基本取引契約書に収入印紙は要るか——第7号文書になる条件、第2号との違い、覚書・電子契約 | newji
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投稿日:2026年10月8日

基本取引契約書に収入印紙は要るか——第7号文書になる条件、第2号との違い、覚書・電子契約

この記事のポイント(結論先出し)

基本取引契約書は、営業者どうしが 2 回以上続く売買や請負のために結び、目的物の種類・取扱数量・単価・対価の支払方法・債務不履行の損害賠償の方法・再販売価格のどれか一つでも定めていれば、第 7 号文書として 1 通 4,000 円の印紙が要る[2][3][4]。ただし契約期間が 3 か月以内で更新の定めがなければ外れる[1]。部品の製造委託のような請負の基本契約で、契約金額が書かれている(単価と数量から計算できる場合を含む)と、第 7 号ではなく第 2 号文書として金額に応じた印紙になる[1][5]。単価や支払方法を変える覚書も、重要な事項の変更として課税文書になりうる[6][7]。電子で締結すれば、そもそも課税されない[8]。

判定は「第 7 号に当たるか」と「何号に所属するか」の二段

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基本取引契約書の印紙で迷うのは、二つの問いが混ざるからである。一つ目は、その契約書が第 7 号文書(継続的取引の基本となる契約書)の要件を満たすか。二つ目は、要件を満たしたうえで、第 2 号文書(請負に関する契約書)にも当たる場合にどちらの号として扱うか。二つ目の答えで、印紙が一律 4,000 円になるか、金額に応じて変わるかが決まる。

基本契約と個別契約の役割の分け方や、入れる条項の中身は基本取引契約書とはで扱っている。個別の注文書に印紙が要るかは注文書に収入印紙は必要かにまとめた。この記事は基本取引契約書そのものの印紙に絞る。

第 7 号に当たる 5 つの条件

印紙税法の課税物件表は、第 7 号を「継続的取引の基本となる契約書」とし、契約期間の記載があってその期間が 3 か月以内、かつ更新の定めのないものを除いている[1]。どんな契約書が当たるかは政令に委ねられ、製造業の取引基本契約が関わるのは印紙税法施行令第 26 条第 1 号である[2]。条文と基本通達の説明を合わせると、判定の条件は次の 5 つになる[2][4]。

条件 中身 基本通達の補足
① 営業者の間 当事者の双方が営業者である 営業者の代理人として非営業者が当事者になる場合を含む
② 対象の取引 売買、売買の委託、運送、運送取扱い、請負 電気・ガスの供給に関するものは除く
③ 2 以上の取引を継続して行うため 取引が 2 回以上続くことが前提 1 つの取引を数回に分けて引き渡すだけなら当たらない
④ 共通の取引条件を定める 目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法、再販売価格 すべてでなく、1 つ以上定めれば足りる
⑤ 期間の除外に当たらない 契約期間 3 か月以内かつ更新の定めなし、は除外 更新の定めがあっても、更新後の期間を足して 3 か月以内なら除外

表の補足欄はすべて印紙税法基本通達の別表第一・第 7 号文書の項による[4]。④の事項は、一つでも書いてあれば条件を満たす点が大きい[4]。製造業の取引基本契約には、たいてい「毎月末日締め翌月末日払い」のような支払条件が入っているので、ここで当たることが多い。

④の事項は「具体的かどうか」で数える

④の六つは、書いてあれば何でも当たるわけではない。基本通達は、それぞれに具体性の線を引いている[4]。

目的物の種類。
売買なら目的物の種類、請負なら仕事の種類・内容が当たる。個別の品名だけでなく、「電気製品」のように共通の性質を持つものをまとめた名称も含む。

取扱数量。
「1 か月の最低取扱数量は 50 トン」のような具体的な数量や、取扱目標金額を定めるものが当たる。「毎月の取扱数量は当該月の注文数量とする」は当たらない。

