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JIS C 0920による防水防塵規格IPコードの考え方

目次
はじめに:JIS C 0920とは何か
JIS C 0920は、日本産業規格における電気機器の外郭による防水・防塵性能を分類する規格です。
この規格に基づいた「IPコード」は、工場現場で扱う多数の装置や部品の選定、導入、そして設置や運用段階で欠かせない基準となっています。
特に、製造業の現場は湿度や粉塵など過酷な使用環境が多く、JIS C 0920の正しい理解がトラブル予防や長期的な設備保全に直結します。
デジタル化の波が押し寄せつつある昭和型工場でも、この「アナログで実務的」な規格は現場の安全・合理化の要です。
本記事では、その現場目線で、バイヤーやサプライヤー、そして製造業関係者が知っておくべき「IPコードの真の価値と実務的な活用方法」を解説します。
IPコードとは何か?基礎知識と読み方
IPコードは「International Protection」の略称であり、「Ingress Protection」=浸入に対する保護とも言い換えられます。
JIS C 0920の規定に従い、機器が固形物(粉塵など)や液体(水など)の浸入にどの程度耐えうるのかを、明確なコードで表現します。
一般的な表記例は「IP65」「IP54」などのようになっています。
IPコードの構成:2つの数字で示される意味
IPコードは「IP+2桁の数字」で構成されています。
– 1桁目(左側の数字):異物・粉塵に対する保護等級(0〜6)
– 2桁目(右側の数字):水の浸入に対する保護等級(0〜8)
例えば、IP65 であれば、「6=粉塵の完全な遮断」「5=あらゆる方向からの噴流水に耐える」ことを意味します。
実際の現場での使用事例
製造現場において、屋外に設置される制御盤やセンサー、移動する搬送装置、また冷却水が飛散する部位などでは、機器の選定時にIPコードが必ず参照されています。
例えば溶接工程では、スパッタや粉塵が舞う環境でも使用できるかどうかがIPコードから確認されます。
バイヤーが見る防塵・防水性能の本質
調達・購買部門が設備や部品を発注する際、IPコードが採用仕様に盛り込まれることがしばしばあります。
この背景には「現場の期待値」と「リスク回避」の双方があります。
過剰スペックとコストバランスの追求
IPの数字が高ければ高いほど防水防塵性は高まります。
しかし、その分製品価格や納期も上がる傾向が強いです。
例えば「IP68対応センサー」と「IP54対応センサー」では、余分なコストをかけず、適正なスペックを見極める力が求められます。
調達担当者は必ず現場ヒアリングを行い、むやみに高いIPを指定して「過剰品質によるコスト増」に陥らないよう注意しなければなりません。
サプライヤーから見たバイヤーの要求意図
サプライヤーにとっても、バイヤーがなぜ「IP67以上でなければ困る」と主張しているのか、その裏側まで想像することが重要です。
場合によっては、現場事情や過去のトラブル経験が強く影響しています。
また、バイヤー自身もIPコードの実体験が乏しく、仕様書のコピペによって要件が設定されている場合もあります。
こうした時には、実環境や清掃方法、設置場所の具体的なヒアリングを丁寧に行うことで、最適仕様の提案や代替案の提示が可能となります。
昭和から続く“とりあえずIP65”という思考
現場でよく見られるのは「なんでもIP65なら大丈夫だろう」という思考です。
しかし、この背景にはアナログ的な経験則が根付いており、実際の現場状況にフィットしていないケースも見られます。
本当に必要なのは粉塵耐性なのか、実は水滴防止だけでいいのではないか、現場業務の詳細と照合することが重要です。
IPコード誤解の落とし穴と失敗談から学ぶ教訓
仕様書に「IP54以上」と書いてあったので安心していたが、実際には高圧洗浄で水が入り込み、トラブル相談になるケースは後を絶ちません。
このような失敗から得られるポイントを解説します。
IPコードの“数字以上”に見落としがちなこと
1.取付方向や設置方法による性能変化
IPコードの試験は一定条件(例:正立、固定された状況)で実施されています。
しかし、実際の現場では傾斜設置や振動、頻繁な開閉など“想定外”の使われ方が度々あります。
この違いが大きなリスク要因になるのです。
2.経年劣化や清掃方法への配慮不足
パッキンの経年劣化や、薬品を用いた清掃による損傷もよくあるトラブルです。
コストを抑えるために耐薬品性やメンテナンスフリー要素をないがしろにしがちですが、実は稼働率低下や故障リスクに直結します。
典型的なIPコード誤解とその対策
– IP44でも水しぶきを完全に防げるわけではありません。
– IP67でも長期間水没利用を想定してはNG。規格範囲外の“使い方”は要注意。
– 素早い現場確認と、メーカー・サプライヤーとのストレートな意見交換が不可欠です。
現場目線のIPコード活用術:実践的アプローチ
新しい発想で「現場とバイヤー、サプライヤー」をつなぐ
ラテラルシンキング的に考えると、IPコードの採用は「基準を満たすこと」ではなく、「現場リスクを具体的に潰す自問自答」の機会に活用できます。
– 本当に室内設置で雨水にさらされないか?
– 異常作業や突発事象(例:床への転倒、水道ホースでの一斉洗浄)は想定外か?
– 清掃マニュアルや定期点検ルールに見落としはないか?
このような視点から、バイヤー自身が想定問答を事前準備することが重要です。
サプライヤーは課題解決提案を行うべき
単に「要件どおりの製品を出荷する」のではなく、現場スペックや予算事情も汲み取りながら、安全面・コスト面・将来性のトータル提案を重視しましょう。
今後の工場自動化やスマートファクトリーとIPコード
AI・IoT化で大量のセンサーや制御機器が工場に導入されています。
その一方、現場では依然として“泥臭いアナログ工程”が根強く残り、IPコードの本当の意味と適正な運用が、デジタル化と並行して問われています。
生産プロセスの可視化を急ぐほど、“現場不適合”のリスクも高まりがちです。
IoT化先進工場では現場SEやメンテ担当の声に耳を傾け、現実的なIPコード採用を意識しています。
まとめ:JIS C 0920とIPコードを「使いこなす」現場力が企業の競争力に
IPコードは単なる仕様基準ではなく、「現場リスクを可視化し、守りきる」ためのツールです。
– 必要十分な等級設定
– 現場状況や実際の作業を想定したリスク評価
– バイヤー・現場・サプライヤー間の情報連携と提案型対話
これらが理想の導入・運用サイクルを生み、高騰する製品調達コストやトラブルリスクを最小化します。
製造業の現場で長く働いた経験者として、「IPコードをただ守るだけでなく、一歩踏み込んだ活用で現場プロの信頼を獲得し、長寿命・高稼働現場を実現しましょう」と伝えたいです。