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投稿日:2026年9月26日

発注残の数え方と追い方——受領を基準に、経過日数で区切る

この記事のポイント(結論先出し)

発注残(まだ納品されていない発注)は、「発注した数量から、受け取った数量を引いたもの」を明細ごとに数えるのが基本になる。出荷された数や検収が済んだ数から引くと、同じ発注でも残の数が変わり、取引先の受注残とも支払の起点とも合わなくなる。追い方は、残を「納期までの日数」と「納期を過ぎた日数」で区切り、区切りごとに確認の頻度と打つ手を決めておく。見る納期は、発注で相手に示した期日と、相手が返してきた回答の期日の二つを並べて持つ。そして、長く残った発注を画面の上で消すときは注意が要る。発注の取消しや納期の延期で受け取らないことは、原則として受領拒否に含まれるからである。

発注残は「まだ受け取っていない数量」で数える

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購買の現場で「残」という言葉は、人によって指しているものが違う。仕入先がまだ出荷していない数を残と呼ぶ人もいれば、検収が終わっていない数を残と呼ぶ人もいる。どれも間違いではないが、社内で基準が揃っていないと、同じ発注について担当者ごとに違う残の数が出てくる。

この記事では、発注残を「発注した数量 − 受け取った数量」と定める。基準を受領に置く理由は、取引の記録として残す日付がそこにあるからである。取適法(中小受託取引適正化法)第 7 条に基づく記録規則は、委託事業者が作成する記録に、製造委託等をした日、給付の内容と受領する期日、そして受領した給付の内容と受領した日を記載・記録しなければならないとしている[4]。発注書(4 条明示)の側にも、給付を受領する期日と場所を書く欄がある[3]。発注する時点で「いつ、どこで受け取るか」を示し、受け取った時点で「何を、いつ受け取ったか」を残す。この二つの差がそのまま発注残になる。

取適法の対象にならない取引でも、この数え方は使える。受け取った日と数量は、支払や在庫の起点にもなるからである。出荷の日付は仕入先の都合で動き、検収の日付は自社の検査の都合で動く。受領を基準にしておけば、どちらの都合にも引きずられない。

同じ発注でも、基準で残の数が変わる

ある部品を 100 個発注したとする。仕入先は 70 個を出荷済みで、そのうち 60 個が自社に届いている。届いた 60 個のうち 50 個は検査を終えて合格、5 個は不合格、残る 5 個はまだ検査中という状態である。このとき、どの時点を「済」とみなすかで、残の数は次のように変わる。

「済」とみなす時点 済の数量 残の数量 この残が表しているもの
仕入先が出荷した 70 個 30 個 仕入先の手元にある分。輸送中の 10 個が抜け落ちる
自社が受け取った 60 個 40 個 まだ自社に来ていない分。この記事で「発注残」と呼ぶもの
検査に合格した 50 個 50 個 届いているのに検査が終わっていない 5 個と、不合格の 5 個が混ざる

表の 3 行目のように検収を基準にすると、自社の検査待ちと仕入先の未納が同じ「残」に入ってしまう。督促すべき相手は仕入先なのか、自社の検査担当なのかが、残の数からは読めなくなる。受領を基準にしたうえで、「受領済み・検査待ち」と「受領済み・不合格」を別の欄に分けて持つのがよい。

不合格の 5 個を発注残に戻すかどうかは、法令が決めることではなく社内で決めておくことで、分納の記事で扱った分納と発注の分割の管理の整理がそのまま使える。ただし、検査を行ったときは、その完了日と結果に加えて、不合格となった給付をどう扱ったかも記録事項になっている[4]。「戻すか戻さないか」を決めていないと、この取扱いの欄が埋まらない。

残に入れないもの

発注残の一覧に混ぜないほうがよいものが三つある。一つめは、取引先と合意して取り消した明細である。取り消した数量は、発注数量のほうから減らして記録し、残としては数えない。二つめは、発注予定数量(いわゆる内示)である。内示はまだ発注ではないので、発注残とは別の表で持つ。三つめは、見積依頼の段階で止まっている案件である。これらを同じ表に入れると、「残が多い」の中身が、未納なのか未確定なのか分からなくなる。

内示を別に持つ理由はもう一つある。受託中小企業振興法に基づく振興基準は、委託事業者が発注予定数量を示し、その後、合理的理由なく発注予定数量と実際の発注数量に大きな乖離が生じた場合には、中小受託事業者と十分に協議を行い、余剰となる製品在庫及び残材の買取りや、労務費・外注費その他の諸経費の増加分の支払などの措置を講ずるものとしている[1]。内示と実際の発注を並べて見られるようにしておけば、乖離が大きくなった品目を早めに拾える。

