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パンチングメタルの発注——穴の形・ピッチ・千鳥と並列・開孔率の表し方、図面で決めること

この記事のポイント(結論先出し)
パンチングメタルを発注するときに図面で決めるのは、穴の形と大きさ、ピッチ、配列(並列か千鳥か)と向き、穴の無い余白、材質と板厚、開孔率である。ピッチの測り方は配列で変わり、試験用の金属製板ふるいの JIS(JIS Z 8801-2)は、円孔では穴の中心間距離、角孔の千鳥配置では穴の列の中心線どうしの距離をピッチと定めている[1]。開孔率は穴径とピッチから計算で決まり、円孔の 60° 千鳥なら約 0.907×(穴径÷ピッチ)² になる。穴と穴の間(さん)が細いと、打ち抜きで板が倒れ込むように変形することが報告されており、板厚 0.25 mm のステンレス板に細長い矩形の孔を並べた実験では、穴と穴の間(さん)の幅を板厚と同じ程度まで細くすると、従来の孔抜きでは板押さえの力を上げても不具合を防げなかった。パンチの面に傾斜を付けるなど、型の工夫で防げた例も報告されている[4]。寸法の公差は、どの規格のどの等級で読むかを図面に書く[2][3]。
目次
パンチングメタルの注文で決めること
パンチングメタルは、金属の板に同じ形の穴を規則的に打ち抜いた板である。通気口、カバー、フィルターの支え、防音パネルの表面材、ストレーナーなど、設備や製品の部材として使われる。「パンチングメタル φ3 P5 60°千鳥 SUS304 t1.0」のような書き方で話が通じることも多いが、この一行だけでは決まっていないことがある。
注文の前に決めておきたい項目は次のとおりである。これは規格の要求ではなく、発注側が図面と注文書に書いておく項目の提案である。
1. 穴の形と大きさ
丸穴(円孔)・角穴・長穴など。長穴なら長さと幅、角穴なら角の丸みの許容。
2. ピッチと配列
並列(正方格子)か千鳥か。千鳥なら角度(60° など)と、どの方向のピッチを指しているか。
3. 配列の向き
穴の列を板の長手方向に対してどちら向きにそろえるか。
4. 穴の無い余白
周囲や取付け穴・曲げ線のまわりに、どれだけ穴の無い部分を残すか。縁で欠けた穴を許すか。
5. 材質と板厚
材料規格の記号と質別、板厚の許容差をどの規格で読むか。
6. 開孔率
設計値として要るのか、結果として出る参考値でよいのか。
7. 寸法の公差と仕上がり
穴の寸法と位置の公差をどの規格で読むか、ばりの向きと許容、平面度。
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ピッチは「どこからどこまで」かを配列ごとに決める
パンチングメタルの穴の配列とピッチを定義している JIS の例として、試験用ふるいの規格がある。JIS Z 8801-2(試験用ふるい-第 2 部:金属製板ふるい)は、穴のあいた金属板で作る試験用のふるいの規格で、2013 年の ISO 3310-2 を基に作られている[1]。製品としてのパンチングメタル一般の規格ではないが、ピッチや配列の言葉の決め方は、発注の図面を書くときの参考になる。
この規格は、目開きを円孔の直径または角孔の中心線上での幅とし、ピッチを、円孔では穴の中心間距離と定めている。角孔では、並列配置(正方格子)の場合は隣り合う穴の中心間距離、千鳥配置の場合は互い違いに一列に並んだ穴の中心を通る直線の間の距離をピッチとする[1]。穴の配列は円孔・角孔とも並列配置か千鳥配置とされ、角孔の角は丸めてもよいが、丸めの半径は公称目開きの 0.15 倍より小さくする、と定めている[1]。
ここから分かるのは、同じ「P5」でも、配列と穴の形によって測る場所が違うことである。特に千鳥配置で、穴の中心が正三角形の頂点に並ばない配列(たとえば 45° や縦横で間隔の違う並べ方)では、方向によってピッチが二つになる。図面では配列の図を描き、どの寸法をピッチと呼んでいるかを示す。
開孔率は計算で決まる。設計値か参考値かを決める
