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皿ボルト JIS B 1179・六角穴付き皿ボルト B 1194 の指定——頭部強度 80 %、皿穴 JIS B 1017 との違い

この記事のポイント(結論先出し)
「皿ボルト」「皿ねじ」と呼ばれる部品は、JIS では皿ボルト(JIS B 1179)、六角穴付き皿ボルト(JIS B 1194)、皿小ねじ(JIS B 1111 ほか)に分かれ、頭の大きさも強度の決め方も違う[1][2][6]。六角穴付き皿ボルトは頭部の角度を 90°〜92° とし、皿頭の形のために最小引張荷重を JIS B 1051 の値の 80 % としている[2]。皿小ねじ用の皿穴の形は JIS B 1017 が決めているが、その対象は皿小ねじ・皿タッピンねじなどで、同じ呼び径でも六角穴付き皿ボルトは頭の径が大きい[3][2]。発注書には部品の規格番号と呼び方を書き、皿穴を加工する部品の図面では、どのねじ用の皿穴かを規格番号で指示する。
目次
「皿ボルト M8×20」で手配すると、何が決まっていないか
皿ボルト・皿ねじは、頭が円すい形になっていて、相手の部品にあけた円すい形の穴(皿穴)に頭が沈み込む締結部品である。頭を面から出したくないカバーや、すべり面、ほかの部品と重なる場所で使われる。現場ではまとめて「皿ボルト」「皿ねじ」「皿ビス」と呼ぶことが多いが、JIS では次のように規格が分かれている。
1. 皿ボルト(JIS B 1179)
すりわり付き皿ボルトとキー付き皿ボルトの 2 種類を規定し、鋼製・ステンレス鋼製・黄銅製を対象にしている[1]。呼び径の範囲は、すりわり付きが 10〜36 mm、キー付きが 10〜24 mm である[1]。
2. 六角穴付き皿ボルト(JIS B 1194)
頭に六角穴のある皿ボルトで、ISO 10642 を元にした規格である。ねじの呼びが M3〜M20、部品等級 A、強度区分 8.8・10.9・12.9 を規定している[2]。
3. 皿小ねじ(JIS B 1111 ほか)
十字穴付き皿小ねじは JIS B 1111 がタイプ 1(M1.6〜M10)とタイプ 2(M2〜M10)を規定し、すりわり付き皿小ねじは JIS B 1101 が規定している[6][3]。
「皿ボルト M8×20」と頼むと、M8 のすりわり付き皿ボルト(JIS B 1179 は M10 からなので規格品にない)なのか、六角穴付き皿ボルトなのか、皿小ねじなのかが決まらない。頭の径も、締めるための工具も、強度の指定の仕方も違うので、図面の部品表の段階で規格番号まで書いてもらう必要がある。皿小ねじの種類と強度区分の詳細は小ねじ JIS B 1111 の種類と指定で扱ったので、この記事では皿ボルトと六角穴付き皿ボルト、そして皿穴に絞る。
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皿頭は、頭のところの強さが足りないことがある
ボルトの強度区分を決める JIS B 1051 は、ボルトや小ねじの頭部の形状によっては、頭部のせん断面積がねじの有効断面積に比べて小さくなることがあり、この規格の引張り又はねじりの要求事項を満足しないことがあるとし、その例に低頭及び皿頭のボルト並びに小ねじを挙げている[5]。内側駆動形体(六角穴など)をもつ皿頭は、頭部で破断する力がねじ部の極限引張力より低い形状のねじ部品として扱われ、別の試験シリーズで試験することになっている[5]。
六角穴付き皿ボルトの JIS B 1194 はこれを数字で示している。ボルトは JIS B 1051 の試験プログラムによって試験したとき、頭部形状の理由から JIS B 1051 で規定する最小引張荷重の値を満たさなくてもよいが、その他の機械的性質と材料の要求事項は満たさなければならず、製品の状態で引張荷重を加えたとき、破壊を起こすことなく表 3 の最小引張荷重に耐えなければならない、としている[2]。表 3 の値は、JIS B 1051 に規定されている値の 80 % である[2]。