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見る納期は二つ並べて持つ

発注残を追うときに比べる相手は納期だが、納期には少なくとも二つの日付がある。発注書で相手に示した「受領する期日」と、仕入先が返してきた「回答の期日」である。前者は発注の時点で明示する事項で[3]、記録にも残す事項である[4]。後者は、仕入先が生産の段取りを組んだ結果として返ってくる見込みの日付である。

この二つがずれることは珍しくない。問題は、ずれたときにどちらの日付で残を追うかである。回答の期日で上書きしてしまうと、当初の期日から何日遅れているかが見えなくなる。逆に、当初の期日だけで追うと、仕入先がすでに「この日になります」と返してきている案件まで毎日督促することになる。二つを並べて持ち、「当初の期日からのずれ」と「回答の期日に対する遅れ」を別々に数えるのがよい。前者は計画の見直しに、後者は督促に使う。日付の欄の持ち方そのものは発注管理システムに要る機能で触れているので、ここでは運用の側だけを書く。

ずれの原因で、記録の書き方が変わる

当初の期日と回答の期日がずれた原因が仕入先の側にあるのか、自社の側にあるのかで、記録の扱いが変わる。自社の都合で仕様を変えた、追加の発注をした、支給材が遅れた、といった理由で当初の期日が無理になったのであれば、それは発注内容の変更に伴う納期の変更である。記録規則は、給付の内容を変更させた場合にはその内容及びその理由を記録すべき事項としている[4]。振興基準も、発注後における発注内容の変更、追加発注、支給材の支給の遅延等により納期が中小受託事業者にとって無理なものとなった場合には、その不利益にならないよう納期を変更する等の措置を講ずるものとしている[1]。

自社の都合でずれた案件を、仕入先の遅れとして督促の一覧に並べてしまうと、仕入先の評価も支払の話し合いも実態からずれる。原因の欄を一つ設けて、「仕入先都合」「自社都合(変更・追加・支給遅れ)」「未確認」のどれかを入れる運用にしておくと、あとから分けて数えられる。

残は「経過日数」で区切って追う

発注残を件数や金額の合計だけで見ていると、どこから手を付けるべきかが決まらない。残を納期との関係で区切り、区切りごとに確認の頻度と打つ手を決めておくと、毎回判断しなくて済む。次の表は区切り方の一例である。日数や頻度は業種と品目で変わるので、自社のリードタイムに合わせて置き換えて使う。

区切り 確認の頻度(例) 主に見ること
発注後、回答がまだ返っていない 発注から 3 営業日 発注書が相手に届いているか。回答の期日が返ってきたか
納期まで 8 日以上 週 1 回 回答の期日が当初の期日より後ろに出ていないか
納期まで 7 日以内 2〜3 日に 1 回 出荷の予定日。分納なら次回の数量
納期超過 1〜7 日 毎営業日 遅れの原因と、新しい見込み。社内の生産計画への影響
納期超過 8〜30 日 週 1 回 代わりの手配が要るか。上長への報告
納期超過 31 日以上 月 1 回の棚卸し その発注がまだ必要か。止まっている理由

表で最初の行を独立させているのは、回答が返ってこない発注がいちばん見落とされやすいからである。納期が先の発注は「まだ大丈夫」に見えるが、回答が無いまま納期を迎えると、遅れが分かるのは納期の当日になる。発注書がどこに届いているのか、受け取った相手が確認の操作をしたのかは、発注ステータスを誰が動かすかで整理した状態の持ち方と組み合わせると追いやすい。遅れが出たときの対処そのもの(代替手配、在庫の持ち方、受け取らない選択が取れるかどうか)は納期遅延の防ぎ方と対処に譲る。

区切りごとの件数を毎週同じ曜日に数えて残しておくと、残の総数が増えているのか、特定の区切りに溜まっているのかが分かる。総数が横ばいでも「超過 31 日以上」が増えているなら、それは督促の問題ではなく、発注そのものの扱いを決めていない案件が溜まっているという合図である。

取引先の受注残と突き合わせる

自社の発注残は、仕入先から見れば受注残である。両者は同じものを反対側から数えているはずだが、実際には合わないことが多い。仕入先が出荷した分をこちらがまだ受け取っていない、こちらが取り消したつもりの明細を仕入先はまだ手配している、仕入先が分納の数を別の発注に振り替えている、といった理由でずれる。

