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注文請書とは|発注書との違い・印紙税・電子化の判断

この記事のポイント(結論先出し)
注文請書は、発注書とは義務の性質が違う。発注書(4 条明示)は取適法が委託事業者に課す義務だが、注文請書を出す義務を定めた法律はない。それでも実務で交わされるのは、認識の食い違いを早い段階で見つけられるからである。一方で、注文請書には印紙税がかかる場合がある。電子データで取り交わせば印紙は不要になるが、そのデータは電子帳簿保存法の保存対象になる。この 3 点を押さえれば、運用の判断ができる。
目次
注文請書とは何か
注文請書(ちゅうもんうけしょ)とは、発注を受けた側が「その内容で承ります」と返す書類である。「請書(うけしょ)」と略される。発注書と対になる書類で、発注書が申込み、注文請書が承諾にあたる。
発注書と注文請書がそろうと、双方が同じ内容を確認したことになる。契約書を交わさない取引では、この 2 枚が契約内容を示す資料になる。
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発注書と注文請書の違い
| 項目 | 発注書(注文書) | 注文請書 |
|---|---|---|
| 出す人 | 発注する側(委託事業者) | 受注する側(中小受託事業者) |
| 法律上の位置づけ | 取適法第 4 条の明示義務[1] | 法律上の義務はない |
| 出すタイミング | 製造委託等をした場合に直ちに[1] | 発注書を受けてから(取り決めによる) |
| 記載する内容 | 12 項目の明示事項[1] | 発注書の内容を確認する事項 |
| 印紙税 | 原則として不課税(申込みのため) | 契約書に該当する場合は課税 |
| 電子データの保存 | 保存対象[2] | 保存対象[2] |
いちばん大きな違いは 2 行目である。発注書は法律で義務づけられているが、注文請書にその定めはない。取適法第 4 条が求めているのは、委託事業者から中小受託事業者への明示であって、その逆ではない[1]。
それでも注文請書を交わす理由
認識のずれを早く見つけられる
発注書を送っただけでは、相手が内容を確認したかどうか分からない。図面の改訂が古い、数量の桁が違う、納期が前提と合わない——こうした食い違いは、着手前に見つかれば手戻りが小さい。注文請書を求める運用は、この確認を制度化するものである。
納期の合意を残せる
発注書に書いた希望納期に対し、受注側が「その日で承る」と返すことで、納期が合意事項になる。返答がないまま進むと、納期遅延が起きたときにどちらの認識が正しかったかが争点になる。
取適法の記録としても機能する
取適法は、不当な給付内容の変更や不当なやり直しを禁止行為として挙げている[3]。当初の合意内容が双方の書面で残っていれば、後から変更があったことも明確になる。発注側にとっても、変更の経緯を示す資料になる。
印紙税の扱い
注文請書で実務上の論点になるのが印紙税である。
発注書(注文書)は、原則として契約の申込みにすぎないため課税文書に当たらないとされる。一方、注文請書は承諾の意思表示であり、契約の成立を証する文書と評価されるため、記載金額に応じて印紙税がかかる場合がある。
国税庁は、請負に関する契約書(第 2 号文書)に該当するものとして「工事請負契約書、工事注文請書、物品加工注文請書、広告契約書、会計監査契約書」などを挙げている[5]。製造業で交わす加工の注文請書は、まさにこの例に含まれる。
請負とは「当事者の一方(請負人)がある仕事の完成を約し、相手方(注文者)がこれに報酬を支払うことを約束することによって成立する契約」であり、建設工事などの有形物のほか、警備・機械保守・清掃といった無形的な結果を目的とするものも含まれるとされている[5]。
印紙税額は契約金額の区分で決まる。1 万円未満は非課税、1 万円以上 100 万円以下は 200 円、100 万円超 200 万円以下は 400 円、1,000 万円超 5,000 万円以下は 2 万円である[5]。契約金額の記載がない場合は 200 円となる[5]。
