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投稿日:2026年10月1日

電気料金の変動を仕入先の価格に反映させる——燃料費調整・賦課金・支援を分ける

この記事のポイント(結論先出し)

電気料金の変動は、性格の違う三つに分けて見ると仕入先の価格に反映させやすい。燃料費調整は 3〜5 か月前の燃料価格を毎月自動で料金に反映する仕組み[1]、再エネ賦課金は年度ごとに全国一律で決まり、2026 年度は 1kWh 当たり 4.18 円[2]、政府の料金支援は期間を区切った値引きで、2026 年 10 月 1 日に確認した資源エネルギー庁の案内では 2026 年 7〜9 月使用分が対象である[3]。発注側は、仕入先の製品 1 個あたりの電力使用量と、どの項目がいくら動いたかを分けて聞き、材料費や労務費とは別に反映する。エネルギーコストの上昇を協議なしに据え置けば取適法の買いたたきに当たるおそれがあり[4]、逆に下がったときに決まった代金を後から減らせば減額に当たる[4]。上下どちらにも動く前提で、反映のルールを先に決めておく(2026 年 10 月時点)。

電気料金の変動は、三つに分けて見る

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仕入先から「電気代が上がったので単価を上げたい」と言われたとき、まず聞くべきは「電気代のどの部分が、いくら上がったのか」である。工場の電気料金の請求書は、契約に応じた基本料金と使用量に応じた電力量料金に加え、燃料費調整額や再エネ賦課金といった項目で構成されていることが多い。このうち毎月・毎年の変動の原因になるのは、性格のまったく違う次の項目である。

項目 何で決まるか 変わる頻度 2026 年の値・期間
燃料費調整額 原油・LNG・石炭の貿易統計価格(3〜5 か月前の 3 か月平均)と基準燃料価格の差 毎月 電力会社・料金メニューごとに異なる。規制料金では上限が基準燃料価格の 1.5 倍[1]
再エネ賦課金 経済産業大臣が年度ごとに設定。全国一律 年 1 回 2026 年度 4.18 円/kWh。2026 年 5 月検針分から 2027 年 4 月検針分まで[2]
政府の料金支援(値引き) 国の予算措置。電力会社が使用量に応じて値引き 実施のたびに期間を区切る 7・9 月使用分は低圧 3.5 円・高圧 1.8 円/kWh、8 月使用分は低圧 4.5 円・高圧 2.3 円/kWh[3]
契約の単価(基本料金・電力量料金) 仕入先と小売電気事業者との契約 契約の改定時 仕入先ごとに異なる

表の上の三つは、仕入先が努力しても動かせない外的な要因である。最後の行は、仕入先が電力会社や料金メニューを選ぶことで変わりうる。申し入れの中身がどの行の変動なのかによって、確かめ方も反映の仕方も変わる。

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燃料費調整は、3〜5 か月遅れて効く

資源エネルギー庁によると、燃料費調整制度は原油・LNG・石炭の燃料価格(為替を反映した円建ての日本着ベースの価格)の変動を毎月の電気料金に自動で反映する仕組みで、大手電力が提供する規制料金では設定が義務づけられている[1]。具体的には、料金改定申請の直近 3 か月の貿易統計価格から算定した「基準燃料価格」と、各月の 3〜5 か月前の貿易統計価格から算定した「実績燃料価格」の差を燃料費調整単価に換算して反映する[1]。反映できる範囲には基準燃料価格の 1.5 倍という上限がある[1]。同庁は、たとえば 12 月から翌 2 月の燃料価格は同じ年の 5 月の料金に反映される、と例を示している[1]。電気料金メニューの多くにこの燃料費調整の仕組みが取り入れられている、とも説明している[1]。

発注側にとっての意味は二つある。一つは時間のずれである。燃料価格が下がり始めても、仕入先の電気代が下がるのは数か月後になる。ニュースで燃料価格の下落を見て「もう電気代は下がっているはずだ」と考えるのは早い。逆に、燃料価格が上がり始めたときも、仕入先の請求書に表れるのは数か月先である。もう一つは契約による違いである。上限や算定の式が定められているのは規制料金で、工場が結んでいる契約がそれと同じとは限らない。仕入先の申し入れで燃料費調整を根拠にするなら、仕入先の契約における調整単価の推移を、請求書の該当欄で示してもらうのが確実である。

再エネ賦課金は、年度で一度だけ動く

再エネ賦課金は、固定価格買取制度で買い取られる再生可能エネルギーの電気の費用を、電気の使用者から広く集めるものである。資源エネルギー庁は、負担額は電気の使用量に比例し、単価は全国一律になるよう調整され、年間の導入量を推測して毎年度経済産業大臣が決めると説明している[5]。推測値と実績値の差は翌々年度の単価で調整される[5]。