このずれは、放っておくと納期の当日か、請求の段階で表に出る。取引量の多い仕入先とは、月に一度、発注番号と明細ごとの残数量の一覧を交換して照合しておくとよい。照合で合わなかった明細は、三つに分けて処理する。

1. 仕入先は出荷済み、自社は未受領。輸送中か、自社の受入で登録が漏れているかのどちらかである。受入の担当に現物の有無を確かめる。受け取っていたのに登録していなかったのであれば、受領した日を実際の日付で入れる。記録規則は、記載・記録を事実が生じ、又は明らかになったときに速やかに行うよう求めている[4]。

2. 自社は取り消し済み、仕入先は手配中。取消しが相手に届いていない、または合意できていない状態である。この場合、取消しは成立していないものとして扱い、次の節で書く手順に戻る。

3. 数量や単価が食い違う。発注の変更がどちらかに反映されていない。変更の記録を双方で出し合い、どの時点の変更が漏れているかを確かめる。

長く残った発注を「消す」前に確かめること

発注残の一覧を整理していると、何か月も前の発注が残ったままになっているものが見つかる。需要が消えた、別の仕入先から入った、担当者が替わって経緯が分からない、といった理由である。ここで一覧を綺麗にしようとして、画面の上で「完了」や「取消」にしてしまうのがいちばん危ない。

法令の側から押さえておくことは三つだけである。発注の取消しや納期の延期で当初の納期に受け取らないことは、原則として受領拒否に含まれる[1][2]。自社の都合で発注を取り消したり生産を打ち切ったりする場合、テキストは、仕入先がすでに完成させている製品はすべて受け取らなければ受領拒否となり、仕掛品の作成費用や部品代を含めて相手に生じた費用を全額負担しなければ不当な給付内容の変更になる、としている[1]。そして、費用を負担して取り消せば受領拒否の原則から外れる、とはテキストに書かれていない。相手との合意と費用の負担は最低限必要なことで、それだけで問題がなくなるとは限らない。受領を拒める場合と拒めない場合の線は納期遅延の防ぎ方と対処と受領拒否・返品・やり直しの線で整理している。

つまり、長く残った発注を閉じる手順は、画面の操作から始まらない。次の順で確かめる。

  1. その発注の明細は、仕入先の手元でもう完成していないか。作りかけになっていないか。材料を手配済みではないか
  2. 残っている原因は、仕入先の遅れか、自社の都合(需要の減少、仕様の変更)か
  3. 自社の都合で要らなくなったのであれば、完成している分は受け取る前提で相手と話し、そのうえで、まだ手を付けていない分の取消しや数量の変更について合意できるか、仕掛品や材料の費用をどう負担するかを決める
  4. 合意した内容と理由を記録したか

仕入先が「実は半分まで作っている」と言ってきたら、出発点は取り消すことではなく受け取ることである。自社の都合で要らなくなった場合は、完成した分は受け取り、作りかけの分に生じた費用は全額を負担する前提で、引き取り方と金額を相手と確かめる。数量の減らし方の考え方は分納の記事のよくある質問にもまとめている。

行政の措置で見ると

公正取引委員会が公表した令和 7 年度の運用状況によると、勧告又は指導が行われた違反行為のうち、委託事業者の禁止行為を定めた実体規定に係る違反は 7,228 件だった[5]。その内訳を、発注残の扱いと関わりの深い類型について抜き出すと次のとおりである(1 つの事件で複数の類型が数えられることがある)。

違反行為の類型(第 5 表の区分) 件数 実体規定違反 7,228 件に占める比率
支払遅延 3,787 件 52.4%
やり直し等 332 件 4.6%
受領拒否 32 件 0.4%

同じ報告書は、同年度の勧告 39 件のうち不当な給付内容の変更等を対象としたものが 1 件あり、その例として、部品の製造を発注した後、中小受託事業者が製造に必要な原材料等の調達を行っていたにもかかわらず、発注の一部を取り消した行為を挙げている[5]。件数としては多くないが、発注残の整理がそのまま措置の対象になった例として読める。支払遅延が半数を占めていることも、発注残の管理と無関係ではない。受け取った日を記録し損ねると、支払期日の起点がずれるからである。