開孔率は、板の面積に対して穴の面積が占める割合である。穴の形・大きさ・ピッチ・配列が決まれば、幾何の計算で決まる。次の表は、代表的な配列で、穴の繰り返しの単位面積に対する穴の面積の割合を計算したものである(周囲の余白は含めない)。
| 穴の形と配列 | ピッチの取り方 | 開孔率の式 | 例(穴 3 mm・ピッチ 5 mm) |
|---|---|---|---|
| 円孔・60° 千鳥 | 隣り合う穴の中心間距離 P | 0.907 ×(d÷P)² | 約 32.6% |
| 円孔・並列(正方格子) | 縦横の中心間距離 P | 0.785 ×(d÷P)² | 約 28.3% |
| 角孔・並列(正方格子) | 縦横の中心間距離 P | (w÷P)² | 36.0%(穴の一辺 3 mm) |
式の係数は、円孔の 60° 千鳥では π÷(2√3)、並列では π÷4 で、どちらも計算から出る値である。角孔の角を丸めた場合は、その分だけ表の値より小さくなる。
表から読み取れることは二つある。第一に、同じ穴とピッチでも、配列が違えば開孔率が変わる。円孔の千鳥と並列では、この例で 4 ポイント以上違う。第二に、開孔率はピッチの 2 乗で効く。ピッチを 5 mm から 4.5 mm に詰めると、千鳥の例では約 40.3% になる。
開孔率を通気量や音響・ろ過の性能の前提にしている部品なら、図面には穴とピッチと配列を書き、開孔率は計算した設計値として併記する。穴とピッチと開孔率を三つとも独立に「必須」として書くと、どれかを優先しないと両立しないことがある。どれを優先するかは設計が決める。開孔率が単なる目安なら「参考」と書いておくと、受入で争いにならない。
重さも開孔率で変わる
穴をあけた分だけ板は軽くなる。見積や運賃の目安としては、同じ板厚の無孔の板の質量に(1-開孔率)を掛ければよい。周囲の余白は穴が無いので、余白が広い部品では実際の質量は少し重くなる。板の質量の計算の進め方は鋼材の重量(質量)の計算で扱った。
穴と穴の間(さん)を細くすると、板が変形する
開孔率を上げようとしてピッチを詰めると、穴と穴の間に残る部分(さん、ブリッジとも呼ぶ)が細くなる。日本塑性加工学会誌の論文(2017 年)は、フィルター部品のように薄板に多数の孔を近接して加工するとき、プレスの孔抜きでは孔間ピッチが狭くなると、孔と孔の接続部が後から抜いた側へ倒れ込むような変形が生じ、細長い矩形孔ではねじれとして現れて部品の平坦度を悪化させる、と書いている。積層して使う場合は、密着不良や厚さ方向の寸法誤差が問題になる、ともしている[4]。
同じ論文は、別の研究で、I 字形の打抜きでは幅が板厚以下になると後抜き側へのねじれが顕著になることが示されている、と紹介している。論文自身の実験では、板厚 0.25 mm のステンレス薄板に細長い矩形孔を並べて抜き、穴と穴の間に残るさんの幅を板厚に対する比(W/t)で変えて調べている。従来の孔抜きでは、板押さえを使えば W/t が 2 以上でねじれを抑えられたが、W/t が 1 程度まで小さくなると板押さえ力を強めてもねじれは解消されなかった。W/t が 1 の条件では、パンチの面に適切な角度と向きの傾斜を付けるとねじれが減り、抜きかすをガイドとして使う方法では W/t が 1 でねじれを抑えられ、0.75 でも改善が見られたが、かすを取り除く工程が追加で必要になった、と報告している[4]。
この結果は特定の条件での実験で、すべてのパンチングメタルに当てはまる限界値ではない。ただ、発注側として押さえることははっきりしている。さんの幅が板厚に近いほど、平面度やねじれが出やすく、防ぐには工程や型に手間がかかる。開孔率を上げたい設計では、さんの幅と板厚の比を見て、仕入先に加工できる条件と平面度の見込みを先に聞く。平面度が機能に効く部品なら、平面度の公差と測り方を図面に書く。
同じ論文は、微細孔の加工には切削・レーザー・エッチングなど様々な工法があるが、コストと生産性の観点でプレスの孔抜きが多く用いられている、と書いている[4]。穴の数が少ない試作や、プレスで難しい形の穴なら、レーザー切断を検討する余地もある。レーザー切断品で指定することはレーザー切断品の指定で扱った。
