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モーター軸継手部材の芯ズレが振動を増幅させる理由

モーター軸継手部材の芯ズレが振動を増幅させる理由
はじめに:製造現場で繰り返されるトラブルの本質
多くの製造現場で、モーターと機器を接続する「継手(カップリング)」の不具合による振動トラブルは、おなじみの悩ましい現象です。
昭和の時代から「継手の芯出し」は大切だ、と多くの先輩が指導してきました。それは決して昔話ではなく、現代の工場でも振動・異音・早期故障の根本原因として根強く残っています。
なぜ、わずかな芯ズレがここまで大きな問題になるのでしょうか?
この記事では、現場で培った経験値と理論、最新の業界動向を交えて、振動が増幅する仕組み、放置が生むリスク、そして改善のポイントまで深堀りします。
継手部の「芯ズレ」とは何か
モーターと例えばポンプやコンプレッサーなどの回転機械は、主に軸同士を継手(カップリング)で連結して駆動力を伝えます。
この際、軸の中心(回転中心軸)が完璧に同一線上にある状態が「芯出しができている」状態です。
逆に、軸と軸が平行ずれ(アンギュラミスアライメント)、あるいは高さ・位置ずれ(パラレルミスアライメント)が生じることを「芯ズレ」と呼びます。
芯ズレは、人の目では気づけないレベルの極微小なものでも、実際は大きな悪影響をおよぼします。
芯ズレが引き起こす振動のメカニズム
芯ズレのある継手が回転し始めると、厳密には軸心が毎回転ごとに微妙にぶれる運動になります。
このぶれ(ミスアライメント)は、継手部や接続している軸、ベアリング、場合によっては設置土台にまで周期的な力を与えます。
この「周期的な力」が振動の主因です。
とくに、
– 回転数に一致する一次振動
– 共振点(設備の固有振動数)での大きな振幅
などが現れやすくなります。
その結果、「モーターが熱を持ちやすい」「軸受(ベアリング)がすぐにダメになる」「妙な音がする」などの現象を誘発します。
なぜ振動が『増幅』されるのか?
現場でよく観察する現象として、「芯ズレがある程度進行すると、振動が急激に増幅しはじめ、止まらなくなる」というものがあります。
その理由を物理学・材料力学の視点で分解して説明します。
最初は微小なミスアライメントでも、連続的な回転運動により、継手と接続軸には繰り返し応力が発生します。
この繰り返し応力は、長期的には金属疲労や削れ、摩耗を引き起こし「問題箇所」をどんどん拡大します。
また、工場の回転機械の多くは「一点支持」でなく「多点支持」の設置が多く、設置状態や軸受けのガタ・摩耗、その上の土台のたわみまで影響を受けます。
ミスアライメントにより生じる周期的な外力は、振動を「励起」する作用を持ち、共振点に近い場合には振幅が雪だるま式に大きくなります。
共振は実際、「設計上ではありえないほどの大きな故障」――たとえばベアリングの焼け付きやシャフトの折損――へと導くことさえあります。
つまり、小さな芯ズレが「振動の発生源」となり、「共振」や「構造体の弱点」が引き金となって、一気にトラブルが増幅・顕在化するのです。
なぜアナログ現場ほど芯ズレが生じやすいのか
昔ながらの製造現場では、軸の芯出し作業を「感覚重視+簡易工具」だけで済ませているケースが未だ多く残っています。
ダイヤルゲージすら使わず、スケールや直尺で当てる現場も見かけます。
一方、モーターやポンプを増設・小型化したり、さまざまな自動化設備が並ぶ現代工場では、機器がより高回転・高出力化しています。
そのため、数十ミクロン(1000分の数ミリ単位)の微細な芯ズレが直ちに「大きな故障」を招きやすい状況にもなってきました。
アナログな作業方法からの脱却は急務なのです。
なぜ芯ズレを「許容」してはいけないのか~予兆見逃しのリスク~
芯ズレが「面倒くさいから」「まあ大丈夫だろう」と放置された場合のリスクを整理しましょう。
1. 振動増加による早期故障
モーターと機器をつなぐ軸受け(ベアリング)は、ミスアライメント応力で異常摩耗や油膜切れを起こしやすくなります。
続いて継手自体もゆるみやすくなり、最終的には軸折損や設備停止につながります。
2. 生産品質の低下
振動源は周辺機器やライン全体に波及します。高精度加工機器やロボットでは特に精度不良の大きな一因となります。
3. 異音・発熱の常態化
「最近このラインのモーター、よく熱もってね音もうるさいよ」 となれば要注意シグナルです。
本来故障の前兆としてキャッチしたい異常音や発熱サインに、全員が「慣れて気付けなくなる」リスクは高いです。
4. エネルギーロス
芯ズレにより不要な力が加わったモーターは、同じ作業で多くの電気エネルギーを消費します。
省エネ活動にも逆行する隠れた無駄なのです。
最新の対策事例:アナログ現場からの脱却
近年、芯ズレによる振動トラブル対策は各企業で高度化しています。以下、主要な改善事例です。
1. レーザー芯出しツールの活用
作業者のスキルや経験則に頼らず、デジタル表示で「芯ズレ量」を見える化。
わずか数分で精密なアラインメント作業が可能となり、若手作業者でも安定品質を確保できます。
2. 振動監視センサの恒常設置
IoTセンサの登場で、24時間リアルタイム監視が一般化しました。
故障の予兆である「振動の上昇」を見える化し、保全部門と連携して計画的保守へとつなげられます。
3. 継手の高性能化
金属バネ型、ゴム弾性体内蔵型など、芯ズレをある程度「吸収」する高機能継手の採用が進んでいます。
それでも「許容ズレ量」は有限で、過信・放置は禁物です。
サプライヤー・バイヤーが学ぶべき「芯ズレ管理」の本質
購入側(バイヤー)としては、継手部品や機械セットを調達する際、「芯ズレ許容量」を仕様的に明確に管理することが重要です。
「○○mm以下」「±○度」といった数値化された管理基準を、必ず仕様書や検収基準に落とし込みましょう。
一方で、サプライヤー自身も、「出荷時調整OK」に甘んじず、現場での取付後の最終アライメント指導や、トラブル事例の情報共有を進めることが差別化につながる時代です。
また、最近では「予兆検知→サービス提案→予知保全」までワンストップ提供する企業も増えています。「芯ズレは現場の問題」ではなく「サプライチェーン全体=バリューチェーンの強化」なのだと捉えるべき時代です。
まとめ:芯出し作業を“昭和の職人芸”から未来型へ
モーター軸継手部材の芯ズレは、起点では微細な事象でも、時間経過と共に振動・摩耗・異音・トラブル増幅のリスクを大きく内包しています。
アナログなところに陥りがちですが、最新のデジタルツール活用と「管理基準の標準化」こそ、現場力と調達競争力の両立につながります。
製造現場、サプライヤー、バイヤーの全員が「芯ズレ管理」の意義と最新対応策をしっかり押さえることで、不良ゼロ・停止時間ゼロの「強いものづくり現場」へと進化していきましょう。
現場目線、実践知を生かし、これからも“技術とノウハウの地平線”を一緒に開拓していきましょう。
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