単価。
数値として具体的なものに限る。「市価」「時価」とするものは当たらない。

対価の支払方法。
「毎月分を翌月 10 日に支払う」「借入金と相殺する」のように、支払の手段や方法を具体的に定めるもの。

債務不履行の場合の損害賠償の方法。
不履行の結果生じる損害の賠償として給付するものの金額や数量の計算、給付の方法などを指し、不履行になった債務の弁済方法のことではない。

再販売価格は、販売店に売り値を定める特約店契約などで出てくる事項で、部品の購買ではまず書かれない。

つまり、単価や数量を「個別契約で定める」とだけ書き、支払条件も別紙や個別の注文書に回している基本契約であれば、④に当たる事項がない可能性がある。逆に、品目の分類と支払条件が本文にあるだけで、④は満たされる。

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請負の基本契約は、第 2 号に寄ることがある

部品の製造委託、加工の委託、設備の修理などは、印紙税では「請負」に当たることが多い。基本通達は、物品を作る契約が請負か売買かを分ける目安を示しており、製作者の材料で注文者の設計や指示した規格に従って作るもの(機械の製作など)、注文者が材料の主要部分を有償・無償を問わず提供して作るもの、修理や加工をするもの、大型機械を一定の場所に取り付けて所有権を移すものを請負とし、あらかじめ一定の規格で統一された物品を注文に応じて作るもの(カタログや見本による製作)を物品の譲渡としている[5]。

請負の基本契約は、第 7 号の要件を満たすと同時に、第 2 号(請負に関する契約書)にも当たる。このときの所属は課税物件表の通則 3 イで決まる。第 2 号と第 7 号の両方に当たる文書は原則として第 2 号とし、ただし第 2 号の文書で契約金額の記載のないものと第 7 号に当たる文書は第 7 号とする、という定めである[1]。

基本取引契約書の形 所属 印紙税額
規格品の売買の基本契約(支払条件あり) 第 7 号 1 通 4,000 円
製造委託の基本契約(契約金額の記載なし) 第 7 号(通則 3 イただし書) 1 通 4,000 円
製造委託の基本契約(年間の取扱目標金額 800 万円を記載) 第 2 号 500 万円超 1,000 万円以下の区分で 1 通 1 万円
製造委託の基本契約(単価と数量が書かれ、総額が 300 万円と計算できる) 第 2 号 200 万円超 300 万円以下の区分で 1 通 1,000 円
製造委託の基本契約で、契約期間 2 か月・更新の定めなし(金額の記載なし) 第 7 号から外れ、第 2 号 契約金額の記載のない契約書として 1 通 200 円

表の税額は課税物件表の第 2 号・第 7 号の税率による[1]。三行目の取扱目標金額について、基本通達は、取扱目標金額を記載した契約書は記載金額のある契約書にも当たると注意を書いている[4]。四行目は、通則 4 ホ(一)の、文書に記載された単価と数量などで契約金額を計算できるときは、その計算した金額を記載金額とする、という定めによる[1]。最後の行は、基本通達が、期間の要件で第 7 号から外れた文書もその内容によって他の号に当たるかを判断する、としているためである[4]。

年間の目標や見込みの数字を基本契約の本文に書くと、印紙の号が変わり、金額によっては 4,000 円を超える。見込みの数字を書くかどうかは取引の中身で決めることだが、書く場所(本文か、拘束力のない参考資料か)は印紙にも響く、と知っておきたい。

覚書・変更契約・単価表の扱い

基本契約は一度結んで終わりではなく、単価の改定や支払条件の変更のたびに覚書を交わすことが多い。課税物件表の通則 5 は、契約書を、契約の成立だけでなく契約の内容の変更や補充の事実を証すべき文書も含むものとして定義している[1]。覚書であっても、変える中身によっては課税文書になる。