寸法の公差は、どの規格のどの等級で読むかを書く
穴の径や位置に個別の公差を書かない部分は、普通公差で読むことになる。JIS B 0408(金属プレス加工品の普通寸法公差)は、金属板を打抜き・曲げ・絞りによってプレス加工したものを対象にし、打抜きの普通寸法公差を A 級・B 級・C 級の 3 等級で定めている。たとえば基準寸法 6 mm を超え 30 mm 以下では、A 級 ±0.1 mm、B 級 ±0.2 mm、C 級 ±0.5 mm である。図面または関連文書には、この規格の番号と等級を指示する、とされている[2]。
JIS B 0408 は、金属板のせん断加工品は含まないとし、せん断加工品には JIS B 0410 を適用するとしている[2]。JIS B 0410(金属板せん断加工品の普通公差)は、ギャップシャー・スケヤシャーなどの直刃のせん断機で切った厚さ 12 mm 以下の金属板の、切断幅の普通寸法公差と真直度・直角度の普通公差を定めている[3]。パンチングメタルを定尺の板から切って納める場合、外形はせん断、穴は打抜きと、同じ部品の中で読む規格が分かれることがある。どの寸法をどの規格で読むかは、プレス品・板金品の普通公差の指定で詳しく扱った。
ばりと縁の仕上がりを決めておく
打ち抜いた穴の片側にはばりが出る。先の試験用ふるいの規格は、ふるい板に打ち抜ききず、ばり、目の変形などのふるい分け試験の結果に影響を及ぼす欠陥があってはならない、としている[1]。ふるいの場合は機能に効くから欠陥とされているが、一般の部品でも、人の手が触れる面・樹脂や布が擦れる面・粉体が流れる面では、ばりが不具合の元になる。
図面には、ばりを許す面と許さない面、ばりの向き(どちらの面に出てよいか)、バリ取りの要否を書く。「バリなきこと」の曖昧さと記号での指示の仕方はエッジ・バリ・面取りの図面指示にまとめた。
縁の扱いも同じである。試験用ふるいの規格は、目開き 4 mm 以上のふるいについて、ふるい面と枠の間に穴の無い余白を設け、部分的に塞がった穴や切れた穴があってはならない、としている[1]。一般の部品でも、外周や取付け穴、曲げ線の近くに穴がかかると、欠けた穴が残ったり、曲げで穴が変形したりする。余白の幅と、縁で欠けた穴を許すかを図面で決める。曲げがある部品なら、曲げ線と穴の距離を板金の曲げ加工でできないことで確かめておく。
材質と板厚は材料規格の記号で書く
パンチングメタルの材料は、鋼板、ステンレス鋼板、アルミ板などが使われる。どれを使う場合も、材質は材料規格の記号と質別で書く。たとえばアルミなら、JIS H 4000 の記号と質別で「A5052P-H32」「A1050P-H14」のように書く。板厚の許容差も材料規格の表で決まり、JIS H 4000 では冷間圧延材と熱間圧延材ごとに厚さの許容差の表が分かれている[5]。パンチングの部品の図面に板厚の公差を書くなら、材料の注文条件と食い違わないかを確かめる。
アルミ板の選び方は、同じ束の A5052 の発注と純アルミ A1050・A1100 の選び方で扱う。鋼板の記号は鋼板(SPCC・SPHC)の材料記号の指定を参照してほしい。
受け入れるときに確かめること
試験用ふるいの規格は、目開きとピッチの検査で、偏りなくサンプリングし、測定箇所で異なる方向に 150 mm 以上の直線を 2 本取り、各直線上の目開きとピッチをそれぞれ 8 個以上測る、といった手順を定めている[1]。ふるいほどの検査が要らない部品でも、どこを何個測るかを決めておかないと、受入の判定が人によって変わる。
1. 穴径とピッチ
どの方向で、何か所を測るか。千鳥なら、図面でピッチと呼んだ寸法を測っているか。
2. 配列の向きと余白
穴の列の向きが図面どおりか。余白の幅、欠けた穴の有無。
3. 平面度とねじれ
平面度の公差を書いていれば、その測り方で測る。
4. ばり
許さない面にばりが出ていないか。ばりの向きが図面どおりか。
