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物流効率化法で荷主に課される義務——受け取る側も荷主になる

この記事のポイント(結論先出し)
2026 年 10 月時点の整理である。物流効率化法(物資の流通の効率化に関する法律)は、2025 年 4 月からすべての荷主に努力義務を課し、2026 年 4 月からは取扱貨物が年 9 万トン以上の荷主を「特定荷主」に指定して、中長期計画・定期報告・物流統括管理者(CLO)の選任を義務づけた[1][2]。調達の担当者が見落としやすいのは、部品を受け取る側も「第二種荷主」として荷主に入ることである[3][4]。仕入先が手配したトラックが自社の工場に着いたときの荷待ちや検品の時間も、短縮の対象になる。発注書の納期の書き方、納品の時間帯、検品のやり方、パレットの指定は、購買の仕事の中で変えられる。2026 年度に初めて指定された特定荷主の中長期計画は、2026 年 10 月末が提出期限である[6]。
目次
何が変わったのか——法律の名前と、二段階の施行
2024 年 5 月に公布された改正法で、「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」は「物資の流通の効率化に関する法律」に名前が変わった[1]。中身は、荷主と物流事業者に物流の効率化のための取組を求める規制である。国土交通省の説明では、荷主(発荷主・着荷主)と物流事業者(トラック・鉄道・港湾運送・航空運送・倉庫)に努力義務を課し、国が判断基準を定め、その取組状況について指導・助言や調査・公表を行う。そのうえで一定規模以上の事業者を特定事業者として指定し、中長期計画の作成や定期報告を義務づけ、荷主には物流統括管理者の選任も義務づけている[1]。
施行は二段階である。すべての荷主に努力義務がかかったのが 2025 年 4 月 1 日、特定事業者の指定と計画・報告・物流統括管理者の義務が始まったのが 2026 年 4 月である[1][2]。特定事業者の基準は、荷主が年度の取扱貨物の重量 9 万トン以上、トラック事業者が保有車両 150 台以上、倉庫業者が保管量 70 万トン以上とされている[2]。
国が掲げる目標は具体的である。基本方針は、令和 10 年度までに全国の貨物自動車輸送の 5 割の運行で荷待ち・荷役等の時間を 1 時間削減し、ドライバー 1 人あたり年間 125 時間短縮することを掲げている。そのうえで荷主等は、1 回の受渡しごとの荷待ち時間等について原則として 1 時間以内を目標とし、業界の特性その他やむを得ない場合を除いて 2 時間を超えないよう短縮するものとされている[3]。
部品を受け取る側も「荷主」になる
荷主は二種類に分けられている。判断基準の解説書の定義を短くまとめると、次のとおりである[3]。
- 第一種荷主:自らの事業に関して、継続してトラック事業者・貨物利用運送事業者と運送契約を結ぶ者
- 第二種荷主:運送契約は結ばないが、自らの事業に関して、継続して他社に雇われたドライバーから貨物を受け取る者(受け取らせる者を含む)、またはドライバーに貨物を引き渡す者
調達の場面に当てはめると、仕入先が運送会社を手配して自社の工場へ部品を届ける通常の納入では、仕入先が第一種荷主、受け取る自社が第二種荷主になる。反対に、自社がトラックを手配して仕入先まで取りに行く引取物流では、運送契約を結ぶ自社が第一種荷主、荷を渡す仕入先が第二種荷主になる[4]。国土交通省のパターン集は、製造業で仕入のときは仕入先が、出荷のときは自社が運送契約を結ぶ場合、その会社は第一種荷主と第二種荷主の両方に当たると整理している[4]。
「受け取るだけだから関係ない」とはならない理由がもう一つある。特定荷主の基準になる 9 万トンは、第一種・第二種それぞれの立場で数える。パターン集の例では、取引先が手配したトラックとの間で年間 5 万トンを受け取り、5 万トンを引き渡している事業者は、第二種荷主としての取扱貨物が 10 万トンとなり、特定第二種荷主に当たる[4]。受け取る量と、取引先が手配したトラックに引き渡す量は合わせて数えるので、受け取る量が 9 万トンに届かなくても、出荷を相手先の手配で出している会社は基準を超えることがある。
仕入先との取引に取適法がかかる場合、自社が運送を委託する側の扱いは別の論点になる。発荷主から運送事業者への委託は 2026 年 1 月から取適法の「特定運送委託」に入った。対象になる運送の範囲は取適法の対象取引(5 つの類型)で整理している。従業員を使わない個人の運送事業者に直接運送を頼む場合は、フリーランス法の取引条件の明示も関わってくる。その扱いはフリーランス法と、個人に設計・加工を外注するときの書面に書いた。
短縮の対象になる「荷待ち」と「荷役等」
荷待ち時間は、ドライバーが集貨・配達の場所に到着してから荷役等を始めるまでの時間のうち、荷主等の都合で待った時間と定義されている。荷役等には、荷積み・荷下ろしだけでなく、貨物の品質や数量が契約に合っているかの検査、荷造り、仕分け、ラベル貼りなどが含まれる[3]。受入の検品をドライバーに立ち会わせたり手伝わせたりしていれば、その時間は荷役等時間として数えられる。
