることが多く、金属や樹脂のような「単一材料リサイクル」と比べて扱いが難しい素材です。
また、歴史的に「ゴム=消耗品=捨てる物」という文化が根強く、下記のような昭和から続く価値観が再利用の障壁となってきました。
1. 生産ライン優先の現場主義
「効率的に大量生産して不良や端材はまとめて廃棄」というやり方が当たり前でした。
廃棄物の分別やリサイクル工程に手間をかけるくらいなら、作業効率を優先したいという意識が根深くありました。
2. ゴム再生技術に対する不信感
古くは「再生ゴム=品質が劣る」「すぐに劣化する」という悪いイメージが持たれ、実用化は進みませんでした。
現場では「お客様に迷惑をかけたくない」という真面目な職人気質がかえって新技術の導入にブレーキをかけていました。
3. 景気任せの“もったいない精神”の欠如
バブル期や企業が利益重視だった時代は、「廃棄コストぐらい経費で吸収できる」という発想も広がっていました。
その結果、「資源リユース」に本気で向き合う土壌がなかなか育たなかったのです。
時代が変わり、今やサステナブルへの取り組みは全企業に不可欠なものとなりました。
ゴム再利用に資する最新技術、そして現場に根付く“もったいない精神”の再生が今まさに問われています。
現場で始めるゴムの再利用:主な方法とその特徴
では、実際の製造現場ではどのようなゴム再利用の取り組みが進んでいるのでしょうか。
ここでは代表的な5つの再利用方法を紹介します。
1. リサイクル原料への再生(マテリアルリサイクル)
回収したゴム廃材を細かく粉砕し(クラム)、新しいゴム製品の原料に混ぜて再利用する方法です。
特にタイヤの摩耗粉や押出成形品の端材などは、一定の割合で再原料化されるケースが増えています。
ただし、添加量が多すぎると物性が低下するため、用途や配合比率の見極めがポイントです。
バイヤーとしては、どの程度の再生ゴム配合率なら品質が担保できるか、サプライヤーと綿密な技術打合せを重ねることが要となります。
2. サーマルリサイクル(熱回収)
廃ゴムを燃料として活用し、ボイラーや発電所で熱エネルギーに変換する方法です。
最終処分場の逼迫やCO2排出削減の観点からもサーマルリサイクルは注目されています。
しかし、ゴムには添加剤や補強材として金属・繊維が含まれることが多く、排ガス処理や環境負荷低減への配慮が必要です。
特に環境意識の高い欧州向け輸出案件の場合、リサイクルルールへの準拠がバイヤー判断の大きな要素となります。
3. 再製品化(リユース部品・再生製品)
廃タイヤを再生ゴムマットや歩道ブロック、人工芝の緩衝材など、全く異なる製品に作り変えて再利用する事例です。
また、工場で使用済みとなったコンベアベルトがカットされ、すべり止めマットや棚の保護材に転用されるケースもあります。
アイディア次第で意外なニーズが生まれる分野なので、現場の気づきが活用の鍵となります。
4. 化学的リサイクル(分解・再合成)
ゴム廃材を高温・高圧下で分子レベルに分解し、オイルや新たな化学原料として再利用する技術です。
プラスチックリサイクルと類似した手法ですが、コストや技術的課題も多く、国内導入例はまだ限定的です。
将来的には、用途によって「分子再生ゴム」の使い道が拡大すると予測されています。
5. 創意工夫で現場内転用
例えば、古くなったベルト材を作業台の保護シートや養生材として再利用したり、パッキン端材を治工具のグリップテープや養生材に転用するなど、工夫ひとつで廃棄を減らす取り組みも現場レベルで広がっています。
こうした「現場主導の知恵と実践」は、トップダウンではなかなか生まれない持続可能なアプローチです。
ゴム再利用の最新トレンドと、導入のポイント
業界大手やスタートアップが参画して、ゴム廃材の有効活用は一層加速しています。
ここでは今注目の最新トレンドと、導入時の現場ポイントをまとめてみましょう。
AIやIoT利用の端材管理