具体的な課否は文書の性質によって判断が分かれるため、迷う場合は所轄の税務署または税理士に確認するのが確実である。
電子データなら印紙は不要になる
印紙税は「文書」に課される税である。注文請書を紙で作成せず、PDF などの電子データで取り交わす場合、課税文書の作成に当たらないため印紙は不要と扱われている。
ただし印紙が不要になる代わりに、保存の要件がかかる。メールや Web でやり取りした注文請書は電子取引データに当たるため、電子のまま保存することとされている[6]。求められるのは真実性・可視性・検索の 3 つで、検索は取引年月日・取引金額・取引先の3 項目で行えることが条件になる[6]。
真実性については、タイムスタンプや訂正削除の履歴が残るシステムを使う方法のほかに、訂正削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用する方法が認められている[6]。専用のシステムが無くても要件は満たせる。
⚠️ 印紙代を節約するために電子化したのに、保存の要件を満たしていない——という状態になりやすい。電子で取り交わすと決めたら、どこに保存するか、どう検索できるようにするかを同時に決めておく。
取適法では、書面交付義務について中小受託事業者の承諾の有無にかかわらず、電子メールなどの電磁的方法が使えるようになった[4]。発注書を電子で出す運用が広がれば、注文請書も自然に電子になる。印紙代の削減は、電子化を進める分かりやすい理由の一つである。
ただし、電子で取り交わした注文請書は電子帳簿保存法の保存対象になる[2]。印紙が不要になる代わりに、保存の要件を満たす必要がある。
注文請書に書く項目
様式に決まりはないが、発注書と突き合わせられる形にする。
| 項目 | 書き方 |
|---|---|
| 発注書番号 | 対応する発注書の番号。これがないと突合できない |
| 発行日 | 請書を作成した日 |
| 品名・仕様 | 品番、図面番号と改訂記号まで |
| 数量・単価・金額 | 発注書と同じ数字。違う場合は請けずに連絡する |
| 納期 | 承諾する納期。発注書の希望日と違うなら明記 |
| 納入場所 | 発注書の指定と同じか確認 |
| 支払条件 | 発注書と相違ないこと |
| 備考 | 条件付きで承諾する場合はその条件 |
4 行目が重要である。発注書と数字が違うまま請書を出さない。違いに気づいたら、請書を出す前に連絡する。請書を出してしまうと、その内容で承諾したことになる。
条件付きで承諾するとき
納期だけ変更したい、数量を分納にしたい——このような場合、無条件の請書を出すのは適切でない。備考に条件を書き、相手の同意を得てから確定させる。
貴社発注書 PO-2026-0915 につきまして、下記の条件にてお請けいたします。
・納期:ご指定の 10 月 15 日に対し、10 月 22 日とさせてください(材料入荷の都合による)
・その他の条件:ご発注のとおり
上記でご承諾いただけましたら、正式にお請けいたします。ご都合が合わない場合はご相談ください。
この形にしておくと、納期の変更が「勝手な遅延」ではなく「事前の合意」になる。発注側にとっても、社内へ説明できる記録が残る。
運用で決めておくこと
どの取引で請書を求めるか
すべての発注に請書を求めると、双方の事務が増える。金額の大きい取引、新規の取引先、仕様が複雑な案件に限る、といった基準を決めておく。
いつまでに返してもらうか
「発注書受領後 3 営業日以内」など期限を決める。返答がないまま生産が進むと、請書の意味がなくなる。
返ってこないときどうするか
催促するのか、返答なしでも着手を認めるのか。取り決めがないと、担当者ごとに対応が変わる。
電子で交わすか紙か
電子にすれば印紙が不要になる一方、保存の要件を満たす必要が出る[2]。どちらの負担が大きいかで決める。
請書を出す前に確認する 5 点
請書を出せば、その内容で承諾したことになる。出す前に次を照合する。
1. 図面の改訂記号
発注書に書かれた Rev. と、手元にある図面が一致しているか。改訂が食い違ったまま製造すると、全数が不適合になる。
2. 数量の桁
200 個と 2,000 個は、材料手配も工程も別物である。見積時の数量と違っていないかを見る。
3. 納期の実現性
