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AI判定を導入しても“最後は人が見る”が残る理由

目次
AI判定を導入しても“最後は人が見る”が残る理由
はじめに
近年、製造業の現場ではAI技術の導入が加速度的に進んでいます。
とりわけ品質管理や検査工程においては、画像判定AIや各種センサーを駆使した自動判定システムの導入事例が急増しています。
しかし実際の現場では、「AIで判定した結果を最終的に人が再確認する」という運用が根強く残っています。
昭和スタイルのアナログ管理が根強いこの業界で、なぜ“最後は人が見る”がなくならないのか。
本記事では、実体験と業界動向を織り交ぜ、現場目線でその理由を探ります。
AI判定とは?現場での導入背景
画像判定AIとは、主にカメラやセンサーを使い、製造ライン上に現れる部品や製品の外観、形状、色、寸法を自動で判別する技術のことを指します。
部品のキズや汚れ、組立のズレといった不良を、リアルタイムで検出する技術革新です。
このAI判定が現場に導入された背景には、以下のような理由があります。
・少子高齢化による現場作業者不足
・技能伝承の難しさ
・人によるバラつき、ヒューマンエラーの低減
・検査スピードと正確性の向上
ITやAIに投資できる大手企業だけでなく、中堅・中小の現場でも導入が始まりつつあります。
それでも、なぜ最終チェックで“人の目”がすぐには無くならないのでしょうか。
AI判定の限界と「人の目」が残る理由
1. AIに学習させる“良品・不良品”の基準の曖昧さ
AIが適切に判定するには、「良品」「不良品」の基準(教師データ)が明確で大量に必要です。
しかし製造現場では、“部品のキズ1つ”でも状況によって許容できたり、NGになったりと基準が一定しません。
検査員の長年の勘や「経験則でグレーゾーンを判定する力」が現場では重宝されています。
AIはこの“グレー”の判定を苦手としています。
例えば、「深さの浅いキズなら許される」「組み合わせ部品では多少のズレはOK」など、現場毎に異なるニュアンスを教えるには膨大なルール作りが必要になります。
制御しきれない事象をカバーするため、最終的に人が補完して“ジャッジ”する必要があるのです。
2. 想定外・イレギュラーな不具合への対応
現場では、AIの学習データやルールから外れた「新しい不具合」や、「教科書通りではない不規則な製品不良」にたびたび遭遇します。
例えば、AIには“キズ”や“ヘコミ”しか教えていなくても、実際に起きたのは“変色”や“異物混入”など未学習のトラブル。
また、「何か変だけど、説明は難しい」という“違和感”を人間の検査員は察知できます。
AIでは「異常監視」で対応する仕組みもありますが、予測不能なトラブルほど人の五感、直感、柔軟性が欠かせません。
AI判定をすり抜けた不良品のリスクを極小化するため、“最後の砦”として人の目が必要になるのです。
3. 顧客品質クレームと現場責任感からのダブルチェック
多くの製造現場では、「万が一のクレームやリコール」を極度に恐れています。
AIで自動判定して合格した製品でも、本当に大丈夫か?という念押しを現場リーダーや管理職が求めます。
「ウチは人でも見ているから!」という信頼のアピールが、顧客や経営層への安心につながっているのです。
特に納入後の品質問題は、企業の信用や取引停止にも直結します。
そのため「ダブルチェック」が常態化し、AIの判断を信じ切れず、最後は人の目で再確認する文化が根付いています。
4. AI導入コストや周辺インフラの整備難易度
最先端企業では、AI判定システム自体が高額なうえに、カメラや照明、制御装置との連動など「周辺インフラ整備」にもコストがかかります。
現場環境の変化(光の加減、作業者の影響、ラインスピードの変動など)にも柔軟に追従するシステム作りは非常に大変です。
結果として「AI判定を補助的に使い、運用の余裕がない現場は人の目に頼る」という状態が続きやすいのです。
「人の目」は進化する。AIとのハイブリッド運用が現場の“今”
現実的な運用:「AI判定+人手による最終確認」
多くの現場では「全数検査」をAIだけに任せず、「AIで見逃しやすい個所」「判断が分かれるグレーゾーン」「通常とは異なる特別ロット」などを、人が重点的にピックアップして確認する運用が主流です。
今後も、全自動AIだけで完結するには「現場ノウハウの完全見える化」「基準の明確・標準化」「AI自体の継続的な学習とアップデート」が不可欠です。
それまでの過渡期では「AI+人の最強チーム」で品質担保する体制が業界全体で主流となるでしょう。
サプライヤー・バイヤー間で求められる信頼性とコミュニケーション
バイヤー(顧客)の視点では、“AI済みだから大丈夫”という一筋縄な価値観ではありません。
「どこまでAI検査で、どの範囲を人がカバーしているのか」「不良発生時のトレーサビリティ」「現場の責任感・職人気質」などを総合的に判断しています。
サプライヤー側はAI導入状況だけでなく、「最終的に人が見ていることで信頼を積み上げている」ことをしっかり伝えることが重要です。
この現実をバイヤー志望者やサプライヤーの若手にも知ってもらいたいポイントです。
今後のトレンド:AI活用と「人の直感・ヒューマンスキル」の融合
AIをうまく活かす工場は、「人にしかできない部分」と「AIに最適化する部分」を見極め、二刀流で運用しています。
具体的には、
・反復的な作業や記録にはAI
・異常な製品や予測不能なトラブルには人の直感
・トラブル発生時の対応マニュアル策定やナレッジ共有にはAI+人
といった分担が進んでいます。
過去のアナログな職人芸・ベテラン技能に頼った現場ほど、AI判定を導入しつつも「人の目」を大切にする文化が根強く残っています。
“昭和的な現場力”と“令和のデジタル技術”のベストミックスが、今の日本の現場競争力を支えているのです。
まとめ:AI時代でも「最後は人」―その真価を知る
AI判定がいかに進化しても、製造業現場が「最後は人が見る」を手放せない理由は、単なる保守的な文化だけではありません。
現場基準の曖昧さ、想定外トラブルへの柔軟対応、顧客や社会への責任感、コストやインフラ事情など、さまざまな現実が絡み合っています。
そして何より「現場を守り、品質を守る」という使命感は、AIには替えがたい“人間力”としてこれからも必要とされるでしょう。
これから製造業に進みたい方、現場のサプライヤーとして成長したい方は、「AIと人のハイブリッド体制」の重要性をぜひ意識してください。
昭和の現場力、未来のAI技術、その両方に知見を持つことが、強いバイヤー・サプライヤー・現場リーダーの必須スキルとなります。
本記事が、製造業の皆さまの新しいヒントとなれば幸いです。
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