5. 材質と板厚
材料の成績書を求めていれば、材質の記号と板厚を確かめる。
注文書の書き方の例
図面の注記と合わせて、注文書には例えば次のように書いておく(規格の様式ではない)。
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「材質:A5052P-H32(JIS H 4000)、板厚 1.5 mm。穴:円孔 φ3、60° 千鳥、ピッチ 5(隣り合う穴の中心間距離。配列は図面の詳細図による)、穴の列は長手方向に平行。開孔率は約 32.6%(参考値)。外周 10 mm と取付け穴の周囲 5 mm は無孔。縁で欠けた穴は不可。普通公差:打抜き JIS B 0408-B、外形のせん断 JIS B 0410 の A 級。ばりは裏面側とし、表面側は不可。」
よくある質問
カタログの品番で注文してもよいですか
同じ仕入先から同じ品番で買い続けるなら話は早いが、仕入先を替えると品番の中身が同じとは限らない。穴の形・大きさ・ピッチ・配列・材質・板厚を図面に書いておけば、仕入先を替えても同じものを頼める。
開孔率を上げたいのですが、どこまで詰められますか
開孔率はピッチの 2 乗で効くので、少し詰めるだけで大きく変わる。ただし穴と穴の間(さん)の幅が細くなるほど、従来の孔抜きでは板が倒れ込むように変形しやすくなることが報告されている。型の工夫で防げた例もあるが、工程が増えることがある[4]。さんの幅と板厚の比を示して、仕入先に加工できる条件と平面度の見込みを聞いてから決める。
ピッチの公差はどう書けばよいですか
普通公差の規格は寸法の区分ごとに許容差を決めているので[2]、穴が多い板では、ピッチの誤差が端から端までで積み重なる。取付け穴や相手部品と合わせる位置があるなら、累積の寸法(端の穴から端の穴まで)に公差を書く。
まとめ
パンチングメタルは、穴の形と大きさ、ピッチ、配列と向き、余白、材質と板厚、開孔率を図面で決めて注文する。ピッチの測り方は配列で変わるので、どの寸法をピッチと呼ぶかを図で示す。開孔率は穴とピッチと配列から計算で決まり、ピッチの 2 乗で効くので、設計値か参考値かを決めておく。ピッチを詰めて穴と穴の間(さん)の幅が細くなるほど板が変形しやすく、さんの幅が板厚と同じ程度では従来の孔抜きで不具合を防げなかった実験もある(型の工夫で防げた例もある)ので、仕入先に加工の条件を先に聞く。寸法は打抜きとせん断で読む規格が分かれるので、規格と等級を書く。ばりの向きと縁の欠けた穴の扱い、受入で測る場所と数も決めておく。
同じ束では、パンチングメタルの材料になる A5052 や 純アルミのほか、A6061 と A2017 の発注も扱う。
出典・参考資料
- JIS Z 8801-2:2022 試験用ふるい-第 2 部:金属製板ふるい(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2022 年 2 月 21 日改正)
- JIS B 0408:1991 金属プレス加工品の普通寸法公差(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1991 年 2 月 1 日改正・2025 年 6 月 20 日確認)
- JIS B 0410:1991 金属板せん断加工品の普通公差(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1991 年 2 月 1 日改正・2025 年 6 月 20 日確認)
- 広田健治・野嶋佑輝・栗屋啓輔・森祐司「狭小ピッチ微細矩形孔抜きにおける形状精度の改善」塑性と加工 58 巻 675 号(日本塑性加工学会/2017 年 4 月)
- JIS H 4000:2022 アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2022 年 4 月 20 日改正)
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