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投稿日:2026年10月1日

樹脂・ナフサ価格の変動と樹脂部品の価格交渉——材料費を分けて持つ

この記事のポイント(結論先出し)

2026 年 10 月時点で公表されている数字で整理する。日本銀行の企業物価指数では、国内のナフサの指数が 2026 年 4〜6 月に前の四半期より約 8 割高くなり、公表済みの 7・8 月はそこから約 2 割低い。樹脂はこれを追うように上がり、2026 年 8 月のポリプロピレンは前年同月より 50.6% 高い。一方、樹脂を使ったプラスチック製品の指数は 11.2% 高にとどまる[1][2]。樹脂部品の値上げの申し入れで揉めるのは、この差のどこまでを単価に入れるかである。発注側が決めておくことは三つある。単価を材料費と加工費に分けて持つこと、材料費をどの指数のどの時点に合わせて動かすかを、上げ下げの両方向で合意すること、そして申し入れを受けたら協議し、応じない場合は理由を書面で返すことである[5][6]。

2026 年の樹脂価格は何が起きたのか——公表された指数で見る

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相場の見通しはこの記事では書かない。公表された指数の実際の動きだけを並べる。日本銀行の企業物価指数は、企業間で取引される財の価格を品質を固定して調べたもので、日本銀行自身が「企業間での商取引における値決めの参考指標」としての機能も持つと説明している[3]。品目別の指数は日本銀行の時系列統計データ検索サイトで誰でも取り出せる[2]。

品目(国内企業物価指数、2020 年=100) 2025 年 8 月 2026 年 2 月 2026 年 5 月 2026 年 8 月 前年同月比
ナフサ 195.7 203.5 367.6 297.9 +52.2%
合成樹脂(小類別) 149.4 147.5 186.8 192.0 +28.5%
ポリプロピレン 160.8 161.9 229.0 242.1 +50.6%
ポリエチレン 161.3 156.3 218.9 215.4 +33.5%
ポリスチレン 155.5 152.4 210.4 209.0 +34.4%
塩化ビニル樹脂 147.3 146.2 166.4 172.1 +16.8%
ポリカーボネート 137.6 132.9 136.4 156.4 +13.7%
プラスチック製品(類別) 117.4 116.6 124.4 130.5 +11.2%
輸送機械用プラスチック製品 108.5 107.4 108.4 110.4 +1.8%

表は時系列統計データ検索サイトから 2026 年 10 月 1 日に取り出した値で、2026 年 8 月は速報値である。日本銀行は 8 月分を 9 月 11 日に公表し、翌月に訂正されることがある[1][2]。前年同月比はこの記事で計算した。

表から読み取れることは三つある。一つ目に、国内のナフサの指数は 3 か月ごとに値が変わっている。2026 年 1〜3 月は 203.5、4〜6 月は 367.6、7〜8 月は 297.9 で、四半期の中では同じ値が並ぶ[2]。毎月動く輸入物価指数(円ベース)のナフサは、2026 年 3 月の 220.6 から 5 月に 408.0 まで上がり、8 月は 283.4 だった[2]。二つ目に、樹脂の指数は遅れて動いている。合成樹脂は 3 月の 148.5 から 4 月 163.5、5 月 186.8、6 月 194.7 と数か月かけて上がった[2]。三つ目に、樹脂の上昇と、樹脂を使った製品の上昇の幅が大きく違う。ポリプロピレンが前年同月比 50.6% 高なのに対し、プラスチック製品は 11.2% 高、輸送機械用プラスチック製品は 1.8% 高だった。

国内で使われるナフサは輸入への依存が大きい。石油化学工業協会が財務省の貿易統計からまとめた数字では、2024 年のナフサ輸入量は 2,056 万キロリットルで、そのうち中東からが 73.6% を占める[4]。

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樹脂部品の単価を、材料費と加工費に分けて持つ

表の三つ目の差は、成形品の単価のうち材料が占める割合で説明できる部分がある。樹脂が 5 割上がっても、単価の 3 割が材料費なら単価への影響は 15% 前後になる。逆に、材料費の比率が高い薄肉の大物部品では、樹脂の値上がりがそのまま単価に響く。申し入れを検討するときに一つの単価しか持っていないと、どこまでが材料の値上がりなのか判断できない。

ここからは実務の提案である。樹脂部品の単価は、少なくとも次の分け方で見積を取り、購買単価として持つ。

  • 材料費:樹脂の単価(円/kg)×1 個あたりの使用量。使用量は製品重量だけでなく、スプール・ランナーなど製品にならない部分の重量と、その再利用の割合を含めて合意する
  • 加工費:成形機の時間あたりの費用×成形サイクル÷取り数。成形機の型締力の区分と、何秒サイクルで見積もったかを残す
  • その他:着色・二次加工・検査・梱包・金型の償却分、管理費

