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調達リスクが表面化してからでは対策が遅いことへの恐怖

目次
はじめに:製造業の調達リスク、その「表面化」の意味
製造業の現場で20年以上過ごしてきた私が、今も痛感することがあります。
それは、調達リスクは「表面化」してから対策を練るのでは遅すぎる、という事実です。
昭和の時代から続く“なんとかなる精神”が、いまだ根強くアナログな業界の現場では、トラブルが顕在化して初めてバタバタと動き出す、そんな光景は日常茶飯事でした。
しかしグローバル化に猛スピードで拍車がかかり、サプライチェーンが複雑化した今、その“悠長さ”は致命傷になりかねません。
この記事では、調達リスクが表面化してからでは遅い理由と、今求められる先回りしたマネジメントの必要性を、現場目線で掘り下げていきます。
特にバイヤーや、サプライヤーの関係者、将来的に調達部門を目指す方に役立つ内容をお伝えします。
なぜ「表面化してから」では遅いのか?
サプライヤー発のトラブルは“連鎖爆発”する
現場で最も恐ろしいのは、不良品や納期遅延などのトラブルが顕在化した時点で、すでに生産ラインや顧客納品スケジュールに甚大な影響が及んでいることです。
一つの部品が遅れただけで、組み立て工程全体がストップし、場合によっては数千万円、数億円規模の損失になることも珍しくありません。
サプライヤーからの情報伝達が遅れたり、「言いづらい」空気が現場を支配したりすることも、トラブルの連鎖につながります。
日本的な“なあなあ”主義の副作用がここに現れます。
「リカバリーコスト」は想像以上
トラブルが表面化してからでは、対応に要するコストや工数、社内外の信頼損失は膨大です。
追加発注、緊急輸送、現地確認、人員投入――。
いずれも通常時よりも数倍のコストがかかります。
特に多くの関係者間で原因究明や折衝が必要になると、現場担当も管理層も疲弊しきります。
ブランド価値の棄損も不可逆的
重大な納期遅延や品質事故は、最終顧客からの信頼損失につながります。
一度ブランドイメージが損なわれてしまうと、回復には莫大な時間とコストがかかるため、リスクが表面化する前の「未然防止」が絶対的に重要なのです。
調達リスクの“実態”を多角的に認識する
リスクは「納期」や「品質」だけではない
調達リスクというと、「納期遅れ」や「品質不良」に目が行きがちですが、現場で発生するリスクはそれだけにとどまりません。
– サプライヤーの経営状態悪化による突然の取引停止
– 突発的な自然災害・パンデミックの発生
– 国際的な貿易摩擦、為替変動の影響
– 知的財産権やコンプライアンス違反
– サイバー攻撃や情報流出
こうした多面的なリスクを、日ごろから“見える化”する意識が不可欠です。
なぜ昭和的アナログ業界はリスクが「見えづらい」のか
まだまだ調達・購買の世界では、Excelや紙ベースの管理、電話やFAXでの連絡、属人的な情報伝達が主流です。
過去の成功体験や、「このやり方で数十年やってきた」という意識が、リスクの早期発見を難しくしています。
また、現場の調達担当とサプライヤーの間で、問題があっても“何とかする精神”が働きがちで、トラブル兆候の段階でオープンに議論する文化が醸成されにくいのです。
調達リスク管理:表面化前の“先回り”が製造業を守る
サプライヤー選定・評価の精度を高める
リスクを最小化する第一歩は、信頼できるサプライヤーの選定と、継続的な評価です。
安さだけで判断したり、「長年の付き合いだから安心」と過信したりするのは大きなリスクです。
評価項目は多岐に渡ります。
納期遵守率、品質実績、財務健全性、災害時の事業継続力、情報セキュリティ対応など、定量的・定性的な指標で定期的に評価を行います。
過去トラブルや課題の共有履歴も蓄積しておき、異常値が現れた場合はアラートを発する仕組みを作りましょう。
サプライヤーマネジメントは「一緒に創る」姿勢で
日ごろからサプライヤーと密に連携し、信頼関係を築くことは極めて重要です。