| 六角穴付き皿ボルトの最小引張荷重(JIS B 1194 表 3・N) | 8.8 | 10.9 | 12.9 |
|---|---|---|---|
| M6 | 12 900 | 16 700 | 19 600 |
| M8 | 23 400 | 30 500 | 35 700 |
| M10 | 37 100 | 48 200 | 56 600 |
| M12 | 53 900 | 70 200 | 82 400 |
規格は、破壊を起こすまで荷重を加えた場合、ねじ部・円筒部・頭部又は頭部と円筒部との付け根のいずれで破壊してもよいとしている[2]。つまり、同じ強度区分の六角穴付きボルト(キャップボルト)を皿ボルトに置き換えると、同じ「10.9」でも頭のところで保証される引張荷重は 8 割になる。設計の段階で置き換えるなら、この差を設計者が承知しているかを確かめる。六角穴付きボルトの指定は六角穴付きボルト(キャップボルト)JIS B 1176 の指定で扱った。
皿小ねじでは、頭の付け根の弱さを別の形で押さえている。JIS B 1111 の皿小ねじの製品仕様には、ねじり試験で壊すなら壊れる場所は軸部かねじ部でなければならず、頭と軸のつなぎ目で切れてはいけない、という注がある[6]。強度区分はタイプ 1 が鋼の 4.8、タイプ 2 が鋼の 8.8、ステンレス鋼の A2-70、非鉄金属の CU2・CU3 で、タイプによって選べる材料が違う[6]。
皿ボルト(JIS B 1179)と六角穴付き皿ボルト(JIS B 1194)の違い
JIS B 1179 の皿ボルトは、鋼製の機械的性質を JIS B 1051 の強度区分 4.6 と 4.8 としている[1]。ステンレス製と黄銅製の機械的性質は受渡当事者間の協定で、特に指定がない場合はそれぞれ JIS B 1054-1、JIS B 1057 を適用する[1]。ねじの公差域クラスは 6g 又は 8g で、すりわり付き皿ボルトには仕上げ程度「上」と「並」があり、「上」は座面・円筒部・頭部上面の表面粗さを Rz 25 としている[1]。
これに対して JIS B 1194 の六角穴付き皿ボルトは、部品等級 A、強度区分 8.8・10.9・12.9 で、ねじの公差域クラスは 8.8 と 10.9 が 6g、12.9 が 5g6g である[2]。表面欠陥の限界は JIS B 1041 により、強度区分 12.9 の場合は JIS B 1043 によるとしている[2]。同じ「皿ボルト」と呼ばれていても、JIS B 1179 は強度区分の低い一般用、JIS B 1194 は機械部品向けの高強度品と考えたほうがよい。
JIS B 1179 は、鋼ボルトの受渡し時の機械的性質の検査について、受渡当事者間の協定に基づいて試験成績表を確認するなどの行為によって、検査の一部を省略することができるとしている[1]。受入で試験をせずに成績表で済ませるなら、その旨を発注時に合意しておく。
頭部の角度と、頭の高さの確かめ方
JIS B 1194 は、六角穴付き皿ボルトの頭部の角度 α を 90°〜92° としている[2]。皿頭のボルトは、皿穴に沈んだときに頭の上面がどこに来るかが外観と機能に関わるので、規格は頭部のゲージ検査を決めている。JIS B 1194 は、皿ゲージに入れたとき、ボルト頭部の上面がゲージの A 面と B 面の間になければならないとしている[2]。皿小ねじの頭部形状とゲージによる検査は JIS B 1013(ISO 7721)が定めている[4]。
皿ボルト(JIS B 1179)の頭部の角度は、規格の表 3〜表 5 の図と表で呼び径ごとに示されている[1]。皿穴を加工する部品を別の仕入先に出すときは、使う皿ボルトの規格番号を図面に書き、皿穴の角度をその規格の表で確かめて指示する。
皿穴は「どのねじ用か」を規格番号で指示する
皿頭ねじ用の皿穴の形は、JIS B 1017(皿頭ねじ用皿穴の形状・ISO 15065)が決めている[3]。ただし適用範囲は、JIS B 1013 で規定する頭部形状をもつ皿頭ねじ用の皿穴で、すりわり付き皿小ねじ・十字穴付き皿小ねじ・皿タッピンねじ・皿ドリルねじなどが並び、呼びは 1.6〜10 である[3]。六角穴付き皿ボルト(JIS B 1194)や皿ボルト(JIS B 1179)は、この一覧に入っていない。
