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熱電発電の最新技術と高効率化・低環境負荷技術への応用

目次
はじめに 〜熱電発電がもたらす製造業革命〜
熱電発電という言葉をご存じでしょうか。
工場や各種産業施設、さらには家庭でも常に発生している「廃熱」。
この未利用エネルギーを直接電気に変換できる技術として、いま熱電発電(Thermoelectric Power Generation)があらためて脚光を浴びています。
私自身が工場長として操業を管理していた現場でも、稼働設備から逃げていく莫大な熱エネルギーに何度も無力感を覚えました。
「これが全部電気になれば、電力コストは大きく下がるのに」「温暖化対策にもなる」——そんな思いを抱いた経験のある方も多いはずです。
この記事では、電力需要が高まり、脱炭素と生産効率化の狭間で悩むあらゆる製造業の現場、バイヤー、サプライヤーに向けて、熱電発電の基礎から最新動向、高効率化・低環境負荷への応用、実用化の課題、今後の展望について実践的視点と業界トレンドを踏まえながら徹底解説します。
昭和のようなアナログな現場気質、習慣が根強く残る製造業ですが、熱電発電は「脱アナログ」を後押しする一つの突破口。
ラテラルシンキング(水平思考)で、この技術の“真価”と新しい応用地平線を一緒に見つけていきましょう。
熱電発電の仕組みと基礎知識――なぜいま注目されるのか
熱電発電とは?
熱電発電とは、ある箇所に温度差を設けることで、その差から直接電気を取り出す技術です。
現代の熱電発電は、主に「ゼーベック効果(Seebeck Effect)」を利用します。
具体的には、2種類の異なる金属や半導体を接合した構造をつくり、一方を高温、他方を低温にしてやると、熱エネルギーが電子の移動=電流として現れる原理です。
この技術、実は数十年以上前から存在していました。
宇宙探査機ボイジャーや人工衛星に搭載された「RTG(Radioisotope Thermoelectric Generator)」などが古典例です。
しかし、効率やコスト、材料の制約などから量産現場や一般産業界にはなかなか普及しませんでした。
なぜいま熱電発電が再注目されているのか
昨今、以下の3つの要因で再び熱電発電の応用が熱視線を集めています。
- 工場・製造業で“余剰熱”の発生量が膨大で有効利用が不可欠
- 再生可能エネルギー・カーボンニュートラル推進の社会的要請が高い
- 半導体・材料技術の進化により、発電効率(熱電変換効率)が大幅向上してきた
日本の総エネルギー消費の約3割以上が「廃熱」として棄てられています。
この熱を電気に変えることができれば、電力コスト・CO2排出を同時に抑制できる。これは工場・バイヤー・サプライヤーにとって大きな魅力です。
最新の熱電材料と高効率化技術
期待される新材料の登場
これまでの熱電発電は、ビスマス・テルルなどの希少元素を使った半導体材料が主流でした。
材料調達コストや毒性、耐熱性の問題を抱えていたため、現場目線では扱いづらいものでした。
しかし、ここ数年で新材料の開発が急速に進み、製造原価と性能のバランスが劇的に向上しています。
- 鉛やカドミウム不使用の環境配慮型材料(Mg2Si, Skutterudite系など)
- 高出力・高耐熱な酸化物系熱電材料(NaCo2O4、Ca3Co4O9 など)
- 低温域向けに高効率な高分子系熱電素子
現場の購買担当・バイヤーにとっては、
・原材料調達の安定性、価格、毒性規制
・投資回収年数
・メンテナンス性/耐久性
を十分に考慮したビジネス判断が求められます。
熱電発電モジュールの最新設計
新しい設計思想では、以下のポイントが重視されています。
- 狭小スペース・曲面・配管周りなど設置環境への柔軟な適合性
- 既設プラント設備への「後付け型(レトロフィット)」対応
- 素子アレイ化による高出力化・冗長設計
特に工場に導入する場合、「既存の生産ラインを止めずに導入できるかどうか」は極めて重要です。
最新モジュールでは、配管外壁や排気ダクトなどの外部に貼る・巻き付けるだけのタイプも登場。
従来のような「設備改造の大工事」「生産ロスリスク」を最小限に抑えることができます。
AI・IoTとの連携〜データドリブン工場と熱電発電
現場では、AI/IoTを組み合わせることで、発電量や発熱量の最適化、装置の劣化予知・保守まで自動化できる段階にあります。