材料の入荷日、設備の空き、外注先の対応可否を確認したうえで請ける。社内調整をせずに請書を出すと、後で遅延の連絡をすることになる。
4. 単価と金額
見積で出した単価と一致しているか。数量が変わっているのに単価が据え置かれていないか。ここが違えば、請ける前に連絡する。
5. 支給材の有無と入手時期
支給材がある場合、いつ届くかが工程の起点になる。支給日が明記されていなければ、請書の備考で確認する。
これらは着手前なら数分で確認できるが、着手後に見つかると手戻りになる。請書を「形式的に返す紙」にせず、確認の機会として使いたい。
発注側から見た注文請書
発注側にとって、注文請書は「相手が内容を確認した証拠」である。ただし請書を受け取ったからといって、自社の明示義務が変わるわけではない。取適法第 4 条が求めるのは、発注時に 12 項目を明示することであり[1]、請書の有無は関係しない。明示すべき項目は発注書に明示しなければならない 12 項目で整理している。
また、請書を求めること自体が相手の負担になる点も踏まえたい。印紙代が発生する取引で毎回紙の請書を求めれば、その費用は受注側が負担する。電子での取り交わしに切り替えるか、対象を絞るかを検討する。
よくある質問
メールの返信で「承知しました」と返せば請書の代わりになるか
実務上、承諾の意思表示としては機能する。ただし発注書番号や数量が本文に書かれていなければ、後から見て何に対する承諾か分からない。返信する場合も、発注書番号・品名・数量・納期を引用しておく。なおそのメールも、取引情報を含むなら電子帳簿保存法の保存対象になりうる[2]。
請書に押印は必要か
押印を義務づける法律はない。取引先の様式で押印欄がある場合や、社内規程で定めている場合に押す。電子で取り交わすなら、押印なしで運用できるかを先に確認しておく。押印のために印刷とスキャンをしていると、電子化の意味が薄れる。
印紙を貼り忘れたらどうなるか
課税文書に該当するのに印紙を貼っていない場合、過怠税の対象になりうる。契約自体が無効になるわけではないが、税務上の問題は残る。判断に迷う文書は、作成前に所轄の税務署に確認するのが確実である。
分割納入のとき、請書は何枚出すか
取り決めによる。1 件の発注に対して 1 枚とし、納入計画を備考に書く形が一般的である。納入ごとに請書を出すと枚数が増え、印紙が課税文書に該当する場合は費用も増える。
請書の控えはどのくらい保管するか
取引に関する書類として保管する。電子で取り交わしたものは電子のまま保存し、取引年月日・取引金額・取引先で検索できる状態にしておく[6]。紙の請書に貼った印紙も、契約の証跡として一緒に残す。
発注書が来ないまま着手を頼まれた
受注側としては、書面がないまま着手するのは避けたい。取適法は委託事業者に対し、製造委託等をした場合に直ちに明示することを求めている[1]。まず発注書の発行を依頼し、それでも急ぐ場合はメールで条件を確認したうえで着手する。後から条件が食い違ったとき、記録がなければ主張できない。
まとめ
注文請書に法律上の義務はない[1]。それでも交わすのは、認識のずれを着手前に見つけるためである。出す側は、発注書と数字が違うまま請けないこと。条件があるなら備考に書くこと。
印紙税は紙の場合に問題になるが、電子データなら課税文書に当たらない。ただしそのデータは電子帳簿保存法の保存対象になる[2]。保存の方法については電子帳簿保存法の対応|システムなしで満たす方法で扱っている。
出典・参考資料
- 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
- 電子帳簿保存法 電子取引データの保存方法をご確認ください【令和 6 年 1 月以降用】(国税庁/令和 5 年 7 月)
- 取適法・振興法(公正取引委員会)
- 2026年1月から「下請法」は「取適法」へ!(取適法リーフレット)(公正取引委員会)
- No.7102 請負に関する契約書(国税庁)
- 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】Ⅱ 適用要件【基本的事項】(国税庁)
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