荷主が短縮に努める範囲は、荷主が管理する施設と、荷主が寄託契約を結んだ倉庫業者が管理する施設である。荷待ちについてはその周辺の場所も含まれる[3]。自社の工場の門の外で順番を待つトラックの列も、対象から外れない。
第二種荷主には、「受渡しの日時は運転者に指示できないから関係ない」という言い分も通りにくい。国土交通省の Q&A は、第二種荷主は自ら運送契約を結ばないため直接は指示できない場合が多いとしつつ、必要に応じて第一種荷主を通じるなどして受渡しの日時を調整するよう努める必要があるとしている。取引の力関係で調整が難しい場合でも、努力義務に基づいて調整を申し出ることが望まれ、そうした場合は「指示することができない」とは解されないとしている[5]。
判断基準が荷主に求めること
判断基準は、荷主が取り組むべきことを第一種・第二種に分けて挙げている。主なものを並べると次の表になる[3]。
| 区分 | 第一種荷主(運送を手配する側) | 第二種荷主(受け取る・渡す側) |
|---|---|---|
| 積載効率の向上 | 積合せのためのリードタイムの確保、出入荷量の平準化、配車・運行経路の最適化、部門間の連携 | 第一種荷主から協議の申出があれば必要な協力をする、部門間の連携 |
| 荷待ち時間の短縮 | 入出荷の日時の分散、トラック予約受付システムなどによる到着日時の調整、寄託先への早めの発注 | 同左(日時の分散、到着日時の調整、寄託先への早めの発注) |
| 荷役等時間の短縮 | パレットの導入と標準仕様パレットの使用、出荷情報の事前通知、検査の効率化、停留場所の確保 | 検査の効率化、フォークリフトや人員の配置、停留場所の確保 |
| 実効性の確保 | 責任者の選任と研修、荷待ち時間等の把握、寄託先との提案のやりとり、物流データの標準化、物流サービスの内容に応じた価格の設定、取引先への協力要請 | |
国土交通省・経済産業省・農林水産省が令和 7 年度に行った取組状況の調査(荷主・連鎖化事業者は約 1,600 社が対象)では、荷主の「取引先企業の協議の申出への協力」を実施していると答えた割合が 84%、「貨物の受渡し日時の分散」が 80%、「フォークリフトや人員の適切な配置等による荷役等の効率化」が 81% だった。一方、「配車計画・運行経路の最適化」は 44% にとどまっている[7]。回答は自己申告で、施設や発注の一部で実施している場合も含む割合である点には注意がいる[7]。
調達の仕事で変えられること
判断基準の項目の多くは、物流部門だけでは動かせない。納品の日時を決めているのは発注書であり、納入の荷姿を決めているのは購買仕様書であり、検品の段取りを決めているのは受入の手順だからである。ここから先は、法令の要求ではなく、判断基準を調達の業務に落とすときの実務の提案である。
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1. 納期を「日」だけでなく「時間帯」で決め、集中させない
月末や朝一番に納品が集中すると、門の外にトラックの列ができる。発注書や納入指示で、仕入先ごと・品目ごとに受け入れる時間帯を割り振る。急ぎの発注で当日の午前着を指定する運用が常態になっていないかも見直す。積合せの時間を取れないほど短いリードタイムの発注は、第一種荷主である仕入先が判断基準の「リードタイムの確保」に取り組む妨げになる[3]。分割納入を決めるときの記録のつけ方は発注の分割と分納の管理にまとめている。
2. 荷姿とパレットを購買仕様書に書く
判断基準は、第一種荷主にパレットの導入と標準仕様パレットの使用を求めている[3]。納入の荷姿を決めるのが発注側である場合、バラ積みのままでよいのか、どのパレットに載せるのかを仕様書で指定しないと、仕入先はパレット化に取り組めない。梱包材の指定と見直しは段ボール・包装資材の価格改定と梱包仕様の見直しで扱う。
3. 検品をドライバーに頼らない段取りにする
受入の数量確認や外観の確認をドライバーの立会いで行っていると、その時間は荷役等時間になる[3]。仕入先に出荷情報を事前に送ってもらい、照合を受入後に回す、検品の人員を納入の時間帯に合わせて置く、といった段取りの変更は購買と受入部門で決められる。受入検査そのものを省くのではなく、トラックを待たせない順序にする、という見直しである。
4. 第一種荷主から協議を求められたら応じる
第二種荷主の判断基準の第一項目は、第一種荷主が積載効率の向上のために協議したいと申し出たとき、必要な協力を行うことである[3]。仕入先から「納品の曜日をまとめたい」「時間帯を広げてほしい」と言われたら、断る前に協議の場を設ける。社内では生産計画・在庫・購買の担当がそろって判断できるようにしておく。
5. 引取物流をしているなら、自社が第一種荷主
自社のトラック手配で仕入先へ部品を取りに行く場合、運送契約を結ぶ自社が第一種荷主になる[4]。仕入先の構内での荷待ちを減らすには、引取りの時刻を仕入先と事前に決め、出荷の準備ができた時刻を知らせてもらう仕組みが要る。
特定荷主に指定された会社の購買部門
