汎用・レガシー半導体の長期確保——最終購入・在庫・代替の決め方 | newji
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投稿日:2026年10月1日

汎用・レガシー半導体の長期確保——最終購入・在庫・代替の決め方

この記事のポイント(結論先出し)

2026 年 10 月時点で確認できた公表情報で整理する。日本銀行の輸入物価指数(円ベース)では、2026 年 8 月の集積回路が前年同月の 2.2 倍、メモリ集積回路は 4.6 倍になった[1][2]。米国は中国製の半導体に対する通商法 301 条の措置を 2025 年 12 月 23 日から発動し、税率はいまは 0% だが 2027 年 6 月 23 日に引き上げるとしている[3]。国内では、経済安全保障推進法の改正が 2026 年 9 月 18 日に施行され、特定重要物資(半導体を含む)の供給を受ける事業者にも安定供給のための連携・協力の努力義務がかかった[4][5]。汎用・レガシーの半導体を長く使う製品を持つ発注側が決めておくことは、どの部品が危ないかの洗い出し、生産終了と変更の通知の受け取り方、最終購入の数量と保管、代替部品の評価の順番である。部品の生産終了への備え方は IEC 62402 が枠組みを示している[6]。

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ここでいう汎用・レガシー半導体は、最先端の製造工程ではない成熟した工程で作られるマイコン、アナログ IC、パワー半導体、ディスクリート部品、旧世代のメモリなどを指す。産業機器・車載・医療機器のように製品の寿命が長い分野ほど、同じ部品を十年以上使い続けることになる。

価格の面では、日本銀行の企業物価指数に輸入品と国内品の集積回路の指数がある。値動きは品目によって大きく違う[2]。

品目(2020 年=100) 2025 年 8 月 2026 年 2 月 2026 年 8 月 前年同月比
輸入・集積回路(商品群、円ベース) 137.8 220.5 303.0 +119.9%
輸入・モス型メモリ集積回路 125.4 350.8 577.1 +360.2%
輸入・モス型ロジック集積回路 160.4 167.4 175.3 +9.3%
輸入・混成集積回路 117.0 122.8 122.7 +4.9%
国内・集積回路(商品群) 117.4 118.5 120.5 +2.6%

表は日本銀行の時系列統計データ検索サイトから 2026 年 10 月 1 日に取り出した値で、2026 年 8 月は速報値である。前年同月比はこの記事で計算した[2]。日本銀行の 8 月速報では、輸入物価指数(契約通貨ベース)が前月比 1.0% 下がる中で、上昇に寄与した類別「電気・電子機器」の主な品目の筆頭にモス型メモリ集積回路が挙がっている[1]。集積回路の値上がりの大部分はメモリによるもので、ロジックや混成集積回路の上がり方は 1 割に満たない。部品ごとに状況がまったく違うので、「半導体が高い」とひとまとめにせず、自社の部品表のどこが当たるかを見る必要がある。

通商と制度の動き——確認できた範囲

米国:中国製半導体への 301 条関税

米国通商代表部(USTR)は 2024 年 12 月 23 日に、中国の半導体産業政策について通商法 301 条の調査を始めた。調査は、成熟した工程で作られる基盤的な半導体(レガシー半導体)が、防衛・自動車・医療機器・航空宇宙・通信・電力の分野の製品に組み込まれる場合も対象にしていた[3]。2025 年 12 月の措置の通知は、中国からの半導体に関税措置をとり、当初の税率は 0%、18 か月後の 2027 年 6 月 23 日に引き上げる、引上げ後の税率はその 30 日以上前に公表するとしている。措置の発効は 2025 年 12 月 23 日で、既に課されている 50% の 301 条関税に上乗せされる[3]。対象は、ダイオード・トランジスタ・サイリスタ・光電素子・集積回路(プロセッサ・メモリ・増幅器など)とその部分品などの、通知に列挙された HTS の 8 桁の品目である[3]。

この措置は、列挙された品目として米国に輸入される半導体にかかるもので、通知の上ではそれを組み込んだ完成品の品目は列挙されていない[3]。自社の取引にどう効くかは、米国に何をどの品目で輸出しているかで変わる。関税措置を購入契約でどう扱うかは米国の関税措置と、購入契約・価格の取り決めで扱う。

国内:経済安全保障推進法の改正(2026 年 9 月 18 日施行)