樹脂の単価は、グレード(銘柄)ごとに分けて持つ。同じポリプロピレンでも、充填材入りや難燃グレードは汎用品と値動きが一致しない。表でもポリカーボネートは汎用樹脂と違う動き方をしている。グレードの指定と代替グレードを承認する手順は樹脂のグレード指定と代替グレードの承認で扱った。単価を数量帯や有効期間つきで持つ方法は購買単価の持ち方にまとめている。

材料費を何に合わせて動かすか

材料費を相場に合わせて動かすと決めたら、合わせる先を一つに決める。選び方の要点は三つある(実務の提案)。

1. 指数は、使っている樹脂に近い品目を選ぶ

「合成樹脂」の小類別でまとめて合わせると、ポリプロピレンを使う部品とポリカーボネートを使う部品で同じ動き方をさせることになる。企業物価指数にはポリエチレン・ポリスチレン・ポリプロピレン・塩化ビニル樹脂・ポリカーボネートなど品目別の指数がある[2]。それで合わない樹脂は、樹脂メーカーの価格改定の通知や、仕入先の購入実績の伝票で合わせる方法もある。どれを使うかは仕入先と合意し、文書に残す。

2. 国内の指数と輸入の指数を混ぜない

国内企業物価指数は消費税を含むベースで作られ、輸出・輸入物価指数は消費税を含まない[3]。輸入物価指数は通関の荷降ろし時点の価格である[3]。国内で樹脂を買う仕入先の材料費には国内の指数、輸入の樹脂を使う仕入先には輸入の指数、と使う先を分ける。

3. どの時点の値を使い、いつ単価に効かせるかを決める

表のとおり、ナフサが動いてから樹脂の指数が動くまで数か月かかっている。基準月(前回単価を決めたときの指数の月)と比較月、改定の頻度(四半期ごとなど)、一定の幅を超えたときだけ改定する、といった取り決めを先に決めておく。上がったときだけ動かし、下がったときは動かさない取り決めは、相手から見て受け入れにくい。上げ下げの両方向で同じ式を使うことを前提にする。式の作り方の詳しい設計(比率の決め方・閾値・改定の時期)は、同じ考え方を金属で扱ったアルミの価格変動と価格スライド条項の作り方を参照してほしい。比べる期間の取り方と補正の手順は過去の購入単価と比べた見積の判断で書いた。

算定方法を発注書に書いてよい場合

取適法の対象となる取引では、発注時に示す代金(4 条明示)は具体的な金額が原則で、具体的な金額を明示することが困難なやむを得ない事情がある場合に限り、金額が自動的に決まる算定方法の明示が認められる。その例の一つに、原材料費等が外的な要因により変動し、これに連動して代金の額が変動する場合が挙がっている[5]。発注の時点で使う指数の値が公表済みで金額を出せるなら、計算した金額を書く。算定方法で明示するときの条件は参考見積と正式見積の違いで扱った。

樹脂で算定方法を使う場面は、指数の公表を待って金額を確定させる取り決めのときである。国内のナフサの指数は四半期ごとに値が変わり、翌月の速報の後に訂正も入るので、どの公表時点の値で確定させるかと、確定した金額をいつ、どう相手に伝えるかまで決めておく。金額が確定したら速やかに相手に明示する必要がある[5]。

相場が下がったときの扱いにも注意がいる。式を合意していない取引で、発注した後に原材料価格が下がったことを理由に代金を下げると、減額に当たるおそれがある。どの場合が減額に当たるかは代金を後から下げる——減額に当たる行為と、当たらない行為で整理した。下げる可能性があるなら、発注の前に式で合意しておく。

値上げの申し入れを受けたとき、樹脂部品で確かめること

取適法テキストは、買いたたきの判断で、給付に係る主なコスト(労務費・原材料価格・エネルギーコスト等)の著しい上昇を公表資料から把握できる場合に、据え置かれた代金の額を「通常支払われる対価に比し著しく低い」額として扱うとしている[5]。取適法がかからない取引でも、公正取引委員会は、コストの上昇分を取引価格に反映する必要性について明示的に協議することなく据え置くこと、相手から引上げを求められたのに転嫁しない理由を書面や電子メール等で回答せずに据え置くことは、優越的地位の濫用として問題となるおそれがあるとしている[6]。

