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製造設備のボイラーで使うドレンタンク部材の溶接製法と漏洩課題

目次
はじめに:製造設備に欠かせないボイラーとドレンタンクの重要性
製造業の現場では、ボイラーは蒸気や熱エネルギーを供給する重要設備です。
多くの工場では、このボイラー運転の過程で発生するドレン(凝縮水)の回収と処理にドレンタンクを用います。
このドレンタンクは、圧力容器であるだけに、構造的な強度や安全性、さらにはメンテナンス性が求められます。
しかし、溶接製法の選択や部材の選定に失敗すると、漏洩をはじめとした深刻なトラブルが発生しやすくなります。
本記事では、製造現場の実体験や業界動向も踏まえ、ボイラードレンタンクの溶接製法や漏洩課題、さらにはアナログ業界に根強い慣習と今後の展望について深く掘り下げます。
ドレンタンク構造と主要部材の基礎知識
ドレンタンクの役割と構成
ドレンタンクは、ボイラーから排出された高温高圧のドレンを受け取り、減圧・冷却し、下流の排水処理や再利用ラインへ流すためのものです。
一般的に、円筒形の本体シェル、エンド部分の鏡板(キャップ)、補強部のフランジ、ノズル、マンホール蓋などから構成されます。
溶接が必要な箇所は特に、シェルと鏡板の接合部、各種ノズルの取り付け部、支持脚や取っ手の装着部です。
ここは応力集中や腐食、長期運転による疲労破壊が発生しやすい要注意ポイントといえます。
主要部材の素材選定
一般的なドレンタンクの主要部材で最も多く使われるのが、SS400(一般構造用圧延鋼材)、STPGやSTPA(配管用炭素鋼管)、SUS304などのステンレス鋼です。
耐圧性・耐食性・経済性を勘案し設計するのが基本ですが、使用原水や薬品、温度、圧力などにより仕様を吟味する必要があります。
昭和スタイルの現場では「今までこれで問題なかったから」で仕様変更に後ろ向きな場面も見られます。
しかし昨今は腐食トラブルと漏洩事故による工程停止・品質クレームが大きな損失要因となっているため、時代に応じた材質見直しも必須です。
ドレンタンク部材の溶接製法
代表的な溶接方法
製造現場でドレンタンクに用いられる溶接方法として、以下が代表的です。
1. アーク溶接(被覆アーク溶接・TIG溶接)
2. 半自動溶接(CO2溶接・MAG溶接)
3. サブマージアーク溶接(大型タンク向け)
この中で、多くの中小工場や昭和由来の町工場では、被覆アーク溶接やCO2半自動溶接の採用が今なお根強い傾向があります。
一方、高品質やデジタル連動を目指す先進工場では、TIG溶接・ロボット溶接や非破壊検査(X線、浸透探傷)の徹底が進んでいます。
溶接組立工程における留意点
溶接前に最も重要なのは「開先加工」と「仮組み(仮付け)」です。
ここが雑だと溶接ビードが必要以上に盛り上がったり、溶け込み不良やピンホールが生じやすくなります。
また、板厚10mm以上の製品や圧力容器ではJIS規格やボイラー検査規格に適合した開先形状が義務化されています。
溶接中は、アークの熱による歪みや変形を防ぐため適度な順序で渡り溶接を行い、溶接後の歪み取り修正も欠かせません。
加えて、「背面ガス保護」や「裏波溶接」といった高品質溶接も現場レベルで広がりつつありますが、卓越した熟練技能が必要なため今なお人材不足の課題があります。
ロボット溶接とアナログ現場のギャップ
近年、大手自動車メーカーや食品・医薬品向け装置メーカーではロボット溶接の導入が進み、高再現性や生産効率UPに貢献しています。
しかし多くの中小町工場や老舗タンクメーカーでは、手作業主体のアナログ溶接が今なおメインで、「ロボットだと微妙な調整ができない」「初期投資が重い」という現場の声も根強いです。