特定荷主の手続には期限がある。経済産業省の手引書によると、取扱貨物が 9 万トンを上回った年度の翌年度の 5 月末までに届出を出し、指定を受けた年度の 7 月末までに中長期計画を提出する。2026 年度に限って中長期計画の期限は 10 月末である。定期報告は指定を受けた年度の翌年度から毎年 7 月末まで、物流統括管理者は指定後すみやかに(遅くとも中長期計画の提出まで)選任して届け出る[6]。
物流統括管理者は、特定荷主が行う事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者でなければならない。手引書は、単なる物流部門の長ではなく経営全体を見て調整・判断する役割だとし、その役割の一つに、開発・生産・流通・販売・調達・在庫管理などの関係部門の連携体制を作ることを挙げている[6]。中長期計画や定期報告に、受入の荷待ち時間の計測結果や納品時間帯の分散の取組を書くとき、その材料を持っているのは購買と受入の部門である。
定期報告では、荷待ち時間・荷役等時間の計測結果の報告が求められる[6]。受入の窓口でトラックの到着時刻と荷役の開始・終了時刻を記録する仕組みがなければ、報告の数字が作れない。到着の受付記録を紙からシステムに移すかどうかは、物流部門と購買部門で一緒に決めることになる。
よくある質問
うちは 9 万トンに届きません。何もしなくてよいですか
特定荷主の義務(計画・報告・物流統括管理者)はかからないが、努力義務はすべての荷主にかかっている[1]。国は判断基準に基づいて指導・助言を行い、取組状況を調査・公表する[1]。取引先の特定荷主から、中長期計画の一環として納品時間帯や荷姿の見直しを求められることもある。
トラック予約受付システムを入れていないと、到着時間を指示したことにならないのですか
国土交通省の Q&A は、受付時間を明示的に指示していれば時間帯を指示していることに当たるとし、その場合は受付開始時刻より前に着いたトラックの荷待ち時間は受付開始時刻から数えるとしている[5]。システムの有無ではなく、何をどう指示したかで判断される。
重量物や精密品で、1 時間以内は無理です
基本方針は業界の特性その他やむを得ない場合を例外として認めており、Q&A は重量物や大型・精密な製品で慎重な荷役が必要な場合などを類型として示している。ただし、例外に当たる運行が一部にあるからといって、すべての施設・運行で短縮が困難とは判断されない、ともしている[5]。取引先の協力や設備投資に時間がかかる事情は、その旨を説明すれば踏まえて指導・助言を行うとされている[5]。
仕入先に納品の時間を指定するのは、取引上問題になりませんか
時間帯を決めることそのものは、荷待ちを減らす取組として判断基準が求めている方向である[3]。問題になりやすいのは、指定した時間に合わせるための費用(待機・再配達・分納の増加)を仕入先にだけ負わせ、価格に反映しない場合である。取適法テキストは、納入を週 1 回から毎日に変えさせ、小口化で運送費が増えるとして出された見積を協議せずに大きく下回る単価で決めた例を、買いたたきの違反行為事例に挙げている[8]。仕入先の価格改定の申し入れの扱いは値上げの申し入れが来たらで整理している。
まとめ
物流効率化法は、2025 年 4 月からすべての荷主に努力義務を、2026 年 4 月から年 9 万トン以上の荷主に中長期計画・定期報告・物流統括管理者の選任を課した[1][2]。部品を受け取る自社は第二種荷主として荷主に入り、取引先が手配したトラックとの間で受け取る量と引き渡す量を合わせて特定荷主の基準を判定する[4]。荷待ちは原則 1 時間以内、2 時間を超えないことが目標とされ[3]、ドライバーが立ち会う検品も荷役等の時間に数えられる[3]。納品の時間帯、荷姿とパレット、検品の段取り、仕入先からの協議への対応は、どれも購買の業務の中で決めているものである。物流統括管理者の役割に調達部門との連携が挙げられているのは、そのためである[6]。
出典・参考資料
- 物流効率化法について(荷主・物流事業者の皆様へ)(国土交通省/2026 年 10 月 1 日閲覧)
- 改正物流効率化法の施行に伴う義務(事業者向け周知用リーフレット)(国土交通省)
- 荷主の貨物自動車運送役務の持続可能な提供の確保に資する運転者の運送及び荷役等の効率化に関する判断の基準の解説書(国土交通省・経済産業省・農林水産省/2026 年 3 月)
- 物流パターンごとの荷主の考え方(国土交通省・経済産業省・農林水産省/令和 8 年 5 月)
- 物資の流通の効率化に関する法律 Q&A(荷主向け)(国土交通省・経済産業省・農林水産省/令和 8 年 3 月)
- 「物流効率化法」対応の手引書 特定荷主編(第 1.1 版)(経済産業省/2026 年 4 月)
- 物流効率化に向けた荷主・物流事業者の取組状況の調査結果について(国土交通省・経済産業省・農林水産省)
- 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
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