月末に残っている発注をどう扱うか

月末になると、発注残の一覧を締めて翌月へ繰り越す。このとき、残の中身を三つに分けて確認しておく。

一つめは、受け取ったのに受領の登録が漏れている明細である。現物は棚にあるのに一覧では残のままになっている。先に書いたとおり、受領した日は支払期日の起算点になる。支払期日の決め方と締め日の関係は締め日と支払期日で扱っているが、どの運用をとるにしても、受領日が実際より後ろで登録されると、支払の予定もその分だけ後ろにずれて計算される。月末の棚卸しで見つかった登録漏れは、見つけた日ではなく、実際に受け取った日で入れる。

二つめは、受け取ったが検査が終わっていない明細である。これは発注残ではなく「受領済み・検査待ち」の欄に入るものだが、月末をまたぐと会計の計上の時期と関わってくる。仕入をいつ計上するか(出荷・入荷・検収のどの日付を使うか)は税務と会計の基準の話なので、仕入の計上時期で別に整理している。取適法の受領日と、会計の計上日は同じとは限らない。混ぜないように、欄を分けておく。

三つめは、本当にまだ届いていない明細である。これが本来の発注残で、翌月に持ち越す。持ち越すときに、経過日数の区切りをもう一度付け直しておくと、翌月の最初の週に何を確認すべきかがすぐ決まる。

担当者が替わるときにも、この月末の一覧がそのまま引き継ぎの材料になる。引き継ぐ側が知りたいのは残の総数ではなく、「どの発注が、なぜ、いつから残っているか」だからである。引き継ぎ全体で何を渡せば抜けないかは購買担当の引き継ぎにまとめている。

よくある質問

発注残は数量で見るべきですか、金額で見るべきですか

両方持つのがよいが、追う単位は明細ごとの数量にする。金額は単価改定や為替の影響で動くので、残が減っていないのに金額だけ動くことがある。経営への報告や資金繰りの見込みには金額、督促や照合には数量、と使い分ける。単価が途中で改定された発注については、どの明細にどの単価を当てるかを先に決めておく。値上げの申し入れを受けたときの進め方は値上げ申し入れへの対応で扱っている。

回答の期日をもらえない仕入先はどうすればよいですか

回答が無い状態を、ひとつの区切りとして独立させて数える。回答が無いまま納期を迎えた件数を仕入先ごとに数えると、どの仕入先に回答の出し方そのものを相談すべきかが見える。相手にとって回答の操作が負担になっているなら、回答の手段を相手の環境に合わせることも考える。

発注残の一覧を仕入先に送ってよいですか

その仕入先宛ての発注に限った一覧であれば、照合のために送ってかまわない。ただし、他の仕入先の発注や単価が混ざらないよう、仕入先ごとに切り出してから送る。

内示の数量も督促の対象にすべきですか

内示はまだ発注ではないので、督促の対象ではない。ただし、内示どおりの発注を前提に仕入先が材料を先に手配していることはある。内示と実際の発注の差が大きくなったときは、差が出た時点で相手に伝え、相手に生じる影響を確かめる[1]。

残が 1 個だけの発注がたくさん残っています

端数の残は、仕入先の出荷単位(ケース入数など)と発注数量が合っていないことが原因の場合が多い。完了にしてしまう前に、残り 1 個が本当に必要か、次回の発注にまとめてよいかを仕入先と確かめる。まとめるのであれば、元の発注の数量を変更する形で記録し、残を「消した」のではなく「数量を変えた」ことが分かるようにしておく。

まとめ

発注残は、発注した数量から受け取った数量を引いたものを、明細ごとに数える。受領を基準にするのは、発注で「いつ受け取るか」を示し、受け取った時点で「何を、いつ受け取ったか」を残す、という二つの記録の差が残そのものだからである[3][4]。検査待ちや不合格、内示や取消済みは、残とは別の欄に分けておく。

追い方は、当初の期日と回答の期日を並べて持ち、残を経過日数で区切って、区切りごとに確認の頻度と打つ手を決める。取引量の多い仕入先とは月に一度、残の一覧を突き合わせる。そして、長く残った発注を閉じるときは、画面の操作の前に相手の状況を確かめる。発注の取消しや納期の延期で受け取らないことは原則として受領拒否に含まれ[1][2]、自社の都合で打ち切るなら、完成した分は受け取り、相手に生じた費用は全額負担することが前提になる[1]。

出典・参考資料

  1. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
  2. 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
  3. 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
  4. 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第七条の書類等の作成及び保存に関する規則(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
  5. 令和 7 年度における取適法の運用状況及び中小事業者等の取引適正化に向けた取組(公正取引委員会/令和 8 年 6 月 10 日)

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