基本通達第 17 条は、変更契約書の所属を次のように決めるとしている[6]。原契約が一つの号の課税事項だけを含むなら、その課税事項のうち重要な事項を変える契約書は原契約と同じ号に所属する。原契約が二つ以上の号の課税事項を含むなら、どちらの号の重要な事項を変えるかで所属が決まり、両方の号の重要な事項を変えるなら通則 3 で決める。重要な事項以外を変えるだけの契約書は課税文書に当たらない。

第 7 号文書の重要な事項は、基本通達の別表第 2 で、施行令第 26 条の各号に掲げる要件(製造業の基本契約なら④の六つの事項)と、契約期間(第 7 号に当たる文書を引用して期間を延長するもの。延長期間が 3 か月以内で更新の定めがないものを除く)とされている[7]。第 2 号文書(請負)の重要な事項には、請負の内容、期日、契約金額、取扱数量、単価、契約金額の支払方法や支払期日、契約期間などが並ぶ[7]。

実務に置き直すと、次のようになる。

単価を改定する覚書。
単価は第 7 号の重要な事項なので、売買の基本契約の単価を変える覚書は第 7 号として 4,000 円の対象になりうる。請負の基本契約の場合、単価は第 2 号の重要な事項でもあるので、覚書に金額が書かれているか(単価と数量で計算できるか)で第 2 号か第 7 号かが分かれる。基本通達は、報酬月額と契約期間の記載がある清掃請負契約書の報酬月額を変える契約書について、契約期間や報酬総額の記載がなければ第 7 号、あれば第 2 号、という例を示している[6]。

支払条件を変える覚書。
対価の支払方法は第 7 号の重要な事項なので、課税文書になりうる[7]。

担当窓口や通知先だけを変える覚書。
重要な事項に当たらなければ課税文書に当たらない[6]。

単価表を基本契約の別紙として綴じ込む形も多い。別紙が基本契約と一体の文書として作られていれば、その記載も基本契約書の記載として判定されると考えて、本文と別紙を合わせて④の事項や金額の有無を確かめる。単価表を後から差し替えるときは、差し替えの文書が単価という重要な事項の変更を証す文書になるかを見る。

何通に貼るか、誰が払うか

基本通達第 19 条は、契約当事者が同じ内容の文書を 2 通以上作り、それぞれが課税事項を証明する目的で作られたものであれば、それぞれが課税文書に当たるとしている[6]。売り手と買い手が 1 通ずつ持つなら、2 通それぞれに 4,000 円である。

「写し」「副本」と表示した文書でも、契約当事者の双方または一方の署名・押印があるもの(所持者だけが署名・押印しているものを除く)や、正本と相違ない旨の当事者の証明(割印を含む)があるものは課税文書に当たる[6]。控えをコピーで持つなら、署名や割印をしない。

納める義務は文書の作成者にあり、一つの課税文書を二人以上で共同して作った場合は、連帯して納める義務がある[1]。費用を当事者の間でどう分けるかは取り決め次第だが、双方が署名して作った契約書は、法律上は共同作成者として連帯の関係にある。相手の控えに貼っていないことは、自社の問題にもなりうる。

貼り忘れたときの過怠税と、気づいたときの申出の扱いは、注文書の印紙の記事の最後の節で扱っている。

電子で締結すれば課税されない

国税庁の質疑応答事例は、注文請書を作る代わりに、受注する旨や請負内容を記録した電磁的記録に電子署名を付けて電子メールで送っている事案について、印紙税の課税対象は課税物件表に掲げる文書であって電磁的記録は文書に含まれないので、課税されないと答えている[8]。基本取引契約書を電子契約で結ぶ場合も、同じ考え方で印紙は要らない。

ただし二つ注意がある。一つは、紙と電子を併用して、紙の写しに当事者が署名・押印したり、正本と相違ない旨を証明したりすると、その紙が前の節の第 19 条第 2 項の文書になりうることである[6]。もう一つは、印紙が要らなくなる代わりに、電子で交わした契約書は電子取引のデータとして保存の対象になることで、その要件は電子帳簿保存法の対応で扱った。

