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木製プレートの印刷でムラをなくすためのスキージ硬度と印圧制御

目次
はじめに:木製プレート印刷の「ムラ問題」と現場目線の課題
木製プレートの印刷工程では、仕上がり品質に大きく影響する「ムラ」という永遠の課題があります。
このムラは、仕入先から届いた原材料の個体差や、インクの粘度変化、オペレーターの作業経験など多くの要素が絡み合って発生します。
昭和の時代から、アナログな手法で対応し続けてきた現場も多いですが、現在では歩留まりや品質向上、生産効率化がますます求められています。
ここでは、筆者の製造現場での実体験や最新動向も踏まえ、特に「スキージ硬度」と「印圧制御」にスポットを当て、ムラを低減・撲滅するための具体的な方法や現場の勘所を解説します。
業界に根付いた作業スタイルや、新しい発想から現場の常識を一歩超える「ラテラルシンキング」的視点で、記事を進めていきます。
スキージ硬度の基礎と応用 — “たかが硬度、されど硬度”
スキージとは何か?材料や硬度の違いが品質を左右する
木製プレートのシルク印刷、またはパッド印刷現場で必ず使われるのが「スキージ」と呼ばれる樹脂製のヘラです。
スキージの役目は、インクを製品表面にムラなく転写することです。
スキージには主にポリウレタンやゴムが使用され、硬度の単位は「ショアA(A Hardness)」で表現されます。
現場では「60度」「70度」「80度」など選択肢があり、わずか10度違うだけでも品質や仕上がりに大きな差が生じます。
スキージの硬度がもたらす効果 — “硬さ”とは適応性
硬度が低い(例えば60度付近)スキージは、柔らかく木製プレートの不均一な表面やわずかな段差にも追従しやすいという特長があります。
反面、適切に制御しないと、インクの「伸び過ぎ」や「エッジのボケ」といった新たなムラ要因を生み出すこともあります。
一方で硬度が高い(80度以上)スキージは、インクをシャープに切りますが、表面の微細な凸凹や反りに追従しにくく、印刷抜け(インクがのらない部分)が発生しやすくなります。
したがって、「木材の種類」「表面処理」「インクの種類」「印刷サイズ」「作業環境湿度温度」といった”変数”とのバランスを見極めることが現場力です。
筆者が現場で学んだ硬度選定のコツ
昭和から平成、令和と現場を経験する中で見えてきたのは「熟練工の勘」だけに頼らない、再現性ある硬度選定の大切さです。
例えば、冬場の低湿度環境ではインク粘度が高くなりムラが出やすいので、硬度を落とすことで一定の品質を維持できました。
また、プレート表面の塗装が脆弱な場合、硬すぎるスキージでは塗装ごと剥がしてしまい不良を招いた経験もあります。
現場では材料ロットナンバーごとにサンプルテストを実施し、データを蓄積。
「Aロットのブナ材には70度」「Bロットのパイン材であれば65度」と材料ごとに最適を追求する文化を作りました。
印圧制御:力加減の科学が品質を左右する
印圧の基本:ムラを生む“隠れた原因”
印刷の仕上がりに直結するパラメータが「印圧(印刷時にスキージを押し付ける力)」です。
この値が大きすぎると、必要以上にインクが抜け、木目に浸透したり滲んだりします。
逆に印圧が弱すぎると、インクの転写不足による「かすれムラ」や「色ムラ」の原因となります。
印圧管理のポイント — “デジタル制御”と”アナログ感覚”の融合
設備によってはトルクセンサーやロードセルを使い、押し付ける力を数値管理できるものもあります。
しかし多くの小規模工場やアナログ現場では、いまだ「手加減・指加減」で調整しています。
このギャップを埋めるために、筆者の工場では「印圧テンションゲージ」を導入し、バイヤーやサプライヤー双方に客観データを開示できる体制を作りました。
また、天候や作業者の力加減の違いを吸収するために、作業前後で簡易測定を義務づけ、一定範囲内に収まらない場合は印刷工程を止めて再調整しております。
“ヒト起因”のムラ対策 — 作業者教育と標準化の大切さ
どうしても現場では「熟練者」に依存しがちです。
しかしサプライヤー側がバイヤーの要求品質に答え続けるためには、「手順書」と「標準作業書」を整備し、誰が担当してもムラが出にくい運用が不可欠です。
特に新規立ち上げ時や熟練工の高齢化が進む現代、標準化・デジタル化は今後の生き残り戦略と言えるでしょう。
バイヤー目線で見る「スキージ硬度」と「印圧」制御
高品質化要求と安定供給 — 今、サプライヤーに求められるもの
バイヤー(調達購買)の立ち位置から木製プレート印刷を見ると、「安定した品質」「コスト抑制」「納期遵守」が最大関心事です。
一方で、現場が感じている「材料ロットごとの個体差」や「気候変動の影響」など、現実的な課題をなかなか汲み取れていないケースも少なくありません。
そのためサプライヤーとバイヤーが、スキージ硬度や印圧など「工程の見える化」「パラメータの標準化・共有」を通じて、両者のミスマッチを減らすことが重要です。
リスク管理としての「工程監査」と「事前テスト」
ユーザー(エンドメーカー)生産変動や多品種小ロット化の進展により、バイヤーは従来以上にサプライヤー選定のリスクヘッジが求められています。
現場で起きている「ムラ」や「不良発生源」を事前に把握するため、工程監査時には「スキージ硬度管理帳票」や「印圧管理履歴」を確認し、改善プロセスが確立しているかを重点的にチェックすると良いでしょう。
また、初回ロット時に「印刷テストピース」を用意し、バイヤーとサプライヤー双方で仕上がりを検証する体制を構築することで、クレーム発生リスクの低減に繋がります。
新しい発想(ラテラルシンキング)で現場を変える“チャレンジ”
AI×IoTで印刷条件を“自動最適化”する新潮流
2020年代以降、AIやIoTの活用が進みつつあります。
例えば、印刷ラインにカメラを設置し、インク転写状況をリアルタイムで数値化。
異常を認識すると、AIが自動でスキージ硬度や印圧を“推奨値”に修正し操作員へフィードバックするしくみが、一部の先進工場で実用化されています。
今後は中小・アナログ現場へも、センサーやカメラが安価に導入できるようになり、データドリブンでムラ撲滅に取り組む新たな時代が到来するでしょう。
サプライヤー発の提案型営業 — “一歩先の品質保証”へ
受身ではなく、サプライヤー自らが「最適スキージ硬度の変更提案」や、「印圧制御装置の共同検討」を提示することで、お客様に新たな価値を提供する動きも重要です。
こうした能動的品質保証活動こそ、「バイヤーに選ばれるサプライヤー」の条件となりつつあります。
まとめ:現場目線×管理者目線で「ムラのない木製プレート印刷」へ
この記事では、木製プレート印刷における“ムラ”撲滅のための、スキージ硬度と印圧制御に着目。その基礎から応用、昭和的な現場の暗黙知、新しいテクノロジーの活用に至るまで、幅広く解説しました。
重要なのは、「データと現場力の両輪」で改善を回し続けることです。
バイヤーは現場への理解を深め、サプライヤーはお客様要求をデータと根拠で説得し合い、より良い製造業の未来を共に模索しましょう。
これからも現場から発信するノウハウや、“新しい地平線”へのヒントをお届けしていきます。
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