下の表は、皿小ねじの頭の径の理論寸法(JIS B 1013)、皿穴の上端の径(JIS B 1017)、六角穴付き皿ボルトの頭の径の理論寸法(JIS B 1194)を並べたものである[4][3][2]。
| ねじの呼び | 皿小ねじの頭の径 dk 理論寸法 最大(JIS B 1013) | 皿穴の上端の径 Dc 最小〜最大(JIS B 1017) | 六角穴付き皿ボルトの頭の径 dk 理論寸法 最大(JIS B 1194) |
|---|---|---|---|
| M4 | 9.4 mm | 9.4〜9.6 mm | 8.96 mm |
| M6 | 12.6 mm | 12.60〜12.85 mm | 13.44 mm |
| M8 | 17.3 mm | 17.30〜17.55 mm | 17.92 mm |
| M10 | 20 mm | 20.0〜20.3 mm | 22.40 mm |
JIS B 1017 の皿穴の上端の径の最小は、JIS B 1013 の皿小ねじの頭の径の理論寸法の最大と同じ値になっている[3][4]。皿穴の上端の径の最小と、頭の径の理論寸法の最大がそろえてある。一方で、M6〜M10 の六角穴付き皿ボルトは頭の径の理論寸法が皿小ねじより大きい[2]。上端の径だけで比べると、皿小ねじ用の皿穴(JIS B 1017)に M6〜M10 の六角穴付き皿ボルトを入れれば、頭が面から出る側になる。逆に M4 では六角穴付き皿ボルトの頭のほうが小さい。
JIS B 1017 は、皿穴の呼び方を「皿穴 JIS B 1017-ISO 15065-4」のように示し、製図での指示方法も図で示している[3]。通し穴の径は JIS B 1001 のボルト穴径の 2 級(公差域クラス H13)とされている[3]。皿穴を加工する部品の図面で「皿もみ M6」とだけ書かれていると、加工する側は手持ちの皿もみ工具と経験で寸法を決めることになる。皿小ねじ用なら JIS B 1017 の呼び方で、六角穴付き皿ボルト用なら使うボルトの規格番号と、皿穴の径・角度を数値で指示してもらう。
なお JIS B 1017 は、この規格は皿頭ねじ用皿穴の形状・寸法を示すためのものであり、この規格によって適合性評価を行うことは意図していないと注記している[3]。受入で皿穴を検査するなら、検査する寸法と方法(皿ゲージを当てる、ねじを入れて頭の沈み量を見る、など)を別に決めておく。
発注書の書き方と受入
規格が示す呼び方の例は次のとおりである[1][2]。
すりわり付き皿ボルト(鋼・M10・呼び長さ 50 mm・ねじ部長さ 35 mm・6g・上・4.8・丸先)
すりわり付き皿ボルト JIS B 1179-M10×50(35)-6g-上-4.8-丸先
キー付き皿ボルト(鋼・M16・呼び長さ 80 mm・8g・並・4.6)
キー付き皿ボルト JIS B 1179-M16×80-8g-並-4.6
六角穴付き皿ボルト(M12・呼び長さ 40 mm・12.9)
六角穴付き皿ボルト JIS B 1194-ISO 10642-M12×40-12.9
JIS B 1179 では、ねじの公差域クラスと仕上げ程度をねじの呼び×呼び長さの後に付け加え、注文者がねじ部長さを指定した場合はその値を呼び長さの後に括弧で示すとされている[1]。呼び長さとねじ部長さがどこからどこまでかは規格の図で決まっているので、図面の寸法と規格の呼び長さが同じ測り方かを設計者に確かめる。
製品の表示について、JIS B 1179 は規定しないとし、JIS B 1194 も特に規定しないとしている[1][2]。受入は包装の表示で行うことになる。JIS B 1179 の包装の表示は、規格番号又は規格名称、種類、ねじの呼び×呼び長さ、ねじの公差域クラス、強度区分(鋼の場合)、材料(ステンレスと黄銅の場合)、仕上げ程度、指定事項、数量、製造業者名又はその略号である[1]。JIS B 1194 は受入検査手順を JIS B 1091 によるとしている[2]。強度区分の考え方全般はボルトの強度区分と規格の指定を参照してほしい。
