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薬液耐性が問われるコーターマシンで使う樹脂部材の問題点

目次
はじめに:コーターマシンにおける樹脂部材の重要性と薬液耐性の課題
コーターマシンは、半導体・電子部品・医薬品・フィルムなど多くの産業で不可欠な装置です。
薬液や溶剤を塗布する工程があり、その中で水平度や均一性、異物混入防止などの品質管理が徹底されています。
特に塗布装置内部における樹脂部材の「薬液耐性」は、ライン全体の安定稼働と製品品質を守る上で、かけがえのないテーマです。
しかし現場では「思ったより早く樹脂部材が劣化」「材質の選定ミスでトラブル発生」「薬液を変更したら部品トラブル頻発」という声が絶えません。
本記事では、20年以上工場の調達・生産管理・品質管理を現場で経験した筆者の視点から、コーターマシンの樹脂部材選定における実践的な課題や注意点を深掘りします。
サプライヤーや現場担当、バイヤー志望者の視野を拡げるヒントになるよう、リアルな製造業の現場感を交えて解説します。
コーターマシンで要求される樹脂部材の特性とは
そもそもなぜ「樹脂」なのか
多くのコーターマシン内部で使用される部品にはステンレスやセラミック、ゴムなど様々な素材があります。
その中で、樹脂は「軽量」「加工性が良い」「コスト面で有利」「摩耗時の粉発生リスクが低い」などのメリットから、ノズルやバルブ内部、シール材、ガイド、配管部品等に多用されています。
また樹脂材料の選択肢は広く、汎用のPOMやPEEK、フッ素樹脂(PTFE)、PVDF、PFA、PEなど、用途や液種に応じてバリエーション展開が可能です。
薬液耐性が必須になる理由
コーターマシンで取り扱う薬液は有機溶剤や強酸・強アルカリ、特殊添加剤を含むケースも多く、部材の耐薬品性不足で以下のようなトラブルが発生する可能性があります。
– 赤錆や腐食物、膨潤した樹脂片の混入による“異物混入”
– 劣化による密閉不良、漏洩、機器の障害停止
– 部材交換頻度の増加によるダウンタイムとコスト増
特に近年は「プロセスの高付加価値化」や「多品種少量生産」「液種変更頻度の増加」が加速し、部材の耐久性や薬品適合範囲は、昭和時代とは桁違いの要件となっています。
現場で頻発する樹脂部材の問題点
(1)薬液適合試験と実稼働現場のギャップ
部品メーカーのカタログや技術資料では、「耐薬品性●△○」などの記載がありますが、実際の現場では「推奨材だが半年でボロボロ」「短期間での膨潤や割れ」などの現象が目立ちます。
これは、実験室水準の静置試験や短期浸漬試験と、実ラインでの温度変動・液流動・繰返し機構の「総合ストレス」にギャップがあるためです。
また複数薬液(例:酢酸+IPAなど)や、薬液の入れ替わりパターンによる複合ストレスが想像以上に樹脂部材へダメージを与えます。
(2)「膨潤」と「クラック」の二大リスク
樹脂部材が薬液に耐えられない場合、下記2パターンが王道トラブルです。
– 膨潤(ふくらむ):目に見えないマイクロレベルでも寸法変化を起こし、シール性能低下や機械精度不良の原因に
– クラック(亀裂):ガイド部やバルブ部分の応力集中部で割れやすく、最悪漏洩・異物混入を招く
特にPOM(ジュラコン)やPSU系樹脂は水分やアルカリ系液には膨潤しやすく、PTFE(フッ素樹脂)は薬液耐性自体は広いものの、物理的強度に課題があります。
また、高温・高濃度・長時間に晒される環境では、わずかな分子構造差が致命的な差となって現れます。
(3)金属部材との組み合わせ由来の「ガルバニック劣化」
樹脂そのものは薬液に耐えても、一緒に使用するOリングやバネ、シャフトなど「金属」との複合体では、電位差や薬液のイオン効果で局所的な劣化や腐食が進行するケースがあります。
特にSUS・ニッケル・チタン・アルミなどの金属との接合部で「部分劣化」を見逃すと、突発的な破損事故に繋がる危険があります。
調達・購買目線で考える樹脂部材の選定ポイント
部材コストとライフサイクルコスト(LCC)のジレンマ
現場では「この樹脂、高いから採用できない」と調達部門が即答することもしばしばです。