例えば、工場排熱源のリアルタイムモニタリングで「今、どの配管が一番熱エネルギーを持っているのか」に応じて発電デバイスのオンオフを自動制御。
これにより効率を最大化し、余分な電気加工・設備投資も不要となります。
熱電発電の応用事例—大手・中小企業現場での活用実態
大手製造業:半導体工場・化学プラントでの応用
大手半導体メーカーでは、クリーンルーム温度管理やプロセス装置で発生した高温排気・排液ラインの熱を回収し、施設照明やポンプ駆動電力として熱電発電を利用しています。
同様に、化学プラントでは触媒反応・熱分解工程で生まれる“定常的な余剰熱源”が多く、物理的にもエネルギーロスの低減策が取られています。
ここでの重要ポイントは、「廃熱箇所の見える化」と「熱効率マッチング」です。
つまり、熱源の温度帯・流体特性・発生タイミング・エネルギー量に応じて最適設計された熱電素子を配置し、全数データ解析を行うことで、工場全体で熱回収ネットワークを構築しています。
中小・町工場レベルでの成功例
大型プラントだけでなく、中小規模の鋳物工場、食品工場、染色工場などでも活用が進んでいます。
例えば、鋳造時の排気ダクトに巻き付けた熱電デバイスで工場内照明の一部を賄ったり、乾燥炉の表面温度を利用し、省エネ顕著な成果を上げているところもあります。
ここで大切なのは、「小規模分散型」という発想です。
局所的な小さな熱源であっても積み重ねれば工場全体で大きな電力削減につながり、CO2排出権取得や環境認証の取得にも寄与しています。
バイヤー・サプライヤー・現場従事者が知るべき導入時の視点
技術だけでは語れない現場の難しさ
熱電発電は新しさやエコの印象が強いですが、実導入にあたりバイヤーや現場技術者は「投資対効果」「補助金有無」「安全基準」「保守性」「環境法規制」など多面的な視点が欠かせません。
例えば、排気ダクトに熱電素子を貼る場合でも、「排気ガス組成」「腐食リスク」「定期メンテナンス時の取り外し負荷」などが具体的コストや安全項目となります。
また、サプライヤー(供給側)は、単に製品スペックを売り込むのでなく、導入現場の分かりやすいROI(投資回収年数)試算、工事負荷や設備止め時間の最小化策までセットで提案できることが、今後の選ばれる条件です。
アナログな現場文化 × デジタル技術の橋渡し
製造業の多くは、今でも「前年踏襲」や「ベテランのカン・コツによる最適運用」が根強く残っています。
これ自体は現場の知恵ですが、新技術導入の障壁にもなりえます。
本当に現場で熱電発電のメリットを引き出すには、
・ベテラン作業員の現場観察+センシングデータによる熱源分析
・わかりやすい電力削減実績の可視化
・電力会社やエネルギー管理士との連携
など、「現場の目」と「データ」の両輪が不可欠です。
熱電発電の今後と製造業発展への貢献可能性
脱炭素社会への貢献
熱電発電の普及は、高騰するエネルギーコストの削減とともに、製造業のカーボンニュートラル、SDGs対応を力強く後押しします。
特に「産業界全体でCO2削減」「自社工場をグリーンファクトリー化したい」と考える方にとっては、補助金や排出権との組み合わせによる投資メリットも大きく、今後ますます導入ハードルが下がっていくことが予想されます。
パートナーシップによる導入推進の時代へ
技術や設備メーカー、設計者だけでなく、バイヤー・サプライヤー・現場従事者・行政までが一体となり、現場での本当の価値創造を目指すパートナーシップが求められています。
「熱電発電はSDGs達成のための道具」だけでなく、「現場改善・QCD向上・新しい付加価値の創出」そのものであると再定義できるでしょう。
まとめ 〜アナログ昭和の工場だからこそ“新しい地平線”を切り拓こう〜
いま熱電発電は、「無駄を減らし、安定した収益・環境価値をもたらす」新世代の現場ソリューションとして成長しています。
製造業バイヤーは、自社のエネルギーロス把握とROI試算を徹底し、最適な熱電発電導入を推進しましょう。
サプライヤーは、顧客現場の視点で柔軟な提案と支援を実践しましょう。
そして、何より昭和から続く現場の“もったいない精神”と“最新技術”をつなぎ、より強く、より持続可能な新しいものづくりを共に実現していきたいと強く願っています。
あなたの職場でも、「熱」を「価値」へ変える第一歩に、ぜひ熱電発電の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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