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投稿日:2025年6月3日

ねじ・ボルト締結体における強度設計と破壊・緩み・不具合対策および事例

はじめに:ねじ・ボルト締結体の重要性

製造業の現場では、ねじやボルトによる締結はあらゆる機械や装置を支える基盤技術です。
一見単純に見えるこれらの締結体も、設計、選定、締結方法ひとつで安全性や生産効率が大きく左右されます。

特に昭和時代の高度成長期から現代に至るまで、日本の製造業は独自の「丁寧な現場主義」を歩んできました。
その一方で、デジタル化が進まない領域も依然として多く、締結体設計は経験頼みに陥りがちです。

本記事では、現場経験をふまえながらねじ・ボルト締結体の強度設計の考え方、よくある破壊・緩み・不具合への対策、さらに実際のトラブル事例まで詳しく解説します。
サプライヤーやバイヤーの立場から知っておくべきポイントも織り交ぜていきます。

ねじ・ボルト強度設計の基本と現場での課題

強度設計の基本的な考え方

ねじ・ボルトの強度設計とは、締結体が要求される荷重・環境に耐えうるよう寸法・材質・形状・締結力を決めることです。
JISやISO規格で規定される許容応力や応力集中、座面摩擦などの要素を押さえつつ、現場の実際の使い方やメンテナンス性も視野に入れる必要があります。

基本的な流れとしては以下の通りです。

1. 使用用途や荷重条件を明確にする(静荷重・動荷重・衝撃荷重など)
2. 必要な締結力とボルト径・本数を選定する
3. 材質(強度区分)、表面処理などを選択する
4. 締結方法(トルク管理、プリロード管理)を検討する

設計値は計算値に基づきますが、現場では「予想外」に耐える工夫や過剰品質のリスクも見逃せません。
実際には「とりあえず太いボルトにしておく」「一本あたりの負荷を見積もれないから多数本で安全を見る」といった昔ながらの設計も根強く残ります。

強度不足と過剰設計のジレンマ

現場でよくあるのは「安全側」に倒しすぎて本数や径を過剰に選定し、コストオーバーや重量増につながるパターンです。
逆に、設計値ぎりぎりで選んだ結果、余裕がなさすぎてねじ山がなめたり、座面から滑って不具合を起こす。
トレーサビリティや生産ラインの自動化が進まない業界では、このバランス取りが非常に難しいテーマになります。

ねじの破壊メカニズムと事例分析

代表的な破壊のパターン

ねじ・ボルトの破壊現象は多岐に渡りますが、典型的なものとして以下が挙げられます。

– ねじ破断(引張り応力超過、応力集中)
– ねじの座面からの滑り出し(緩み、座面不良)
– ねじ山のはく離(過剰トルク、ねじ込み不足)
– 疲労破壊(繰返し荷重による劣化)

たとえば生産ラインの冶具固定用ボルトが数カ月で破断した場合、単純な引張強度不足ではなく、微小な振動による疲労亀裂や座面の潤滑不足などが主因であることも多いです。

実際にあった破壊・トラブル事例

【事例1】装置フレームの大型ボルト破断
装置メーカーで、大型フレームを固定するM24ボルトが運転開始半年で突然破断する事故が発生しました。
調査の結果、フレーム据付時のボルト選定は問題なかったものの、「座面の異物かみ込み」と「締付トルクのノギス測定」だけで済ませており、事前の締結力チェックが不十分でした。
これにより初期荷重にバラつきが生じ、一部に過大な応力集中が発生したことが判明しました。

【事例2】ねじ部のゆるみからの漏洩事故
配管部のシール締結に使われていたM12ボルトが、わずか数か月で緩み始め、最終的に液漏れ事故につながりました。
原因は、ねじ部の表面仕上げのバラつきと、現場作業員による手締めが重なり、適切なトルク管理がなされていなかったことでした。

ねじの緩み対策:現場視点と最新技術の融合

緩みの発生メカニズム

ボルト・ねじが緩む主な理由は、振動、熱膨張、材料のクリープ、摩擦係数の低下などです。
実際の工場ラインや設備のようなダイナミックな環境では、設計時点では想定しづらい要素も加わります。

特に古い設備が併存する工場では、新旧異なる素材や仕上げの部材が混在し、緩みやすい箇所の特定が困難です。

実践的な緩み対策のポイント

– ワッシャーやスプリング座金の適切な使用
– ロック材や接着剤による補強
– 二重ナット方式・セルフロックナットの使用
– 適切なトルク管理の徹底(トルクレンチ、締結トルク監視装置)
– 増し締めや定期点検の運用ルール化

現場目線で重要なのは「現場の習慣とシステム(人としくみ)」をセットで回すことです。
デジタルデータによる締結履歴の管理やIoTでの緩み監視など、最新技術も着実に進展していますが、作業ライン側の教育や慣行の見直しも必須です。

バイヤー・サプライヤー視点での着眼点

サプライヤーが知っておきたいバイヤーの思考

BtoBの現場調達でよくあるのが「少しでも安く仕入れたいバイヤー」と「品質も安全も確保したいサプライヤー」の綱引きです。
しかし実際には、バイヤーも品質不具合やクレーム対応リスクには非常に敏感です。

– 過去の不具合事例
– 各種規格・認証(ISO9001等)の有無
– 締結力やトルク管理のデータ提出体制
こういった書類やデータ管理の「見える化」が重視されます。
サプライヤーはただスペックや価格を提示するだけでなく、「現場での不具合防止提案」「トラブル事例とその対策」をアピールする仕組みを用意しておくと評価されやすいです。

調達担当がチェックすべきポイント

バイヤー側は、サプライヤー選定において以下のような点に注目しています。
– 納入実績や現場での採用事例
– ロット内での品質バラツキ(トレーサビリティ)
– 締結用工具やマニュアルの整備
– 緊急時のフォロー体制

とくにねじ・ボルトは「消耗品」の顔を持ちますが、事故や大規模不良が発生した場合の影響が甚大なため、信頼性向上への提案力・現場サポート力が求められています。

昭和的な現場の風土と、デジタル化の波

ねじ・ボルトの締結に関するアナログな現場習慣は、いまだ業界深く根付いています。
たとえば「ベテラン作業員による手感覚の締め付け」「帳面主義の作業手順書」「納入先ごとの書式違い」など、個人の経験値が大きな意味を持っています。

しかし、こうした経験やノウハウの属人化は次世代技術者・作業員への継承に壁となることも多いです。
現場力とデジタル管理(例:トルク値の自動記録、締結履歴のクラウド化など)を融合させることで、事故やクレームを未然に防ぐ新たな地平線が生まれつつあります。

まとめ:持続的な現場力とイノベーションの両立を目指して

ねじ・ボルト締結体の強度設計と破壊・緩み・不具合対策は、「設計」「現場」「調達」「サプライヤー」すべての視点が融合することで高い安全性と効率化が実現します。
昭和的な現場力は今なお大きな価値を持ちますが、デジタル技術による管理・解析を組み合わせることで、従来以上の品質保証やコストダウンが可能です。

バイヤーもサプライヤーも、「カタログスペック」だけでなく、現実の現場で何が生じ得るか、本質を問い続ける必要があります。
締結体という小さな部品から現場改善やイノベーションを生み出す、そんな意識をすべての製造業従事者に共有したいと思います。

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