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固定ピン部材の材質選定ミスが破断を招く理由

目次
はじめに 〜固定ピン部材の役割と重要性〜
固定ピンは、製造業のさまざまな工程や製品において、部品同士をしっかり固定するために不可欠な小さな部材です。
たとえば、機械内部の位置決めや、組み立て時のズレ抑止、圧力の分散、軸の保持、時には安全装置として想定以上の荷重がかかった際にあえて“壊れる役割”を果たすこともあります。
一見シンプルな部品ですが、その材質選定を誤ることで、思わぬトラブルや破断事故を招きかねません。
この問題は、ときに生産現場の大規模なライン停止や、市場クレーム、さらには重大な人身事故につながるため、多くのメーカーが頭を悩ませています。
本記事では、現場経験から見えるリアルな失敗事例や、アナログな業界が陥りやすい落とし穴も踏まえ、固定ピン部材の材質選定と破断リスクの本質に切り込みます。
サプライヤー・バイヤーの双方にとって実践的な知見となるよう、掘り下げて解説していきます。
固定ピン部材が破断する主な原因
1. 材質の強度不足
最も頻繁に見られる原因は、ピン部材の強度が設計段階の想定を下回っているケースです。
特にアナログ志向が根強い現場では、「今までこれで問題なかったから」という理由で従来材質を選びがちです。
しかし設計条件や応力が変化した場合、従来材でも破断する恐れがあります。
ピンの材質選定時には、以下のような強度要件が重要です。
– 引張強度(どこまで引っ張られて耐えられるか)
– せん断強度(横方向に力がかかったときどこまで耐えられるか)
– 疲労強度(繰り返し荷重にどこまで強いか)
たとえば、ステンレスピン(SUS304など)は耐食性や加工性が優れますが、炭素鋼ピン(S45Cなど)と比べてせん断強度が落ちるため、設計値を満たさない事例があります。
また、量産過程で微妙な仕様変更やコストダウンの影響で強度の低い廉価材が使われ、破断に至ったという“現場あるある”にも注意が必要です。
2. 適正な熱処理・表面処理の不足
ピン部材の破断は、材質自体の問題だけでなく、熱処理や表面処理不足によっても発生します。
たとえば、中炭素鋼を熱処理しないまま使うと、硬度不足=耐摩耗性・疲労強度不足から折損しやすくなります。
逆に熱処理が不適切だと硬くなりすぎ、衝撃に弱く割れてしまうこともあります。
また表面の処理が不適切な場合は摩耗・腐食によってピンの劣化が急速に進行し、破断の引き金となります。
素材の“処理工程”も材質選定の延長線上にあると認識しなければなりません。
3. 設計変更・現場変更時の情報伝達ミス
製造業現場では、設計変更・仕様変更は珍しくありません。
この際、設計側が「ピンはそのままでOK」と判断し、現場としても「変更なし」と思い込んで使い回してしまうケースが多いです。
しかし微妙な荷重増や環境変化、隣接部品の材質変更などがピンに大きな負荷をかけ、突然の破断を引き起こします。
過去の失敗事例では、設計は過去事例重視、現場は“前例答弁”で動き、見落とされた結果予期せぬ破断に繋がりました。
昭和の成功体験を引きずりやすいアナログ現場ほど陥りがちな落とし穴といえます。
材質選定ミスが破断を招く業界構造的な背景
1. コストダウン圧力の強さ
多くの製造業の現場では、調達購買現場と生産現場、設計現場で思惑が食い違います。
調達は「安く安く」が大命題。
設計は「安全マージン確保」が理想。
現場は「今まで通り業務を止めたくない」。
この三すくみ構造の中で、ピンという“小さな部品”はコストダウンのターゲットになりがちです。
例えば海外調達やノーブランド材への置き換え、太径から細径への“小さな改善”など、コスト面だけで評価すると安全率が下がり破断トラブルに発展します。
2. サプライヤー・バイヤー間の情報格差
サプライヤー(供給者)の立場では、「図面通り」の製造が優先されがちです。
一方、バイヤー(調達側)は使用環境や求められる安全率に無自覚な場合があります。
結果、ピン材質における微妙なグレード違い(エコノミー材とハイグレード材の違い)や熱処理の抜け漏れを、双方が指摘せず見過ごしてしまうことが起きやすくなります。
さらに、国内外の材料規格の違い(JIS/ISO/ASTMなど)も誤解が生じやすい部分です。
現場経験では「JIS記載」なのに、実態は中華系メーカーの独自規格で、まるで強度が違ったという事例も多発しています。