2026 年度の単価は 1kWh 当たり 4.18 円で、2026 年 5 月検針分の電気料金から 2027 年 4 月検針分まで適用される[2]。発注側にとって扱いやすいのは、この項目だけは全国どの仕入先でも単価が同じで、年度の途中では変わらないことである。前年度の単価と比べた差に、仕入先の製品 1 個あたりの電力量を掛ければ、単価への影響がそのまま出る。年に一度、5 月検針分からの変化として扱えばよく、毎月の協議は要らない。

政府の料金支援は、終わるときに効く

政府の電気・ガス料金支援は、電力会社が使用量に応じて料金から値引きする形で行われ、使う側の申請は要らない[3]。資源エネルギー庁の案内によると、2026 年の夏は 7 月使用分から 9 月使用分までが値引きの対象で、7 月使用分とは原則として 7 月中の検針日から 8 月中の検針日までの使用分を指す[3]。値引き単価は、7・9 月使用分が低圧 3.5 円・高圧 1.8 円/kWh、8 月使用分が低圧 4.5 円・高圧 2.3 円/kWh である[3]。案内には特別高圧の値引き単価は載っていない[3]。

この種の支援は期間が区切られているので、支援が終わった月から、同じ使用量でも請求額が上がる。2026 年 10 月 1 日に確認した時点で、案内に掲載されていた値引きの期間は 9 月使用分までだった[3]。仕入先が 10 月以降の電気代の上昇を理由に申し入れてきたとき、それが燃料価格の上昇ではなく値引きの終了によるものであっても、仕入先にとってのコスト増であることに変わりはない。発注側の手元では、支援があった月の単価を「値引き込みの一時的な水準」として記録し、終わった後の単価と区別しておくと混乱が少ない。支援が延長・再開されることもあるので、協議のたびに最新の案内を確かめる。

単価への影響は「1 個あたりの電力量 × 単価の差」で見る

電気代の上昇を単価にどれだけ反映するかは、仕入先の電気代の総額ではなく、その品目 1 個を作るのに使う電力量から考えるのが筋である。仕入先の工場全体の電気代が上がっても、その工場で作っている品目は自社向けだけとは限らないからである。

具体的には、仕入先に次の二つを聞く。

  • その品目 1 個(または 1kg)あたりの電力使用量の目安。工程の消費電力と処理時間から出した概算でよい
  • どの項目の単価が、いつからいつまでに、いくら変わったか(燃料費調整単価、再エネ賦課金、値引きの有無)

たとえば、ある熱処理品が 1 個あたり 2.0kWh を使い、仕入先は高圧で受電しているとする(数字は説明のための仮定)。9 月使用分にあった高圧 1.8 円/kWh の値引きが 10 月使用分になければ、電力量料金側で 1kWh あたり 1.8 円上がるので、1 個あたりの影響は 2.0 × 1.8 = 3.6 円になる[3]。燃料費調整単価も同じ期間に変わっていれば、その差に 2.0kWh を掛けた額を足す。こうして項目ごとに分けておけば、翌月に燃料費調整単価が下がったときにも、どこを戻すべきかがはっきりする。

ここで求めているのは電力使用量の目安と単価の変化であって、仕入先の原価計算書や電気料金の契約書そのものではない。取適法のテキストは、引上げを求めた中小受託事業者に合理的な範囲を超えて詳細な情報の提示を要請し、その提示を協議に応じる条件とすることを、協議に応じない一方的な代金決定に当たる方法として挙げている[4]。請求書の写しや使用量の推移は、仕入先が自分から出してきたものを参考にすればよく、出さなければ協議しないという進め方はとらない。

公表された指標で全体の動きを見る

個々の仕入先の数字とは別に、全体の動きを確かめるなら日本銀行の企業物価指数が使える。2026 年 8 月速報では、国内企業物価指数の類別「電力・都市ガス・水道」は前年同月比 8.0% の上昇、前月比 2.2% の下落で、前月比の下落に寄与した主な品目として都市ガスと事業用電力が挙がっている[6]。同じ速報では、7 月から 9 月に適用される夏季の電力割増料金の影響を総平均から除いた参考の指数も公表されている[6]。季節による料金の上がり下がりを、燃料価格や制度の変化と取り違えないために、比べる月は前年の同じ月にするのが無難である。

ただし、指標は全国の平均であって、個々の仕入先の契約の動きとは一致しない。指標と仕入先の申し入れが大きく食い違うときは、申し入れを退ける理由にするのではなく、どの項目がなぜ違うのかを聞くきっかけにする。比べてよい条件と補正の手順は過去の購入単価と比べるときの補正の仕方にまとめている。

取適法では、上がったときも下がったときも問題になる

取適法の対象となる取引では、エネルギーコストの扱いに二つの方向の線がある。

上がったとき。テキストは、労務費・原材料価格・エネルギーコスト等のコスト上昇分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場で明示的に協議することなく従来どおりに取引価格を据え置くことを、買いたたきに該当するおそれがある方法に挙げている[4]。違反行為事例として、使用を指定した原材料の価格や燃料費・電気料金といったエネルギーコスト、労務費等の高騰が明らかな状況で、受注者から引上げの求めがあったのに十分に協議せず一方的に単価を据え置いたゴム製品の例が示されている[4]。金属産業の取引適正化ガイドラインも、委託事業者はコストが増加した場合、あらかじめ定めた価格改定のタイミングだけでなく期中においても価格変更を柔軟に行い、特に原材料費やエネルギーコストが高騰した場合には適切なコスト増加分の全額転嫁を目指すものとしている[7]。

