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投稿日:2025年12月11日

試作で問題なしでも量産で歩留まりが落ちる構造的ギャップ

はじめに:製造業で起きる「量産落ち」とは何か

製造業の現場でよく耳にする「試作でうまくいったのに、量産では不良が増える」という現象。
これは多くの工場、特に長い歴史を持つ大手メーカーでも頻繁に発生しています。

「試作」と「量産」では、同じ製品であっても全く異なる課題に直面します。
現場で20年以上、調達、品質管理、生産管理など様々な立場を経験してきた私の視点から、この“構造的ギャップ”の本質に迫ります。

試作と量産で異なる世界

試作品で現れる「理想のカタチ」

試作段階では、選抜された熟練作業者や技術者が最新の注意を払い、手間暇を惜しまず、まさに“作品”を作り上げます。
部品の供給も限定的で、チェック面もしっかりしています。
言い換えれば、理想的な環境下で、最大限のパフォーマンスで作られたものが試作品です。

量産ラインに潜む“魔物”

一方、量産段階になれば、数十~数百倍のスループットをこなす必要があります。
人員も増え、交替勤務、作業の分業も進みます。
サプライヤーの部品供給も、日々納期優先でスピードが重視されるようになります。

部品のバラツキ、作業者の熟練度、設備の再現性、気温・湿度、突発トラブル…。
数え切れない変動要因が、理想だった試作の「再現」を邪魔します。

このギャップにどうアプローチするかが、製造業の生命線である「歩留まり」に直結するのです。

量産移行で起きる歩留まり低下の本質

標準化と再現性のトラップ

量産移行で最も大きな壁となるのが、「製造条件の標準化と再現性」です。
試作段階では「現場力」でカバーできていたことも、量産現場ではマニュアル化・標準化が不可欠となります。

しかし、ここでよく発生するのが「暗黙知」の壁です。
トップ層の作業者が「感覚的」に行っていた微妙な調整が、言語化・データ化されずに消えていきます。

その結果、細かなノウハウが抜け落ち、属人性の高い工程が“ボトルネック”となり、全体の歩留まりを押し下げます。

サプライヤー管理の認識ギャップ

また、調達・購買担当者やバイヤーの視点から見ても、量産になるとサプライヤーに「安定供給・コストダウン」のプレッシャーをかけがちです。

サプライヤー側は「試作はOKだったのに量産ではNGばかり」と苦情を受けることが増えます。
これは設計・購買・現場の三者間で“品質のゴール”の認識がズレているためです。

「ここまでやってくれ」と言われるがまま対応した結果、手間と費用がかさみ現場を疲弊させる。
コストダウン要請と品質要求は常にトレードオフの関係にあります。

昭和の仕事観が影響する現場体質

アナログ管理から脱却できない現場

日本の製造業は世界的に見ても高品質とされますが、その実態の裏には“人頼み”のアナログ文化があります。

たとえば、現場ノートに手書きで記録、ベテラン作業者の勘と経験が頼り、設備トラブルもイレギュラー対応でしのぐ。
この風土が「何とかなってしまう」安心感を招き、再現性の低下や品質バラツキにつながります。

デジタル化や工場の自動化は進んでいますが、現場力を完全に置き換えるまでには至っていません。

現場力の限界とAI・IoT活用

最近は、データに基づく歩留まり管理や、AIによる品質予測なども徐々に浸透し始めました。
ですが、長年の昭和的現場文化との“せめぎ合い”が続いており、本当の意味でのブレイクスルーはまだ遠いのが実情です。

「IoTで全部データ管理している」と豪語する現場も、日々のトラブルは結局ヒューマンリカバリー頼み…という事例も少なくありません。

試作と量産ギャップを埋める実践的アプローチ

“バトンリレー”型の検証体制づくり

まず重要なのは、設計~試作~量産への移行期における「バトンリレー」の徹底です。

設計・品質・生産管理・購買・現場まで、部門横断で製品の重要特性を明文化・データ化し、引き継ぎ情報が曖昧にならない仕組みを作りましょう。
特に、試作段階で現れていた“カスタマイズ作業“や微細な手直しの内容も、必ず棚卸しし、「標準作業」として言語化する努力が必要です。

また、設計段階から量産現場・調達担当が関与し、“量産想定”で試作品の検証やバラツキ実験を行うことも有効です。

「最弱点」工程への先回りケア

量産ラインは「最弱点」で全体の歩留まりが決まります。
ヒューマンエラー、装置不具合、部品バラツキ…その中でも特にリスクが高い箇所(チョークポイント)を“想定外”が起きる前に予防措置する発想が重要です。

たとえば、寸法公差が厳しい部位だけ段取り替えを増やしたり、ケミカル特性が弱い工程は自動計測・即アラートを仕込んでおく。
こうした「リスクの見える化」と「チョークポイントの先回り」が、構造的ギャップを最少化します。

サプライヤー巻き込み型の品質改善

調達・購買部門は、サプライヤーに“要求伝達”をするだけでなく、“共創型”の品質改善に一歩踏み込むべきです。

初期流動監査(量産初期の現場監査)への現場担当者の同行、設備バリデーション立ち会い、バラツキ要因の共有ワークショップなど、メーカー・サプライヤーの壁を挟まない「現場横断の気づき」の場を作りましょう。

これにより、部品供給側で「起きやすい問題」「ヒヤリ・ハット」の情報が先回りで伝わり、歩留まり悪化の予防策が構築できます。

購買・バイヤー視点:量産歩留まりで知っておくべきこと

「低コスト化」と「安定調達」の両立の現実

バイヤーとしては、つい「最安値交渉」に目が行きがちですが、量産しながら安定した品質・納期を確保することこそが最大のミッションです。

「安く買ったはよいが不良率が増えた」「納期遅延で生産が止まる」といった事態は、調達コストの削減努力が帳消しになります。

バイヤーはサプライヤーの現場体制、技術力、歩留まりデータ、初期流動時のリスク情報を必ず確認し、「最安値」だけではなく「トータルの信頼性」でパートナーを選ぶことが重要です。

バイヤーとサプライヤーの本音ギャップ

実際の現場では、サプライヤーは「何とか歩留まりを上げてくれ」というプレッシャーを日々受けています。
一方で、発注側のバイヤーは「コスト削減に協力してほしい」と強く求めがちです。

この両者の“本音ギャップ”を理解し、「品質悪化の背景にどんな現場課題が隠れているか」を現場起点で把握すること。
それがバイヤー信頼度アップの秘訣でもあります。

まとめ:ギャップを埋める継続的改善こそが競争力

試作と量産の間に生じる“見えない構造的ギャップ”は、技術進歩やデジタル化が進んでも簡単に埋められるものではありません。
しかし、現場横断の情報共有や真の意味での標準化を心がけることで、そのギャップは確実に縮めることができます。

購買やバイヤー、サプライヤー、製造現場が“ひとつにつながる”ことで、歩留まりを守り、コストと品質の両立を叶え、結果として「現場が誇れるものづくり」へと進化します。

昭和の仕事観にとらわれず、新しい発想とテクノロジーと実践的な知恵を掛け合わせ、製造業の未来をともに切り開いていきましょう。

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