サプライヤー任せにしない、「共創型」のパートナーシップを意識しましょう。
例えば、現場での5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)活動を一緒に行ったり、改善提案の仕組みを活用したりすることで、現場の課題やリスクの“予兆”を早期に吸い上げられます。
重要なのは、「トラブルを隠さず早期に相談できる」雰囲気を構築することです。
デジタル化は“予兆管理”と標準化を加速させる
従来のExcelや紙頼みの調達業務から脱却し、サプライチェーンマネジメントシステムやBIツールによる情報の一元管理を進めましょう。
部品納入の進捗データ、品質記録、サプライヤーの財務情報などを集約し、「見える化」を実現すれば、異常値や変化をリアルタイムで察知できます。
また、部門間・拠点間で情報を標準フォーマットで共有することで、属人性に頼らないリスク管理が実現できます。
現場で今すぐできる「調達リスク先取り」の実践法
“声なき声”を拾い上げる現場ウォッチング
現場に張り付いて実際に状況を見る「現地現物主義」は、リスクの兆候を一早くつかむ上で有効です。
「なんだか最近サプライヤーの担当者が元気がない」
「納入パレットに最近汚れやズレが増えた」
そんな微細な“違和感”も、重大リスクのシグナルかもしれません。
こうした現場観察を「定期的なルーチン」にしておくことが有効です。
異常系統の“早期報告”と“即時是正”
納期・品質・コストの異常値が出た場合、即時に現場やマネジメント層に報告し、迅速に是正アクションを起こす文化を浸透させましょう。
「あとでまとめて報告」といった悪習をなくし、トラブルの芽を最小限で摘み取る訓練が必要です。
調達担当者の「広い視野」と「ラテラルシンキング」
同じリスク現象でも、現象だけを追ってしまうと本質を見落とします。
例えば「特定部品の納期遅れ」は、よく見ると背後にサプライヤーの工場設備老朽化、部材調達難、人員不足など、複数の要因が複雑に絡みあっています。
現場担当は、これらを表面現象だけでなく、「なぜ?」と何度も問い直し、事象の本質・構造的な原因まで掘り下げる力=ラテラルシンキングが問われるのです。
サプライヤーの皆様へ:バイヤーが本当に考えていること
“安い・早い・うまい”だけでは選ばない時代
これからはコスト、納期だけでなく「リスク耐性」「情報シェア力」「パートナーとして改善への主体性」を持ったサプライヤーが選ばれます。
バイヤーはサプライヤーに「悪い情報ほど早く教えてほしい」「原因を一緒に考えてくれる人と付き合いたい」と、心から思っています。
リスクを隠しがちなサプライヤーは、短期的にはバレずに済んでも、中長期的には関係を失う危険性が高まるでしょう。
“チーム連携”でリスクに克つ関係を
バイヤー/サプライヤーの関係は「取引先」ではなく「プロジェクトチーム」だと考えるべきです。
互いの強みを理解し、弱みを補い合い、リスク・課題をオープンに話し合える関係性が、これからの製造業の競争力に直結します。
まとめ:調達リスクは“可視化・先取り・共創”の時代へ
昭和時代から続く調達・購買の現場では、「トラブルが起きてから対応する」のが当たり前でした。
しかし、世界情勢が目まぐるしく変化し、サプライチェーン構造が複雑化した今、その考え方はもはやリスクそのものです。
これから製造業の競争力を維持・強化するためには、
– 調達リスクを多角的に“見える化”する
– 表面化前の「早期発見」と「予兆管理」に重点を置く
– バイヤー・サプライヤーが「共創型チーム」としてリスクに向き合う
これこそが新しい時代のスタンダードです。
怖いのは、「表面化したとき」よりも、「表面化するまでリスクが見えていなかったこと」自体です。
“気づける現場づくり”と“先回りの準備”で、強いサプライチェーン構築を進めましょう。
この知識や経験が、現場で働く皆さん、未来のバイヤー、パートナーとなるサプライヤーの皆様のお役に立てれば幸いです。
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