よくある質問
皿ボルトの頭が面から少し出ている、あるいは沈みすぎている
まず、使ったボルトの規格と、皿穴がどのねじ用に加工されたかを確かめる。皿小ねじ用の皿穴に六角穴付き皿ボルトを入れていないか、皿もみの角度が違っていないかを見る。ボルト側の頭の高さは、規格のゲージによる検査で確かめられる[2][4]。
六角穴付きボルトを皿ボルトに替えたい
頭の形が違うので、相手の部品に皿穴の加工が要る。また、同じ強度区分でも頭のところで保証される引張荷重は 8 割になる[2]。締付けの条件を変えずに置き換えてよいかは、設計者に判断してもらう。締付けトルクの考え方はボルトの締付けトルクの決め方で扱った。
ほかの頭の形との使い分けを知りたい
ボルトの先端を覆いたい場所の袋ナット、植込みボルト、工具なしで締め緩めする蝶ボルト・蝶ナットは、同じシリーズの袋ナット JIS B 1183 の指定、植込みボルト JIS B 1173 の指定、蝶ボルト・蝶ナットの指定で扱った。
配管を支持材に留める金物は、同じシリーズの配管支持用 U ボルトの発注で扱った。
まとめ
皿ボルト・皿ねじは、皿ボルト(JIS B 1179・すりわり付きとキー付き・鋼は 4.6 と 4.8)、六角穴付き皿ボルト(JIS B 1194・M3〜M20・8.8〜12.9)、皿小ねじ(JIS B 1111 ほか)に分かれる。皿頭は頭のところの強さが足りないことがあり、六角穴付き皿ボルトの最小引張荷重は JIS B 1051 の値の 80 % とされ、頭部の角度は 90°〜92° である。皿穴の形は JIS B 1017 が皿小ねじなど向けに決めており、六角穴付き皿ボルトの頭の径は、M6〜M10 では皿小ねじより大きくて頭が面から出る側に、M4 では小さくて沈む側にずれるので、皿小ねじ用の皿穴(JIS B 1017)をそのまま流用しない。発注書には規格番号と呼び方を書き、皿穴の図面ではどのねじ用かを規格番号と寸法で指示する。
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出典・参考資料
- JIS B 1179:2009 皿ボルト(追補 1:2015 を含む)(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2015 年 12 月 21 日改正・2025 年 6 月 20 日確認)
- JIS B 1194:2006 六角穴付き皿ボルト(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2006 年 3 月 25 日改正・2026 年 6 月 22 日確認)
- JIS B 1017:2008 皿頭ねじ用皿穴の形状(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2008 年 3 月 20 日制定・2022 年 10 月 20 日確認)
- JIS B 1013:1994 皿頭ねじ-頭部の形状及びゲージによる検査(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/1994 年 2 月 1 日制定・2024 年 10 月 21 日確認)
- JIS B 1051:2014 炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質-強度区分を規定したボルト,小ねじ及び植込みボルト-並目ねじ及び細目ねじ(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2014 年 9 月 22 日改正)
- JIS B 1111:2017 十字穴付き小ねじ(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2017 年 3 月 21 日改正・2026 年 6 月 22 日確認)
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