このギャップが今後の品質安定化・省人化のカギとなっています。
ドレンタンクの漏洩課題と対策
なぜドレンタンクは漏れるのか
漏洩の主な要因として下記が挙げられます。
・溶接部の溶け込み不足や割れ
・応力集中部(ノズル根元や角部)の微細なクラック
・過剰な溶接歪みや変形による隙間発生
・腐食・減肉による劣化(特に水質悪化時)
・設計時の強度検討不足
・施工(溶接)時の品質管理ミス
・日常点検や定期検査の形骸化
ドレンタンクの漏洩は、設計→部材発注→製作→設置→運用まで一貫した管理体制の「綻び」で発生します。
いかに属人的な対応に頼らず、標準化と再発防止を徹底するかがメーカー・取引先との信頼関係維持につながります。
実践的な漏洩対策
1. 溶接技能者の定期的な教育と溶接資格の取得推進
2. 非破壊検査(PT,UT,RTなど)の導入と判定基準の明確化
3. 設計時点での応力解析・腐食マージンの設定
4. 部品サプライヤーへの技術要求仕様明確化
5. 運転中のリーク検知システムや点検サイクルの標準化
現場で効果が高いのは、溶接部の全数浸透探傷試験や、水圧試験・気密試験を竣工後に義務付けること、さらには現場担当者やサプライヤーを巻き込んだ技術検証会を頻繁に実施することです。
バイヤー・サプライヤー視点での着眼点
バイヤーやサプライヤーの立場では、「このタンクは最低10年以上は安心して使えるか?」「トラブル発生時のリカバリー体制はどうか?」という顧客目線が重要です。
単に価格で選ぶのではなく、溶接仕様書・管理基準書を取得できるか、万一の漏洩事故時に迅速な代替部品供給や現地補修体制が整っているか、こうした要素を見極めて取引先/メーカーを選定しましょう。
昭和から抜け出せない現場とDX時代の新トレンド
アナログ重視の製造業界の現実
現場の多くは、「前任者の経験」「ベテラン担当者の勘」で成り立っています。
例えばタンク溶接の「熱のかけ方」も長年の勘に依存し、引き継ぎ文書が無い現場もあります。
さらには「部品調達ならあの町工場に電話一本」という口約束商習慣も根強いです。
このアナログ文化が、「現場力」の源泉である一方で、成長への制約や高齢化・人手不足の温床にもなっています。
現代工場のDX化と今後の方向性
デジタル時代の新潮流としては、溶接ロボットによる自動化、IoT・AIを活用した漏洩予知保全、データベースに基づく設計支援やトレーサビリティの強化が重要となっています。
さらに調達プロセスでも、e-Procurementやデジタルサプライヤーマネジメントシステムの導入が進み、単なるコスト評価から、品質・スピード・安全性を網羅した「全体最適」を追求する動きが強まっています。
ただし、DXを現場に根付かせるには、バイヤー・サプライヤー・製造現場の三者が同じ目線で課題やリスク、目指す品質像を共有する「コミュニケーション」が不可欠です。
まとめ:ドレンタンクの漏洩ゼロを目指して
製造現場でのボイラードレンタンクは、安全と安定運用を支える土台です。
溶接製法や部材選定を軽視すると、漏洩事故による損害や信頼失墜は計り知れません。
アナログな現場慣習に現代技術や品質マネジメントの視点を融合し、組織間・立場間の知見をクロスオーバーさせていく──それこそが、令和の製造業が新たな地平線を切り拓くカギです。
これから工場長やバイヤーを目指す方、あるいはサプライヤー側でバイヤーの考えを理解したい方は、「現場の生の声」と「データと規格」「本質的な課題解決志向」の3つの視点を持つことが欠かせません。
現場を強く、しなやかに。
ドレンタンクの溶接や漏洩課題を通じて、製造業の持続的な成長と進化に貢献していきましょう。
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