AI画像解析やIoTセンシング技術を活用し、端材・廃材の発生場所や量を自動で把握・データ化する取り組みが始まっています。
精度の高い廃材管理ができれば、「どこでどんな廃棄物が発生しているか?」「再利用可能な種類・量はどれくらいか?」を“見える化“することが可能です。
現場レベルで廃棄ロスを可視化し、改善サイクルにつなげることが事前活動の最大ポイントです。
マテリアルリサイクルを前提とした設計(DfR:Design for Recycling)
製品設計段階から「分別しやすい素材」「再生容易な構造」を組み込むことで、将来的な再利用率を高める企業が増えています。
バイヤーや開発部門が協力して、再生材の仕様化・早期採用を進めることで、川上からサステナブルなものづくりが可能となります。
サプライチェーン全体での廃材共有・マッチング
業界横断で廃材需要・供給をマッチングさせるプラットフォームも始動しています。
例えば、自社で再利用できないゴム端材を異業種の建材メーカーやスポーツ施設事業者と連携し、原料調達ニーズをクロスさせるスキームです。
調達・購買担当としては、こうした業界ネットワークを積極的に活用し、価値のある廃材循環を実現していきたいところです。
ゴム再利用がもたらす現場・社会・企業へのメリット
ゴム再利用は、「環境への貢献」だけでなく、実は現場・企業・社会すべてに大きなメリットがあります。
廃棄コスト削減
産業廃棄物処分費用は年々高騰しています。
現場で再利用が進めば、コスト削減と同時に経営体質の強化につながります。
資源の有効活用・供給安定
世界的な原材料高騰や物流混乱、地政学リスクといったサプライチェーン不安定化の中、「再生材活用」は企業競争力の武器となります。
再生材活用が進めば、安定的な調達先確保にもつながります。
ブランド価値の向上
SDGs・カーボンニュートラル対応は全業界で必須です。
再生ゴム活用の積極的なPRや実践は、企業ブランド価値やステークホルダー評価の向上に直結します。
現場主体の“もったいない改革”こそが、中長期的な企業価値向上の近道なのです。
ゴム再利用推進のために現場・バイヤー・サプライヤーが今できること
これからゴム再利用のトレンドを味方につけるには、まず現場の意識改革から始まります。
購買・調達担当であれば、サプライヤーと共創する姿勢が不可欠です。
現場:小さな工夫と声かけが変革の一歩
「端材を簡単に捨てず、用途を探す」
「廃棄現場を見える化して改善案を出す」など、毎日の小さな気づきを大切にしましょう。
定期ミーティングでの情報共有、改善提案制度の活用も有効です。
バイヤー・調達:技術軸+サステナブル軸でサプライヤーと協働
コストや品質だけでなく「再生材活用・廃材削減」の観点を加えた評価を進めてください。
サプライヤーと共同で新しい再生材の標準化、品質基準の策定、実証試験の実施など積極的に推進しましょう。
サプライヤー:バイヤー目線で再生材の“攻め”提案を
「安価な再生ゴムをどう活用できるか?」
「従来規格に替わる新しい商材を現場課題とセット提案できるか?」など、価格競争以外の差別化ポイントを意識してください。
再生材調達に関するタイムリーな業界情報、技術開発動向も継続的に発信することで、バイヤーとの関係強化を図りましょう。
まとめ:持続可能な未来へ、現場から始まるゴム再利用革命
今、日本の製造業は「カーボンニュートラル」「資源循環」に向けた大きな転換点を迎えています。
昔ながらの“廃棄前提”から脱却し、“もったいない精神”“技術革新”の融合によって、現場からサステナブルな価値を生み出す時代です。
ゴム再利用の推進は、コスト削減・価値創出・企業成長の全てを実現する新たな競争力です。
バイヤー、サプライヤー、現場すべてが一体となり、“昭和的発想”から一歩踏み出して、循環型ものづくりの新たな地平線を切り開いていきましょう。
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