現場で見かける“破断事故”のリアルな実態
1. ピン折れによるライン停止の恐怖
量産ラインで部品保持用の固定ピンが折れ、組付け装置そのものが機能停止に陥った実例があります。
このケースでは年間数千万単位の損失に発展しましたが、最初のきっかけは“ほんの少し細いピン”への材質変更でした。
設計段階では十分な安全率が見込まれていたものの、現場作業者が交換ピンを用意しやすいという理由だけで標準品からサプライヤー製に無断変更。
結果、材質差によって折損、それが全ライン停止の火種となりました。
2. 最終組立での見えないトラブル
組み立て後は隠れてしまう位置に使われるピンについては、検品や目視検査が及ばず、納入後ユーザー環境での荷重増大によって折損を引き起こしやすいです。
例えば、一般産業機械用のシャフト周辺ピンが、使用環境の振動増や寒暖差の影響を受けて半年後に破断。
これが機器の異常振動→故障→市場クレームを招き、回収騒ぎとなったケースがあります。
全ての発端は、現場で「重要度が小さい部品」と見なしていたため、仕様厳守が甘かったことにありました。
失敗“しない”ための材質選定ポイント
1. 指定材質の“意味”を理解する
ピン部材の図面で材質が指定されている場合、その意図を正しく読み解くことが肝心です。
設計担当者が「なぜこの材質?」を明確に言語化すること、調達側・サプライヤーが「なぜこの材質にしたか」をしっかり確認することが、破断リスクを事前に抑制するカギとなります。
安易な「似たグレードでOK」の思い込み置き換えは厳禁です。
2. 疲労破壊・耐久性イメージを持つ
毎日何百回も抜き差しされたり、振動を受けるピンは「一時的な荷重」ではなく「繰り返し荷重」による疲労破壊をイメージしなければなりません。
カタログ記載の“単純な最大強度”ではなく、“何回繰り返したら壊れるか?”が選定の基準です。
この発想の転換が、“昭和のまま”の現場を大きく変える第一歩となります。
3. サプライヤーへの明確な要求伝達/現物検証
「指定材質の証明書(ミルシート)」や「必要に応じて抜き取り強度試験」をサプライヤーに要求し、実物を現場検証することが、安全確保には欠かせません。
サプライヤーには、「可能ならピンの破壊試験結果」「材質毎の加工限界や公差情報」を提出してもらいましょう。
現場納入前の段階で、設計・調達・生産現場で現物検証会を通じ、三者すり合わせを徹底することをおすすめします。
今求められる“昭和から脱却”した工場の材質選定術とは
固定ピン部材の材質選定は、従来の「前例」「カタログ値」頼みから、科学的な裏付けやデータに基づく選定へとシフトしています。
IoT・AI技術の進化で、稼働中ピン部材への実応力をモニタリングできる時代になりつつあります。
センサーやデータロガーを活用し、実際に工場の稼働環境下でピン部材の振動・荷重データを取得、これを設計にフィードバックするサイクルが、トラブル実績のある企業ほど積極的に導入されています。
また、破断事故の“未然防止”へ向けて、複数材質の予備評価や、現物破壊試験・FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)を事前に行うケースも増えています。
過去の固定観念やアナログ体質から卒業し、現場主導の材質選定プロセス改革が「失敗しない強い現場」への着実な一歩です。
まとめ 〜固定ピン材質選定の本質〜
固定ピン部材は、地味で目立たない存在ですが、一旦破断が起きれば巨額の損失や重大トラブルに直結する「要」の部品です。
昭和の現場感覚での“なんとなく材質選定”は、今や通用しません。
調達・設計・現場それぞれが声を上げ、「なぜその材質なのか」を納得いくまで問い直し、サプライヤーと一体となって現物やデータに基づく検証を重ねること。
これこそが破断リスクを著しく低減させ、現場力・品質力を一段上げる確かな道筋です。
固定ピン部材の材質選定こそ、製造業の原点回帰であり、ラテラルシンキング(水平思考)による新たな価値創造の出発点といえるでしょう。
サプライヤーもバイヤーも、現場すべての“働く”人々が、目先のコストや慣習に惑わされず、本質を見極めて選定の妙を発揮する。
それが日本のものづくりの未来を切り拓きます。
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