しかし、安価なPOM量産品で交換頻度が高まれば、部品交換や不良対応、設備停止の間接費が跳ね上がります。
調達担当が「初期購入価格」だけでなく、「ランニングコスト」や「想定メンテナンス工数」「不良発生時の損失インパクト」まで見渡せるかが腕の見せどころです。
現場からの本音を吸い上げ、メーカー技術者との対話を通じて本当に最適な材料選定を行う必要があります。
サプライヤー選定における「現場力」の重要性
樹脂材料の薬液耐性は、規格・理論では判別しきれないノウハウが詰まっています。
実際にラインに近い現場での納入実績や、1サイクルの耐久評価、潤滑補助材や添加剤との相互作用について知見があるサプライヤーは価値が高いです。
現場担当者やバイヤーも、設計図面だけでなく「サービス実績」「材料選定支援力」「現場トラブル対応力」まで含めてサプライヤーを選ぶ視点が求められています。
求められる“これから”の現場対応とラテラルシンキング
液種変更・多品種化時代の「想定外」リスクに備える
近年の「製造現場の柔軟化」はコーターマシンにおいても例外ではありません。
新規薬液の開発・導入、顧客要望による複数薬液のライン混在、試作や短納期案件への対応…。
「前回は大丈夫だったから今回も大丈夫」と思い込みで材質を流用すると痛い目を見ます。
時代は、材質選定の慎重な見直しと「第三の選択肢」の常時検討が求められる状況です。
ラテラルシンキングでトラブル未然防止を考える
樹脂部材に関する問題には、「標準マニュアルをなぞるだけ」「過去の成功例で妥協する」慢心が隠れています。
ラテラルシンキング=水平思考を現場目線で発揮すると、例えば下記のような提案力につながります。
– 樹脂ではなく樹脂+コーティング品への転換を視野に入れる
– 部品を工夫して消耗部と固定部に分割し、消耗部のみ頻繁交換できる設計へ
– サプライヤーの技術者とタッグを組み、試作検証から共同で追い込む
こうした柔軟な対応が、納期短縮や品質安定、ひいては顧客満足に直結します。
「誰かがやるだろう」ではなく、「自分が変える」という現場リーダーの意識転換が不可欠です。
バイヤー志望者・サプライヤー担当者が知るべきコーターマシン業界の“リアル”
バイヤーとして押さえるべき現場力の本質
バイヤーは「カタログ知識だけ」「値段交渉だけ」では中途半端に終わります。
実ラインでどの材料がどのように使われ、なぜ現場で問題になるのか、現場担当者と一体で”価値創造”できるかが実力です。
単価だけでなく、材料のリードタイム、緊急時の代品調達力、部材の追加入手性などの調達リスクまで含めて考えることが他人との差別化ポイントになります。
サプライヤーが知るべきバイヤー・現場の本音
サプライヤーは、自社製品の特性や耐薬性の説明だけにとどまらず、「実現場でどのように選定されているか」「どこで現場担当が困っているか」を徹底リサーチすべきです。
– 薬液変更時の問合わせ対応体制
– 失敗事例と成功事例の“現場レベル”の比較
– 他業種での実績横展開
こういった顧客現場に寄り添うアプローチは、粘り強い関係構築や商機拡大につながります。
バイヤーがサプライヤーに求めているのはスペックだけでなく「問題提起・共同解決型」の姿勢です。
まとめ:昭和から令和へ、ものづくり現場力と薬液耐性のこれから
コーターマシンでの薬液耐性樹脂部材の課題は、材料科学の進化・システム多様化・生産現場の柔軟性要求が複雑に絡み合った、現代製造業の縮図です。
– 「カタログ上のスペック」だけでなく「実稼働ラインでの挙動」
– 「初期コスト」だけでなく「トータルコスト」「不具合発生リスク」
– 「材料知識」だけでなく、「現場・ライン・顧客との共創」
これがこれからの調達力であり、現場力であり、サプライヤーの価値創出ポイントです。
製造業に携わるすべての方が、変化と柔軟性を武器とし、ラテラルシンキングで新たな地平を開拓する時代が来ています。
この記事が少しでも皆様の業務や考え方に刺激を与え、新たな価値創出のお役に立てば幸いです。
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