経済安全保障推進法は、2022 年 12 月に半導体を特定重要物資に指定し、2024 年 2 月には先端電子部品(コンデンサー及びろ波器)も指定した[4]。2026 年 6 月に公布された改正法は 2026 年 9 月 18 日に施行され、国・特定重要物資等の供給を行う事業者・特定重要物資の供給を受ける事業者その他の関係者が、安定供給の確保のため相互に連携を図りながら協力するよう努めることを規定した。安定供給に支障が生ずるおそれがある場合には、主務大臣が広く関係者に資料・情報の提供や状況の説明などの協力を求められるようになった[5]。半導体を買う側も、協力を求められる関係者に入りうる。制度の全体と、調達先の把握の進め方は経済安全保障推進法の特定重要物資と、調達先の把握で書く。

生産終了への備えを、仕組みとして持つ

部品の生産終了(ディスコン)への備えについては、国際規格 IEC 62402:2019(Obsolescence management)がある。第 2 版で、他の組織から提供される品目に頼っているあらゆる組織に適用できる要求事項と指針を示すとされている。第 1 版より範囲が広がり、電気・電子分野に限らず使えるとされる[6]。扱う範囲は、方針の策定、体制、管理計画、設計段階で陳腐化を抑える戦略、管理の方式の選択、解決策の選択と実施、成果の測定と改善である[6]。規格の要求事項の中身は有償なので、この記事では立ち入らない。社内の手順を作るときに、どの規格の考え方に沿ったかを書いておくと、顧客に説明しやすい。

生産終了と変更の通知については、半導体の標準化団体 JEDEC の規格がある。製品の生産終了の通知は J-STD-048A(2025 年 12 月発行、JESD48 を置き換え)で、生産終了による混乱を顧客が管理・緩和し供給の継続を確保できるようにすることを目的としている[7]。製品・工程の変更の通知は J-STD-046A(2025 年 12 月発行)で、電子部品の製品と工程の変更を顧客に適時に通知するための要求を定めている[8]。どちらも登録すれば無料で入手できる[7][8]。通知の期間などの具体的な定めは規格本文で確かめ、取引先との契約で引用するときは版を明記する。

発注側が決めておくこと

ここからは実務の提案である。

1. 部品表から、危ない部品を洗い出す

製品の部品表から半導体部品を抜き出し、少なくとも次の観点で分類する。製造元が一社しかないか(ピン互換の代替があるか)、製造元が生産終了や新規設計非推奨を出していないか、その部品を使う製品があと何年売られ、保守部品として何年供給する約束があるか。製品の残りの寿命が長く、代替がない部品ほど先に手を打つ。

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2. 通知が届く経路を、部品ごとに確かめる

生産終了や変更の通知は、製造元から正規代理店を経て届くことが多い。商社経由で買っている部品、基板実装の委託先が買っている部品では、通知が自社まで届かないことがある。購入契約や品質協定に、生産終了・変更の通知を受け取ったら自社に転送すること、転送の期限を書いておく。実装の委託先が部品を調達している場合は、同じ要求を委託先の購買にも伝える。正規の流通の外から買わないことは電子部品の模倣品を避ける調達で書いた。

3. 最終購入(ラストタイムバイ)の数量を、式で決める

生産終了の通知が来たら、最終購入の受付期限までに数量を決めなければならない。数量は、製品の残りの生産見込み数×1 台あたりの使用数に、保守部品として残す数、実装や検査での損失の見込みを足し、手元の在庫を引いて決める。生産見込みが外れると、余れば評価損、足りなければ代替部品への切替えになる。どちらに外れた場合の費用が大きいかを経営判断として残しておく。最終購入した部品は棚卸資産になるので、長く持つ前提で評価と管理の方法を決める。評価損の扱いは棚卸減耗損と評価損を参照してほしい。

4. 長期保管の条件を決めて、受け取る

何年も保管する部品は、保管中の吸湿やはんだ付け性の劣化を考える必要がある。湿気に弱い部品の保管・乾燥の条件は部品ごとの製造元の指定と業界の規格によるので、最終購入のときに梱包の形態と保管条件の資料を受け取っておく。保管を代理店に任せる場合は、保管の条件・期間・費用・引取りの単位を契約で決める。