下がったとき。テキストは、労務費・原材料費・エネルギーコスト等のコストが下落した場合に、中小受託事業者のコストが減少したことを理由に、あらかじめ定められた代金の額を減じて支払うことも減額に該当するとしている[4]。燃料価格が下がったからといって、既に発注した分の代金を後から引くことはできない。次の発注から単価を見直したいなら、改めて協議する。後から下げることの線引きは代金を後から下げる行為の整理を参照してほしい。

反映のルールを先に決めておく

電気代は毎月動くので、そのたびに協議するのは双方にとって負担が大きい。電力を多く使う工程(熱処理、めっき、鋳造、溶解など)を持つ仕入先とは、電気代の変動の扱いを単価とは別建てにして、あらかじめルールにしておく方法がある。決めておく項目の例を挙げる(法令の要求ではなく、実務の提案である)。

  • 対象の電力量。品目 1 個あたり何 kWh として扱うか。工程の変更や設備の更新があれば見直す
  • 参照する単価。仕入先の請求書の燃料費調整単価、再エネ賦課金単価、値引きの有無。どの月の請求書の値を使うか
  • 反映の周期と適用開始。毎月か四半期か。いつの発注分から新しい額にするか
  • 上下の両方向に動くこと。上がったときだけでなく、下がったときも同じルールで動かす
  • ルールの見直し時期。年に一度、再エネ賦課金の改定にあわせて全体を確かめる

取適法の対象取引でこの形にするなら、発注時に具体的な金額を示すことが原則で、それが困難なやむを得ない事情がある場合に限り、金額が自動的に確定する算定方法を示すことが認められている点に注意がいる[4]。「電気代が変わったら協議する」という書き方は算定方法にはならない。算定方法による明示の条件は参考見積と正式見積の違いで詳しく扱っている。材料の相場に連動させる条項の作り方は、アルミの価格変動と価格スライド条項の作り方で項目ごとに説明している。

よくある質問

仕入先が「電気代が 2 割上がった」とだけ言ってきました

電気代の総額の変化率は、使用量の増減や生産品目の構成の変化も含んだ数字なので、そのまま単価に掛けるものではない。どの項目の単価がいくら変わったのかと、その品目 1 個あたりの電力量の目安を聞き、この記事の形で目安を出してから協議する。資料が足りないことを理由に協議を断らない。

再エネ賦課金が前年度より下がりました。単価を下げてもらえますか

次の発注から適用する単価について協議を申し入れることはできる。ただし、既に決めた代金を後から減らすことは減額に当たる[4]。また、同じ期間に他の項目が上がっていないかも合わせて見る。賦課金だけを取り出して下げを求め、上がった項目を見ないのは一方的である。

自社も電気代が上がっています。仕入先の申し入れは受けられません

テキストは、委託事業者自らのコストが増加したことを理由に、あらかじめ定められた代金の額を減じて支払うことは減額に該当するとしている[4]。自社のコスト増は、仕入先の申し入れを退ける理由にはならない。自社の販売価格への転嫁は、自社の顧客との協議の問題である。

まとめ

電気料金の変動は、燃料費調整(3〜5 か月前の燃料価格を毎月反映)[1]、再エネ賦課金(年度ごと・全国一律、2026 年度は 4.18 円/kWh)[2][5]、政府の料金支援(期間を区切った値引き)[3]の三つに分けて見る。単価への影響は、品目 1 個あたりの電力量に各項目の単価の差を掛けて出し、材料費や労務費とは別に扱う。全体の動きは企業物価指数で確かめられるが、個々の仕入先の契約とは一致しない[6]。エネルギーコストの上昇を協議なしに据え置けば買いたたきのおそれがあり、下がったときに決まった代金を後から減らせば減額になる[4][7]。毎月の協議を減らすなら、上下両方向に動くルールを先に決めておく。

出典・参考資料

  1. 燃料費調整制度について(資源エネルギー庁/2023 年 12 月 22 日更新)
  2. 再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2026年度以降の買取価格等と2026年度の賦課金単価を設定します(経済産業省/2026 年 3 月 19 日)
  3. 電気・都市ガスをご利用するみなさまへ(電気・ガス料金支援)(経済産業省 資源エネルギー庁)
  4. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
  5. 制度の概要(再生可能エネルギー発電促進賦課金)(資源エネルギー庁)
  6. 企業物価指数(2026年8月速報)(日本銀行調査統計局/2026 年 9 月 11 日)
  7. 金属産業取引適正化ガイドライン(金属産業における受託適正取引等のためのガイドライン)(経済産業省/平成 29 年 2 月策定・令和 8 年 1 月最終改訂)

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