公正取引委員会の令和 7 年度の特別調査では、受注者の立場で、価格転嫁を要請した品目のうち 7 割以上で引上げが認められたと回答した割合が、化学工業で 88.5% と高かった。一方、同じ調査で、協議を経ずに価格を据え置いたなどとして注意喚起文書を送った発注者が多い業種の一つにも、化学工業が挙がっている[7]。

申し入れの受付から回答・記録までの進め方は値上げの申し入れが来たらで書いた。樹脂部品で特に確かめることは次の三つである(実務の提案)。

  • 材料費の割合:申し入れの値上げ率が、樹脂の指数の上昇率×材料費の割合と大きくずれていないか。ずれている場合は、加工費(電力・人件費)の上昇も含んでいるのかを聞く
  • 基準時点:前回単価を決めたときから比べているか。前年同月比をそのまま当てると、前回改定から既に上がっていた分を二重に数えることがある
  • グレード:申し入れが使っている指数・通知が、実際に使っている樹脂のグレードのものか

詳しすぎる原価の開示を値上げに応じる条件にすることにも注意がいる。公正取引委員会の Q&A は、取引先が公表資料に基づき具体的な引上げ額を示して引上げを求めたのに、転嫁の条件として再委託先との取引価格などコスト構造に関わる情報の提示を求めることについて、注意を促している[6]。樹脂の値上がりを確かめるのに必要なのは、使用量と樹脂の単価の根拠であって、仕入先の利益構造ではない。

樹脂を支給している場合

発注側が樹脂を買って成形先に支給している場合(有償支給)、樹脂の値上がりは発注側の購入価格に直接出る。支給価格を改定するときは、成形先への代金の扱いとあわせて決める。有償支給材の代金を成形品の代金の支払より早く相殺・回収する行為は取適法で問題になりうるので、有償支給材と金型代を確認しておく。

樹脂以外に同じ時期に動いているもの

成形品の加工費には電力が大きく効く。電力料金の変動を価格にどう反映させるかは電気料金の変動を仕入先の価格にどう反映させるかで扱う。梱包材の値上がりは段ボール・包装資材の価格改定と梱包仕様の見直し、再生材の使用を求める動きはプラスチック資源循環法と、製品・包装の部材の選び方で書く。企業物価指数には「再生プラスチック成形材料」の品目もあり、2026 年 8 月は 172.9 だった[2]。

よくある質問

樹脂メーカーの値上げ通知を、そのまま単価に乗せてよいですか

通知の対象グレードと、実際の購入価格がいくら変わったかを確かめてからにする。通知の値上げ幅が満額通っているとは限らないため、仕入先の購入伝票の単価で確かめるほうが確実である。

指数が下がったので、単価を下げてほしいと言えますか

式を合意していれば、式どおりに下げる。式がない場合は、次回の単価を決める協議で申し入れることになる。発注した後の代金を一方的に下げるのは減額に当たるおそれがある[5]。

四半期ごとの改定では遅すぎると言われました

改定の頻度を上げると、指数の確定・金額の明示・システムの単価の入替えの手間が増える。上昇の幅が一定を超えたときに臨時に改定する条項を加える方法もある。どちらにするかは、材料費の割合と取引量で決める。

まとめ

2026 年は国内のナフサの指数が 4〜6 月に約 8 割上がり、樹脂は数か月遅れて上がった。8 月のポリプロピレンは前年同月比 50.6% 高だが、プラスチック製品は 11.2% 高にとどまる[1][2]。この差をどう扱うかを決めるには、単価を材料費と加工費に分け、材料費を合わせる指数・時点・頻度を上げ下げの両方向で合意しておく必要がある。取適法の対象取引では、発注時に金額を示すことが困難なやむを得ない事情がある場合に限り、原材料費に連動する算定方法の明示で足りる[5]。申し入れを受けたら協議し、応じない場合は理由を書面で返す[6]。どれも、相場が動く前に決めておくほど揉めにくい。

出典・参考資料

  1. 企業物価指数(2026年8月速報)(日本銀行調査統計局/2026 年 9 月 11 日)
  2. 時系列統計データ検索サイト(企業物価指数 2020 年基準・品目別指数)(日本銀行/2026 年 10 月 1 日取得)
  3. 企業物価指数(2020年基準)の概要(日本銀行調査統計局/2022 年 6 月)
  4. 石油化学用原料ナフサ(年次統計資料)(石油化学工業協会)
  5. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
  6. よくある質問コーナー(独占禁止法)(公正取引委員会)
  7. 「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」の結果について(公正取引委員会/令和 7 年 12 月 15 日)

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