5. 代替部品の評価を、通知の前から始める

代替部品への切替えは、部品の評価・基板の設計変更・製品の再試験・顧客の承認が必要になり、時間がかかる。危ない部品から順に、ピン互換の代替があるか、設計変更が必要か、を通知が来る前に調べておく。代替部品に切り替えるときは、量産承認の出し直しの対象にする。何を出させて承認するかは量産を始める前に仕入先に何を出させるかで扱った。

6. 価格が動いている部品は、確保の量と期間を先に合意する

メモリのように輸入価格が急に動いている部品は、必要な時期に必要な量を確保できるかが先に問題になる。年間の必要量と納入の時期を代理店と合意し、価格の改定の時期と根拠をあらかじめ決めておく。発注点と安全在庫を見直すときは、調達の期間(リードタイム)が延びている前提で計算し直す。計算の仕方は発注点と安全在庫の決め方にまとめている。

調達先を分けるとき

同じ機能の部品を別の製造元から買えるようにしておく(セカンドソース)ことは、生産終了と供給の偏りの両方への備えになる。ただし、汎用の半導体は製造の工程や工場の所在地が限られていることがあり、製造元を変えても製造の拠点が同じ地域に偏ることがある。製造元に工場の所在地と、後工程(組立・検査)の場所を聞いておく。調達先を国や地域で分ける進め方はチャイナプラスワン——調達先を分けるときの進め方と費用、部品を作っている取引先の廃業の兆候は仕入先の廃業・後継者不在——兆候のつかみ方と代替の準備で扱う。

よくある質問

最終購入の数量を多めに取っておけば安心ですか

多く取るほど供給の心配は減るが、保管の費用・劣化・評価損の負担が増える。製品が予定より早く打ち切られれば、残った部品は使い道がなくなる。数量は生産見込み・保守の約束・損失の見込みから計算し、余裕をどれだけ持つかは経営判断として記録する。

代理店から「割当て(アロケーション)」と言われ、必要数が入りません

割当ての基準(過去の購入実績・長期の発注の有無など)を代理店に確かめ、確定した長期の発注や予測の共有で優先度が上がるかを聞く。急ぐあまり正規の流通の外から買う場合は、模倣品の受入確認を必ず行う。

米国の 301 条関税は、日本から米国に機械を輸出する当社に関係しますか

通知が列挙しているのは半導体そのものの品目である[3]。完成した機械を輸出するだけなら直接は当たらないが、半導体の部品を単体で米国に送る、米国の顧客から部品の原産国を問われる、といった場面はありうる。輸出している品目と原産地の扱いを通関の担当と確かめる。

まとめ

2026 年 8 月の輸入物価指数では、集積回路が前年同月の 2.2 倍、メモリは 4.6 倍になったが、ロジックや混成集積回路の上昇は 1 割に満たない[2]。米国は中国製半導体への 301 条関税を 2027 年 6 月 23 日に引き上げるとし[3]、国内では経済安全保障推進法の改正で、半導体の供給を受ける事業者にも連携・協力の努力義務がかかった[5]。長く使う汎用の半導体について発注側が持っておくべきものは、危ない部品の一覧、生産終了と変更の通知が届く経路、最終購入の数量の決め方と保管の条件、代替部品の評価の順番である。IEC 62402 と JEDEC の通知の規格は、その仕組みを作るときの下敷きになる[6][7][8]。

出典・参考資料

  1. 企業物価指数(2026年8月速報)(日本銀行調査統計局/2026 年 9 月 11 日)
  2. 時系列統計データ検索サイト(企業物価指数 2020 年基準・品目別指数)(日本銀行/2026 年 10 月 1 日取得)
  3. Notice of Action: China’s Acts, Policies, and Practices Related to Targeting of the Semiconductor Industry for Dominance(米国通商代表部/Federal Register 2025 年 12 月 29 日掲載)
  4. サプライチェーン強靱化の取組(重要物資の安定的な供給の確保に関する制度)(内閣府/2026 年 10 月 1 日閲覧)
  5. 経済安全保障推進法等の改正概要(サプライチェーン強靱化)について(内閣府/2026 年 9 月)
  6. IEC 62402:2019 Obsolescence management(国際電気標準会議/2019 年 5 月 29 日)
  7. J-STD-048A Notification Standard for Product Discontinuance(JEDEC/2025 年 12 月)
  8. J-STD-046A Customer Notification Standard for Product/Process Changes by Electronic Product Suppliers(JEDEC/2025 年 12 月)

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