取引条件の通知と承諾書

取適法の対象取引では、支払方法などの共通事項を基本契約や取引条件の通知でまとめて示しておくことが多い。取適法テキストの記載例の注記は、委託事業者から「支払方法等について」の承諾の通知を求められた場合に、受注側がその通知を文書で行うこととすると、その承諾書が印紙税の課税文書になる、としている[9]。発注側が承諾書を求める書式にすると、印紙の負担が受注側に生じる。承諾を電子で受けるか、承諾書を求めない運用にするかを、通知の書式を作る段階で決めておきたい。同じ記載例は、振込手数料は委託事業者が負担すると書いている[9]。手数料の扱いは振込手数料を代金から差し引いてよいかで見ている。

判定の手順

手元の基本取引契約書について、次の順に確かめると判断がぶれにくい。

1. 取引の種類を決める。
規格品の売買か、仕様を指定した製作・加工・修理(請負)か。両方が入っているなら両方に当たりうる[5]。

2. ④の事項が本文と別紙にあるかを見る。
品目の分類、具体的な数量、数値の単価、具体的な支払方法、損害賠償の方法のどれかがあれば第 7 号の候補になる[4]。

3. 契約期間と更新の定めを見る。
3 か月以内で更新の定めがなければ第 7 号から外れ、内容で他の号を見る[4]。

4. 請負なら、金額が書かれているかを見る。
契約金額、取扱目標金額、単価と数量からの計算のどれかで金額が出れば第 2 号、出なければ第 7 号[1][4]。

5. 通数と控えの作り方を決める。
原本の通数ぶん印紙が要る。写しに署名・割印をしない[6]。

工場の改修や据付工事の条件を基本契約に入れる場合は、工事が請負として第 2 号に関わる。工事の契約そのものに掛かる法律は建設工事と取適法で整理した。

よくある質問

秘密保持契約書にも 4,000 円が要りますか

秘密保持の義務だけを定め、目的物の種類や単価、支払方法などの④の事項を定めていなければ、施行令第 26 条第 1 号の要件に当たらない[2]。ただし秘密保持の条項が取引基本契約の中に入っているなら、契約書全体で判定する。

自動更新の基本契約を、期間を区切って結び直すべきですか

3 か月以内で更新なしにすれば第 7 号から外れるが、外れた文書も内容により他の号で判定される[4]。継続して取引する相手との基本契約を、印紙のために短期で区切ると、毎回結び直す手間と契約の空白が生じる。印紙代を減らしたいなら、電子契約に切り替えるほうが筋がよい[8]。

注文請書と基本契約の両方に印紙が要りますか

別の文書なので、それぞれで判定する。基本契約の印紙はこの記事の判定、注文請書は請負なら金額に応じた第 2 号の判定になる。注文請書の扱いは注文請書とはを見てほしい。

まとめ

基本取引契約書の印紙は、第 7 号の 5 つの条件(営業者間・対象の取引・2 以上の継続取引・共通の取引条件・期間の除外)を確かめ、請負の基本契約なら金額の記載で第 2 号に寄るかを見る、という二段で決まる。単価や支払方法を変える覚書は重要な事項の変更として課税文書になりうる。原本の通数ぶん印紙が要り、写しへの署名や割印は課税の原因になる。電子で締結すれば印紙は要らないが、保存の要件が代わりに乗る。

出典・参考資料

  1. 印紙税法(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
  2. 印紙税法施行令(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
  3. No.7104 継続的取引の基本となる契約書(国税庁/令和 8 年 4 月 1 日現在法令等)
  4. 印紙税法基本通達 別表第一 第5号~8号文書(国税庁)
  5. 印紙税法基本通達 別表第一 第2号文書(国税庁)
  6. 印紙税法基本通達 第1章第4節 契約書の取扱い(第12条~第22条)(国税庁)
  7. 印紙税法基本通達 別表第2 重要な事項の一覧表(国税庁)
  8. 質疑応答事例(印紙税)取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い(国税庁/令和 7 年 8 月 1 日現在)
  9. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)

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